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思い出の地で二人は何を思う? ~後編~

 

 ラムリーザとソニアの二人は、帰省してせっかく帝都に戻ってきたのに、だらだらと屋敷で過ごすだけではもったいないと考え、なんとなく思い出の地である良く遊んだ公園に来てみたのだ。

 

 シーソーで遊ぶのは止めて、次は公園内に展示されている蒸気機関車に行ってみることにした。蒸気機関車には、自由に登ったり入ったりして遊ぶことができ、昔は運転手ごっこなどをして遊んだものだ。

 ラムリーザは、ソニアが早速機関車の上に登っていこうとするので、注意を促すことにした。

「ソニア、くれぐれも足元が見えないことは忘れるなよ。お前の身体は、昔ここで遊んでいた頃とは大きく変わったんだからな」

 ソニアは一瞬「う……」と言葉を失ったが、すぐに「平気だよ、登るぐらいなら」と言って、下着があらわになってるのも気にせずボイラーの上に登っていってしまった。確かに、大きな胸は上方向への視界の妨げにはなっていないのだ。

「ラムも登ってきてよー」

 ソニアが上から呼びかけるので、ラムリーザは仕方なくソニアの後を追って機関車の上によじ登るのだった。

「ねぇラム、機関車の上でやる?」

「何をだ……」

「わかってるくせにー」

「一人でやれ」

「何よもう、リゲルみたいにそっけない返事して」

「見ていてあげるから、そこで一人でやってごらん――、これでいいかい?」

「むー……、それじゃあたし変態さんじゃないの」

「僕を巻き込むのは変態じゃないというのか?」

「少なくともラムは認めてくれるわけだしー」

「誰が認めるかっ!」

 ラムリーザは、発情しかけたソニアから逃げるように、さっさと機関車から降りていった。

 ソニアは、しばらく機関車のボイラーの上にまたがって遠くを眺めていたが、一人で居てもつまんなく感じて、降りようとした。だがしかし……。

「えっ? あ、そんな……」

 下を見ても、登るときに足場にした手すりや機体のでっぱりが見えなかった。ソニアの下方向の視界に入るのは、自分の大きな胸だけだったのだ。

 機関車の下からソニアの様子を伺っていたラムリーザは、ソニアが降りようとしておそるおそる足を下に伸ばして、足場を探しているのが目に入った。

「やっぱりそうなるよねぇ」

 ラムリーザはそう呟くと、ソニアが足を踏み外して落ちてきても大丈夫なように、ソニアの居る下側に近寄って行った。決して下から下着を見上げるためではないことは、あらかじめ断っておく。

 ソニアは、身体を横に向けたりして、なんとか足場が視界に入るよう工夫しようとしていた。胸を抱えようとしても、それでは片手がふさがってしまい、それはそれで危険だ。

 ラムリーザは、ソニアが横向きになってなんとかしようとしているのを見て、あることに気がついた。それは階段を下りるときのソニアの奇行だ。

 いつもソニアは階段を下りるとき、それまで引っ付いていたラムリーザの傍を離れて、壁に背を預けて横向きに降りていくのだった。

「あ、そういうことか。おっぱいが邪魔で、階段が視界に入らないのね」

「ラムー、何をぶつぶつ言ってるのよー?」

 機関車の上からソニアの泣きそうな声が聞こえてくる。

「あ、いやなんでもない。いろいろと合点がいっただけ」

 ソニアは、足を伸ばしては足場が見つからずに引っ込めて、また足を伸ばして足場を探してという行為を繰り返していたが、とうとう音を上げてしまった。

「ふえぇ、降りられないよ……、助けてラム!」

「それ見たことか、だから最初に言ったのに」

 ラムリーザは、しょうがないなといった感じで再び機関車の上に登っていった。

 そのままソニアを背負うと、「こっちは支えないからしがみついてろよ」と言って、背負ったまま機関車から降りていった。

 結局、公園の遊具四つで遊んで、その中の三つでソニアは困ったときの決まり文句「ふえぇ」を発してしまったことになる。楽しむための遊具で困ったりして、一体何をやってるのだか……。

 

 気がつくと、正午を回っていた。

「さてと、そろそろ昼御飯の時間だ。一旦帰るか、どこかで食事しよう」

「ラム、その前にトイレ」

「ん、わかった。そうしよう」

 ラムリーザは公園の便所に向かいながら、また昔の事を思い出したりしていた。

「ああ、この便所だったな。改めてあの時のこと思い出したら、妙な話だなつくづく思うよ」

「え? ここで何かあったっけ?」

 どうやらソニアは覚えていないようだ。まぁ、嫌な事は忘れてしまうのが一番だから、ラムリーザは黙っていようかと思ったが、ソニアはしつこく「何があったの?」と聞いてくるのだった。

 

――約八年前、某月某日。

 二人は今と同じように連れ添って公園の便所に入っていった。

 そこは共用だったので、何も考えずに一緒に入ったのだが、丁度その時個室がぐちゃぐちゃでとても使える状態ではなかった。

 ソニアもそこは使いたくないと言って、何を思ったかラムリーザの隣に並んで用を足し始めてしまったのだ。

 その後の惨状はと言うと、うまく飛ばせずに下げた下着を濡らすだけの結果となり、慌てていろいろ動かしたりしたが、結局無駄に足を濡らすだけとなったのだ。

『ふえぇぇん、どうしよう』

 ラムリーザに泣きつくソニア。ラムリーザが『仕方ないから帰ろう』と言っても、『パンツが冷たい、ふえぇ……』と泣いたまま動こうとしないので、手を引っ張って屋敷に帰ったとさ――

 

「回想おしまい」

「もぅ! 最後に嫌な事思い出させないでよ!」

「いや、お前が聞きたいとしつこいから話したんじゃないか。しかし、お前は突拍子も無い行動に出るってのは昔から変わらないんだな。まぁ、そういうところも可愛いけど」

「おもらしを可愛いって言われてもうれしくないよ……」

 ソニアは複雑な表情だったが、今は個室が奇麗に整っていて安堵の顔に戻った。

「うむ、これで今回は立ってやらなくて済むな」

「いや、使えなくても立ってやらないって……」

 楽しい思い出、どうでもいい思い出、変な思い出といろいろある二人であった。

 

 便所から出たところで、二人は何人かの集団と出くわした。

 集団は髪を立てらせたり、サングラスを掛けていたりしてる者が居て、妙にガラが悪い。ステレオタイプのつっぱり集団と言ったところか。

「あれ、ラムリーザ? 久しぶりに見た。ソニアも居るじゃん」

 見た目と裏腹に、その集団の大将らしき人物は、親しそうに気さくに話しかけてきた。

「ああ、アキラか。え? この公園をたむろ場所にしてるの?」

「そだよ。こいつら使ってトイレとか奇麗にしたしな」

「え? マジ? これお前らが?」

 アキラと呼ばれたつっぱり集団の大将とラムリーザは知り合いだった。

 お互いの関係は、権力者に媚を売っているだけなのと、番犬代わりなだけなのといった感じで、友人というよりお互いすっぱり割り切ったドライな関係ではあったが、特にトラブルは起きていなかった。

 この集団は、昔から反社会的なつっぱり集団であるにもかかわらず、こういったボランティアみたいなことをやったりする変わった集団だった。そんな所が、ラムリーザは嫌いじゃなかったので、毛嫌うこともなく普通に接していたりした。

 それに、思い出の公園を奇麗にしたと聞いて、うれしくなったりしていた。

「思い出の地を奇麗にしてくれてありがとう。おかげで最後にいい思いができたよ」

「あたしは嫌な事思い出した!」

 ソニアの叫びにアキラは「ん? 何か問題あんのか?」と尋ねてきたが、ソニアは「なんでもない!」とさらに叫ぶだけだった。

 立ちションの真似事をして、パンツや足をびしょびしょにした思い出など語れるわけが無い。

「そう言えば、さりげなくソニアの肩に手を回すようになってるけど、お前らそんな関係になったん?」

 アキラは、二人の様子がつい半年前と違う点に気がついて尋ねてきた。半年前は、ラムリーザとソニアは一緒に居たとしても、ソニアがラムリーザの周りをうろちょろしているのが自然で、引っ付いていることは無かった。

「ああ、この春から正式に付き合ってるよ」

「そっか。まぁ時間の問題だとは思っていたけどな。あーあ、おっぱいちゃんはラムリーザの物になっちまったか。ラムリーザが手放したら、掻っ攫おうかと密かに狙ってたんだけどな」

「だっ、誰がおっぱいちゃんよ!」

 その時、集団の中から女の子が一人歩み寄ってきた。濃いアイシャドウが目立っている。そして、その女の子はソニアの胸に手を伸ばしてきた。

「ちょっ、何?!」

「大きすぎるから本物かどうかと思ってさ」

 するとアキラはニヤニヤしながら説明してきた。

「おめーはソニアと初対面だから驚いただろうが、こいつの巨乳は本物だ。正真正銘究極のおっぱいちゃん。すげーぞ、俺にも触らせろっと。そういやメルティアが言ってたな、ソニアはおっぱいが弱点だって」

 何だか空気がおかしくなってきたので、ソニアはラムリーザの後ろに隠れてしまった。帝都ではだれに出会っても胸を狙われてしまう難儀な娘だ。

「こらダメだ、嫌がってるだろ」

 ラムリーザは、きっぱりとソニアに手出しするのをやめさせた。逆に、アキラの喉元に手を伸ばして掴む素振りを見せたりしてみた。

「おっと、冗談だ。だがソニアもラムリーザと別れたら、遠慮なく来いよ。可愛がってやるから」

 アキラは、掴まれたくないかのように、ラムリーザの腕から逃れるように少し身を引いて、腕を払いのけながら言った。

「絶対別れないもん、べーだっ!」

 ソニアは、ラムリーザの後ろから顔だけ出して、あっかんべーをして見せるのだった。

 

 そんな事を話ししている時だった。

「てめーらまだそこに居るのかよ!」

 なにやら怒鳴り声が聞こえたと思ったら、そこに別のつっぱり集団がやってきたのだった。

「あっ、てめーらまた来たな!」

 元から居た集団も、後から来た集団に凄んでいる。

 新しい集団の大将らしき人物の前にアキラは躍り出て、相手の胸倉を掴む。相手も掴み返してきて仲間も含めて壮絶なにらみ合いが始まってしまった。

「えー、この公園で縄張り争いしてるのか?」

 ラムリーザは少しだけうんざりして言った。

 相手の大将の顔も知っている。アキラの集団とずっと抗争している集団だ。

「ラムリーザか、ちっ、また今度にするか」

 相手の大将もラムリーザに気がついて、抗争を止める事にしようとした。どうやらラムリーザの見ている前で、争いごとはしたくない様だ。

「ああいいよ、こっちはそろそろ帰ろうと思っていたところだから。がんばれよ……というのも変だな、怪我しないように……というのも妙だし……。あ、そうだ、死人ださないように、な!」

 ラムリーザは、抗争に口出しする気は無かった。これは、ちょっとした陣取りゲームを大げさにやっているにすぎない。

 心の中では、トイレ掃除までしてくれた方が勝ってくれることを期待しながら、ソニアを連れて公園から出て行くのであった。

 思いでは色あせずに残っていた、昼下がりである。

 
 
 
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