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最低ラインはRカップ、なんだみんなちっぱいじゃないか

 

 この日の朝、ラムリーザは自動車教習合宿の自室で、ソニアと共に目覚めることになった。

 普段から同棲生活しているので、今更どうこういうことでもないのだが、合宿の寮でもこのようにしているのがばれてしまったら、何を言われるかわかったものじゃない。

 もっとも、寮の規則に「他の部屋に行ってはならない」だの、「一人で眠らなければならない」などというものは無かったので、いろいろと言い訳はできるだろう。

 それでも、朝から同じ部屋から男女が姿を現すのを見られるのは、あまりにも決まりが悪いので、まずラムリーザが部屋から出て、廊下に誰も居ないのを確認してからソニアを部屋から出す、という方法を取ったのである。

 そして、朝食を取るために食堂に行ったのだが、先に来ていたリリスに「示し合わせたように、一緒に現れるのね」と言われてしまった。

 ソニアは、それに対して「愛し合っている二人は、いつ何時も一緒に居るものなのよ」と勝ち誇ったように笑みを浮かべて言い返す。

「ふーん、それで昨夜も一緒に寝たのね?」

「そんなの当ぜ――」

「おほん!」

 ラムリーザは盛大な咳払いで、リリスの誘導尋問に引っかかりそうになったソニアを制する。

 自分からばらしてどうするのだ……。咳払いする地点で怪しさ全開でもあるが……。

「なるほどね」

 リリスは、全てを察したような感じで頷いた。

 そして、特に何も考えず、なんとなくソニアの全身をしげしげと観察する。その目は足元で止まることとなった。

「また靴下をだらしなくグシュグシュに履いてる……って、それって学校の制服の靴下じゃないの? なんでそんなチグハグなコーデなのよ……」

「だってラムが……」

「ああ、そのことが昨日バスの中で言ったことに繋がるんだ。こいつ、学校の運動靴と制服の靴下しか持ってないんだよ。だから、こいつにカジュアルな足元コーデを選んでやってくれって話」

「そういうことね。その時はあなたも付き合うのよ」

 リリスはふっと微笑を浮かべてラムリーザを誘ってきた。

「いや、僕はちゃんとしたのがあるから……」

「お代と荷物持ち」

「……はいはい」

 そんな話をしながら、朝の時間は過ぎていった。

 

 

 この日の教習も、授業と技能訓練をいろいろあり、すべて終わった後でラムリーザ達六人は、談話室でくつろいでいた。

 談話室には、三人掛けのソファーがローテーブルを挟んで置いてあったので、みんなでそこに陣取って談話していた。リゲル、ラムリーザ、ソニアと、ロザリーン、ユコ、リリスの並びで座っている。

 車の運転についての感想から始まり、今話題のゲームについての話と続く。まるで雑談部をそのまま持ち込んだような雰囲気だ。

 途中、ラムリーザとソニアがトイレ休憩と言って抜け出した。

 ソニアは、「これは連れションだからね、あたしが出てくるまで先に戻っちゃダメだからね」とか言い出す。何がやりたいのか分からないが、ラムリーザを待たせることとなる。

 トイレから談話室に戻ると、リゲルの姿が消えていた。

 ロザリーンに聞いてみると、個室に戻っていったということだそうだ。

「それで、ソニアは能天気爆乳娘かな? くすっ」

「なっ、なによそれ」

 ソニアは、突然訳の分からない呼び方をされて戸惑ったようだ。その一方で、ラムリーザはあながち間違いではないなと、一人納得をしていた。

「えーとね、ユコが神秘的な女神で、私が魅惑的な黒髪の美女」

「そしてロザリーンが、知的なインテリジェンスガールですわ」

「ふーん、略して知女?」

「その略し方は微妙だから止めてください」

「で、それが何なの?」

 いまいち話の流れが理解できないソニアは、不満そうな顔で三人を見ている。いきなり爆乳娘とか言われたので、あまりいい気はしていないようだ。

「えーとね、みんなの特徴やイメージから『二つ名』を考えていたの。それでソニアは、能天気爆乳娘ってこと、くすっ」

 それでようやく話を理解したソニアは、とたんに怒りの表情をあらわにして叫びだす。

「何よ! 何であたしだけそんな変な二つ名なのよ! あたしがそれだったらあんたたちはみんな『ちっぱい』でいいじゃないのよ!」

「はいはい、Jカップ様のお通りだ、邪魔する奴は突き飛ばせ」

「くっ……、ラ、ラムもそう思うでしょ?」

 ラムリーザは、そこで振るなよと思った。ちっぱいがどうのこうのとか、正直どうでもいい。

 というより、先日ジャンも指摘していたけど、リリスは全然ちっぱいじゃない。ソニアがでかすぎるだけ。ユコとロザリーンは……ふむ……。いや、ちっぱいとか言うのって失礼じゃない?

 そこでラムリーザは、めんどくさくなって適当に答えることにした。

「僕から言わせてもらうと、ソニアも含めてみんなちっぱいだ」

 リリスは、それを聞いて「ぷっ」吹き出してしまう。ユコも、ごそごそと自分の鞄から何かを取り出そうとしている。そしてロザリーンは苦笑いしているだけだ。

 一方ソニアは、何とも言えないような情けない顔をして、弱弱しくラムリーザに問いかけてきた。

「じゃあ……ラムはどのくらい胸があったらいいのよぉ……」

「Jカップで足りないって言うのだから、それこそLカップとかOカップとか、そのくらい必要なのじゃないの?」

 リリスは、ソニアの顔をニヤニヤした目で見ながら話を盛ってきた。

「めんどくさいなー。おっぱいがJとかFとかKとかどうでもいいじゃないか、カップなんか知らんよ……それだったらもう、ラムリーザのRにちなんでRカップでいいよ」

 ラムリーザは、さらに適当に答えたが、リリスとユコの二人はそれを聞いて「Rカップ!」と吹き出した。

 そしてリリスは、「ちょっと待って、計算するから」と言いながら、目線を上にやって頭の中で計算して、それから笑いを堪えながら言った。

「Rカップ、R65だとして、大体118cmってところかしらね。ソニアは確か98cmだったから、ラムリーザの基準に20cmも足りてないわ。うん、確かにあなたもちっぱいだね」

「ソニアも豊乳丸飲みます?」

 ユコが鞄から取り出して差し出してきたのは、例のバストアップサプリだった。

「ふっ……ふええぇぇん……」

 とうとうソニアは泣き出してしまった。

 もちろん冗談の話とは言え、ソニアが誇っていたバストサイズ最強と言ったアイデンティティーが崩壊してしまったのだ。

「あ、泣いた」

「やれやれだ……」

 ラムリーザは、泣き出したソニアを抱き寄せて、頭を胸にうずめる。ソニアは、ラムリーザの胸の中で、ぐすっぐすっとしゃくりあげている。

 そして頭を撫でながら、「お前はおっぱいだけじゃないだろ、足とかも奇麗なんだし」と慰めてあげる。

「足ねぇ……」

 リリスは、ソニアの足をじっと見つめた。そしておもむろに手を伸ばし、すねの辺りまででグシュグシュになっている靴下を、引っ張って持ち上げようとした。

「やっ、やめてよ!」

 ソニアは足を引いて、リリスの手から逃れる。そして、ぎゅっとラムリーザにしがみついた。

「ソニア……」

 その時、ユコが優しい口調で語りかけてきた。

「あなたの二つ名、思いつきましたわ」

「何よ! また変なのだったら、もうあんたたち嫌い!」

 ユコは、にこっと笑って言葉を続けた。

 

「グリーン・フェアリー」緑の妖精――

 

 それは、以前ラムリーザがソニアに抱いたイメージと同じ名称だった。

「どうです? お気に召しましたか?」

「グリーン・フェアリー……?」

 ソニアは、もう一度自分で復唱してみる。そして、「グリーン・フェアリー、かわいい!」と声を張り上げて、突然元気なった。さっきまで泣いていたのが嘘のようだ。

「ちなみに、僕のイメージは?」

 ラムリーザは、ついでにって感じでなにとなく聞いてみた。

「ラムリーザ様? えーと、自治領主様?」

「いや、いい……、聞かなかったことにする」

 どうやらユコの中で、ラムリーザは実像と異なった独自のイメージが作り上げられてしまっているようだ。

「今度、皆さんをイメージした音楽を作ってみるのもおもしろいかもしれませんわね」

「うんっ、それおもしろそう!」

 ソニアはユコの提案に喜ぶが、妙なイメージを持たれてしまっているラムリーザは、何ともいえない気分になってしまった。自治領主様をイメージした曲か、想像付かないね。

 

 しばらくして、そろそろ時間も遅くなってきたので、みんな雑談部を切り上げて自室に戻ることにした。

 ラムリーザが、自室で寝る時間までのんびりして、そしてそろそろ寝ようかなと思ってベッドに横になり、スタンドの電気を消そうとしたとき――。

 予想通り今夜もドアが開いて、ソニアが姿を現したのであった。

 昨日と違って戸惑いは見せずに堂々と。しかも、荷物を持ち込んできたのである。

 ラムリーザの部屋に住み着く気満々でありますな。

 
 
 
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