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浮気騒動?! 証拠写真もある?! なんで?! ~後編~

 

 ラムリーザとチロジャルは、お互いの事を知らないし、その写真に写っていることに心当たりは無いとそれぞれ言った。写真では、この二人が校舎裏のどこかでキスしているのだが、そんなことはしていないというのだ。

「それはどうだか、ラムのこと寝取ろうとする奴なんて、どこにでも居るからねー、リリスとかリリスとか」

「やめなさいソニア。僕の言ってることが信じられないのか?」

「チロジャル、そいつの方がいいのだったら素直にそう言えよ」

「やめてよ、私が信じられないの?」

「だったらその写真は何だ?」「だったらその写真は何よ?」

 ソニアとクロトムガの台詞が被った。ラムリーザとチロジャルが何を言おうと、証拠の写真があるのだからどうしようもない。

 それぞれ人違いか? という話も上がったが、チロジャルにはその場所に心当たりがあるし、ラムリーザは半分顔が映っている。

 そもそもこの写真は、誰が撮ったのだ?

 四人で話していても結論が出ないので、次は写真部に聞いてみることにした。校内で写真を撮る機会があるとすれば、写真部ぐらいだし、そもそもこのようなスキャンダルを狙って撮るというのも、写真部以外考えにくい。

 外部のカメラマンが来たとなると、それだけでイベントとなっているはずだし、先生が撮ったとしたら、撮るよりもすぐに注意しにくるはずだ。

 そういうわけで、四人は写真部の部室を目指して行った。

 

「ドキッ、し、知らないアルよ」

 

 写真部の生徒に問題の写真を見せた瞬間、彼はものすごくわかりやすい反応を示した。

「いつ、どこで、撮ったの?!」

 ソニアが強く問い詰めても、もごもごするだけで答えない。

 雰囲気からしてこの人が絡んでいるのは間違いないのだが、どうもはっきりとしない。彼は、真相を話すことを恐れているような感じを受け取ることができた。

「何をしているのかしら?」

 そこに、新たな人物が加わってきた。それは見た目きつそうな感じの女生徒だ。

「うわっ、やべっ」と焦るクロトムガ。

「…………」脅えたように何も言えないチロジャル。

「また来た……」と言って慌てて自分の服装チェックするソニア。

「あ、君は確かケルムさんだったかな」平然としているのはラムリーザだけだ。

 彼女は写真をさっと奪い取ると、厳しく言い放った。

「ラムリーザとチロジャルが校舎裏でキスしていたってことね、風紀監査委員として見逃せないわ」

「私やってないよ! ぐすん」

 とうとうチロジャルは泣きだしてしまった。

「あ、ソニア達の言ってた風紀監査委員って、ケルムさんのことだったのか」

 ラムリーザは、そこで初めて気が付いた。ラムリーザはケルムとは、五月初めのパーティで紹介されて以来、校内で出会うことはなかった。

 逆にソニアは、何度も何度も遭遇しては、その度に服装の乱れを指摘されたり、ラムリーザとの校内でのいちゃつきを注意されたりしてきた。

「この風紀監査委員がこの写真持ってきたのよ! ラム、これはどういうことなの?!」

 ラムリーザは、だんだんめんどくさくなってきた。

 この写真の存在然り、風紀監査委員の登場然り、ソニアが信じてくれないこと然り。

「仕方ない、そこまで信じられないのならもう別れ――」

 そこまで言いかけてラムリーザは思い出した。この先の言葉は二人の間では禁句にしていたことを……。

「――ないっと。この写真何? 身に覚えがないからひょっとして偽造? ちょっと確認してくれないか?」

 ラムリーザは、写真部の人にこの写真について調べてもらうことにした。

 ゲームかアニメかドラマか映画かのミステリー物で、偽造写真というものを聞いた記憶があった。

 だがこの写真部員は、おどおどしているだけで答えようとしない。

 だからラムリーザは質問を変えてみることにした。

「君、僕とこのケルムさんがキスしている写真を作ることはできるかい?」

「つ、作れるアルよ……」

「どうやって?」

「それはえーと……、君かケルム様のどちらかが他の人とキスしている写真を撮って、後は顔を差し替えたら完成アルよ……」

 写真部員は、妙に風紀監査委員、ケルムを意識しながら答えた。

 しかしこれで、この写真が偽造かどうかはさておき、でっちあげ写真を作成できることはわかった。

 ラムリーザは次にクロトムガに問う。

「クロ――なんだっけ、君はこの娘とこの場所でキスしたことあるか?」

「んなこと風紀監査委員の前で言えるか! あと、クロトムガだ」

「無いとは言えないんだね、ふむ……」

 ラムリーザは、この場所はクロトムガとチロジャル二人の秘密の場所か何かではないのかと察した。無いと否定はできないのだ。

 ということは、やっぱりこれは偽造写真だな。

「写真部員の君、名前はえーと……、まあいいや。この娘をこんなに悲しませていいのか?」

 この娘とはチロジャルのことだ。追い詰められてしまって、先程泣いてしまったところだ。

 ソニアとクロトムガはどちらかと言えば怒っている感じなので、ラムリーザは写真部員にチロジャルが悲しんでいることを伝えて罪の意識を植え付けようとしてみたのだ。

「あわわ……」

 写真部員はケルムの顔色を伺うような感じで狼狽えるばかりで話にならない。

「正直に言わないと、四人の人間が迷惑することになるんだぞ?」

 すでに迷惑は被っている。

「か、勘弁してくれアルよっ!」

 写真部員はケルムと目が合った瞬間、大声を張り上げてこの場所から逃げ出してしまった。

 あれは黒だな。ラムリーザとクロトムガの二人は別々の位置でなんとなく察した。

 ソニアはむすっとしたまま何も変わらず、チロジャルは泣きじゃくっているだけだ。

 しかしなぜ、わざわざこんなものを作り上げたんだろう。

 ラムリーザがもう一度写真を見ようと思ったが、ケルムは軽く舌打ちして写真をビリビリに引き裂いてしまった。

「今回は写真部の嫌がらせによるでっちあげということで不問に処します。以後、紛らわしい行動は慎むように」

 最後に厳しい口調で四人に言い聞かせてから、ケルムはその場から立ち去ってしまった。

 ラムリーザは心外だった。慎むも何も、やってないし偽造されたし、というか今回校内でキスまでしていたのはクロトムガとチロジヤルの方だし。ラムリーザとソニアの二人も、学校の裏山の秘密スポットでやったことはあるが、今回は関係ない。

「ぐすっ、えぐっ……、私この人とやってない、信じてよぉ……」

「だな、今回ははめられかけたようなもんだな」

 クロトムガは、チロジャルのことを信じてあげて、ラムリーザを睨み付けてきた。

 いや、こっちに怒りを向けられても困る、とラムリーザは思ったが、クロトムガが先程ラムリーザに握りつぶされかけた右手をさすっているのに気が付いた。そのことで怒っているのか? そもそも先に胸ぐらをつかんできたのはそっちだろうに。

 ラムリーザはそう思いながら、二人が立ち去っていくのを眺めていた。

 さて、今回の件がでっちあげだということはわかったが、ソニアはラムリーザに非が無いことを認めるだろうか?

 ラムリーザは、ソニアの方へ視線を戻した。ソニアは目を逸らしていて何か考えているようだ。

 しばらくして、何か思いついた! といった感じにラムリーザの目を見て言ってきた。

「さっきの写真の場所につれていってくれてキスしたら信じる、というか許してあげる」

「キスって、風紀委員に会った後なのによくそんなこと言えるな……」

「その場所でラムの唇に上書きするの!」

 さしずめキスの上書き更新か。

 しかしラムリーザは困った。その場所を知らないのだ。知らない場所に連れていくことはできない。

 だから、ラムリーザはこれはしばらく放置するしかないと考え、諦めたように言い放った。

「すまん、その場所は知らないから連れていけない。もういいや、諦めてくれ」

 ラムリーザはソニアに背を向けて教室の方へ向かって歩き始めた。ちょうどその時に、授業の始まるチャイムが鳴り響いた。

 すぐに後ろからバタバタと走ってくる足音が聞こえ、次の瞬間ソニアがラムリーザに後ろから飛びついてきて抱き着いた。

「な、なんぞ?!」

「連れて行ってキスしたら許してあげると言ってるのに知らないから連れて行ってくれない、つまりそこに行ったことないってことだよね」

「お、おう……」

「じゃあやっぱり偽造なんだね」

 ラムリーザが振り向くと、ソニアはそれに合わせて唇を重ねてきた。廊下でキス。上書きしたい気もわからないではないが、だめじゃないか! よく考えたら、ラムリーザはチロジャルとやっていないのだから上書きにならない。つまり、ソニアがやりたかっただけだ。

 

 

 授業が始まる少し前に、ラムリーザは少し気になったことをソニアに聞いてみた。

「それで、さっきの写真はどこで手に入れたんだ?」

「風紀監査委員が持ってきた」

 ソニアは練り消しをこねながら答えた。まだ練り消しを使っている。

「そうか……」

 ラムリーザは、今日の出来事で何かひっかかる点があることを感じていた。

 なぜラムリーザと知らない娘のキス場面を、ソニアに見せる必要があるのか? 相手の娘であるチロジャルか、ラムリーザ自身に注意して来ればいい話じゃないのかな? と思ったりした。

 写真部員のでっちあげにケルムが利用されたとしても、なぜ写真部員がラムリーザを陥れようとするのかわからなかった。

 ひょっとしたら、写真部員がチロジャルに気があって、チロジャルの彼氏との間を壊すためにラムザ自身が利用された可能性もある。だが、写真部員の思惑から外れて、ケルムは普段から目をつけているソニアの方に注意しに行ってしまったと。それで写真部員は当てが外れて、動揺していたとも考えられた。

 それか、写真部員の気があるのはソニアだということも考えられる。

 また、風紀監査委員に恨みがあって、誤認捜査をさせて失墜させるとかもありうる。

 写真部員がでっちあげ写真を作り上げた理由は、いろいろと思いつくことができた。

 しかしすべて憶測でしかない。

 ラムリーザは、授業が始まったので、考えることは一旦やめにして、授業に集中するのだった。

 ただ一つ、ソニアの練り消しは取り上げないとダメだなとか思っていた。練り消しで遊んでばかりで、ちっとも授業を聞いていないようだ。

 まあよい。

 それよりもラムリーザはあることを思い出した。交換日記をずっと持ったままでいたのだ。

「えーと、交換日記だけど、誰に回せばいいのかな?」

「『ラムリーズ』のサブリーダーである私が二番手で行くわ」

 サブリーダーって決めていたっけ?

 ラムリーザが戸惑っている間に、リリスはひょいと交換日記を奪い取った。こうして交換日記は、ラムリーザの手から『自称サブリーダー』のリリスの手に渡っていったのであった。

 
 こうして、偽造写真をめぐってのトラブルは、なんとか無事平穏に幕を下ろすことができたのであった。

 
 
 
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