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キャンプ場にて、自由気ままな昼下がり

 

 クリスタルレイク――。

 そこは山中の森に囲まれた湖。真夏日だが、高度もあり木陰は涼しい。

 湖は楕円形をしていて、対岸がかろうじて見えるぐらいの大きさだ。徒歩で三十分ぐらいの大きさだろうか。

 寝泊りするコテージは、木造の小屋って感じで湖の北側にある。コテージからは、日が昇って沈むまでが一望できるようになっている。

 コテージから近い湖のほとりには桟橋があり、小型の手漕ぎボートが停泊してある。

 湖面は波もなく透き通っていて、夏の日差しを反射して、まるでクリスタルのようにキラキラと輝いていた。

 

 車をコテージの脇に駐め、荷物を一通り車から下ろしてコテージ前に並べた後、一同はコテージの前に集まっていた。

 自然に、ラムリーザと他のみんなが向かい合うような形になる。一応グループのリーダーという認識は、すっかり定着しているようだ。

 ラムリーザは手を縦に振って、リゲルを除く四人をそこに座らせた。リゲルは、腕を組んで横からその様子を見ている。こうして見ると、まるでキャンプの指導員みたいな感じだ。

 だがラムリーザは指導員でもなんでもない。一同を意のままに動かしてみたものの、バンド活動ならともかく、キャンプとなると何を指示すればいいのかわからない。

 そもそもここはリゲルの別荘だ。リゲルから、何がどこにあるのか等を聞くのが筋じゃないのだろうか。

 そう思いながらも、ラムリーザは女の子達の期待するような視線を受けて、仕方なく口を開いた。

「えーと、それではこれからキャンプを始めるに当たって、オリエンテーリングを行います」

「えっ?」「えっ?」

 しかし、リリスとユコが、同時に疑問の声を上げる。

「いきなり宝探しするの?」

 ソニアはなんだかワクワクしているような感じで尋ねてくる。

 その一方でリゲルとロザリーンは、真顔でラムリーザの顔をじっと見つめている。

「あれ? 僕は何か変なこと言った?」

 なんだか様子がおかしいので、ラムリーザはリゲルに尋ねてみた。そもそもここはリゲルの別荘だ。リゲルの方から説明を……、とまあ二回目になるので言わないでおこう。

「オリエンテーションだろ?」

 リゲルは、いつものように淡々と間違いを指摘してきた。

 ラムリーザは、もう無理だと思った。ふと視線をコテージの方に向けると、コテージの西側へ少し行った所に小さな小屋があり、その前に中年の男性が立っていた。

「リゲル、あそこに居る人は誰?」

「ああ、ここの管理人だ。彼に連絡して、ここを使えるようにしてもらったのだ」

「それじゃあ挨拶しておかないとね」

 ラムリーザは、再び四人の方を振り返って、適当なことを言ってこの場を切り抜けることにした。

「ソニア、前へ」

 ラムリーザに呼びつけられて、ソニアは立ち上がってラムリーザの隣にやってきた。ラムリーザは、傍に来たソニアの肩をぽんと叩いて言葉を続けた。

「注意事項などは、これからソニアの配る『キャンプのしおり』を各自しっかり読んで理解しておくように」

 ラムリーザはそう言い残して、キャンプ場の管理人の所に向かっていった。リゲルも、一緒に挨拶しておくのか、ハーレムに取り残されるものかと考えたのかは、彼自身にしかわからないが、ラムリーザについて行くのだった。

 

 管理人のおじさんは、どこにでも居るような、これといった特徴のないおじさんだ。

 ラムリーザは、手を差し伸べて握手しながら言った。

「ここの管理人さんですね。これから数日間お世話になります。何かと迷惑をかけるかもしれませんが、よろしくお願いします。帰る時には、みんな無事で元気に、お世話になりましたと言えるようにしたいと思っています」

 管理人のおじさんは、「うむ」と手短に答え、リゲルの方を見て軽く笑みを浮かべた。

「リゲルくんの友人は、若いもんにしては礼儀正しいな」

「ラムリーザはただの庶民じゃないから。帝国宰相の次男坊で、領主になるような奴だ」

「ほぉ、さすがリゲルくんの友人、すごいね」

「ラムリーザです、どうもよろしくです」

「はいはい、こちらこそよろしく。それじゃ、早速だが、発電機やボイラーの場所とか教えておくぞ」

 こうして、ラムリーザとリゲルは、別荘の各種施設を見て回ることになった。

 自家発電気があって電気が使える様だし、露天風呂まであるようだ。

 次にコテージの中も案内してもらった。玄関から入ると、広いリビングになっていて、寝室は二人部屋が二つと、四人部屋が一つあった。とりあえず女子四人に大部屋を使ってもらい、ラムリーザとリゲルの二人で、二人部屋を使うことにした。

 さらに地下室があり、そこにはワインの樽もあったが、まだ高校生なのでこれは不要だろう。

「ん、食材は冷蔵庫に移しておかなければな」

 リゲルは、今気づいたように言った。そういえば忘れていたようだ。

 二人は、コテージ前に並べた荷物から食材を運び込み、冷蔵庫の中に保管した。

 

 一方その頃。

 ラムリーザとリゲルがいろいろ作業していた時、ソニア達は何をやっていたかというと。

「ソニア、早くキャンプのしおり配ってくれないかしら? 待っているんだけど」

「そ、そんなの持ってないよ!」

「さっきラムリーザが、ソニアが配るって言ったじゃないの」

 去り際に言い残したラムリーザの置き土産のせいで、ソニアは理不尽な責めを受けていたりした。リリスに詰め寄られて、ソニアはおかしなことを言い出したりする。

「知らないよ! だいたいキャンプのしおりって何? しおりって高望みするわ、一緒に帰ったら友達に噂されて恥ずかしいなどと抜かす、許し難い幼馴染じゃないの!」

「何を言い出すのかしら……」

「あたしだったら、ラムと帰ってる所を噂されても、むしろ誇らしいんだけど!」

「わかったから、しおりを出しなさい」

 そんなもの無いとわかっていつつ、リリスは意地悪げにソニアの方に手のひらを差し出して催促する。

「嫌! リリスなんかには絶対あげない!」

 ソニアは、リリスの手を叩くと、そのまま自分の荷物を持ってコテージに駆け込んだ。それからさっさと水着に着替えると――。

 

「海だーっ!」

 

 一人叫びながら、湖に飛び込んでいった。

「いや、そこ湖だから……」

 というわけで、残されたリリス達も水着に着替え、湖で遊び始めたのであった。

 

 

 初日の昼過ぎは、こうしてラムリーザとリゲルはキャンプ場の見回り、ソニア達女性陣は湖で遊んで過ごしていた。

 一通り荷物をコテージ内に運び込むと、ラムリーザはソファーに座り込んで一息つき、リゲルはその隣に座って持ってきたギターを奏で始めた。

 ラムリーザもしばらく休むと、自分も持ってきた電子ドラムを広げてみるのだった。

「変わった物持ってきたな」

「持ち運びに便利なドラムなんだってさ。リリスに聞いて買ったけど、広げてみるのは今が初めてだったりして」

「ほう、使ってみろ」

 リゲルに急かされて、ラムリーザは軽く叩いてみた。シンプルだが、音はそれっぽく出るようである。そこでリゲルは適当に奏でるのをやめて、ラムリーザと合わせることにした。ちょっとしたフォークソングっぽいものを始めたのだ。

 それからしばらくの間、二人の歌声が、コテージの中を満たしていた。

「そういえば、こうしてリゲルと二人っきりで歌うのって、初対面のパーティ以来だね」

「ああ、そういえばそうだな」

 二人は、四月にオーバーロック・ホテルで行われた、初パーティの事を思い出していた。あの時も、リゲルのギターに合わせて、二人で歌ったものだ。

「僕が音楽やってなかったら、ひょっとしたらあの日も挨拶だけで、それっきりになってたかもしれないね」

「そうかもしれんな。で、お前が音楽やるきっかけは、あいつか……」

「そうだね、ソニアに感謝しなくちゃね」

 リゲルは、「フン」と鼻を鳴らすと、次の曲に取り掛かった。

 こうして、キャンプ初日の昼下がりは、各自好き勝手に遊びながら過ぎていくのだった。

 
 
 
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