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プラトニック・ラブ終了のお知らせ、やっぱり無理でした

 

 今日もソニアは、朝からずっと恋愛シミュレーションゲームをプレイしている。

 そして、ラムリーザは気付かれないように、ソニアの座っているソファーの後ろから見ていた。それに気が付かないぐらい、ソニアは熱中しているのだ。

 よく見ると、ソニアはゲーム内で何かイベントが起きるたびにメモ書きをしている。そのメモに書かれていることを見てみると、やれ「電話ボックスで雨宿り」だの「膝の裏にキスをねだる」だの書かれていた。

 それは何やら見に覚えのある内容だったりする。

 

「気になってたから、しばらくそのゲームに見てたけどさ」

 ゲームのエンディングスタッフロールが流れて、エピローグが語られる。もじゃもじゃの髪の毛をした女の子と、ハッピーエンドを迎えたようだ。

 そこまで見終わってからラムリーザは呟いた。

 驚いたように振り返るソニア、やはり見られていることに気がついてなかったようだ。

「ちょ、ちょっと、見ないでって言ったのに!」

「あのさ、ひょっとしてここ数日、そのゲームのイベントを現実でなぞってた?」

「え……、あ……、その……」

 核心を突かれたのか、ソニアはあからさまに狼狽する。

「そこのメモ、『膝の裏にキス』とか書いてるし、それこないだ僕にやらせたよな? まさか次はヘソにキスさせるとか言い出さないよな?」

「あぅ……」

「何がしたいわけ?」

「それは……、ミニゲームクリアして、そのご褒美に萌えイベントが起きるのよ。そしたら女の子との仲がよくなるのよ。だったらそれを実際にやったら、ラムも喜ぶんじゃないかなーって……ね」

 ソニアはあたふたとした感じで答える。目がきょろきょろとしていて落ち着かない。

 ソニアは喜ぶんじゃないかなと言うが、ラムリーザはここ数日間ソニアの奇行に戸惑うばかりだった。

「それで、そのゲームの目的は何?」

 ラムリーザは先程エンディングまで見ていたので、一通りは理解しているのだが、あえて問う。

「……告白して恋人同士になること」

 恥ずかしそうに目を伏せて、つぶやくようにボソッと答える。

「あのさぁ……」

 ラムリーザはため息をついた。

「告白したし、お前も受け入れたじゃん?」

「え? あ……」

「お互いの親とも話をしたし、お前とは結婚前提の付き合いしているんだけどな」

 やはり表向きに取り繕うとするためだけの告白になってしまい、付け焼き刃の関係にしかならなかったか……とラムリーザは内心舌打ちする。

 

「一緒に起きて、一緒に登校して、一緒に授業受けて、一緒に部活行って、一緒に音楽やって、一緒に下校して、一緒にご飯食べて、一緒にくつろいで、一緒に寝て、時々一緒に出掛けて」

 

 ラムリーザはそこまで一気に言い、再びため息をつく。

「これ以上何が必要なんだ?」

「あぅ……」

 ソニアは俯いてしまった。

「お前は何が不安なんだ?」

「だって……だって、リリスもユコもすごい美人だし……」

「…………」

「ラムが目移りするんじゃないかなって思って……」

 やはりそうだったか、とラムリーザは一人納得した。そういえばソニアの様子が不自然になっていったのは、リリスとユコの二人と知り合ってからだったと思い返す。勝手に一人で嫉妬して不安になって暴走していたのだな……と。

「確かにお前の言う通りあの二人は美人だ。だがな……」

 ラムリーザは、ソファーに座っているソニアの隣に移動して肩に手をやって言葉をつづけた。

「お前もあの二人に劣らず可愛いよ」

「で、でも……」

「僕がそう言ってるんだけど、信用できないのかな?」

「…………」

 ソニアのうつむいた目から涙がこぼれた。

「ごめん……ね」

「ほんと、しょうがないなお前は」

 

「あのね、ラム……」

 少し間を置いて、ソニアは迷うような仕草を見せてつぶやくように聞いてきた。

 何かを言い出したいけど、言えないような感じだ。

 しばらく迷った後で、口を開いた。

「ラムは、どうしてあたしのこと好きなの?」

 言ってから、聞いてしまったとでも言いたげな顔をする。

 ラムリーザは「ん?」と思った。まだリリス、ユコ不安が解消されていないのか? と。

  だから、安心させるために優しく語った。

「そうだなぁ、お前と居るのはもうあたりまえな事、自然な事。ただ、そのあたりまえを壊したくないから、こうして一緒に居る。……あれ、これは好きな理由になるのか?」

 ラムリーザは言ってみてから改めて考えてみる。どうして好きなのだろうかと……。

 顔か?

 いや、顔で選ぶなら、リリスやユコでもいい。

 ならば何だ?

 ソニアの特徴と言えば、大きな胸だ。

 だが、胸が大きくなるまえからも一緒に居た。

 そして、胸が大きくなったから好きになった、という感情は無かった。

 大きくなる前も、大きくなった後も感情は変わっていない。

 ならば、健康的な脚か?

 いや、脚が好きだというのも変な話だ。

 そもそも、こうして寄り添って立っていることが多いから、脚は視界にほとんど入らない。

 緑色が好きなラムリーザだ。

 そして、ソニアの髪の色は青緑色である。

 それがいいのだろうか? と思うが、決定打としては弱いと思う。

 髪が青緑色だから好きなのか? と言われたとしても、そうだとは即答できないだろう。

 たとえソニアが金髪だろうが、黒髪だろうが、変わりないと思う。髪の色など、記号でしかないのだ。

 そもそもラムリーザは、ソニアに対して分かりやすい女の形というものを求めていなかった。

 料理は料理人が作り、掃除洗濯裁縫などはメイドがやってくれる。そういう環境でこれまで生きてきたのだ。

 結局のところ、結論がわからなくなってしまい、

「理由はわからん。わからんが好きだ。お前と居ると楽しいし、お前が居ないとつまらない」

 そう答えるしかなかった。

 それを聞いたソニアは、一応好きだと言ってくれたので、少しは嬉しそうな顔をする。

 だがもう一度聞いてきた、今度は少し言葉を変えて。

「あたしのどういった所が好きなの?」

 妙に深掘りしてくるな、とラムリーザは感じた。だが、深く考えたことも無かったので、今日みたいな日にはじっくり考えてみるのもいい気がした。

 どういったところか……。

 ソニアはとにかく可愛いのだ、とラムリーザは真っ先に思った。

 美味しい物を食べるときの幸せそうな顔、何か買ってあげたときの喜ぶ顔、ゲームをやっている時の楽しそうな顔、夜腕の中で寝ているときの安心しきったような寝顔。

 何もかもが可愛かった。

 そういった分かりやすい感情表現が好きだった。

 また何か食べさせてあげよう、何か買ってあげようという気になれるのだ。

「…………」

 頭の中には思い描いたが、この時は言葉にはしなかった。

 黙っているラムリーザを見て、ソニアは恐る恐ると言った感じで聞いてきた。

「じゃあラムがあたしにこうなって欲しいっていう要望ある? こんな女になって欲しいとか……」

 最後に付け加えた言葉は小声になっていた。

 それに関しては、ラムリーザは常日頃から思っていることを素直に言った。

「僕はソニアに幸せになって欲しいと思っているんだ」

 ソニアは満面の笑顔で答えた。

「うれしい……ありがとう」

 そう言って、ラムリーザの胸に飛び込んできた。

 ラムリーザはソニアをしっかりと抱き寄せ、唇を合わせた。

 もう一度やり直しだ……と言わんばかりに。

「それじゃあ、今夜は二人の関係をさらに一歩進めるか」

「進める?」

「うん、だから服を脱いで」

「あ……」

 

 この夜、二人は一線を越えた。

 
 
 
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