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雑談部の日常、ファンタジックな家庭環境は如何ですか?

 

 今日も部活は、雑談部絶好調だ。

 演奏はまったくやらず、ソファーでみんな輪になって雑談している。

 部室内は、入り口から入ってすぐ左手にテーブルがあり、四つの椅子が用意されている。ここは大体、鞄などの荷物置きに使われることが多い。

 テーブルの隣、部屋で言えば中央にソファーが置かれていて、それは二人掛けと一人掛けがそれぞれ向き合って、背の低いテーブルを囲むように設置されている。

 テーブルの隣の壁際には、ピアノがあり、その隣にドラムセットかある。

 そして、そのドラムセットと向き合う形で椅子がいくつか置いてあり、そこで練習することになっている、はずである。残念ながら最近は……。

 そして、入り口から見て奥側の壁際は、一段高くなっていて簡易ステージとして使われている。

 これが、部室のおおまかな配置だ。

 これだけ設備が整っていながら、今日は、ラムリーザ、ソニア、リリス、ユコの四人は、部屋中央のソファーで雑談しているだけなのである。

 二人掛けのソファーに、それぞれラムリーザとソニア、リリスとユコが座り向き合っている。

「ねぇ、ソニアの家族ってどんな感じなのかしら?」

 この日リリスが振ってきた話題は、家族関係についてであった。

 リリスとユコ、ラムリーザとソニアはお互いによく知った関係であるが、それ以外となると、この学校で初めて会った仲なので知らないのだ。

 ソニアは、話してもいいのかなぁって感じの表情で、ラムリーザの方をちらちら見て顔色を伺いながら語り始めた。

 「えーと、父はフォレスター家の執事、母はフォレスター家のメイド、兄弟姉妹は居ない、一人っ子よ。これでいい?」

「執事とメイドの娘って、何だかゲームの設定みたいですわね」

「事実なんだからしょうがないじゃないの!」

 茶化すユコに、むきになって反論するソニア。

「ふーん、そしてそのフォレスター家ってのが、ラムリーザの家ってわけね」

「よくわかったね」

「あなた、ラムリーザ・フォレスターでしょ? やっぱりお金持ち?」

 ラムリーザは、大っぴらに公表してよいものかと考えたが、特に隠す必要もないので、ソニアに続いて語った。

「父はラムニアス、この名前は聞いたことあると思うけど、帝国宰相ね。兄のラムリアースは帝国書記官。この二人は城に住んでいて、ほとんど帰ってこないんだよね。母はソフィア、今は帝都の屋敷で特に何もしてないけど、来年から新開地の領主になる、と言っても僕が成人するまでの代理って名目だけどね。最後に妹のソフィリータ、帝都の中学に通っているけど、来年からどうするかは知らない。そんなところかな」

「…………」「…………」

 リリスとユコの二人は、引きつった顔で黙り込んでしまった。

 ラムリーザが、「ん? どうしたの?」と聞くと、二人は困ったような笑顔を浮かべて言った。

「えっと、ん、ちょっと、その……ね、なんというか次元が……」

「……違いすぎますわね、なんと言うか、何と言ったらいいか……あはん……」

 ユコが悶える仕草を見せる。

「そんな人が、なぜこんな地方に?」

「んー、さっきの話で少し出てきた話だけど、そんなに複雑なことじゃないんだよね」

 ラムリーザは二人に、領主として新開地の開発をするためにやってきたことと、早ければ来年からその新開地に住むことになっている話をした。だから、最初からこっちの学校に通っておこうということになったことも付け加えておいた。

「で、リリスとユコは?」

「ああ、私達の親は普通の会社員ですわ」

「あなたたちみたいな、ファンタジックな家庭環境じゃないから、深く聞いても面白くないと思うわ」

「あれ、そういえば……ちょっと待ってください」

 ユコは、突然何かに気がついたのか、ラムリーザとソニアの顔を交互に見ながら言った。

「ソニアはラムリーザさんの家の執事とメイドの娘ってことは、幼馴染?」

「そうなるね」

「ふーん、それでいつも一緒に居るんですのね」

 ユコは、何か思うところでもあるのか、じっとソニアを見ていて、リリスの方は、ふぅとため息を吐いて、遠くに視線をやった。

 

 しばらく経ってから、今日は珍しく部長のセディーナが部室にやってきた。 

「あ、セディーナ部長、お疲れ様です」

 ラムリーザは、内心は少し気まずい思いを隠しながら、定番の挨拶をしておく。

「こんにちは。あなたたちはよく集まっているけど、活動に熱心なのね」

 ソニアとリリスとユコは、「こんにちはー」と言いながら、何やら得意げな顔をしている。

 活動に熱心なのねと言われてうれしいのか? と思いながら三人を見るラムリーザは苦笑する。こいつら雑談しかしてないよ、と言いたくなるのを押さえて、それこそが先程感じた気まずさなのだということを認識していた。

 実際はラムリーザ自身も何もしていないのだが、ソニアが活動しない以上、自分は特に何もしなくてもいいかな、とか最近思ったりしているのだが。

「まぁ、こいつら暇ですから」

 だから、ラムリーザは適当に答える。

「忙しくなるのは、文化祭とかのイベントの時になるから、その時はがんばってもらいますよ」

 セディーナの言葉にラムリーザは、その時までにこいつら残っているのかな、と考える。

 というよりも、部長が来たというのに三人は雑談を止めようとしない。

 先週先輩達が来たときは、形だけでも活動していたというのに。もうどうでもよくなったか、セディーナが女だから舐めているのか?

「部長は今日は珍しいですね」

「たまには弾きたくなるのよね」

 そう言うと、セディーナはギターを用意して、空いている一人掛けのソファーに座った。そして一人で弾き始める。

 今日も、まったりとした、そして生産性のない時間がただ過ぎていくだけであった。

 

「ああそうそう、ソニアにこれ渡しておくね」

「んー? 何?」

 ユコが鞄から取り出したのは、数枚の用紙、楽譜だ。

「紹介してくれたギャルゲーのエンディングテーマですわ。結構良い歌ですのね、どんなゲーム内容なのかしら、ラムリーザさん」

「なんで僕に振るんだ君は……」

「だってプレイしたのはあなたでしょ?」

 そういえばそうだった。リリスやユコの間では、ソニアが勝手に話を作り上げたためにラムリーザがプレイしたことになっているのだ。

「ラム、あたしも聞きたい」

 ソニアも白々しく聞いてくる。

 そこでラムリーザは、知っていることだけ適当に答えることにした。

「えっとね、膝の裏舐めたり、階段で壁に背中擦り付けながら降りたり、電話ボックスで雨宿りするためにわざわざ出掛けたり……、あとこれは未遂だけどヘソ舐めたり?」

「なんだかわけがわからない、というか気味が悪いですわね……。ほんとうにギャルゲー?」

「ラム! そんなのじゃないよ!」

「じゃあ知ってるならソニアが説明しろよ」

「むー……」

「ああでも――」ユコは何かを思い出したかのように言った。「――移動教室のときに、ソニアがよく壁に背を擦り付けながら階段を下りるのは見ましたわ」

「ユコも見たか、あれ何?」

 ラムリーザとユコは、ソニアの顔を覗き込んで尋ねる。

「変なところ観察しないでよ! 階段の下り方ぐらい、好き好きでしょ?!」

 ソニアは顔を赤くして、怒ったように大声で答えてきた。

「それはあれでしょう?」

 そこで、これまで黙っていたリリスが口を挟んできた。そして、部室に転がっていた用途不明の細い棒を、ソニアの大きな胸に押し当ててきて、「これのせいでしょ」と言った。

「なっ、ばっ……!」

「ん?」

「んん?」

「よっ、余計な詮索しないでっ!」

 ソニアはさらに顔を赤くして立ち上がり、その場から逃げ出すように部室の入り口に向かって駆け出していった。

 そして、部室の入り口にある段差に足を引っ掛けて、頭から部室の外に飛び出していったのであった。

 
 
 
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