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笑えと言われて写真撮られそうな新天地

 

 ほろほろとこぼれるような春の陽を浴びる今日この頃、いよいよ帝都を出立して新天地に向かう日がやってきた。

 ラムリーザとソニアの二人は家族に別れを告げ、帝都の中央にある駅に向かっていた。駅までは距離があるので、執事の運転する車で行くことになっていて、これは先日のパーティの時と同じだ。

 車で走ること数十分、帝都シャングリラの駅に到着した。そして車を降りるときに執事が言った。

「ラムリーザ様、ソニアをよろしく頼みます」

「わかったわかった、何度も聞いたよ」

「お父さん、あたし一人でも大丈夫だってば」

 それを聞いて執事は一礼し、車を走らせ去っていった。

 

 朝の10時という早くも無く遅くもない時間というのもあって、駅はそれほど混雑していない。

 二人はその駅に入っていった。

「ねぇ、二人だけで駅に来るのって初めてね」

「そうだね。二人だけで帝都から出るのも初めてだけどね」

 親に連れられて家族でバケーションなどで遠くに出かけることは何度かあったが、二人きりで帝都から離れるということは初めてだった。

「これもデートかな」ソニアは冗談ぽく言ってみるが、ラムリーザはただ「引越しだ」と淡々と答えるだけだ。

 大きな荷物はあらかじめ運んであるので、二人の持っていくものは普通サイズの鞄一つ分ぐらいに収まっている。

「ねえ、ラム。これから行くところってどんな所なの?」

「地方都市ってのと、ポッターズ・ブラフという名前しか知らないなぁ。なにしろ、初めて行く所だからね」

「笑えって言われて写真撮られそうな所ね」

 ポッターズ・ブラフというのは帝国の地方都市である。それほど大きくないが、辺境の田舎ってわわけでもない。貴族が多くて古都といったイメージの帝都とは違って、中型の都市というのと、新しいイメージがあるのが違いとなっている。そして、それほど近いところでもなく、特急の電車で二時間って所の距離がある。

「あ、席が空いてるよ。あそこに座ろう」

 向かいになっている席が空いていたので、二人はそこに向き合う形で座ることにした。

 そして、外の景色を眺めているソニアを、ラムリーザはぼんやりと見ているのであった。

 

「待てよ、ソニアお前、その格好で出てきたのか……」

 ラムリーザはソニアを改めてじっくりと見て、ぼそっとつぶやく。

「きゅ、急に何?」

「いや、昔はいろいろ可愛い服着ていたのに、ここのところずっとそのだぼだぼ」

「だってしょうがないじゃん。別にいいでしょ?」

 ソニアは胸を押さえて顔を赤らめ、再び窓の外に目をやるく。

 ソニアの下半身はいつもの際どいミニスカートで、そこから伸びた健康的なふとももがまぶしい。だが、オープンな下半身に対して、上半身はガード固い。大きいサイズのニットを、腹の辺りでだぶつかせていて、大きな胸が目立たないようにしているのは分かる。だが、それゆえに太って見えるのだ。

「せめて、そのだぶつかせるのやめろよ。ちゃんと伸ばして着てみ」

「だって、こうなるのよ……」

 ソニアは、だぶついている腹回りの生地を下に伸ばす。すると、大きな胸のラインが強調されて、うむ……バスト98cmは伊達じゃない。

「太って見えるのよりは、胸が強調されている方がずっといいと思うけどな。ってか、だぶつかせているの、変だ」

「変? うーん……」

 ラムリーザに「変」と言われて、ソニアは困ったように自分の胸を見下ろす。そして、ぎゅっとその大きな胸を、上から押さえつけた。

「まあいいか。学校が始まれば、一日の大半を制服で過ごすわけだし、夜はナイトガウンを着るからな。ソニアの残念なところは私服だけだから」

「制服……ボタンの留まらないブラウス……」

 ソニアは、先日試着した制服を思い出して、大きくため息を吐いた。

 

 列車は、そんな二人を乗せて進んで行った。

 

 

 

『ポッターズ・ブラフ、ポッターズ・ブラフ、降り口は右側です』

 

 二時間ほどして、目的地のポッターズ・ブラフに着いた。

 駅前の雰囲気は、古風な帝都と違いのんびりしたイメージて、ビルもそれほど建っていなくて、小さな店が立ち並んでいる。人通りはそれほど多くは無くいところがさらにのんびりとしたイメージを加速させていて、見たところ繁華街ってイメージではない。ただ、古いイメージはなく、新しい町並みが広がっていた。

「ねえ、ラム。寄宿舎はどんなところ?」

「えーと、駅からそれほど遠くなかったはず。確か親戚の住んでいる屋敷なんだ」

「学校も駅から近いんだっけ」

「確かそうだな、というより駅から一番近いからそこに決めたんだけどね。しかし……ふむ、正解だったな」

「えっ、何が?」

「ソニアを連れてきたこと」

「え……」

「やっぱお前と居たら楽しいわ」

「た、楽しい?」

「うん。これが、場合によっていたら、一人で来ることになっていたと思ったらね」

 などと会話しながら二人は電車を降り、駅から出て行こうとした。

 その時、駅の中に二人組みの女性が入ってきた。二人とも髪を腰まで伸ばしていて、一人はプラチナブロンドの神秘的な雰囲気、もう一人は黒髪で妖艶な雰囲気だった。二人ともまうごとなき美少女で、歩く仕草もスタイルも抜群だ。

 その二人はラムリーザとソニアの傍を通り過ぎて、談笑しながら駅の中へ進んでいった。

 

「ふむ……、この街の女の子は綺麗だな」

 ラムリーザは、いつの間にかすれ違っていった二人の美少女に見惚れて振り向いていた。うん、後姿も美しい。ソニアとは違った、大人びた香りもかぐわしい。

 この時ラムリーザは、先程の二人をどこかで見たような気がした。だがそれを思い出すことはできなかったが、何か記憶をくすぐるものがあった。

「ラームッ!」

 ソニアを見ると、彼女は口を尖らせてラムリーザを睨みつけている。

「あたしと一緒だと楽しいから連れてきて正解、って言った傍から浮気?」

「うん、不思議だね。世の中は不思議なことで満ち溢れているから楽しいんだよ」

「意味わかんないよもぉ、しかも否定してないし……、ぽっと出に掻っ攫われる幼馴染なんて嫌よ」

「すれ違っただけの相手に嫉妬するのも大概だけどな」

「何よ、あんなちっぱいにデレデレしちゃって」

「しとらんがな。それとちっぱいってなんだよ……だがな!」

 勝手に嫉妬し始めてうるさいソニアに辟易したラムリーザは、ガッと肩を抱き寄せる。

「こういうことはソニアにしかしないんだけどな」

「もー、ラムったら……」

 

 そして二人は駅を出て、下宿先である親戚の屋敷の方に向かっていったのである。

 
 
 
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