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マイン・ビルダーズ前編 ~魅惑の壷再び~

 

「今日発売のマイン・ビルダーズってゲーム、おもしろそうよ」

 ライブ前日、今日も休み時間にゲーム雑誌を広げて、ソニア、リリス、ユコ、ロザリーンの四人はゲーム話に花を咲かせていた。

「みんなで世界を共有して、戦うもよし、狩をするもよし、家作りに生産もできるサンドボックスゲーム。なんかいいね」

「でしょ? みんなでやろうよ」

「賛成!」

 女の子たちは盛り上がっている。ソニア、リリス、ユコは言わずもがな、ロザリーンもゲームで遊んだりしている娘だったのだ。

「ちょっと待て――」

 だがラムリーザは、嫌な予感がしてそんな彼女らの盛り上がりに水を差した。

「――みんなでやるって、それはネットゲームか?」

「サンドボックスゲーム」

 リリスは、じっとラムリーザの目を見つめて、自信満々な感じで言った。

 その表情を見て、ラムリーザは止めても無駄かと思って諦めたように言い放った。

「んー……まあいい。もしまた前の時みたいになったら、僕はもう止めない。君達とは絶交、ラムリーズも解散だ」

「ラムリーザ様、私達も馬鹿じゃありませんわ、普通にプレイしますの」

「信じるぞ。あとソニアもだ。ゲーム廃人と一緒に暮らす気はないから、そうなったらすぐに寮へ転入させるからな」

「ならないってばー、それよりもラムもやろうよ、ねー」

「またキュリオか……、前みたいになったら本気でキュリオ封印だからな」

 そこに、リリスがゲーム雑誌をラムリーザの方に見せてくる。

「このゲームは、ゲーム機でやるゲームよ」

「ああ、それなら部屋に一つあるね。帰ってからやればいい」

「一つじゃ二人でプレイできないでしょ?」

「ん……」

 そこでラムリーザは気がついた。

 確かに部屋には一つ、ソニアが持ち込んだゲーム機がある。だが部屋に住んでいるのはラムリーザとソニアの二人。二人に対してゲーム機は一つ。これは……。

「もう一個、ゲーム機とモニター買ったらいいと思うよ!」

 ソニアが無茶苦茶だが、それしか方法が無いことを言った。

「今日学校終わったらゲーム屋に行こうよ。ゲームはみんな買わなくちゃいけないしー」

「家に同じゲーム機が二台あるって、どういう状況だよ……あ、そうだ。リゲルもやろう」

 ラムリーザはふと思いついてリゲルも誘ってみる。彼女達が暴走した時に、ラムリーザ一人で押さえるのがめんどくさいので、リゲルにも緩衝材になってもらうことにしたのだ。

 ロザリーンはたぶん大丈夫だと心配していないが、残る三人は前回のこともあって一緒にゲームをさせるのは怖いところがある。

「は? 俺が?」

「折角だし、リゲルもゲーム好きだとか言ってたじゃないか」

「ゲームはやるけど、何でこいつらと?」

「まーまー、そう言わずに監視でいいから手伝ってくれよ、このとおり!」

 ラムリーザに頭を下げられて、リゲルはしぶしぶ自分も参加することにした。

 そして一言、「領主になるやつが、軽々しく頭下げないほうがいいぞ」と忠告めいたことを言うのであった。

 

 

 放課後、六人は揃ってゲーム屋に向かっていた。

 演奏の練習は? という話も上がったが、もう十分やったし、あとは本番の日を待つだけという状況に到達していたので、息抜きも必要だろうという結論になったのである。

 ゲーム屋では、みんな「マイン・ビルダーズ」のソフトを購入。それに加えて、ラムリーザはモニターとゲーム機を購入した。

「なんというか、ソフトも同じものが二本あることになるんだな……」

「ラムリーザ様がお金持ちで助かりますわね」

「ユコ、あんた様付けずっと続けるの?」

「当然ですわ、何度も言うけどラムリーザ様は私の尊敬する方ですのよ!」

「くっ……、ラム様……、違う……」

 ユコの剣幕に押されてソニアも様付けしてみようと思ったが、どうやら馴染めないように口ごもる。

「あ、そうそう。ヘッドセットも買っていってね」

 そうリリスは提案してきた。

 ヘッドセットを使えば、ゲームをしながらリアルタイムで会話のやりとりができるというのだ。

 リリスとユコはすでに所持していて、よく使いながらいっしょにゲームやっているというのだった。

 幸いまだ持っていなかったのが金持ち組みだったので、追加で買うのには不自由しなかった。

「ラム……ヘッドセット買うお金が無い……」と思ったが、一人だけ庶民がいたようだ。

 結局ラムリーザはソニアの分のヘッドセットも買うことになってしまった。たかが一本のゲームをやるために、何をこんなに買い込んでいるんだろう……と思いながら。

 

 

 みんなと別れて、ラムリーザとソニアは下宿先の自室に帰ってきた。

 そしてラムリーザは、モニターとゲーム機を、テーブルにセットする作業に取り掛かった。そこは食卓テーブルなのだが、食事時は下宿先にある食堂を使っているので、普段部屋で食事をするためには使っていないのだ。

 しばらく経ってセットが完了し、ラムリーザがゲームの説明書を眺めていると、ラムリーザとソニアの携帯型情報端末キュリオが同時になった。

 見てみると、リリスからのメールだった。

 

差出人:リリス

宛先:ソニア、ラムリーザ、リゲル、ロザリーン

件名:コミュニティ

内容:ネットにつないだら、コミュニティ「魅惑の壷」に参加してね(^ー゚)ノ

 

「……また魅惑の壷か」

 ラムリーザは前回やったゲームの同盟を思い出して顔をしかめる。

 それでも過去のことを蒸し返しても仕方ないので、ゲーム機を立ち上げコミュニティに接続することにした。

「えーと、魅惑の壷魅惑の壷……ったく、怪しい壷売りじゃあるまいし、なんで壷なんだよ……ってあった、コミュニティ申請っと」

 ぶつぶつとつぶやきながら、コントローラーで操作しているラムリーザ。

 

[ラムリーザ・フォレスターがコミュニティ 魅惑の壷 に参加しました]

 

 しばらく経って、このように画面に表示された。

 そして、画面に表示されている音声チャットを有効にすると、すぐにヘッドセットから声が聞こえてきた。

 

『ラムリーザってやっぱりフォレスターなんだね』

『さすがラムリーザ様ってところですわね』

 

「えーと、これでいいのかな? 聞こえているかな?」

 

『あ、ラムリーザようこそ』

『お待ちしておりましたわ』

 

 どうやら通じているようだ。

 電話みたいなものだな、とラムリーザは思った。

 

[ロザリーン・ハーシェルがコミュニティ 魅惑の壷 に参加しました]

[ソニア・ルミナスがコミュニティ 魅惑の壷 に参加しました]

 

 しばらくして、画面に次々とコミュニティ参加者が表示されていく。

 

『後はリゲルさんだけですわね』

『みなさんごきげんよう』

「よろしくねー」『よろしくねー』

 

 ソニアだけ、ヘッドセットからの言葉と同じ部屋から聞こえる言葉が重なって、なんか妙な感じに聞こえる。元々の声が高く響くのでなおさらだ。ラムリーザの位置からだと、テーブルのすぐ前にあるソファにソニアは居るので、両方から声が聞こえるのだ。

 リゲルは果たして来てくれるかな、とラムリーザは考えていると――

 

[リゲル・シュバルツシルトがコミュニティ 魅惑の壷 に参加しました]

 

 ――と表示された。

「これで全員集合だよ!」

 とソニアが元気よく叫ぶ。そしてすぐにリゲルの舌打ちが続けて聞こえる。

 

『なあ、これは個別に音声のボリューム調整できないのか?』

『どうするんですの?』

『ソニアの音声小さくする』

「なんでよ!」『なんでよ!』

『うっせーな、もっと静かにしゃべれ……』

「むー……」『むー……』

「揉めてないで、早速ゲーム開始するぞ」

『おー』『おー』『おー』『おー』

 

 娘たちの元気な掛け声とともに、「マイン・ビルダーズ」を開始するのであった。

 
 
 
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