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竜神ルヴァル二ア神殿を作ろう

 

 休日の朝は、いつもながらのんびりだ。

 前日は帝都でライブ活動のために遠征したりするので、よりいっそうのんびりしたくなるものだ。

 ラムリーザはバルコニーに出て、木造デッキチェアに腰掛けてくつろぎ、ソニアは先ほどから携帯のメールと格闘している。おそらく、またリリスとの罵り合いメールをやっているのだろう。

 そうならば、今回もラムリーザの携帯にリリスからのメールが届いたことが発端となっているということだ。リリスからのデートの誘い、それにソニアが噛み付いたところから今日は始まった。

 

 その時、部屋の入り口をノックする音が聞こえた。

 ラムリーザが「はい」と答えると、外から使用人の「ラムリーザ様に電話です」と言ってきた。

 ラムリーザは部屋から出て、屋敷に備え付けられている固定電話に向かいながら、誰だろうと考えた。

 リリス達は携帯電話しか知らないはずだし、帝都のジャンにも、携帯電話の番号を教えてからはそちらを使用している。家族にも夏休みに帰省した時に、直接用事がある時は携帯電話を使うように言ったので、そちらにかけてくるはずだ。

 そういうわけで、親戚の屋敷の電話にラムリーザ宛の用件が来ること自体が珍しいことだった。

「はい、ラムリーザ・フォレスターです」

 相手がわからないので、真面目に対応する。相手がリゲルやジャンなら「大魔神です」とか答えるし、ユコならキャラを作ってあげれば喜ぶところだ。その一方で、リリスとロザリーンには普通に対応しておくのが無難かな。

 相手は、神殿関係者だった。いわゆる宗教家だ。

 エルドラード帝国の国教は、小さな物を省くと主に竜神ルヴァル二アを崇めるものであった。

 それぞれの地域に最低一つは神殿があり、中に大きな祭壇と竜をかたどった彫像が置かれている。

 それは、今現在ラムリーザが開発を始めようとしている新開地も例外ではなく、神殿を建てるという話が舞い込んできたのだった。

 

 軽くその宗教について、子供でも知っているレベルで触れよう。

 この世界は、竜神ルヴァル二アの見ている夢だと語られている。また、昔はこの大地は竜神ルヴァル二アの背中の上だと信じられていたのだ。

 あまり宗教に熱心でも詳しくもないラムリーザが知っているのは、このぐらいである。

 

 そういうわけで、国教の宗教関係者の話を無視するわけにはいかないので、ラムリーザは快く返事をして、実際に会うことになった。

 話し合いの場所は、新開地。一ヶ月ちょいぶりに訪れることになる。

 とりあえず遊びに行くのではなく、ちゃんとした話し合いの場になるので、カジュアルな格好はふさわしくない。かといって、パーティでもないので正装で行くのもおかしい。

 このように衣装に困ったときは、学校の制服で行けばよい。これだから学生のうちは楽だ。

 しかし問題が生じた。ソニアも行くと言い出したのだ。

 だが、ソニアの格好に困る。

 ラムリーザと同じように、学校の制服を着せたら問題ない、というわけには行かない。

 制服を着せたらブラウスのボタンが留まらなくて、胸が大きくはだけた状態になってしまう。かといって、パーティードレスで行くのも妙な話だ。

 かと言って、普段着で行かせると、際どいミニスカートしか持っていなくて、それも論外。もっとも、制服のスカートも短いのだが……。

 やはり留守番、というのをソニアは絶対に受け入れない。

 ラムリーザは、今後も公の場に連れ出さなければならない状況も増えると見越して、ここはやはり連れて行くことにした。

 胸は仕方がない。制服でそうなるのだから、これはどうしようもない。

 だがソニアは、制服は嫌だと駄々をこねる。

 それに対してラムリーザは、ソニアに留守番か制服かという究極の選択を迫り、しぶしぶ着替えさせることに成功したのだ。それと同時に、ソニアの身体にフィットした服を仕立ててもらうのもありかな、とか考えるのだった。乳袋を付けるとか……。

 そういうわけで、一時間後には制服に二人は着替え、新開地の駅の傍にある倉庫前に到着していた。

 

 倉庫は八月の地点ですでに完成していて、一階は各種倉庫部屋、二階は会議室や談話室が出来上がっていた。

 そこで、ラムリーザ達は談話室の一つに案内され、そこで神殿関係者と会うことになった。

 相手は年配の男性と、若い女性の二人だ。おそらく高位の司祭と竜巫女のリーダーといったところだろう。

 その二人は、席に着いて顔を見合わせるやいなや、ソニアの胸に注目してしまう。これはやはりスルーできないか……。

 ソニアはその視線に気がついて、スッと腕を胸に当てて隠す。うん、今日はそうしていてくれた方が助かるというものだ。

 そういうどうでもいい前置きもあったが、早速話し合いが始まった。挨拶は軽く済ませて本題に入る。

 まず、神殿は街中に造るか外れに造るかという話になったが、自然の中にある神殿のほうが趣があるというラムリーザの意見を取り入れて、山のふもと付近に造ることに決まった。

 場所さえ決まれば、建築や内装に関してはラムリーザは口を挟むことはしない。そういうことはそいろいろと歴史の中で決まっているものだし、ラムリーザ自身、それほど興味は無かったりした。

 あとは契約書のサインぐらい。特に問題は無い。

 ラムリーザは、この地で住むことになる新しい屋敷を山中に建てることにしていたので、途中まで同じ道を進み、山に近づいたら二手に分かれるということにして、屋敷とそれほど遠くない場所にあってもいいかな、と思ったりしていた。

 それから神殿の規模等について話をしていた。どのぐらい投資してくれるかで、規模が変わるらしい。要は、帝国や領主からのお布施で成り立っているわけだ。

 話が一段落したところで、ラムリーザはふと思ったことを聞いてみた。

「そういえば、私の母は呼ばなくてもいいのですか?」

「あなたの母、ソフィア様ですか? 実は先にソフィア様を伺ったのですが、将来はあなたが領主になるということで、こういうことから経験させておきなさいという話になったのですよ」

「そうですか、では任されましょう」

「まぁ、神殿関係に関しては、出来上がっているルールに沿って話が進みますので、我々に任せて置いてください。そんなに難しい話になることは無いでしょう」

 竜神ルヴァル二アに関しては、よくわからない宗教ではなく国教である。任せていたとしても、変な話になることはないだろう。最初の仕事としてはうってつけだ。

 神殿作成は、街の基本、領地の基本。ラムリーザのような、神殿関係者以外がやることといえば、先ほど行った契約書のサインと、場所決めぐらいだ。

 そういうわけで、その後は具体的な立地場所を決めるために、移動することになった。

 ラムリーザは、彼らの乗ってきた車に相乗りして、建設予定地となる場所まで行ってみることにした。

 ラムリーザの住むことになる屋敷へ向かう山道のふもとへ向かい、神殿はそこから少しだけ離れた場所に造ることにした。まあ、街が発展していけば、この辺りまで開発されることになるだろう。

 神殿は、これから建設を開始すれば、早ければ年明け前には完成するとのことだ。

 つまり、ひょっとしたら来年は、新年を一足早く新開地で迎えることも可能というわけだ。

 そういった未来を思い浮かべながら、ラムリーザとソニアは神殿関係者といったん別れて、建設中の屋敷の方へと向かっていった。

 

 そういえば、今日の話し合いの途中、ソニアは口を挟むことなくおとなしくしていた。

 突拍子も無いことをする娘だが、一応分別はあったようだ。話がわからなかったのか、お飾りに徹していたのかはわからないが、今日の態度は合格点だ。

 屋敷はまだ建築途中だったので、屋敷前の庭園で一休み。山から小さな川が流れていて、川のせせらぎが心地よい。

 ラムリーザは、川の傍に腰を下ろす。するとソニアは、すぐに右脇に引っ付いてきた。

「ねぇ、さっきのおじさん、なんか高貴な感じがしたけど、やっぱり聖職者?」

 ソニアは、履いていたサイハイソックスを、太ももの半ばから足首まで下げながら尋ねてきた。

「そうだね、偉い人だぞ。竜神司祭、礼儀正しくしようね」

「竜司祭かぁ。そういえば竜巫女って可愛いよね」

 竜巫女とは、竜神ルヴァル二アに仕える巫女ということで、若い女性が選ばれてその大役を引き受けていた。

「ソニアも竜巫女やってみる?」

「ん~……。でも、そういうのになるのって、やっぱり徳を極めないとなれないんでしょ?」

「徳って何だ?」

「えーと、優しさ、誠実さ、勇敢さ、献身、公平さ、名誉、清らかさ、謙虚の八つだよ」

「ふーん」

 八つの徳など、ラムリーザは聞いたことも無かった。もともと宗教に疎いところがあったので、仕方ないとは思いつつ、領主として少しは宗教について学ぶ必要があるのかな、とか考えていた。

「ラムは優しさの徳を極めているね」

 よくわからないが、ソニアがそう言うのならそうなのだろう。

「それならソニアは、勇敢さ?」

「あたしは戦士かぁ。あ、ラムは身分の割に偉ぶったりしないから、謙虚な羊飼いね」

 ラムリーザは、少しわけがわからなくなった。なぜ謙虚だと羊飼いなのだ?

「羊飼い? ひょっとしてゲームの話?」

「えーとね、ラムは詩人と羊飼いのどっちがいい?」

 詩人がどこから出てきたのかわからない。

 だが、ラムリーザは詩人ってがせじゃなかったので、羊飼いだと答えた。どっちかと言えば、羊でも飼いながらのんびりと過ごしたいものだ、などと考えるのだった。

「ソニアは、後は誠実かぁ」

 ソニアは奇行に走ったりする妙な娘だが、嘘を吐いたことは、ラムリーザの知る限りでは無かった。しかし、ソニアはまた不思議なことを言う。

「魔法使いかぁ……、それじゃああたしは魔法戦士?」

 やはりゲームの話だろう。

 しかし、徳を極めるなどというご大層なゲームもあったものだ。何だろうか? ひょっとして聖者でも目指すのだろうか?

「あ、でもラムは公平さは持たなくていいからね」

「なんでだ?」

 不公平を認めるのも妙な話だ。

「リリス達なんかほっといて、あたしだけを大切にしてくれたらいいの」

「……まぁ、それも一理有るが、友達としてないがしろにはできないよ」

「そんなにアバターリアになりたいの?」

「いや、ゲームの話は知らんて。あーでも、人間としてその八つの徳に沿って生きるのも悪くないね。何ていうかな、清く正しく生きましょうってか?」

「ふーん、アバターリアになるんだ」

「少しはゲームから離れなさい」

 そういうわけで、この日の午後は、のんびりと自然の中で過ごしたのであった。

 

 

 夕方になった頃、再び山を下り神殿関係者の二人と合流して、新開地の駅まで戻ってきた。

 その時司祭様は、ソニアの脚をいぶかしむような目つきで見ていた。

 なぜだろうとラムリーザは思い、ソニアをじっくり見て気がついた。

 制服の短いスカートから伸びる、健康的な生脚……。

 最初はサイハイソックスで露出は抑えられていたが、屋敷前の庭園でさりげなくずり下ろしていたのを、ラムリーザは完全に見落としていた。

「なんでもありません、気にしないでください」

 ラムリーザは、慌ててソニアと司祭の間に割って入り、ソニアを司祭の視界から消した。その後、駅で司祭と竜巫女の二人と別れた後で、ソニアのむき出しの脚に、ローキックをぶちかましてやるのだった。

 
 
 
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