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雑談部の始まり

 
 放課後、ラムリーザは背もたれに深く腰掛けてぼんやりと外の景色を眺めていた。

 窓の外には、裏山の景色が広がっている。特に考え事をしているわけではない。ただ、何も考えず、自然を眺めているのが趣味だった。

「さてと、俺は行くぞ」

 後ろの席に居るリゲルがそう言って立ち上がる。

 ラムリーザは外を眺めたままリゲルに問う。

「そういえば、リゲルは部活とかやらないのか?」

「俺は天文部に入った。天文学に興味があるのでな」

「星占術とか?」

「それは少し違う」

「ところでさ、ギター上手いのだからバンドに来たらいいのに」

「そうだな、検討しておく。それじゃあまた明日」

「ああ、また明日」

 リゲルは、ラムリーザと別れて天文部の部室に向かっていった。

 

 ソニアは離れた位置にある自分の席でラムリーザを見つめていた。

 ラムリーザが休憩モードに入ると、てこでも動かないということは長年の付き合いで知っていたので、そのまま待ち続けるしかなかったのだ。かといって、一人で部活に行く気にはなれなかった。

 

「さてと、そろそろ自分も行くかな」

 大きく伸びをしてラムリーザは立ち上がる。周囲を見回すと、ほとんどの生徒は教室から居なくなっていた。

 一人ぽつんと残っているソニアを見つけて、「ああ、そうか、まだ友達居ないんだったな」と思い返し、ソニアの所に向かう。

「ソニア、部活行かないのか?」

「えーと、うん、行く……」

「んー、何か元気無さそうだな。どうしたんだ?」

「そ、そんなことないよ。行こう、行こう」

 実際の所、ソニアは部室に行きたくなかった。もう少し正確に言うなら、リリスとユコの居るところにラムリーザを連れて行きたくなかった。ラムリーザがその二人になびくのではないかと不安になっていたのだ。

 一方ラムリーザは、ソニアがリリスとユコと友達になればいいのにと考えているのであった。

 

「今日は遅かったですわね、何をされていたのですか?」

 部室に入ると、先に来ていたユコが話しかけてきた。育ちが良いのか性格なのか、いつも丁寧な言葉で話している。

「うむ、空の理について考察してたら、時間経ってた」

「何ですの、それは?」

「あれでしょ、私達が教室出ようとしていた時、ラムリーザはずっと外見てたし」

「まあよい」

 ラムリーザはとりあえず話題を変える事にした。

 部室の中央に置かれているソファーに腰をかけ、ソニアを手招きする。ソニアはラムリーザの隣に座り、リリスとユコはその正面にあるソファーに腰掛けた。

「さて、一年生カルテットが揃ったわけだが……」

 ラムリーザはそこまで言って三人の顔を見回して言葉を続けた。

「親睦を深める意味で、みんな普段家で何をしているか聞いてみようかな」

「ギターの練習とゲームね」と、リリス。

「ゲームやりながら気に入った曲のスコア作成ですわ」と、ユコ。

「家では大体ゲームかな」と、ソニア。

「だいたいゲームだね。軽音楽部じゃなくて、電脳部でもよかったんじゃないかな」

「ラムリーザはゲームをやらないの?」

 リリスは間に置かれたローテーブルにひじを突いて身を乗り出してきて尋ねた。

「僕は大体ソニアがやっているのを見ているぐらいかな」

「ふーん」

 ラムリーザの返答にリリスは何か引っかかる部分を感じたが、とりあえず追求せずに流すことにした。

「最近やったゲームと言えば、何になるのでしょうか?」

「あれじゃない?『T.O.』」

 ユコの問いかけにリリスはサラッと答える。それを聞いたソニアがぴくっと反応するが、誰も気がつかなかった。

「やっぱりCルートですわね。主人公が自分の力で道を切り開いていく。それがやっぱり王道ですわ」

「いやいや現実を見ないと。あ、でも虐殺は見逃せないからNルートね」

「ソニアさんはこのゲームやりませんでしたか?」

「……知らない」

 ぶすっとした顔で答えるソニアを見ながら、ラムリーザは軽く語った。

「ソニアもプレイしていたよ。なんか見ていたら暗殺されていたけど」

「ラム!」

「うわぁ、そんなバッドエンドもあるのですねー」

「同胞虐殺もしていたしな」

「そ、それはラムが勝手に選択したんじゃないの……」

 ソニアは不満な表情を浮かべて、ラムリーザの袖をつかんで引っ張る。

「ソニアさんって、ずいぶん思い切ったプレイするのですね」

「それはそうとして、たぶん明日には僕とソニアの楽器が届くと思うから、リリスとユコも明日は自分の楽器持参ね」

「わかったわ」

「それよりも、四人でできるゲームとかやってみたいですわね」

 今のユコは音楽よりもゲームの方に興味が向いているようだ。リリスもどちらかと言えばゲーム寄りかもしれない。

「あのカートでレースするあれかな?」

「いいですわね、みんなでプレイできるように部室にゲーム機置きましょうよ」

「まったく、それだとマジで電脳部になっちゃうぞ」

 話をしながら、ラムリーザはやっぱりソニアに元気ないと感じていた。ソニアの方は、リリスとユコの二人を警戒していて打ち解けることができずに居るだけなのだが……。

 

 結局この日は、楽器の準備ができていないこともあり、夕方の下校時間になるまでずっと雑談をして過ごしたのであった。

 これが、軽音楽部とは名ばかりの雑談部の幕開けであった。

 
 
 
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