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ネットゲームをやろう その三 ~ゲームの世界が現実になってるぞ~

 

 この日もラムリーザが目覚めたとき、ベッドにソニアは居なかった。

 ということは、またテーブルに突っ伏しているわけ――ではなかった。今まさに携帯型の情報端末キュリオのゲーム真っ最中であった。

 目は昨日よりも充血していて、目の下にはくままでできている。ひょっとして完徹達成だろうか?

 この状況を見て、ラムリーザはさすがにヤバイだろ……と感じ、何か対策を打たなければならないと思ったのであった。

 

「…………」

 教室にリリスとユコがやってきたとき、二人の姿を見てラムリーザはため息を吐いた。

 二人とも同じように目の下にくまをつくり、目は真っ赤だ。もともと赤い瞳のリリスは、それはもう恐ろしい雰囲気――吸血鬼?――になってしまっている。

 髪は昨日よりもさらに乱れ、ますます残念な状況になっている。ソニアと同じく、完徹達成したのだろうな。

「お前の女含めてあいつら、えらくやつれてないか?」

 リゲルも三人の少女達の異変に気がついたようだ。

「ちょっとゲームにはまりすぎているようで……」

「ネトゲか?」

「うん」

 そこで、リゲルは馬鹿にしたようにふっと小さく笑って言葉を続けた。

「あんなの金出しておけばそれだけで強くなれるんだがな。それか、狂ったように時間かけてプレイするかだな」

 おそらく三人は――ソニアに関しては知っているけど――それほどお金は持っていない。

 ということはリゲルの言った後者で、一日中寝る間も惜しんでプレイしているということだろう。やはり完徹達成間違いなしだな。

 これは止めさせなければならんな……とラムリーザは思う。だが、ここまではまっているのを止めさせるのは難しいだろう。

 しばらく考えて、そういえば一週間後に一番勝った人が好きなこと命令できるみたいなことを行っていたことを思い出した。

 仕方ない、このゲームに参入して、こいつらに勝って命令権を獲得して……とラムリーザは考えて言い出してみた。

「なあ、一週間後に一番勝った人が何でも命令できるってのに、僕も参戦してもいいかな?」

「もちろん」

「ラムリもやるべき」

「歓迎しますわ」

 ゲーム画面を見たまま短く答える三人。これで参戦は許された。

 さてと……というわけで、ラムリーザもゲームの準備をして立ち上げてみた。

 このゲームは、古代大陸の物語をモチーフにしたMMORPGで、三国志の名将や、封神演義の登場人物も登場して、共に戦うことができるゲームのようだ。そして、これらのキャラクターから五人選んで陣形を組み、その強さを競い合うという流れである。

 三国志か……。ラムリーザは、そのタイトルのファンタジー小説を知っていた。

 ラムリーザは、とりあえずキャラクター「ラムリーザ」を作成してゲームを開始した。

 主人公は星官という天の使いになり、四つの道派――職業――から選択することができて世界を救うという設定のようだ。

 ラムリーザはしばらくチュートリアルを進めていく。それに伴いレベルも上がって行くようだ。

 さらっとやってみた感じ、至って普通のゲームだ。

 これのどこに寝る間も惜しむような要素が発生するのだろう、と思いながらプレイして行くと、なんとなく原因になっているだろうと思われるシステムに気がついた。

 何かのクエストをこなしたり、迷宮に入ったりすると、経験値が入ってレベルが上がるのだが、同時に行動力が減っていくのだ。

 クエストの方は一日にできる回数が十回と決まっているようで、迷宮は何度でも入れるようだ。

 だが、行動力が無くなると何もできなくなってしまう。

 そしてその行動力は、数分おきに一ずつ回復しているようだ。

 ただ、モンスター狩りは延々とできるようだが、クエストや迷宮よりも獲得経験値は低めだ。

 つまり、行動力回復を待ちながら、ひたすらモンスター狩りをしてレベルを上げているのだろう。

 そして勝負事を決めてしまったために、三人ともムキになってレベル上げをしているということなのだ、とラムリーザは考えるに至った。

 

「ラムリーザ、キャラ名は何?」

 唐突にリリスがボソッと尋ねてくる。

「ん、同じ名前でラムリーザでやっているけど」

「そう、分かったわ」

 何のことだ? とラムリーザが思っていると、ゲーム画面にメッセージボックスが立ち上がった。

 

 

[リリスが同盟「魅惑の壷」に招待しています]

 

 

 魅惑の壷?

 ラムリーザはよく分からなかったが、とりあえず「参加する」をクリックしてみる。

 すると、左下のメッセージボックスに『システム:ラムリーザが同盟「魅惑の壷」に参加しました』と表示されているのに気がついた。

 そして、続けて流れるようにメッセージが表示されていく。

 

 

リリスの発言:ようこそ

ソニアの発言:ラムに命令できるの楽しみw

ユコの発言:覚悟するよろし^^

リリスの発言:あ、きれいに職業わかれたね

ユコの発言:おもしろくなってきたなり^^

ソニアの発言:もう少し名声貯まれば次の名将取れるのになぁ

 

 

 三人は昨日からほとんど会話が無かったが、どうやらゲーム内の会話システムで会話していたようだ。

 同時に三人からフレンド申請が飛んできたので、ラムリーザは承認ボタンを押していた。

 次に、コマンドに同盟ボタンが増えたので、クリックしてみると、以下のようなリストが表示された。

 

 

同盟名 魅惑の壷

リリス    レベル52 名声61335 同盟長

ソニア    レベル52 名声59845 メンバー

ユコ     レベル52 名声58875 メンバー

ラミア    レベル28 名声7345 メンバー

ラムリーザ レベル16 名声2630 メンバー

 

 

 同じ同盟のメンバーが表示されるようで、これで三人のキャラクターがわかった。

 

 ソニアの選んだ道派は剣技を得意とする玄宗道。物理防御や体力の高い戦士タイプだ。

 リリスが選んだ道派は弓道を得意とする凌弓道。物理攻撃やスキル攻撃が豊富なトリッキータイプだ。

 ユコが選んだ道派は回復を得意とする東皇道。能力は平均的だが、回復スキルの使える唯一のヒーラータイプだ。

 それでラムリーザが選んだ道派は妖術を得意とする天機道。属性攻撃と属性防御が高い魔術師タイプである。

 

 その時ラムリーザは、見慣れない名前がメンバーにあるのに気がついた。

「ラミアって誰だ?」

 口に出して聞いてみる。

 

 

リリスの発言:それ私のサブw

ソニアの発言:あたしもサブ作ろうかなー

 

 

 しかし、ゲーム内の会話メッセージで返事してくるのであった……。

 頼む……こっちの世界に戻ってきてくれ……と思い悩むラムリーザであった。

 

 夜、部屋に戻ってきてからのソニアは、昨日と同じであった。

 ラムリーザはこの悪い流れを断ち切るためにいろいろと考えていた。

 普通にやっていたのでは、寝る間も惜しんでプレイしている三人には勝てないだろう。

 さてどうするべきか……かと言って、自分も同じようにプレイする気はなかった。

 

「おーい、そろそろ寝るぞ」

 とりあえず呼びかけてみたが、今夜は返事すらなかった……。

 
 
 
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