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余話

 

 気がつくとラムリーザは、見たことも無い所に居た。

 周囲は薄暗く、草木も生えておらず、無機質な岩が転がっている。空は紫がかっていて、所々に赤い雲が浮かんでいる。

 この様な場所で、ラムリーザは一本道をひたすら歩いていた。

 後ろを振り返っても、同じ景色が続いている。

 いつどこからここに来たのか分からなかった。

 他にできることも無いので、道を進んでいくしかなかった。ただ、どれだけ歩いても不思議と疲れはない。

 ここはいったいどこだろう? なぜこんな所に自分は居るのだろう?

 どれだけ考えても、なにも分からなかった。

 

 しばらく進んでいくと、左手に川が見えてきた。どんよりと濁った水が流れている。

 このまましばらく、川に沿って歩くことになった。

 そのうち道は、何故か川の中に入っていくような形になって途切れていた。元々は橋でも架かっていたのだろうか?

 ラムリーザは、このまま道なりに進んで川に入ったものかと考えた。しかしすぐに、ここがどこか分からないのに無理をする必要は無いという考えに至って、水辺にたたずんだ。

 ふぅ、一つため息を吐いて周囲を見回すと、道から離れた川岸に一軒の小屋が建っていた。

 そこで、道を外れてその小屋に行ってみることにした。木でできた小屋で、その小屋だけが周囲の雰囲気と違って、ごく普通の雰囲気を表している。

 入り口にたどり着いたラムリーザは、とりあえずノックしてみたが反応は無いようだ。そこでドアを開けようとしたが、鍵がかかっているのか開くことは無かった。

 入り口脇に木でできたベンチがあったので、ラムリーザはそこに腰掛けてしばらく様子を見ることにした。

 しかし頭に浮かぶのは、ここはどこだというのと、自分一人だけなのかということだけだった。

 それからしばらくの間、ラムリーザはベンチに腰掛けたまま、ぼんやりと川の流れを見ていた。向こう岸はもやがかかっていて良く見えない。

 よく見ると、時折人が道を歩いている。どうやらこの世界に自分一人というわけではないようだ。

 歩いてくる人は、みんな道に沿って川に入っていく。それを見ていると、ラムリーザ自身も川の中に入るべきなのかな? と思うようになってきた。

 その時、頭の中に声が響いてきた。

 

「ラムリーザ、だね?」

 

 誰だ?

 ラムリーザは周囲を見回したが、誰も傍には居なかった。声にも聞き覚えは無い。

「ラムリーザ、聞こえているかな? 君に頼みたいことがある」

「誰ですか?」

 ラムリーザは声に出して尋ねてみた。だが相手は、質問に答えることなく話を進めてきた。

「君にある力を与えよう。その力を使って救ってほしい世界がある」

 力? 世界?

 ラムリーザは、何のことだか分からなかった。

「これから君をその世界に転送する。いいね?」

「ちょっと待ってください」

 ラムリーザは慌てて答えた。

「僕には大切な人が居るし、これからやらなくちゃいけないことだってあるんですよ?」

 ソニアのこと、そして新しい街のことだ。別の世界なんて行ってる場合じゃない。

 しかし、謎の声が発した次の言葉は、にわかには信じがたいものだった。

「元の世界での君の肉体は、滅びようとしている。だから――」

 いったいどういうことだ?

 しかしその時、周囲の視界が白く濁り始めた。濁りは徐々に輝きに変わり、小屋も川も道もだんだん見えなくなってきた。

「――早かったか、まだ君は――」

 謎の声は掻き消え、辺りは完全に真っ白な光になってしまった。

 次の瞬間、耳の傍で大きな声がした。

 

「ラム! 死んじゃ嫌! 目を覚まして!」

 

 聞き慣れた元気の良い大声だ。

 ぼんやりとしていた意識が回復すると、目の前に緑色の髪をした女の子が、泣きそうな顔でこちらをのぞき込んでいた。

 ラムリーザと目が合うと、嬉しそうな声を張り上げる。

「あっ、ラムが目覚めた! よかったぁ……」

 そこは、いつもの下宿先の自室にあるベッドの上だった。

 ラムリーザは、まだ少し気だるさは残っていたが、ゆっくりと身体を起こした。するとそこには、普段ここには居るはずがない人が居たりした。

「あれ? 母さん?」

 ラムリーザの母、ソフィア・マリーチ・フォレスターがそこに居たのだ。

「なぜここに母さんが?」

 ラムリーザは、尋ねると同時に大事なことを思い出した。清くない交際がばれた?!

 だがソフィアの答えも、すぐには理解できないことだった。

「あなたが目を覚まさないと聞いて、慌てて駆けつけてきました」

「そうだよ! ラム、全然起きないんだもん。叩いても揺すっても、何の反応も無かったんだよ!」

「ん、少し深く眠りすぎたか?」

 ソニアの目覚ましボイスでも目覚めないとは、よほど疲れていたんだろう。

 その時ラムリーザは、窓の外に目をやって外の景色が赤いことに気がついた。

「もう夕方の六時です。ラムリーザ、あなたは半日も意識を回復しなかったのですよ」

 意識? 回復? ひょとしてまた頭をやってしまったか?

 ラムリーザがベッドから降りて立ち上がると、ソフィアは安心したように言った。

「とりあえず今回は、何事も起きなかったようですね。でもあなたは……、いえ、いいわ。とにかく身体を大切に」

 ソフィアはそう言い残すと、部屋から出て行った。

 ラムリーザの身体に異変が生じたことを、ソニアから聞いて慌てて駆けつけたが、無事ラムリーザが回復したので、安心して帝都に帰っていったのである。

「それよりー、あたしおなかぺこぺこー。朝から何も食べてないんだよ?」

「食べたらよかったじゃないか」

「だってラムが……」

 ソニアはラムリーザに抱きついてきた。ラムリーザが心配すぎて、食事どころじゃなかったのだ。

「よくわからないけど、心配かけちゃったみたいだね。ごめんよ」

 ラムリーザは、ソニアの頭を撫でてあげた。

「ふえぇ……」

「ふえぇじゃない。ほら、もう夕食だけど食べに行くぞ」

「うんっ」

 そう言ってラムリーザは、ソニアを連れて食堂に向かうのだった。

 夏休みも今日でおしまい。「ラムリーズ」としての初めての夏休みは、こうして終わっていったのであった。

 

 
 
フォレストピア創造記 ACT.2 ~完~
 
 
 
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