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クリスタルレイクに行こう

 

 今日から『ラムリーズ』のメンバーは、リゲルの別荘へキャンプに行くことになっていた。

 朝食後ラムリーザは、昨日のうちに準備していた荷物を部屋の入り口付近まで運んでチェックしていたが、ソニアはいつものように格闘ゲームを開始してしまっていた。

「ソニア……」

 ラムリーザは呆れたように呟いたが、ソニアはテレビの前にぺたりと座って、「ラム、今日こそ対戦に応じろ!」と言って、これまたいつもの軍服男ヴェガを選択して待ち構えている。

「はいはい、ソニアは留守番ね、一人でやってろ。僕はキャンプに行くから、じゃあね」

「あっ!」

 そこでようやく気がついたのか、ソニアは慌ててゲーム機の電源を落として立ち上がった。それからラムリーザと同じように、準備していた荷物を抱えると、急いでラムリーザの元に駆け寄ってきた。

「まったくお前は……」

「ゲームはね、一日の生活のウォーミングアップなの。今日も元気にサイコクラッシャー!」

 ソニアは苦しい言い訳を並べるが、ラムリーザは何も言わずにそのまま部屋から出て行った。

「あ、待ってよぉ」

 置いていかれない様に、ソニアもラムリーザの後を追って、サンダルの紐も締めずに部屋を飛び出して行くのだった。

 

 移動手段が車になってから、待ち合わせ場所は駅などでなく自宅に変わっていた。今日はリゲルがこの屋敷まで迎えに来るはずだ。

 ラムリーザとソニアが、屋敷の自室を出て玄関ホールに向かっていたところで使用人とばったり出くわした。

「あ、今日からしばらくキャンプに行くから部屋空けるよ」「ラムリーザ様、お客様がお越しになりましたよ」

 ラムリーザと使用人の二人は、ほぼ同時にお互いの用件を話したので会話になっていない。

 少し間が空いた後で、「これからキャンプなのに……」「わかりました」と再び同時に答えるのだった。

 ラムリーザは、玄関の扉をあけてすぐに客に対して今は会えないことを伝えようとした。

「今日はこれからキャンプに出掛けるので――」

 客はリリスとユコの二人だった。

「――一緒に行こうね」

「あ、うん。おはよう」

 リリスとユコに対して、ぎこちない挨拶をすることになってしまった。二人の家はラムリーザの屋敷からそれほど遠くないので、ここに集合ということにしていたので、今日は客というわけではない。

「これからキャンプなので、お客さんは後日出なおしてくださいね」

 だが要らんことを言う奴が居た。ソニアは、ラムリーザが本来言おうとしたことを読み取ったのか、そのままストレートにリリスとユコに言い放った。

 ユコは苦笑しただけだが、リリスは一瞬むっとした顔をしてソニアに反撃してきた。

「ソニア、あなたいつも同じコーデね。キャミとプリーツのミニスカ。色だけは変えているみたいだから、色違いキャラみたいね」

「な、何よ、キャミは涼しいからいいの! ミニスカートはあたしの美しい脚を十分生かすための必須アイテムなの!」

「えらく脚に自信があるのね。でも残念、世の中の男は、みんなそのおっぱいに目が行くだけよ。サンダルの紐も締めないで、だらしないだけね。くすっ」

「うるっさいわね! ラムはこの健康的な脚が好きだと言ってくれた! ねぇ?!」

 ソニアはその場に屈んでサンダルの紐を締めながら、ラムリーザの方を振り返って同意を求めてきた。しかしラムリーザは、喧騒はそっちのけでユコと荷物について談笑中であった。

「その大きな鞄、シンセサイザー?」

「ええ、そうですわ。ラムリーザ様のそれは?」

「ん、電子ドラム。コンパクトに折りたためるからこういう時は便利だよね。いつものセットだとそう簡単に運べないよ」

「青空の下、自然の中でのびのびとライブしましょうね」

「それいいね、天国ライブと名づけよう」

「なんでですの?」

「天国ではすべてがうまくいくんだよ」

「またそのフレーズ……」

「こりゃあ! なんばしょっとね!」

 ラムリーザとユコの談笑に、ソニアが飛び込んできた。二人の談笑が青空だとしたら、それは霹靂とでも言った感じだ。

「何ですの?! 私はソニアに怒られることはしてませんわ! それに、どこの言葉ですの?!」

「その緑の瞳でラムを誘惑しようとしていた癖に!」

 ソニアは、ユコの緑色の瞳に嫉妬している部分がある。ラムリーザが緑色好きなのに、自分の瞳が青いのが残念で仕方が無いのだ。

「大丈夫、僕はテンプテーション見切りを装着した最終皇帝だから安心して」

 ラムリーザはソニアをなだめようとしたが、その台詞は説得力が有るのか無いのか微妙なものになってしまった。

「あっ、ラムリーザ様のイメージは、最終皇帝にぴったりですわ」

「あたしは?」

 ソニアの問いかけに、リリスが口を開きかける。また貶めるような発言をして、この場を荒らすか?

 丁度そのタイミングで、ラムリーザが下宿している屋敷の前に、一台のバンが到着した。

 運転席の窓が開いて、リゲルが「よう」と手を振ってきた。実に良いタイミングだ。

 助手席からロザリーンが降りてきて、ラムリーザ達四人に挨拶してきた。これで全員集合だ。

 バンのバックドアを開いて、四人の荷物を詰め込む。大きな車で、六人が乗っても十分に広そうだ。

 次に、席をどうするか? という話になった。

 ラムリーザ的には、車の座席など正直どうでもいいのだが、一部どうでもよくない人が居るのも事実だ。

「リゲルって、自分の女以外は助手席に乗せないって言ってたのに、さっきローザ乗せてたよね?」

「うん、まぁそういうことだろう」

 ソニアは余計な事を言ったりするが、珍しくラムリーザは同意してみた。

「ロザリーンはお嬢様だから大事に扱わなければいかんだろうが。使用人の娘はそんなこともわからんのか?」

「おっと、討論はそこまで。それで、どうする?」

「ラムリーザが助手席。他は後ろで」

 ラムリーザは、しょうもないことでまた場が荒れそうになったのを抑え、リゲルの提案する席順をそのまま受け入れて助手席に乗り込んだ。

 後部座席は広いので、各自適当に腰掛けて、全員乗り込んだところで出発!

 

「ねぇ! 音楽かけて、首振りながら行こうよ!」

 ソニアは前部座席に腕を置いて、身体を乗り出している。大きな胸の突き出し方といい、先日国境付近まで偵察に行った時と同じことをやっている。だが、今回は他にも人が居るということが違った。

「ソニア、パンツ丸出し。見苦しいわね」

 リリスは、うんざりしたように呟いた。

 ソニアはいつものキャミとミニスカで、前かがみになって前部座席に乗り出しているのだ。そのため、際どい丈のミニスカートは持ち上がり、後ろから見ると丸見え状態なのである。

 ちなみにリリスはホットパンツ、ユコは膝丈スカート、ロザリーンはジーンズであり、ガードが緩いのはソニアだけだ。

 

 カシャッ

 

 その時、車内に何やらカメラのシャッター音の様な音が鳴り響いた。

 写真撮影か?

 そしてすぐに、その場に居る全員の携帯電話が、グループメールを着信したことを知らせてきた。

 とりあえずラムリーザは、携帯電話を覗いてみた。ユコからの、写真付きメールだ。

 その写真は、後部座席から撮ったもので、前部座席とその間に居るソニアの後姿が映っていた。もちろんソニアのパンツ丸見え。それが主な目的なのであろう。

「あっ、ちょっと待ってよ! 何それ?!」

 後ろからラムリーザの携帯電話を覗き込んでいたソニアは、その写真を見て素っ頓狂な声を張り上げた。

「うむ、喜びそうだからジャンにも転送してやるか」

「やめてよ! ってかそのメール誰から?!」

 グループメールだったので、ソニアにも着信は入っている。ソニアは自分の携帯電話を開いて、この盗撮をした犯人を特定することができたのだった。

「ユッコ! 何すんのよ!」

 ソニアは後ろを振り返り、ユコに飛び掛っていった。ユコは素早く両足でソニアの胴体を挟み込んで、ガードポジションの体勢を取った。

 その後、動きの止められたソニアの胸に、リリスは横から手を伸ばしてくる。ソニアはすぐにリリスの両手首を掴んで、そうはさせるかとばかりに押し返そうとした。

 ソニアとリリスがせめぎあいをしている所に、今度はユコが下から手を伸ばしてソニアの胸を掴み取ろうとしてきた。

 ソニアはそれを見て、慌てて身を引こうとしたが、ユコの両足でがっちりと抱えられていて逃げ出せない。手で払おうにも、両手はリリスとつかみ合っているので使えない。

 ユコは、苦労せずにソニアの突き出た胸に手が伸びて……。

「ふえぇ……」「はい、そこまでね」

 ソニアの悲鳴と、ロザリーンの半分呆れたような声は同時だった。

「全く――」ロザリーンは、腕を組んだまま三人をジト目で見据えている。「――リリスもユコも、胸狙いすぎ。ソニアも胸大きすぎ」

「待って! あたし大きいの悪くない! 大きくなりたくてなったんじゃないし! それよりも触ろうとするこいつらが悪いの!」

「あら? そんなに前に突き出しているから、どうぞ触ってくださいって主張しているのかと思いましたわ」

「それに、ちょっと手を伸ばしただけで当たりそうになるぐらい自己主張しているものねぇ。その膨らみ」

「うるっさいわね! ふえぇ……」

 

 後ろでドタバタ劇が展開されている間、前部座席、ラムリーザとリゲルの所だけは平穏そのものであった。

 リゲルのかけた古い管弦楽曲をBGMにして、ゆったりとした空間が形成されているのだ。リゲルは運転に集中していて、ラムリーザは街から離れた一本道の周りに広がる草原の景色を楽しんでいた。

「リゲルの別荘って、どんな所?」

「ん、車で四時間ぐらいって所かな。北のカンダール山脈にある湖、クリスタルレイク脇のコテージだ」

「ふーん」

 ラムリーザは、水晶のように水面がきらめく、美しい湖を想像していた。クリスタルレイク、神秘的な響きがするいい名前じゃないか。

 

 グループのメンバー六人を乗せた車は、北へ向かって進んでいった。

 
 
 
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