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今は過去も未来も気にせず、踊り続けよう

 

 ラムリーザは、ダンスパーティで新しい楽しみ方を満喫していた。

 踊ることに興味は無くても、演奏するのは好きだった。

 ジャレス、セディーナ、ユグドラシルの先輩達に混ざって、肩から吊ったスネアドラムを愉快に叩きながら、グラウンドに作った簡易ステージの上を左右に移動していた。

 時折立ち止まっては、グラウンド中央のかがり火を眺める。参加者はみんな、かがり火を囲む形でダンスを踊っている。

 校庭の端から眺めている生徒は、カップルになれなかった残念な人達だろうか。

 あ、チロジャルとクロトムガも踊ってる、ラムリーザはそう思いながら再び動き回ろうとした時だ。

「ラームッ!」

 ステージの端から大声が響いた。

 ラムリーザが振り返ると、そこにソニアが居て、必死な形相でラムリーザを見つめていた。今にもステージ上に上がってきそうだ。どうやら見つかってしまったか、どうせダンスをしようという話なのだろう。

「ラム、踊ろうよ! ほら、リゲルとロザリーンも踊ってるよ! だからあたし達も!」

 しかしラムリーザは、演奏を引き受けているのでステージから離れるわけにはいかない。だからこそ引き受けたというのもあったのだが……。

「ソニアの大声が聞こえたと思って来てみたら、ラムリーザはここに居たのね」

 リリスの登場に、ソニアは激しく言い放つ。

「ラムはあたしが先に見つけたのだから、あたしが踊るの!」

「ラムリーザ様発見!」

「ユコも遅い!」

 しかしソニアがステージに上がろうとしたところ、実行委員の生徒に止められてしまった。ラムリーザとのダンスは諦めろということだろう。

「それだったら!」

 ソニアはどこかに向かって駆け出し、再び戻ってきた時には、背にベースギターを背負い、両手に小型のスピーカーと電源を持って現れた。

「こら実行委員! あたしも演奏する、これなら悪くないでしょ? ラムも演奏しているんだし!」

 実行委員は、困ったようにユグドラシルの方を見たが、ユグドラシルは頷いて好きにやらせろというサインを送ってきた。

 そういうわけで、ソニアはラムリーザと並んでステージを左右に移動しながら演奏を始めた。その光景は、ダンスをしているのとさほど変わらないように見える。

 リリスはそんな二人を見て、ダンスは諦め自分も演奏しようとギターを取りに戻ろうとした時だった。

 リリスがステージから少し離れると、目の前にジャンが現れた。ジャンは軽く微笑むと、リリスの方へと一歩近づく。

「リリスさん。いや、リリス、俺と踊らないか?」

 リリスは驚いて目を丸くする。まさか自分が誘われるとは思ってもいなかったのだ。だが、目を見ただけでジャンは本気なのだとわかった。

「私はラムリーザと踊らなくちゃいけないので、失礼するわ」

 しかしリリスは、ラムリーザの名を出してジャンの誘いを断ってみた。

「そうか、やっぱり君の中ではラムリーザの存在が大きいのか。俺の存在が大きくなるまでお預け、かな? まぁ、焦る必要も無いか」

 ジャンは、回れ右をしてリリスに背を向けた。だがそのまま少し待っている。

 この時リリスは、何故かジャンが立ち去るのに抵抗を感じていた。

 冷静に考えて、ラムリーザがソニアを捨てない限り、自分に出番が回って来ることは無い。それどころか、ラムリーザの家は名家だ。幼い頃から一緒に過ごしてきたソニアならともかく、得体の知れない自分が周囲に認められることはないと言っていい。

 リリスは、表面上はソニアの邪魔をしていたが、根底にあるこの事実は受け入れていたのだ。

 それと、ラムリーザからジャンと親しくしておくのは、良いことだと聞かされていた。

 ジャンはラムリーザの親友で、帝国有数のナイトクラブ営業者の息子だ。ラムリーザには劣るが、十分に金持ちでもある。それに、新開地に新しい店を出す話も聞いていた。

 そこでリリスは、ジャンとの関係を少し密にしてみようと考えたのだ。こうして誘ってくるということは、ジャンは現在フリーなんだろう。

「ジャン――」

 リリスの呼びかけに、ジャンは振り返る。

「踊りましょう」

「そうこなくちゃ」

 ジャンは、ニヤリと笑ってリリスに近づくと、その手を取る。

「でも、キスはまだよ」

 リリスの忠告にジャンは苦笑するが、「今はそれでいいか」と小さく呟くのだった。

 

 ステージや、その周辺では、ジャンとリリスがダンスの輪に加わっていくのが見て取れた。

「へー、リリスがジャンとねぇ」

「ふん、リリスはジャンと付き合えばいいんだ。それでラムに付き纏わなくなるんだったら、みんな幸せ」

 ステージ脇のユコと、ステージ上のソニア。それぞれの感想を呟いた。

 そのうち何もすることが無いユコは、退屈になってきて思わず大あくびをする。

「へっへっへっ、美人が台無しだねぇ」

「なっ、何ですの?!」

 ユコは突然横から声をかけられて、慌てて口を閉じて振り返る。キッと睨むと、そこにはあのレフトールが立っていた。

「暇そうにしてんなぁ、俺と踊る?」

「冗談じゃありませんの! 誰があなたなんかと!」

「ま、そうなるわな。じゃあ俺はもう帰るわ、んなバイナラ、ナライバ」

 レフトールはあっさりとユコを諦め、一人学校から立ち去っていくのだった。

 

 ステージではソニアが不思議な踊りを踊り、ラムリーザはその周りでスネアドラムを叩きながらグルグル回る。楽しそうなのやら、不思議な光景なのやらよくわからない。

 そんな二人をよそに、ジャレスは甘い声でバラードを歌い始める。明らかに歌と太鼓のリズムの乗りが全然違うが、ダンスパーティはどんどん良いムードになっていった。

 

 会った時からリリスに興味津々だったジャンは、一緒に踊りながら尋ねてみたりしている。

「リリスって、ラムリーザ以外に好きな人って居るのかな?」

 リリスは、少し寂しそうな微笑を浮かべて答えた。

「居ないわ。それにラムリーザも微妙。ソニアをからかうついでにモーションかけてるけど、彼はソニアで決まりよあれは……、よっぽどの事が無い限り……」

「そうだろうな、親公認の仲だしな。幼馴染ってのは、普通恋愛には発展しにくいものだが、昔からあいつらはお互いにお互いを求め合う仲だしな。ラムリーザは無意識のうちにナイスボート警戒している節があるし――、ああいやいやなんでもない」

 ジャンは、笑みを浮かべて言葉を続けた。

「ちなみに俺はフリーだぜ、これほんと」

「いっぱい相手が居て決められないんじゃくて? くすっ」

 リリスも、妖艶な微笑を浮かべて答えた。

 

 また別の場所では、リゲルとロザリーンが二人の世界を築き上げていた。

「ロザリーン、本当に俺でいいんだな?」

「ええ、リゲルさんなら私は全然構いません」

「そうか……。それならラムリーザじゃないが、俺達も新しい世界を作るか」

 リゲルはそう言うと、思い切ってロザリーンの頭の後ろに手を回して抱き寄せる。次の瞬間、二人は口付けを交わしていた。

 

 それらの様子は、生演奏ステージの上からはよく見えていたりする。

「あっ、リゲルとロザリーンがキスしたよ」

「次の世界を二人で作っていくんだ、いいことさ。リゲルもいつまでも過去に囚われていたんじゃダメだからなぁ」

 ソニアは不思議な踊りを止めて、ラムリーザを見つめて尋ねてきた。

「ねぇ、あたし達はどうなの? キスしなくても大丈夫なの?」

「僕とソニア? この春から次の世界を作り続けているじゃないか。僕達の愛の形は完成した姿はまだ分からない。いつまでも二人で探求し続けるのさ」

「なんかかっこいいこと言ってるね」

「雰囲気に酔っているだけさ」

 再びソニアは不思議な踊りを踊りだして、周りを回りながら太鼓を叩く謎の雰囲気。これも愛の形の一つなのかもしれない。そんなわけあるか。

 

 みんなのいろいろな思いを乗せて、ダンスパーティは進行していく。

 そのまま変わらぬ者、一歩進む者、覚悟を決める者、それぞれの思い。この思いを大切に、いつまでも平和に仲良く過ごしていきたいものだ。

 新たな一歩、先は分からない。

 ただ、今は過去も未来も気にせず、踊り続けよう。

 明日の事は明日考えよう。

 今はこれでいい。

 

 これでいい。

 
 
 

フォレストピア創造記 ACT.3 ~完~

 
 
 
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