奇行に走りすぎて困った娘だ
- 公開日:2016年8月27日
8月22日――
「ほら、泣いてないで一緒に泳ごう。コテージに戻って水着に着替えるよ」
ラムリーザは、リリスとの勝負に負けて泣いているソニアを連れてコテージに戻って行った。
同じ部屋で着替えることは、既に毎日の事になっていたので、二人は気にすることも無く着替え終わった。着替え終わってもソニアが動こうとしないので、ラムリーザはまた手を引いて湖まで連れて行くことになったのだ。
ラムリーザとソニアが湖に入っていくのを見て、リリスもコテージに戻っていくのだった。
そういえばラムリーザは、ソニアと水に入って遊ぶのは、プールの授業以外ではこの夏初めてかもしれない。
「あー、胸が楽ー」
ソニアの胸を見てみると、ぷかぷかと湖に浮かんでいる。
ラムリーザは、その浮いている胸に手を伸ばそうかどうか考えていた。浮いている胸は、形がよくゆらゆらと揺れて、まるで誘っているように見えたりした。
意を決してラムリーザが手を伸ばしかけた時、突然背中に誰かに飛び乗られて、その手を引っ込めることになってしまった。
「なんぞ?!」
ラムリーザは驚いた一方で、ソニアは怒りの表情を浮かべている。
「こらあ! ちっぱいはラムに引っ付くな!」
つまり、リリスも水着に着替えて湖に入ってきて、ラムリーザに後ろから抱きついたのだった。
リリスはソニアに凄まれてラムリーザから離れると、そのまま恭しく礼をして見せてきた。
「仰せのままに、1メートル様」
「くっ……」
ソニアがずっと不安に思っていたことが的中した瞬間であった。こうしてソニアは、Jカップ様から1メートル様へ、見事昇進を果たしたのであった。
「だから引っ張られても困るんだけどな」
いつの間にかラムリーザは、右手をソニアに、左手をリリスに捕まれていた。それだけなら特に問題は無いのだが、二人はやたらと引っ張るので困る。
「魔女は邪魔するな!」
「貴方にはラムリーザはもったいないわ」
これが何も関係なければラムリーザとしては両手に花のありがたい場面だが、ソニアと付き合っている以上リリスには毅然とした態度で接する必要がある。
二人の娘は、ラムリーザを間に挟んでにらみ合っている。ありがたいどころか厄介な場面だ。
その内、怒ったソニアはリリスを追いかけるために泳ぎだした。リリスも捕まるものかと泳いで逃げ出す。二人ともラムリーザの手は離さないまま。
「こら、ちょっと待て、手を離せ」
ラムリーザの言うことは、二人の耳に届かなかった。二人はラムリーザを軸に泳ぎ続ける。ラムリーザは抵抗できずに、その場でグルグルと回り続けるハメとなったのであった。
結局ラムリーザは、二人が泳ぎ疲れるまで回り続けるしかなかったのである。
回って回って溶けるまで――別に溶けはしなかったが、足元の砂が削れて5cmほど埋まっていたりしたのであった。
こうして、最初とは違った陣営になったが、みんなしばらくの間、湖周辺で自由気ままに過ごしていた。
ラムリーザとソニアとリリスは湖の中で遊び、ユコは一人棒くぐりを続けている。
その棒くぐりは、ソニアは体型上クリアできなかった――胸のサイズが普通だったらクリアできていた――のだが、リリスとロザリーンはクリアしている。
だが、ユコは何度やってもくぐることができなかった。身体は柔らかいようだが、それを維持する腰の筋力が足りずに倒れてしまうのだ。
要するに、臨機応変に対処する必要は無いが、高度な柔軟性を維持できず、ってところだ。
いい加減ユコも諦めて、コテージへ戻っていった。それで、次に現れたときは水着姿になっていて、ラムリーザ達の方へ向かってくるのだった。
一方ロザリーンは、いつの間にか桟橋の方へ向かっていっていた。リゲルの傍に行き、釣りをしているリゲルを近くから見つめているようだ。時折リゲルは振り返り、一言二言会話を交わしているようだ。
「リゲルとロザリーン、お似合いだと思うけどなぁ」
ラムリーザは、先程リゲルから聞いた話を吟味した上で、そう思っていた。ラムリーザとソニアがそうだったように、いつも一緒に居れば、少しずつでも進展していくだろう。
とりあえず最初の一投は、次のパーティだな。ラムリーザは、自分の中でそう締めくくって、自分の取り巻きの方へ目を戻した。
美人二人におっぱいちゃん、三人を手中に収めているのは贅沢だ。いや、ラムリーザほどの権力者なら、周りも仕方ないと納得してうるさく言ってくることは無いだろう。
でもラムリーザは、リリスやユコにも幸せな家庭を築いて欲しいと思っていた。その二人の相手が、どうしても見つからなかった時、その時の妥協案としてハーレムを築けばいいと考えたりしていた。
リリス辺りは、妥協ではなく最初から愛人狙いな所が見えたりしていたが、この際気にしないことにしておく。
ラムリーザは、今ではソニアだけでなく、リリスやユコにも幸せになってもらいたいと思うようになっていたのだ。
波の無い湖面は穏やかなものだ。夜、水面に星空が映っていたように、今度は空の青が映っている。
ラムリーザは、しばらく仰向けに浮かんで、そのまま目を閉じて自然と一体化してみようと考えた。聞こえてくるのは風の音と水の音、そしてきゃいきゃいと騒ぐ三人の娘達の声。
だめだ、集中できない。
ラムリーザは諦めて、空を見上げていた。すると水を掛けられたりして、全然和めない。
その後もしばらく湖で遊び、晩御飯はリゲルの釣った魚ということになった。
七月の海遊び以来の、釣ったばかりの魚の串焼きだ。
「足りなかったら夜食を作りますね」
うん、その時はロザリーンの好意に甘えておきましょう。
暗くなってからは、星空の下で演奏会ということになった。最低一人一曲は担当することということで、交代で歌ったりしたものだ。
そして寝るときは、いつもどおりにソニアはラムリーザとリゲルの居る部屋へやってきて、今日は迷わずに入り口から見て左側のベッドに潜り込んできた。
ラムリーザは、幸せそうなソニアの寝顔を見て、安堵しているのだった。
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