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ゲームセンターにレッツラゴー

 

「ねえ、また一緒にゲームセンター行きましょうよ」

 部活動の時間がしばらく経った頃、ユコはラムリーザをチラ見しながら言ってきた。これは、またメダルゲームはやりたいのだが、一人でゲームセンターに行くのが怖いということだ。

「あ、ラムは喧嘩弱いから」

「ぶっ」

 ソニアのぶっきらぼうな物言いにラムリーザは思わず噴出す。喧嘩は弱かったっけ、と言ってもこれまで喧嘩らしい喧嘩は一度しかやったことない。ラムリーザの欠点は、弱いというより慣れていないために加減が難しいということだろう。レフトールに余計な怪我を負わせたことが記憶に新しい。

 それでも、ソニアの物言いにたいしてユコは黙ってしまった。

 もしも争いに巻き込まれたらラムリーザを頼るのか、そう考えるとユコは行きたいのと不安とで揺れ動くのだった。

「そうだ、ユコは喧嘩強い人誘ってゲーセン行けばいいんだ。あ、ラムはダメだからね」

「何でよもう……」

「でもラムリーザはあのレフトールに勝ったのでしょ? 喧嘩強い人にならないかしら?」

「そうですわ、ゴムマリ破壊するようなラムリーザ様は強いんですの。ソニアはなぜそんなに悲観的なの? いじわるしているだけじゃないんですの?」

 ソニアは、ユコから顔を背けて呟いた。

「あたしはただ、ラムと平穏に暮らしたいだけ。あんたたちが纏わりつかなくて、あたしとラムと二人きりだったら目をつけられることもなかったのに」

「そうはいかないわ。しかし……」

「そうね、あいつさえ居なければ、こんなに悩む必要はなかったのに……」

 やはりレフトールの存在により、少し気弱になっている三人娘であった。

 

「ごめんくさい」

 

 そこに、芝居がかった口調で挨拶するものが現れた。

 すぐにソニア達三人は嫌な顔をする。

「またあいつが来たわ……」

「あなたさえ居なければ……」

 三人娘の反応を見て、部室に登場したレフトールはしょげて見せる。ラムリーザは許しても、ソニア達三人はそう簡単に許さないようだ。

「まだ許してくれないのかよぅ。厳しい、非常に厳しい~っ!」

「あなたは一生業を背負うのよ」

「そうですの! あなたは私がラムリーザ様に引っ付くのが気に入らないでしょう?」

「ちょっとユッコ、そういうのはそいつだけじゃなくて、あたしも気に入らないから」

 しかし、レフトールはそのことに関しては何も気にしていない風に答えてきた。

「ラムさんぐらいの人だったら、ハーレム築いていても不思議じゃないねぇ」

「あなた、前と意見変えたわね。あの時はそれが気に入らないって絡んできたくせに」

「記憶にございません。財布にもございません」

「まあいいわ。それよりもね、今私達すごく困ってるの」

 リリスは、レフトールの目をじっと見据えて語ったきた。レフトールがその視線に対して睨み返してみると、リリスはふぅとため息を吐いて視線を逸らした。

「何々? 俺で役に立つことなら何でもするぞ?」

「そう? じゃあ私達の前に現れないでほしいんですけど」

「そうですわ、あなたみたいな人が居るから、私達は安心してゲームセンターに行くことができないんですの!」

「ゲームセンター?」

 レフトールは意外そうな顔をするので、ラムリーザは先程まで揉めていた話を聞かせるのだった。喧嘩に巻き込まれるのが嫌だから、ゲームセンターに行きたいのに行けない、と。

「いやいやお前ら勘違いしてるって。ゲーセンはゲームする場所、喧嘩する場所じゃないぜ」

「でもあなたみたいな人は、私達がゲームセンター行ったら絡んでくるんでしょ?」

「それでお金奪ったりするんでしょ?」

「そりゃまあナンパもカツアゲもたまには――いやいやいやいや、そんなことは無い、無いぞーっ!」

 ソニア達三人は、必死で弁明するレフトールをジト目で見つめている。

「まあいいや、たまには息抜きしよう。練習にアフレコに、文化祭に向けてちょっと仕事しすぎているからね。そうだ、レフトールもいっしょにどうかな? 君が居たら何かと牽制になるかもしれん」

 ラムリーザはその場の空気を正常に戻すため、あえてレフトールも誘ってみる。最近ではレフトールも、あの日の事を悔いて自分達と仲良くしようとしているのは感じ取れた。ソニア達にも受け入れてもらえるよう、少しでも一緒に居られるならそうしようと考えたのだ。

「そうだ、俺が居たら悪い奴もビビッて襲ってこないって。大丈夫大丈夫、俺とラムさんだろ? リゲルも来るんだったら怖いものないじゃないか」

 ラムリーザが好意的なのを見て、レフトールはここぞとばかりにアピールしてくる。

「お前は良い意味でアホだな」

 リゲルは相変わらずレフトールをアホ呼ばわりだが、レフトールは気にせずに先頭に立って部室から出ていこうとした。

「ではゲーセン目指して、レッツラゴー!」

 ソニア達は、まだ嫌そうな顔をしていたが、ラムリーザとリゲルが後に続いて行ったので、しかたなくついていくことにしたのた。

 

 

 ゲームセンターにて。

 ユコは、早速小遣いをメダルに替えて、メダルゲームを開始した。結局のところ、来るまでが怖いのであって、一旦来てしまうと熱中してそんなことは忘れているようだ。

 リゲルとロザリーンは、前回来た時と同じように、二人でエアホッケーを開始している。

 ソニアとリリスは、今日は格闘ゲームコーナーに行って、対戦を始めたようだ。

 ラムリーザは、レフトールと一緒にパンチングマシーンの前に来ていた。前回は、このマシンはソニア達が占拠して、エターナルなんとかパンチとか叫んでいたっけ。

 ソニア達で、50から70ギガのパンチ、リゲルは112ギガだったっけ。そしてラムリーザの140ギガパンチで、ソニア達に絡んできた男子生徒を黙らせたりしたものだ。

 そこでレフトールは早速マシンのパッドに殴りかかった。

 記録は67ギガ、ソニアよりも弱い。というよれ、殴った直後、拳を抱えてうずくまってしまった。

「どうした? 大丈夫か?」

「拳怪我してるの忘れてた、いってぇ……」

「ぬ、すまん」

 レフトールの指を脱臼させてしまったラムリーザは、つい条件反射的に誤ってしまう。

 しかしレフトールは気にするなと言って、少し距離を取ると、いきなりパッドを蹴りつけたのだった。

 記録は128ギガ、かなりの威力だ。

「ふっふっふっ、俺はどちらかと言えば蹴りの方が得意なんでね。しかしこれが効かないんだから、ラムさんのボディは堅いってもんだ」

 ラムリーザは、レフトールの台詞に肩をすくめてみせた。

 そこに、フロアの係員がやってきたのだ。係員は、レフトールの方を厳しい目で見ながら言う。

「お客さん、このマシンはパンチ用です。危険ですので蹴るのはご遠慮願います」

「何だとオラァ!」

 レフトールは凄んで見せるが、係員は毅然とした態度でじっと見つめている。

 このままでは騒動になりかねないので、ラムリーザはレフトールの肩に手をやって穏やかに言って聞かせた。

「ルールは守ろうね。威嚇して無理を押し通すのはよくないよ」

 レフトールは、視線をラムリーザと係員の間に行き来させた後で、「ちぇっ」と舌を鳴らして軽く係員に頭を下げるのだった。

「そう言えばお前のパンチどのくらい? あの夜殴られたとき、かなりの衝撃受けたんだが」

「それじゃあ一発」

 ラムリーザは、レフトールに促されてパンチングマシーンの前に立った。パンチを打つときは、格闘の先生もやっていたレイジィの教えをいつも思い出していた。パンチに合わせて体をひねり、体重を拳に移動させるというやり方を、ずっと覚えていたのだ。

 一息入れて、パッドを強打する。打ち付けられたパッドの勢いで、激しい音がして筐体が揺れたような錯覚がする。

 記録は138ギガだった。

「ちょっ……、まじかよ……」

「前回やった時は140出たんだけどね。まぁ、2ぐらい誤差かな」

 ラムリーザは、こんなものかなと思って振り返ったところ、レフトールは気に入らないといった感じの顔でぼやいた。

「……先に言えよ全く、それで握力はいくらなんだ?」

 レフトールはラムリーザに殴られた以外に、拳を潰されたり片手で顔を掴まれて持ち上げられたり、散々な目にあっている。

 しかし、ゲームセンターに握力測定ゲームは無かったので、調べる術はなかったのだった。

 

 その時、格闘ゲームコーナーから言い争いの声が鳴り響いてきた。

「てめぇふざけんなよ!」

「何よ! あんたが下手なだけじゃないの!」

 男性の怒った声と、それに言い返しているのはソニアだ。見ると、ソニアと対戦していた相手が、ソニアに詰め寄ってきている。

 ラムリーザは、レフトールに目配せすると、急いで揉め事の現場に駆け付けた。

「せこいことばかりしやがって、きたねーんだよおめーは!」

「うるっさいわね! 自分の腕の無さを人のせいにしないでよ!」

 男性はよく見ると、同じ年頃の学生らしい。ラムリーザと同じ制服を着ている所、同じ学校の生徒だろう。その男子生徒は、今にもソニアに殴りかかりそうな勢いだ。

 ラムリーザは、急いで止めようとしたが、それよりも早くレフトールが声をかけてきた。

「あれ? マックスウェルじゃねーか、何やってんだ?」

 マックスウェルと呼ばれた男子生徒は、レフトールの姿を見ると振り上げかけた拳を下すのだった。

「あ、レフトールさん。この爆乳女がひでーんだぜ、ダブルニーハメとサイコ投げばかりしてきやがる」

 ラムリーザは、その言葉を聞いて「またか……」と小さく呟いた。

 ゲーム画面にも、家でも見慣れたキャラクター、ヴェガがこちらを睨み付けていて、相手を罵倒するメッセージが表示されている。この画面をラムリーザは、家で何度見たことか。

「まぁ、こいつはラムさんの女だから、大目に見てやれや」

「そっかぁ、レフトールさんの知り合いかぁ……」

 マックスウェルは、レフトールにたしなめられて大人しくなってしまった。それでも、ソニアに対して不満そうな視線を向けている。

「いや、ちゃんと話は聞くよ。問題解決しなくちゃだめだよ」

 ラムリーザは、マックスウェルに向き合って言った。常日頃から、ソニアが権威を盾にして好き放題してしまうのを好ましくないと考えていたので、こんな形で揉め事を抑え込んでしまうのは気が進まなかったのだ。

 ただ、詳しく事情を聴いても、ラムリーザが思っていた内容と同じことだった。

 家でラムリーザやコンピューター相手にずるいことばかりして勝ってきたソニアは、ゲームセンターでも見ず知らずの相手にずるい勝ち方をしただけだった。

 ソニアの隣でプレイしていたリリスにも聴いてみたが、語った内容は同じだった。

 ラムリーザは軽くため息を吐くと、ソニアの横に立ってソニアの後頭部と腹部に手を当てた。そのまま力を込めて、無理やり頭を下げさせる。

「なっ、何を?!」

「ごめんなさいと言いなさい」

「待ってよ! あたし悪くない!」

 ラムリーザはさらに力を込めて、ソニアの体をくの字に折り曲げる。

「ハメまくってごめんよ、今日はこのくらいで勘弁してやってくれ」

 仕方がないので、ラムリーザが代わりにお詫びすることになってしまった。

 そんな様子を見て、マックスウェルもまあいいかという気になってきたようだ。何も言わずに他の台に移動すると、再び格闘ゲームを始めるのだった。

「さてとソニア」

「な、何?」

「そのキャラクター使用禁止な」

「なんでよぉ」

「それかそのゲーム禁止か、どっちかを選びなさい」

 とりあえず、どっちに転んでもラムリーザにとって都合が良い選択を迫った。

 ハメキャラ禁止にすれば、家で対戦に付き合わされた時もそれなりに楽しめるだろう。ゲーム禁止にしてしまえば、そのゲームでソニアに付き合う必要は無くなる。

 しかしソニアは、何も答えずに不貞腐れているだけだった。

「技が悪いのよ」

 傍でリリスが言ってきた。リリスの言う通り、このキャラは使用技がおかしい。

「ダブルニーの後に技が繋がらないように調整するだけで、大分変わると思うんだけどね」

「次回作に期待かな」

 ラムリーザは、そう言いながらソニアの使っていた台に座り、そのままヴェガを使って続きをプレイ始めるのだった。

 ハメ技を使うこともなく、普通にプレイする。相手のコンピューターは、いつぞやラムリーザが使っていた緑色の野生児だ。

 野生児が電流を発してきても、落ち着いて下段蹴りで対処する。こいつは足元がお留守なんだ。

 と、その時、誰かがゲームに乱入してきたことを示すメッセージが表示され、強制的にキャラクター選択画面に戻されてしまった。

 対戦台は、こうした対戦を楽しむものだ。ラムリーザは、気分を引き締め相手が誰を選択するのか待っていた。

 すると、相手は同じキャラクターであるヴェガを選択してきた。

 嫌な予感がして傍を振り返ったが、そこにソニアの姿は無かった。

「まさか……な」

 そういうわけで、同キャラ対戦が始まった。これはキャラクターの性能が同じなので、より腕が立つ方が勝つわけだ。

 

 結果、ラムリーザはハメ殺されました。

 

 途切れることの無い連続攻撃で、何もできないまま終わってしまった。ソニアの使うダブルニーハメだ。

「やった、ラムに勝った!」

 対戦台の向こうから、ソニアの嬉しそうな声が聞こえた。

 ラムリーザは、ため息を吐いて隣でプレイしているリリスを見ると、リリスも仕方ないなという顔で肩をすくめてみせるのだった。

 だめだ、ソニアは全然反省していない。

 ラムリーザはソニアの更生と、勝負に勝つことを諦め、二本目の勝負を放棄して、席を立つのだった。

 
 
 
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