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しりとり勝負で風呂掃除役を決めよう

 

 今日はキャンプ最終日。

 そういうわけで、朝から片づけだ。一通り片づけが終わり次第、街に帰ることになっていた。

 今回のキャンプでも、ソニアはラムリーザのベッド皆勤賞獲得したけど、今更どうでもいい。

 キャンプ最後の朝食を終えた後、みんなは手分けして片づけを開始した。

 リゲルは管理人と二人で外回りに行ったので、コテージの中は残った五人で割り振って掃除することにしたのだ。

 内回りで一番面倒なのは、風呂掃除だ。そこだけは、誰もやりたがらない。

「私はキッチンを……」

 ロザリーンは得意分野に逃げようとしたが、ソニア達が許すわけも無かった。

「ん~、リゲルを手伝って外回りに行けばよかったかしら」

 リリスも逃げようと考えているようだ。外回りは外回りで、暑いけどね。

「ふんっ、それだったらリゲル派になれ! ラムに色目使うな!」

「落ち着けソニア。えーと、風呂、キッチン、リビング、寝室ってところだな。これをどうやって割り振るか……、明らかに風呂の負担が大きいな……」

 みんなが嫌がっているのは風呂掃除だということは、ラムリーザ自身も掃除場所を考えてみることでよく分かってきた。そもそもラムリーザ自身が、これまで使用人任せということもあって、あまり掃除をした経験が無い。掃除をするとしたら学校でするぐらいだった。ソニアとは、去年まではそんなにベタベタしていたわけではないので詳しくはわからないが、恐らく同じような感じだろう。

 そういうわけでラムリーザが割り振りを思案していた時、リリスがいいこと思いついたといった感じで口を開いてきた。

「ゲームで勝負しましょうよ」

「ゲーム?」

 しかし、ゲーム機は持ってきていない。まさかキュリオか? ネトゲか? 五月のアレか?

「キュリオのネトゲ?」

 ソニアは尋ねたが、リリスは「違う」と言った。

 そりゃそうだろう。今からネトゲで勝負すると言っても時間がかかりすぎる。しかし五月にプレイしたネトゲで勝負となると、ラムリーザの勝ちは確定だしロザリーンはプレイしていない。

「しりとりよ」

「え? しりとり?」

 なんだかよくわからないが、リリスはしりとりの勝負を提案してきた。

「『ん』で終わったり、続けられなくなった人が負け。その人が風呂掃除ね」

「いいわ、やろうよ」

 ソニアはすぐに乗ってきた。まぁ感情表現の豊かさや、大きすぎる胸もしりとりのハンデになることはないだろう。

 そういうわけで、ラムリーザ達五人は、しりとりで掃除当番の割り振りをすることになったのである。

 

 

「範囲広げたらなかなか終わらないので、日用品縛りで行こう」

「それじゃあ最初は『しりとり』からね。はいラム、『り』」

「いや、しりとりは日用品じゃないだろ……ってまあいいか」

 

「リードギター」「タルタルソース」「スカーフ」「布団――」

 

「やった、リリスの負け!」

 ソニアはうれしそうに叫ぶ。だがリリスは落ち着き払っていた。

「――カバー。布団カバーね」

「ちっ……」

「ところでリードギターって日用品なの?」

「さ、最初は大目に見てということで、出だしも日用品とは言えない『しりとり』だし、ギターということで、ね」

「……まあいいわ」

 そして、二順目が始まった。

 

「バケツ」「机」「鉛筆」「爪切り」「リボン――カバー」

「やっ――って何よそれ!」

「リボンのカバーよ、知らないの? やっぱりソニアはファッションに疎いわね、くすっ」

「くっ……」

 

 三順目――

「バスケットケース」「スーツケース」「スリッパ」「パック」「靴カバー」

 

 四順目――

「バット」「時計」「インク」「車」「枕カバー」

 

「な、何よリリス、さっきからカバーカバーって、そんなのばっかりじゃない!」

 ソニアは怒ったようにリリスの服に掴みかかって叫ぶ。

「日用品だから文句ないでしょ?」

 リリスはソニアの手を払ってどこ吹く風だ。

「ば……」

「十、九、八、七――」

 ユコがうれしそうにカウントダウンを開始する。

「くっ……ば、……バ、バ〇ブ」

「ちょっ、おま……」

「へぇ、ソニアにとってバ〇ブは日用品なのね。いやらしい発情娘、今現在も入れたままだったりして? くすっ」

「うるっさいわね! ほらラム、『ブ』だよ『ブ』!」

「ブ? ……ブルマ?」

「なんだか怪しい方向に向かって行ってますわね……」

「こほん、ロザリーン、次は『ま』だ」

「マタニティドレス」

「スカート」

「トースター、カバー」

 リリスは、思い出したかのようにわざわざカバーを追加する。

「タオル――って、またカバー?!」

「『ば』よ、トースターカバー」

「何よ! トースターでいいじゃないのよ!」

「あら、トースターに埃が入らないように、カバーをつけることは大切なことよ」

「くっ……ば……」

 ソニアは、イライラしたように首を振りながら呟く。

「ば……? 爆弾――じゃなくて、ば……」

「十、九、八、七――」

「ま、待ってよ!」

 ソニアはすがるようにラムリーザの目を見つめてきたが、ラムリーザは肩をすくめてみせるしかなかった。

「爆弾……」

「はい、ソニアの負け」

 リリスはくすっと笑って、ソニアの胸をつついてみせた。

「じゃなくて、ば……、馬鹿! リリスの馬鹿! ふえええぇぇぇぇん!」

 とうとうソニアは、泣きながらコテージを飛び出していってしまった。

「あ、逃げた……」

 ラムリーザが止める間もなかった。

「逃げんな! ソニアあなたが風呂掃除しなさいよ!」

 どういう意図があってか、リリスもソニアを追ってコテージを飛び出していった。風呂掃除だけでなく、他の場所の掃除からも逃げるつもりか?

 残された三人は、ポカーンと二人が出て行った入り口を見つめているしかなかった。

「えーと……」

 仕方なくラムリーザは言った。このまま放置していてもどうしようもない。

「しょうがない、僕が風呂掃除するから、他の場所は二人で手分けしてやってくれ」

「待ってください!」

 声をあげたのはユコだ。

「ラムリーザ様一人に風呂掃除させるわけにはいきませんわ、私もやります」

「ん、それは助かるよ」

 ラムリーザとユコが、連れ添って風呂に向かおうとしたら、そこにロザリーンもついてくるのだった。

「あれ、ロザリーンどうした?」

「いえ、三人でやれば早く終わると思いまして。こうなったら三人で協力して全部終わらせましょう」

「ん、そうしよう」

 この時ラムリーザは、傍でユコが軽く舌打ちしたのに気がつかなかった。こうして三人は、一緒に風呂掃除を始めるのだった。

 

 

 リゲルがコテージに戻ってきた時、リビングには誰も居なかった。ソファーのクッションは乱れ、台所は食器がそのまま置かれている。

 部屋の外からかすかな笑い声が聞こえた。それは露天風呂から聞こえてくるようだ。

 リゲルが露天風呂に向かっていくと、そこはラムリーザがホースで水を流し、ユコがデッキブラシで床を磨き、ロザリーンがスポンジで壁面を拭いている最中だった。

「三人か? あいつらは?」

「逃げた」

 ラムリーザの簡潔な答えにリゲルはやれやれとばかりに首を振った。そのままリゲルはリビングに戻っていき、そこの片づけにとりかかるのだった。

 

 ソニアとリリスの二人が逃亡したために時間がかかったが、十時頃には片づけは全て終わった。

 それから管理人のおじさんにお礼をして、そのまま街まで帰ることにした。

 ここででしゃばって来たのは、掃除から真っ先に逃げ出したソニアだ。

「帰りはあたしが運転するよ、するよ!」

「ダメだ!」

「なんでよー」

「お前が運転したら、車壊しそうだ」

「なにそれ……」

 事故を起こしそうだではなく、壊しそうだという所に、リゲルのソニアをどう見ているかが伺える。

 最後はリゲルが運転するということで、行きと同じ二人体制で途中まで誰が他の人が運転することにしたのだ。

 ラムリーザは、無用の争いを避けるために、自分が運転手を引き受けて、運転席に乗り込んだ。そうすると、ソニアはものすごい勢いで助手席に乗り込むのだった。

「リゲルの補佐をする助手席はラムでも、ラムの補佐をする助手席はあたし!」

 言いたいことは分かるが、邪魔はしないで欲しいものだ。

 リリスとかは、「足を引っ張るだけ」と言って、後ろに乗り込んでいった。そしてソニアの後ろから、座席に手を回して胸に手をかけようとして――。

「やめようね」

――ラムリーザにたしなめられて、しぶしぶ手を引っ込めるのであった。

 

 

 運転中、ラムリーザは呟いた。

「ふう、これで夏休みも終わったようなものかぁ」

 実際にはまだもう少し残っているのだが、大きなイベント的には終わったようなものだ。

 ラムリーザの何気ない一言で、車内はしんみりとしてしまった。

「もーっ! 湿った空気嫌!」

 ソニアは大声を張り上げて、雰囲気を一転させようとする。

「そうですわ! 夏休みが終わったら全てが終わりってじゃありませんの!」

「それじゃあユコ、その意気で怪談の続きをしましょう」

「ここで?」

「確か二順目はもっと気味が悪いのをやるって言ってなかったかしら?」

 リリスに促されて、ユコは胸を張って語りだした。

「昔々、あるところにおばあさんとおばあさんが住んでいました」

「レズ太郎かよ!」

 結局、最後の先後まで賑やかなキャンプになったようだ。

 ほぼ中間地点となる、行きに寄ったのと同じ食堂で昼食を取り、最後はリゲルの運転で街まで帰ってきたのであった。

 三泊四日のキャンプ生活は、これにて終了。

 
 
 
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