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1メートルの胸は5kgもあったりする驚きの夜

 

「この中で、誰が一番デブなのかしら?」

 四人とも服を脱いで下着姿になった時、リリスは露天風呂前の脱衣所で体重計を見つけ出してきて、みんなを挑発するようなことを言ってきた。体重測定をやろうというのだ。

 この場合、誰が恥をかくことになるのだろうか。あからさまな肥満体型は居ない。

 ユコは一番小柄で繊細だ。逆にロザリーンは四人の中で一番背が高い。ソニアとリリスは、身体の一部を除いて、ほぼ同じ体格である。その差は二人のバスとサイズのみで、ソニアの胸が規格外だ。つまり、他がどうであれ、リリスはソニアより軽いはずだ。

 リリスは、そういう自分が一番恥をかくことはないという自信があったから、この体重測定を提案してきたのである。

 こんな陰湿なところが、『根暗吸血鬼』呼ばわりされていた所以なのかもしれないが……。

「ほら、誰が一番プロポーション悪いか調べましょう。あ、逃げたければどうぞ。それ自体がプロポーションが悪いってことを公言しているようなものだからね」

 うむ、リリスは陰湿だね。さらっと酷いことを言ってのける。

「仮に一番重かったとしても、自分では太ってるとは思っていないから気にしません」

 ロザリーンはさくっと言い放って、一番に体重計に乗った。針は54kgを指している。身長166cmというところなので、重くもなく軽くもなく、標準的だ。

 次にリリスが体重計に乗った。

 針は、ロザリーンと同じ54kgを指している。ちなみにリリスは163cmで、ロザリーンより小柄だ。

「リリスはロザリーンより小柄なのに、重さは同じですの?」

 ユコの突っ込みに近い指摘を受けてリリスは、「まぁ、私はロザリーンと違って、出るところきちんと出ているから、しょうがないね」と言いながら、くすっと笑う余裕がある。

「嫌味ね、そんなのだからあなたはねく……、なんでもないわ、言わないでおいてあげる」

 ロザリーンの言いたいことは根暗吸血鬼ね、ごもっともである。

「じゃあ、次は私ね」

 ユコが乗ると、針は52kgを指していた。

「あぁ、安心しましたの。これであなた達と同じ重さだったら、私がヤバいってことになってましたわ」

 そういうわけで、最後に残ったのはソニアになった。

 リリスは、妖しげな笑みを浮かべてソニアの表情を伺っている。すでに三人が量り終え、リリスはロザリーンと同じだったというのもあり、心の余裕があった。というより、最初からソニアより重いとは考えていなかった。

「な、何よその目」

 ソニアは、リリスの表情が気に入らなくて、不満そうに呟いた。

「別に、なんでもないわ」

「どうせあたしが一番重いって思ってるんでしょ!」

「さぁ、それはどうかしら」

 ソニアは、リリスの態度が頭にきて、フンと鼻を鳴らすと体重計を拾い上げてロッカーの傍に持っていった。ロッカーの高さは、丁度ソニアの胸の下辺りである。

「どうして端っこに持っていくんですの?」

 ユコの問いにソニアは「リリスにだけは結果見せたくないから。ほら、乗るからユッコが見て!」と言って、腰に手を当てて体重計の上に乗った。

 ユコは、不思議そうな顔をしながらソニアの傍に行って体重計を覗き込んだ。

「あら? ソニアが一番軽いんですのね」

 針は51kgを指している。どうやらソニアは、見た目に反して意外と重たくないようだ。要するに、風船おっぱい?

「それは意外ね」とロザリーンも呟く。

 だが、その結果に納得行かないのがリリスだ。

「そんなはず無いわ……」

 リリスはソニアを良く見て、すぐにその結果になった理由を察した。

「って、ソニアあなた! 何おっぱいをロッカーの上に乗せてるの?!」

 つまり、ソニアが体重計をロッカーの傍に持っていったのは、体重を量る上でハンデとなるであろうその巨大な胸を排除するためであった。

「つまり、バスト抜きでその体重ってことですの?」

「いいの! ハンデよ!」

「何がハンデなんだか」

 リリスはソニアを押しのけると、体重計を拾い上げて再び部屋の真ん中に持っていった。そしてソニアに再び乗るように促すが、ソニアは応じるはずがない。

「もう決まったでしょ? リリスとローザは54kgでヘビー級、ユッコは52kgでライト級、あたしは一番軽いナイスボディ。これでいいじゃない!」

「いかさま師ソニア」

 ソニアの怒声に、リリスはボソッと挑発で返す。

「だっ、誰がいかさま師よ!」

「正々堂々と勝負できないのね、臆病者」

 さらに挑発を重ねる。

「臆病者じゃないわよ!」

 リリスの挑発で頭に血が上ったソニアは、少々乱暴に体重計の上に飛び乗った。乗ったというか、挑発に乗せられたというか。

 激しく針が揺れて、それは56kgと57kgの間を指して止まることになった。

 もっとも、足元が胸で隠れて見えないソニアには、体重計の結果をみることができなかったのだが。

「バストだけで5kg以上もあるんですの?」

 ユコは呆れたような、驚いたような声をあげた。

「やっぱりそうなるよね」

 ロザリーンも納得したように頷いている。

「さすがJカップ様」

 リリスは満面の笑みを浮かべて、少し笑いをこらえながら嬉しそうにからかってきた。

 ソニアは何も言わずに下着を脱ぐと、そのまま胸を抱えて露天風呂に小走りで逃げ去っていった。

 Jカップどころか、今や一メートルに到達してしまっているのだ。これ以上体重の話はしたくなかった。かと言って、逃げたくもなかったのであるが……。

 結局、ユコがライト級、リリスとロザリーンがヘビー級だとすれば、ソニアはスーパーヘビー級ということで決着がついたのであった。

 

 

 一方その頃、ラムリーザとリゲルは、この後にやることになるであろう怪談のための仕掛けを準備していた。

「細くて丈夫な紐が欲しいね。あと古くて使えなくなった大きめの電球」

 ラムリーザはコテージの周囲を見て回り、丁度転がっている電球を見つけた。その電球に紐を括り付けると、リビングの天窓を通して紐を室内に通したのだ。

「それは何になるのだ?」

「この紐を引くと、先に結びつけた電球が持ち上がるんだ。手を離すと電球は落ちて割れる。いいタイミングで物が割れる音がしたらびびるぞ」

「ふむ。しかし外だからな、音が聞こえにくいかもしれん。よし……」

 次にリゲルは、同じような丈夫な紐で、入り口の扉に結び付けた。内側に開く扉なので、完全に閉めずに少し開けていれば、紐を引くことで自然に扉が開いたような演出を表すことができるのだ。

 これで仕掛けは完成だ。静かになったところで扉を開いて電球を割る。陳腐な仕掛けだが、まぁネタにはなるだろう。

 ソファーの位置を調整して、二人がそれぞれ紐を引きやすい場所に置くことにした。これでOKだ。

「さてと、仕掛けはこれでいいとして、怪談だよなぁ。どうしよう?」

「どうしようと言われても、困る」

 リビングの中央には、いつの間にかろうそくが十二本入った箱が置いてある。

「つまり、十二本と言うことは、一人二話ってことだよね。リゲルは何かネタある?」

「こんなもん、適当に都市伝説を語っておけばいいんだよ。めんどくさいから一週目の俺のところで仕掛け使うからな。二週目は、なんだかんだ理由をつけて無しにしよう」

「つまり僕は一つ話さなくちゃダメなんだね。ん~、精神的というより物理的な恐怖を演出してみようかな。ソニアには効かないけど……」

 そこでラムリーザは、冷蔵庫から昼間に買ったりんごを持ち出してきて、ソファーの脇にそっと置いた。

「怪談でりんご? 物理的な恐怖? そういえばりんごジュース作れって言ってたな。怪談やってる時に作るのか?」

「うん。僕の予想だけど、初めて見たときは恐怖を感じてくれるかもしれないんだ」

 ラムリーザは、さらに布巾とボールを台所から探し出してきた。

「りんごジュース作成、怖いか? 三分間ホラークッキングのつもりか? それより、おろし金は無くていいのか?」

「質問多すぎだよ。作れるよ、これで」

「どうするのだ?」

 ラムリーザは、何も言わず笑みを浮かべてリゲルの目の前に右手を手のひらが上になるように差し出した。そして、そのままギュッと握りこぶしを作って見せるのだった。

「お、おう。それはたぶん女子供はびびるな」

「ソニアは知ってるからびびらないけどね。まぁ、初めて見せたときは怖がってたけど」

 しかし女の子の風呂は長い。しばらくの間、ラムリーザとリゲルの二人は、ソファーに座ったまま雑談を続けることになった。

「ところで風呂で言ってた自分に腹が立つって――」

「で、その馬鹿力はどこで身に付けた?」

 リゲルは、ラムリーザの質問を遮ってきた。過去の事はあまり話したくないのだろうか。

「――何の……って、ん~、それは話せば長くなるけど、僕はソニアにドラマーに転向させられたってのは聞いたよね?」

「うむ」

「まぁそれはいいんだけど、夢中になると数時間演奏して遊んだりしていたんだよね。そうしたら、さすがにだんだん疲れてきて、スティックを握る手に力が入らなくなるんだ。だから、握力を始め、腕力だけは鍛えようとしていたら、気がついたらこうなってた」

「格闘家じゃあるまいし、やりすぎだろう」

「妹が格闘技にはまって、相手してあげてたから少しはかじってるよ。それより、今ならこんなこともできるけど、ゴムマリある?」

「ん、外の倉庫にあるかもしれんが、何をする気だ?」

「ぱーん」

 ラムリーザは、握りこぶしを再び作って、おどけたように破裂音を言ってみたりした。

「……やめろ、もったいない」

 雑談は終わり、リゲルはギターを手に、ラムリーザは持ってきたりんごを軽くお手玉のように投げながら、女の子達が出てくるのを待っていた。

 しかし、なかなか出てこない。ガールズトークに花を咲かせているのだろうか。

「遅いな、リゲル覗きに行ってみたら?」

「たわけが……」

「さっき風呂で、ソニアみたいなのは嫌いじゃない、って言ったよね。やっぱ足? おっぱい? それとも緑色?」

「うるさいな、何がおっぱいだ。あいつの胸はおかしい。そんなことじゃなくて、ソニアみたいに一緒に居て楽しくなるような奴が好きだった」

「好きだった?」

「うむ……」

 その時、裏の露天風呂から通じる廊下から、ドタドタと足音が聞こえてきた。ようやく長風呂が終わったようである。

 ラムリーザは、またしてもリゲルとの、おそらく大事な話、だと思うことを聞く機会を逃してしまった。それでも、このキャンプ中にまた話す機会を作ればよいと考えていた。

 

「怪談、怪談」

 どうやら怪談をいちばんやりたがっているのは、言いだしっぺのユコのようだ。マッチをすって、一本ずつろうそくに火を灯していく。

「一人二話ずつお願いしますわ」

「えっと、上りと下りとどっちがいい?」

「ラムリーザ様はまだそんな事言うんですの? ちょっと寒いよ……あ、この寒さは怪談っぽいかもしれませんわね」

「怪談と言えば、ソニアのおっぱいが5kgもあるっての、怖い話にならないかしら、くすっ」

「うるさい! 根暗吸血鬼!」

 やれやれ、どうやらソニアもリリスも、お互いの間に遠慮という物が無くなってしまったようである。リリスは相変わらずソニアを挑発してくるし、ソニアも禁句のはずの「根暗吸血鬼」をズバッと放ってみせる。

 しかし、リリスの誕生日での出来事以来、リリスは昔の悪口に対する耐性ができたようであった。ソニアの発言にも、眉一つ動かさずに微笑を浮かべている。そのおかげで、ソニアも遠慮せずに悪口をぶっ放すようになったのかもしれない。

 なにはともあれ、喧嘩するほど仲が良いということで。

 

 

「ずだ袋を被った男が歩いていました。袋は目のところに穴が開いていて、そこから鋭いまなざしが覗いていました。私は気になって尋ねてみました。『あなたはどうしてずだ袋を被っているのですか?』そうすると、男は答えました――」

 トップバッターのリリスは、妖艶な笑みを浮かべながら物語を語り始めた。

 こうして、怪談ごっこが始まったのだ。

 
 
 
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