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胸が大き過ぎて棒もまともにくぐれなかったりする困った娘

 

 クリスタルレイクでのキャンプ二日目は、それぞれ男子の釣り組みと、女子の棒くぐり組みに別れてスタートした。

 朝から自由気ままに遊んでいたのだが、残念ながら昼前辺りで騒動が起きてしまった。楽しそうにはしゃいでいたソニアが泣きながら、釣りをしている二人が居る桟橋の方へ駆け寄ってきたのだった。

 つまり、七月に海へ遊びに行った時と、全く同じパターンが発生したということだ。

 

 ラムリーザは釣りを切り上げると、泣いているソニアをなだめながらリリス達の方へ向かっていった。

 まったく、何故ソニアは毎回こうなるのだ。リリスのソニアからかいも、程ほどにしてもらいたいものだ、などと思いながら、ラムリーザはソニアの頭を撫でてあげるのだった。

「えーと、何が起きた? 喧嘩しないようにって言ったよね?」

 ラムリーザは、じっとリリスを見つめながら言った。

「喧嘩もいじわるもしてないわ、ソニアの身体が硬いのが悪いのよ。勝負に負けたから泣いているだけ。ラムリーザにすがってどうにかしようと考えている方が、見苦しいわ」

 リリスは悪びれた様子も無く落ち着いて淡々と答えた。別に自分は悪いことはしていない、そういった態度で、いつもの余裕綽々な態度を表していた。

「勝負って、棒くぐりだよね?」

「ええ、正面から身体を反らせてくぐる、異国のお祭りよ」

 リリスは先程まで遊んでいた棒を指し示して、軽く笑みを浮かべた。

 棒は粘土で柱に貼り付けられている。身体が当たったら、粘土が剥がれて失敗といったところだろう。

「む、えらく棒が低く取り付けられているみたいだが……」

 棒の高さは、ラムリーザの太もも半ばぐらいだ。これではそうとう身体を低く折りたたんだ姿勢を取らないと、くぐることはできないだろう。

「別に、大したことないわ」

 リリスはそう言って、棒くぐりを開始した。膝を落として、かなり無理な姿勢を取っている。よく後ろに倒れないものだ。

 太ももが通過して、腰が通過して――。

「あ、おっぱいが……」

 ラムリーザは小さく呟いた。リリスの大きな、といっても現実的な大きさだが、その膨らんだ胸が棒に当たりそうだ。

 だがリリスは、そのことは承知の上といった感じに平然としていた。棒の下を胸が通過するその瞬間だけ、腰により力を加えて身体を少し下げ、かすったのではないか? というぐらいギリギリの高さで盛り上がった胸をくぐらせたのだった。

「これはすごい、リリスは柔軟性とバランスとすごいね」

「ふふ、大したことないってば。高度な柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処しただけ」

 確かにリリスの言ったとおり、身体の高度な柔軟性を維持しつつ、胸を通過させるために臨機応変に対処できている。決して行き当たりばったりな作戦ではない。

「ソニア、残念だけどこれは勝ち目無いって。リリスは身体能力すごいよ」

「そんなことないもん!」

 ソニアはそう叫んで、先程リリスが通過したのと同じ高さに挑んでいった。

「お?」

 ラムリーザは、意外に感じて思わず驚きの声をあげた。

 ソニアも、先程のリリスと同じような膝を落とした体勢を維持している。恐らくソニアは、リリスと身体能力はほぼ互角なのではないか? とラムリーザは思った。

 太ももが通過して、腰が通過して、リリスと全く同じようにくぐっている。

「なんだ、ソニアも高度な柔軟性だっけ? すごいじゃな――、あ……」

 そこでラムリーザは気がついた。ソニアとリリスとで、根本的に違う点があるということを。

 胸の大きさが全然違う。高さは少なくとも10cmは違うのではないか?

 さすが1メートルの胸は伊達じゃない。その圧倒的な存在感は、仰向けになってもちっとも衰えていない。

 ソニアは気がつかないのか前進しているが、このままでは……。

「待てソニア、その高さだとおっぱいが当たる」

「あ、教えるのはずるいわ」

 ラムリーザの指摘に、リリスが不満そうに文句を言ってきた。

 これはつまりそういうことだ。ラムリーザは、さっきソニアが敗れて泣きついてきた理由が分かった。要するに、胸が引っかかって失敗したというわけだ。

 ソニアは、苦しそうに少し身体を下げて、「これでどう?」と聞いてきた。

「全然ダメ」

 リリスと同じだけ身体を下げただけでは、ソニアの胸が通過するわけがない。

「こっ、これで、どうっ?」

 ソニアは、さらに無理な姿勢を取って、先程よりも苦しそうに聞いてきた。

「まだ半分ぐらいだねぇ」

「そんな……」

 そにあはさらに身体を下げようとしたが、全身がブルブルと震えている。これは限界だろう。

「くっ……、くうぅん……」

 苦しいのか、言葉にならない。歯を食いしばって目をぎゅっと閉じて、あえぎ声のようなものを出すのが精一杯だ。しかし……。

「目を開けて見てごらん? おっぱいの上から棒が見えてる? 棒がおっぱいで隠れているということは、当たっちゃうってことだよ」

 ソニアは目を開き、自分の胸元を苦しそうに見つめた。すぐに顔全体に絶望が広がっていくのが目に見えて分かる。ついに精根尽き果てて、その場に倒れてしまった。

 リリスがくすっと笑い、ソニアは「ふええぇぇぇん!」と再び泣き出してしまった。

 ラムリーザは、しょうがない奴だなと思いながら、再びなだめながらソニアの身体を起こしてあげた。

「どうやらクリア不可能のようね、リードボーカルゲット、まいどあり。くすっ」

「またお前の負けか。お前なぁ、もっと自分の身体の特徴をよく理解して勝負受けろよな。公園の機関車の時もそうだけど、お前のおっぱいは1メートルもあるんだから、そこの所よく考えて行動しろよ」

 ラムリーザは、ソニアの頭を撫でながら諭す。

 ゲームのルール上、棒くぐりは胸が大きければ大きいほど不利になるゲームだ。ソニアはリリスに対して大きなハンデを抱えた上で勝負することになり、リリスもそうなることを狙ってこの勝負を提案したのだった。

 だが、ラムリーザの慰めの言葉が、また一つの騒動の引き金となってしまった。

「えっ? 1メートル? やっぱり膨らんでいたのね」

 リリスはラムリーザの台詞をよく聞いていた。ラムリーザがソニアの胸の大きさを、具体的な数字を上げて言い聞かせていたのを、しっかりと聞き逃さなかったのだ。

「あっ、ラム! それ言っちゃダメなのに!」

「ふーん、1メートルに達していたんだ、くすっ」

「ふえぇ、ラムの馬鹿!」

 ソニアは、ラムリーザの身体をぽかぽかと叩きだした。

「す、すまん」

 ラムリーザが、ソニアをがしっと抱きしめて落ち着かせている横で、今度はロザリーンが棒くぐりにチャレンジしていた。

 ロザリーンは、運動神経も良くて身体も柔軟だ。ソニアはともかく、リリスと違って身体によけいな出っ張りが大きく張り出しているわけでもないので、何の問題も無く通過できたのだ。

「意外と簡単ですね」

「あなたは邪魔なものが無いからね。まぁ、このくらいなら簡単ね、もうちょっと下げてやってみる?」

 二人の言う「簡単」の二文字、さりげなくソニアをからかっていることになっている。

 ソニアは、ロザリーンにも負けてしまい、さらに興奮しだしてしまった。

「ちっぱい! ちっぱいは楽でいいね! ふえぇぇん!」

 ラムリーザの胸に顔をうずめて、再び大泣き。こりゃダメだ。

 ソニアの次にとった行動は、七月に海で見せたものと同じ、物騒なものだった。自分の胸を鷲掴みにして叫ぶ。

「くっそー、こんなものが無ければあんなちっぱい共に負けないのに! 引きちぎってやる!」

「こらこら、やけを起こすなって」

 ラムリーザもあの時と同じように、慌ててソニアの腕を掴んで止めさせる。そのままぎゅっと抱きしめてあげた。

「だってぇ、ふえぇ……」

 ソニアは泣くだけで、収拾がつかない。あー、めんどくさ。

 ほんと、爆乳過ぎて棒もまともにくぐれなかったりする困った娘だこと。

 
 
 
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