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なでなでじゃなくてぱふぱふ(意味不明)

 

 週末に行なわれているオーバールック・ホテルのパーティにて。

「あたしもラムを可愛がりたい!」

 ソニアは突然わけのわからないことを言ってきた。

 おおかた、ユグドラシルがお姉さんキャラに可愛がられているか、遊ばれているか、そんな光景を見て自分もやってみたいという気になっただけだろう。

 とくに断る理由も無いので、ラムリーザは頭を下げて「好きにしろ」と言った。

「お辞儀じゃなくて、身体ごと下げてよ。あとこれ持って」

 そう言ってソニアは、手に持っていた食べかけの骨付き肉を突き出してくる。やはりこの娘の行動は、よくわからない。

「肉は全部食べて片付けてきなさい」

「むー!」

 ソニアは、骨付き肉をくわえると、両手でラムリーザの肩をつかんで跪かせようと押さえてきた。座るわけにはいかないので、仕方ないなとは思いながらも、ラムリーザは膝に手を当てて中腰になってあげるのだった。

 そこでソニアは、さらにラムリーザに近寄って頭を撫でようとしてその場に固まってしまった。

 ラムリーザの頭は、丁度ソニアの胸の下に隠れる位置にあったため、ソニアの視界にはラムリーザの頭は見えずに大きな胸が見えているだけだ。

「くっ……」

 ソニアはラムリーザの頭を両手で挟んで持ち上げると、自分の胸に押し付けて、なでなで、なでなで……。

 おそらく周囲からは奇妙な光景に見えたことだろう。

 ニバスなどには、「それはなでなでというよりぱふぱふだな」と呟かれてしまう始末である。

 ラムリーザは、ニバスのつぶやいた「ぱふぱふ」という言葉を聞き漏らさなかった。その意味を瞬時に悟ると、ソニアの手をつかんで引き剥がすと、そのままスッと立ち上がった。

「あによぉ、あああえあえひへいるだへなのにー」

 ソニアは骨付き肉をくわえたまま何か言っているが、ラムリーザは聞いていなかった。

「終わり! ニバスさん、ユグドラシルさん、失礼します!」

「おう」

 ニバスはすぐに返事をしたが、ユグドララシルはお姉さんキャラに遊ばれている最中だ。

 ラムリーザはニバスハーレムを脱出して、リゲルの所へと戻っていった。

「あ、待ってよー」

 ソニアも慌ててラムリーザの後を追いかけていくのだった。

 

 ラムリーザが、リゲルとロザリーンの居る所へ戻ると、リゲルはすぐに尋ねてきた。

「お前、ニバスと知り合ったのか?」

「うん、まあちょっとした秘密があってね」

「学校の裏山で――」

「こほん!」

 ソニアが要らんことを言いそうになったので、ラムリーザは大きな咳払いで邪魔をした。ソニアにとって秘密は、有って無い物になってしまうというのか……。

「ふむ……」

 リゲルは腕を組んで、先程までラムリーザの居たニバスハーレムの方へと目をやった。

「まぁ、彼は敵にはならない。ケルム派でもない独自の集団を作り上げている。つまりハーレム……、傍から見るとちとアレだが、実質害は無いただの女好きだ。お前みたいにな」

 リゲルがにやりと笑って言ってくるので、ラムリーザはすぐに言い返す。

「やめい。たった今、リゲルにもハーレムが形成されるおまじないをかけておいた。楽しみにしているんだな」

「フッ……、ありえんな」

 ラムリーザとリゲルが、そんな話をしている所に、ユグドラシルがやってきた。ようやくお姉さんキャラから開放されたのだろうか。

「いやぁ、参った参った。いいにおいで脳が転送されるかと思ったよ」

「何ですかそれは……」

「兄さんは、美女が苦手ですから」

 ロザリーンは、くすっと笑って言った。

 しかし本当だろうか? ソニアとは普通に楽しそうに話をしているようだが?

「美女が苦手って、ソニアは平気なんですね」

 ラムリーザが尋ねると、リゲルが横から口を挟んできた。

「こいつは美女じゃなくて、風船おっぱいお化けだからな」

「なっ、なにおぅ?!」

 当然いきり立つソニアを、リゲルはシッシッと追い払うような仕草で払いのける。

 まぁ、ソニアは美女というより可愛い系なので大丈夫なのだろう。

「いやぁ、自分はああいう妖艶なっていうのかな、魅惑的なのが苦手だよ」

 ユグドラシルは頭をかきながら、照れ隠しの笑いを浮かべながら言う。

「それじゃあ、リリスさんとかダメですね」

 ロザリーンは、リリスの名前を挙げたが、ユグドラシルはきょとんとした顔をしている。

「リリス? 誰?」

「魔女」

「魔女?」

 ソニアの説明ではわからない。いや、魔女といきなり言われてわかったらそれはそれですごいが……。

「根暗吸血鬼」

 ソニアの次の一言で、ユグドラシルはポンと手を打って「ああ、あの地味な娘か」と理解することができた。

「いや、前も言っただろ。悪い噂に乗せられてからかうのはよくないって」

「いいの、あいつは寝取り魔女お化けだから」

「いや、ネトリって何だよ」

「兄さんは中学時代のリリスさんの噂しか知らないのよね。たぶん今のリリスさんを見たら驚くと思うわ」

 ロザリーンも楽しそうだ。確かに今のリリスは、どこが根暗なんだ? と感じる風になってきている。

 

「それよりも、だ」

 ユグドラシルは、突然真面目な顔つきになってラムリーザ達を見つめてきた。

「確か君達はバンド組んで演奏しているよね? 生徒会長のジャレスから話は聞いているし、校庭ライブもやっていたよね?」

「もう必要ないから校庭ライブはほとんどやっていないけどね」

 これは、元々リリスを場慣れさせるために、回数をこなして経験させるためにやっていたことだ。リリスの誕生日事件などを通して、リリスの欠点が完全に克服されたことで、今では部室や自宅での練習、帝都での本番だけで十分になっていた。

「あ、校庭ではもうやってないんだ。まあいいや。そこで相談なんだけど、自分もバイオリンやってるんだよね。できたら今度一緒に演奏してみたいな、とか。場所は……、こことか?」

「いいですけど……」

 ラムリーザがそう答えると、ユグドラシルは「ちょっと待っててね」と言って少しの間どこかに行ってしまった。そして戻ってきた時には、楽譜を手にしていたのだった。

「サンフラワーって曲だけど、バイオリンとピアノとベースとドラムがメインになっている曲なんだ。ちょぅど君達はそのパートを担当しているみたいだから、ここでやってみようよ」

「うん、ラムがやるならやる」

 ソニアはいつもの調子である。

 だがリゲルは、「俺は暇そうだな」と言った。そういえばユグドラシルから聞いたパートには、ギターは入っていなかった。

「大丈夫、ユコに頼んでギターのパート作ってもらうよ。持ちネタが増えて喜ぶだろうし」

 ユコなら、バイオリンのパートをリードギターにアレンジしてしまうことも可能だろう。

 そういうわけで、ラムリーズ・ロイヤルバージョンでの活動が行なわれることになったのだ。

 

 もう一つユグドラシルから話を聞いた。

 ユグドラシルは、文化祭の実行委員になったというのだ。

 ここでうまく活躍できて評価を得ることができたら、次の生徒会長就任も夢じゃないということらしい。

 そこで、ラムリーザにも協力できることがあればできるだけ手助けしてあげるということで話をとりまとめたのだった。

「そういえばラムリーザ君は、クラスの出し物と部活の出し物とで、どっちを優先するのかな?」

「ん~、両方? いや、まだどっちも決まってない……よね? ロザリーン」

「はい。試験休みが終わったら、早速クラスで話し合いをして出し物は何にするか決めようと思っています」

 そういえばロザリーンはクラス委員だ。なんという優等生兄妹なんだろう。

 ラムリーザは、自分もそうありたいと思ったが、この二人と比べると、明らかにソニアが見劣りしすぎる。どう取り繕っても、おそらくイベント開始五分で、ソニアのボロが出るだろう。

 先日、神殿関係者の偉い人と会ったときも、ソニアは結局そういった人と会うときにはふさわしくない、露出度の高い格好をしてしまったという悪例がある。

 今も、再び新しい骨付き肉を手に取って、豪快にかぶりついている。

 どう取り繕っても、結局は庶民、似非お嬢様でしかないのだ。過度な期待はできない。

 いや、妹と言うならソニアではなくてソフィリータだ。

 しかし、ソフィリータは大人しくて礼儀正しいが、ロザリーンの様に優等生だという話を、ラムリーザは聞いたことがなかった。ダメじゃん。

 そんなことを思いながら、もうどうでもいいやという気分になって、ラムリーザもテーブルの上の食事に手を伸ばすのだった。

 
 
 
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