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体育祭始まるが、部室でのんびり過ごそう
- 公開日:2016年11月5日
11月6日――
今日は本来なら休日。学校での授業は無い。
しかし、ラムリーザとソニアの二人は学校へと向かっていた。制服の下に、体操着を着込んでの登校。
そう、今日は体育祭である。
クラス対抗で、さまざまな運動競技に参加して、大暴れする日だ。
運動の得意な者は主役に、苦手な者は憂鬱な一日となる。
ラムリーザ自身運動は、特別得意でも、最悪に苦手でもなかったので、特に気にすることも無く無難に終わりそうな一日だ。
一方ソニアはどうだろうか?
不得意ではないが、巨大な胸のせいで走りにくいというのが最近わかっていたりする。しかし、登校している様子だと、なんだか楽しそうにしているようにも見える。はてさて……。
いつものように教室に行き、自分の席で上着を脱いで体操着になり準備完了。
そのままグラウンドに集合している他の生徒と合流するのだった。
ラムリーズのメンバーで、なんとなくテンションの高い順と言えば、ソニア、リリス、ラムリーザ、ロザリーン、ユコ、リゲルの順番だ。
ソニアは楽しそうにはしゃいでいるし、リリスもソニアに感化されて、根暗吸血鬼の汚名返上でもするかの様に楽しそうだ。
ラムリーザとロザリーンは高くも無く低くも無く、普通といったところで、運動が若干苦手なユコはおもしろくなさそう。それでもって、リゲルはいつも通りである。
ちなみに、ラムリーザ達のクラスは一年の六組。学年全体では三百二十人ぐらいで、一クラス四十人前後で八組まである。
これを四つに分けて、一学年二クラスずつ。これを三学年まで合わせて六クラスずつの四チームにして、勝負することになった。
勝負自体は単純で、学年ごとに各種目に参加し、順位で点数を競い、最終的に合計点が一番多かったところの勝ちということだ。
さて、体育祭は、文化祭と合わせて学園祭とも呼ばれている。この祭りの全体指揮を取っているのが、実行委員長のユグドラシルだ。
そういうわけで、体育祭が始まった。
開会式。やらなくてもいいのにダラダラと話をしたがる先生も居るものだ。
「ねぇラム、話早く終わらないかなぁ」
隣からソニアが話しかけてくる。
ラムリーザは、人差し指を口に当てて、静かにするように促した。
ラムリーザの背の高さは、クラスでは真ん中付近。ソニアも女子の中では真ん中付近で、偶然かラムリーザの隣になっていたりする。
リリスもソニアとほとんど変わらない高さなのだが、ソニアがラムリーザの隣に来るために、リリスの方が少し背が高いということで、すぐ後ろに行ってもらっていたりする。
若干背の低いユコは前の方へ、逆に背の高いロザリーンとリゲルは後ろの方だ。
あとクラスで名前が挙がる者としては、レルフィーナやデズモンド、電脳部の二人といったところか。
ソニアは、開会式中に何気なく隣のクラスの方を向いてみたところ、赤い髪をツインテールにしている女の子と目が合った。
七組のチロジャルだ。
チロジャルはソニアと目が合うと、一瞬驚いたような顔をしてサッと目を逸らしてうつむいてしまった。チロジャルは、偽造写真事件以来、完全にソニアを怖がっている。かわいそうに……。
一方でソニアは、うつむいてしまったチロジャルを見て、ニヤニヤと笑みを浮かべていたりするのだった。
「宣誓、我々一同はスポーツマンシップにのっとり、正々堂々と戦うことを誓います。二年四組、ユグドラシル・ハーシェル!」
ユグドラシルの選手宣誓で開会式は終わり、早速競技が始まった。
それはいいのだが、なんだか流れている音楽の音源が悪いのは気のせいだろうか。プツプツノイズが入っていて、今にも壊れそうだ。
時々音が止まるようで、実行委員が機材を少しいじってはまた音が出てといった具合だ。
まあいい、別に音楽に合わせて踊ったりするわけではない。あまり気にしないでおこう。
ラムリーザ達は、一年六組に割り当てられた観客席に向かっていった。グラウンドのトラック周囲を囲むように、クラス単位で決められた場所が設けられている。観客席といっても、ござが敷かれているだけなのだが……。
十一月に入ったとはいえ、南国エルドラード帝国はまだ少し暑かったりしていた。
「ラムー、暑いし砂埃が嫌だよぉ」
ソニアは、体操着の中に手を突っ込んで、ハンカチで胸の間や下の汗をぬぐいながらラムリーザに不満を言ってきた。汗を拭くのはいいが、胸がこぼれださないように注意しろよ、ということで。
「ん、僕も暑い」
ラムリーザは短く答えてござの上に腰を下ろした。ござも日に当たり熱されていて、座っていると尻が熱い。
「ねぇ、部室で涼まないかしら?」
リリスは、ラムリーザの傍に膝をついて尻がつかないように座り、部室で過ごそうと言ってきた。
部室の鍵はラムリーザが管理しているのでいつでも入ることができる。
ラムリーザは、それがいいと考えて、部室に向かうことにした。
「あなたたち、観客席から離れるのはあまり感心しませんよ」
ロザリーンは注意してきたが、ソニアなどはあかんべーをして立ち去っていく。
ラムリーザは、出番が近づいてきたら携帯電話で呼び出してもらうようにして、ソニア達の後を追っていった。
クラス委員のロザリーンは離れるわけにも行かず、リゲルもそんなロザリーンを気遣って真面目に残っているのだった。
部室に到着したラムリーザは、真っ先に空調のスイッチを入れた。すぐに部室は涼しくなり、快適な環境になるのだった。
部室にある簡易ステージでは、ソニアとリリスがギターを手にして早速適当な演奏を始めている。ユコは、テーブル席で楽譜を眺めている。
ラムリーザは、ドラム椅子に座ったまま、特に何もするわけでもなくソニアとリリスをぼんやりと眺めていたのだが、ふと思いついて二人の姿を携帯電話で撮影するのだった。
部室にカシャリという機械音が響く。
「あ、ラムが写真撮った!」
「ラムリーザ、私は高いわよ」
リリスが高いと言うのもうなずける。
今の二人の姿は、マニア心をくすぐらせるものだろう。白い体操着に濃い緑のブルマ、そして太もも半ばまでの長さの黒いサイハイソックス。そんな二人が、ステージ上でギターを演奏しているのだ。
ラムリーザは、撮った写真を帝都に居る親友ジャンに早速送ってみる。コメントには「どや?」と簡単な一言が添えられただけの写真に、ジャンはすぐに返事をよこしてきた。
『ブルマニーソで演奏もありだな』
ジャンの返事は、ジャンらしいものだったので、ラムリーザは妙な安堵感を覚えていたりする。妙な話だね。
早速ラムリーザは、そのことをソニア達に報告してみた。
「喜べ、その格好でライブするのもありだそうだぞ」
「やだよ」
ソニアとリリスは、口を揃えて反対してきた。まあそうだろうね。
「というか、誰の意見よ。どうせ清らかさの足りないジャンでしょ?」
「勇敢さと優しさを持ったジャンだよ。ところで気になったけど、一番清らかなのは誰になるのかな?」
「あたし」
この一言で、世にも珍しい清らかな風船おっぱいお化けが誕生したのだった。
そういうことはおいといて!
折角部室に来たのだから、練習していこう。
ラムリーザの合図で、カラオケ喫茶に向けた練習がはじまったのだ。
「岬巡りのバスに乗って――」
珍しくラムリーザが歌いながら、演奏は進んでいくのだった。
しばらく演奏していると、ラムリーザの携帯電話に着信が入った。ロザリーンからの通話で、そろそろ二人三脚が始まるのだそうだ。
「えーとロザリーン? 誰が出るんだっけ?」
「あなたでしょ? 体育の時間に何回か練習してたじゃない」
「こほん、そうだったね」
こうしてラムリーザとソニアの二人は、二人三脚に出るために部室を出てグラウンドへと向かっていくのだった。
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