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自動車教習合宿のために、いろいろとすっぽかしてますなぁ

 

 自動車教習合宿では、週末もみっちり教習があって、週末も平日と変わらない日々が続いていた。早く、そして効率よく終わらせるために、集中的に講義、実技を行っているのだ。

 そういうわけで、ラムリーザ達は同じような日々を過ごしていたのであった。

 

 この日の昼休みも、いつものメンバーでいつもの食堂に集まって談話していた。

「あれ、先週もそうでしたけど、週末はライブに行かなくちゃダメじゃないですの?」

「あ、ほんと……こんなところで暢気に車運転してていいのかしら?」

 リリスは教習を暢気に受けているつもりだったようだが、ユコに言われて二人は不安そうに顔を見つめる。そして二人は、すぐにラムリーザの方に「これでいいの?」とでも言いたそうな視線を向けてきた。

「大丈夫、しばらく行けなくなるってことは伝えているし、それでもうお払い箱ってことにはならないから。それに……」

 それに代わりは居る、元々ジャンが友人として好意で誘ってくれていただけ……と思わず言ってしまいそうになるのを飲み込んだ。今ではリリス等の実力は、認められているのだから。

 それを聞いて、ユコは安心した表情に戻る。だが、リリスはまだ気にしているようだ。

「でも、そんなに自分達の都合で休んでばかりで大丈夫?」

 このメンバーで、バンドというものを一番大事に思っているのはリリスだ。同じぐらいゲームにも熱中しているが、バンドにかけている夢が他のメンバーとは大違いだ。なにしろリリスは、将来の希望にクラブ歌手やギタリストを上位に持ってきている。

「大丈夫だって。普段からちょくちょくジャンとは連絡取り合っているし」

 だからラムリーザは、安心させるように落ち着いた感じで答えるのだった。

「さてと、他にやること無いし、新しい楽譜仕上げようかな」

 ユコはそう言うと、音楽プレイヤーとノートを取り出して作業を始めた。いつもどおり、気に入った曲の楽譜作成だろう。

 リリスと違ってユコは、音楽に対してプレイヤーというよりクリエイターだ。将来の希望には、作曲家が入っていた。

 音感が優れているというのもあり、既存の曲をたやすくコピーすることができるのがユコの特技である。オリジナル曲も作ろうと思えば作れるが、ユコは作曲はできても作詞が苦手だというのもあったりする。

 それでも、「ラムリーズ」が演奏を続けることができるのは、ユコのコピー技術のおかげだというところが大きい。

 

 メンバーは、ここで一つの線を引くことができる。

 前者はバンドの存在が将来に大きく関わっている者。そして後者は別の未来が確定している者である。

 まずソニア。

 ソニアは、ラムリーザがドラムを叩くならベースを弾くというスタンスでバンドをやっている。そこには、ソニアの持論である「ドラムは父、ベースは母」という考えが根底にあったりするのだ。

 だが将来は、政変でも起きない限り、領主夫人という地位がほぼ確定している。その先バンドを続けるかどうかは分からない。

 だが今は、演奏したり歌ったりするのを楽しんでいる。

「新しい楽譜? あたし歌うよ!」

「そうねぇ、ボーカルの座を賭けて、明日レースでもしようかしら」

「やめろ……」

 リリスの無茶な提案に、ラムリーザはかすれた声を出して押し留める。リリスはともかく、ソニアならマジでやりかねない。

「あ、でもエロゲソングだったらソニアが歌っていいわ」

「何ですの!」

 ユコは、開いていたノートにこぶしを叩きつけて声を張り上げる。

「だめだぞ、歌を選り好みするのは」

「そうですわ、ラムリーザ様の言うとおりです!」

 リリスはそれ以上何も言わず、頭の後ろで手を組んで、二人から視線を逸らして外に目をやった。

「まったくもう……」

 ユコはリリスを睨みながらと呟いたが、すぐに気を取り直して楽譜作成作業を再開した。

 ラムリーザは、このようにリーダーとしてメンバーをうまくまとめている。

 だが、ラムリーザ自身、バンドはソニアが楽しそうにやっているから付き合っているという部分が多くを占めている。この点は、ソニアのラムリーザが叩くから弾くという考えと、今のところ歯車が噛み合うように、お互いかっちりとつかみ合っている。

 ラムリーザがドラムを叩き続ける限り、ソニアは楽しそうにベースを弾く。ソニアが楽しそうにしている限り、ラムリーザは叩き続ける。

 だが、将来領主となった後は、忙しくなってバンドをやっている暇は無くなるかもしれないのだ。

 その時どうなるか、今はまだわからない。

 

 食堂のテーブルは四人掛けである。

 そこで六人のグループは二つに分かれていた。ラムズハーレム――リゲル命名――の四人と、リゲルとロザリーンの二人とにである。

 リゲルは、ラムリーザとは親しくしているが、ソニアは無論のこと、リリス、ユコのこの三人とは少し距離を置いている感がある。

 だが、女性嫌いというわけでもなく、ロザリーンには割りと優しく接している節があったりする。庶民とは距離を置き、首長の娘は大事に扱うということなのだろうか。

 そのリゲルは、ギターを趣味にしているが、一番興味があるのは天文学だったりする。

 ラムリーザに誘われてグループに加わったが、グループが雑談部と化すと離れていったりしたことがあった。要するに、ラムリーザと音楽はやるが、馴れ合いには興味がないと言ったところだろう。

 最後にロザリーン、この地方の首長の娘。

 音楽は嗜みと考えていて、今はグループでやるのが楽しいから一緒に居るって感じなのかもしれない。

 こうしてまとめてみると、解散するときはあっさりと解散しそうな「ラムリーズ」であった。とりあえずラムリーザが消えたら、半数は消える可能性が高いだろう。

 

 

「あー、ギター持ってきたらよかった。ソニアへこませて遊ぶのにも飽きてきたわ」

「それあたし楽しくないから。キュリオで遊んでるからいいもん」

 ころころと感情が変わり、喜怒哀楽の表現が豊かなソニアをからかって遊ぶのがリリスの楽しみの一つになっていた。だが、同じ環境にずっといたので、最近はマンネリ気味というところか。

 一方でソニアは、携帯型情報端末キュリオの画面を見ながら、なにやら指をスライドさせて遊んでいる。

「キュリオと言えば、四神演劇レグルスやったね」

 リリスは、五月に狂ったようにプレイしていたネトゲを思い出した。寝る間も惜しんでプレイして、散々な目に会ったゲームだ。キュリオはスマートフォンの様なもので、通話やメール以外にゲーム等で遊んだりできる。

「あのゲームは消した。ラムには勝てないし怒られるし」

 今ではソニアは、そのゲームはきっちりと切り捨てているようだ。

「じゃあ、今は何をやってるのかしら?」

「……ニーソあげ」ソニアはボソッと言った。

「なにそれ?」

「長い靴下を上げたり下げたりするの」

「……楽しい?」

 ソニアは、リリスの問いに答えることなく、ただ黙々と画面を指でスライドさせている。

 リリスはソニアの足元、相変わらず本来サイハイソックスのものをすねの辺りでたるませて履いているのを見て呟いた。

「それだったら自分の履いているのでやればいいのに」

 リリスがソニアの足元に手を伸ばすと、ソニアは「触るな!」と言ってリリスに背を向けるのであった。

 ソニアはキュリオで遊び、リリスは頭の後ろで手を組んでぼんやりしていて、ユコは楽譜作成に熱中している。珍しく静かな時間が過ぎていっていた。

 

 途中、ラムリーザはリゲルに呼ばれて席を移動していた。これでそれぞれ名家と庶民の席に分かれたことになる。

「そういえば来週はパーティだけど、この分だと不参加ってことになるな」

 四月から毎月一回行っているパーティ。親同士は仕事方面の話や交渉をしているが、子供はまだそういう話には参加していない。

 どちらかと言えば、子供はそれぞれのお相手を見つけるのが目的の場ということになっていた。

「リゲルはお相手とか探すん?」

「フン、どうせいつもの四人で駄弁っているだけだから、行っても行かなくても大して影響は無いな」

 ラムリーザの問いに、リゲルは話題を摩り替えて答えない。

「それで、リゲルはお相手見つけるん?」

「しつこい……」

 そう言ってリゲルは席を立つ。そして立った拍子にロザリーンと目が合ったリゲルは、少し迷った末に一人、自室に帰っていった。

 後に残されたのは、ラムリーザとロザリーンである。ラムリーザは、特に話題が見つからなかったので、リゲルに言ったのと同じ事を話してみることにした。

「ロザリーンはお相手とかどうなの?」

「両親が決めることです」

「なるほどね」

 ロザリーンは、筋金入りのお嬢様であった。

 

 

 この日の夜、談話室からソニアとリリスとユコの三人は一緒に個室に戻っていった。

 その時、ソニアの部屋の前でソニアと別れた後で、リリスとユコの二人は、それぞれ思うところがあって、ソニアの部屋の入り口前の壁にもたれて座り込み、そのままキュリオで時間を潰しながらじっと待っていたのだ。

「ユコはどう思う?」

「絶対行ってますわ」

「だよねー」

 などと小声で話しながら、待ち続けていた。

 

 23時を回った頃……。

 果たしてソニアは、辺りを伺うような素振りを見せながら、そっと部屋から出てきた。

「こんばんは」

 すかさずリリスは声をかける。

 まさか二人が部屋の前に居るとは思っていなかったソニアは、驚きいて「ひっ、こんばんは!」と上ずった声で挨拶を返した。

「どこに行くんですの?」

 ユコは、にっこり笑って尋ねてきた。

「ト、トイレよ……」

 ソニアはそう言って、階段の方に向かっていこうとした。そしてそこで、後ろからまた声をかけられる。

「トイレなら同じ階にあるんだけど」

「さ、さっき行ったら故障中だったのよ」

 嘘である。ソニアは個室に入ってから一度も外に出てきていない。というより、個室に入る前に三人で一緒にこの階のトイレに行っている。

 ソニアは二人はほっといて階段を駆け上っていく。

「ラムリーザ様によろしくね!」

 ソニアは、ユコの掛け声に再び驚いて、階段に足を引っ掛けて転んでしまった。

 

 ソニアが行ってしまった後で、リリスとユコの二人は顔を見合わせて呟いた。

「ラムリーザの所に行ったね」

「一緒に寝るんですわね」

 ソニアの夜這いは、完全にばれているようであった。

 
 
 
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