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TRPG第一弾「死と埋設」 第二話中編 ホラーゲーム

 

「さてと、どこからだったっけ?」

 放課後部室にて、昨日中途半端に終わったゲームの続きをするべく、いつものソファーにみんな集まっていた。テーブルトークというゲームを始めたは良いが、毎回ソニアとリリスが喧嘩をしているような気がする。ゲームを紹介したリゲル自身も、「こいつらダメだ」といった感じで、半分投げ出そうとしている雰囲気も取れる。

 果たしてゲームを終えることはできるのだろうか?

 

「えーと、それでは昼食ということで、お前らは村の食堂に集まっている――、というところから始めよう。正直俺も、前回どこで終わったかあまり覚えてないので、とりあえずこの場面から始めることにする」

「前回の終わりはふうせ――」

「――昼食シーンだな、わかった」

 リリスがまたいらんことを言いかけたのを、ラムリーザは慌てて遮って話を進めた。

「店に入ると、店員が何にしますか? と聞いてくる――が、まあ別に何でもいい。そこでだな――」

「あたしきんぴらきゅうりとミートパイ、豆乳もつけてね」

 ソニアがすかさず注文を入れる。よくわからない組み合わせだ。

「あ、豆乳なんて飲むからバストが――」

「――店員に、最近の事件について何か知っているか聞く!」

 今度はユコがいらんことを言いかけたのを慌てて遮るラムリーザ。

「店員は知らないと答え、ウェイターに注文の品を届けに行かせた。ちなみに、ウェイターの名前はフレディだ。あと、最初にユコは知っているということで話を進めるということにしていたが、ユコの記憶にあるフレディと、今目の前に居るフレディの人相は一致した」

「ああ、この人が自称画家のフレディさんですのね」

「ちょっと待って、ちょっと待って、話が急すぎる、というか、フレディは焼死……じゃないな、焼かれて入院していた所をダガーで刺されて死んだのじゃなかったっけ?」

 ラムリーザは、話を確認する。これではあまりにも話が急展開過ぎる。

「あなた達は焼け爛れた姿しか知らないだろう? この人がフレディですの……、死んだはずのね」

「うーん、生きてるじゃないか」

「えー? 死んだんでしょ?」

「そのウェイターは、他の客に呼ばれて立ち去って行った」

 その後、少しの間だけ沈黙が訪れた。プレイヤーは皆、君の悪さを感じたのであった。

「死んだはずの人間が生きて動く、心当たりありますか?」

 沈黙を破ったのはロザリーンだ。

「ゾンビね」

 そう答えたのはリリス。

「あれか……」

 ラムリーザは、以前みんなで遊んだゲームで、ゾンビに襲われて全滅したことを思い出した。

「綺麗になってるのは村長の仕業ね。特に格好とか持ち物に変わったところは無いよね?」

 ロザリーンの質問にリゲルは「ごく普通の一般的なウェイターの格好だ」と答えた。

「あ、そうだ、店員に聞く。あのウェイターは何時雇った?」

 ラムリーザは、もしこのフレディが事件の被害者と関係あるなら、最近雇われたことになるのではないかと考えて尋ねてみた。

「そうだな、いままでのウェイターが昨晩大怪我して来られなくなったので、今朝村長のドップスに頼んで、代わりのものを斡旋してもらったということな」

「やはりあの気味の悪い村長――、いや、葬儀屋が一枚噛んでいたか……」

 最初に登場した葬儀屋件村長のことを思い出して、ソニア達は顔をしかめる。悪趣味丸出しのじじいだった。会った時は、死体に化粧を施していたところだった。

「ふうせ――」

「――やはりあの気味の悪い葬儀屋が一枚噛んでいたか!」

「ラムリーザ様、それさっき言いましたわ」

「えーと、村長だね、リゲル」

 ラムリーザは、誤魔化しつつリゲルに話を進めることを促した。今日のリリスは、妙に風船発言にこだわりたがっているようだ。どうせ言いたいことは「風船おっぱいお化け」だ。その単語を発した後の展開も読める。だから、あえて言葉の邪魔をしている。

「ああ、村長だ。で、だ。そこにガードマンのシェリフがやってくる」

「あ、待って!」

 ロザリーンが何かに気がついたのか、声を張り上げる。

「昨日――、いや、物語の中では今朝だけど、確か河岸に行く前に、シェリフさんはフレディさんの遺体を墓に埋葬したって言ってませんでしたか?」

「ほう、良く覚えているな。流石だ」

 リゲルはロザリーンを上げる。ソニアと扱いの違いは明らかだ。特定の人物を贔屓にするのと八方美人、男女の関係においてどちらが良いのかという議論は今は置いておこう。

「それで、シェリフさんはフレディさんの顔を知っているのじゃないですか?」

「シェリフは、フレディを見たのは既に事件の後だったから顔は知らない、残留品から名前が分かっただけ、と答えた」

「いやいや、あの村長さんが遺体を奇麗にするのでしょう? 埋葬したのを見ていたのなら顔は知っているはずです」

 この場は、ロザリーンの追求を受けるリゲルという図式が出来上がってしまっていた。矢継ぎ早に質問を繰り出し、ゲームマスターリゲルを問い詰める。

 ソニアはあの村長が関わっているのを知ってからは口を閉ざしてしまい、リリスも戦闘以外は苦手だ。ユコは、今回はサブマスター的立場に居るので、ゲームマスターのサポートに徹しているようだ。

「おどろかないのですね。死体が歩いてるってね。死体の綺麗な顔見ているのでしょう?」

「シェリフは、死体の画家フレディは、いまは墓地の棺桶の中ですよ、と笑い飛ばしている」

 ラムリーザはと言えば、ロザリーンとリゲルの間に口を挟めないでいるようなものだった。ただ、リゲルがこんなに楽しそうに話をしているのを見るのは初めてのような気がしていた。ソニアとの二人の世界を大事にするラムリーザは、ここはリゲルとロザリーンの二人の世界だな、とか思ったりした。

「まさか、画家フレディが蘇って、ここでウェイターしているとでも言うのかな?」

 リゲルは、ロザリーンをにやりと笑みを浮かべて見つめている。

「おかしいですね。魔法を使える人間がいるんですよ、死体が動こうとおかしくありません」

「例えば僕とかかな?」

 ラムリーザは二人の間に入っていこうとしてみたが、ロザリーンに「あなたは関係ありません」ときっぱりと言われてしまった。一応ゲーム内ではソーサラーなのだが。

「それなら埋葬がきちんとされているかどうか確かめたらどうかしら?」

 リリスは視線を空に向けたままつぶやいた。ソニアに睨みつけられたが、気がついていないようだ。

「そうですね、墓地へ行って確かめてみましょう。シェリフさんにも同行してもらいます」

「ネクロマンシーなら、墓地はヤバイけどね」

 リリスは視線を空から戻すと、怪しげな微笑を浮かべた。

「流石にそこは詳しいんだね、吸血――」

「――墓地だね、墓地に着いた。フレディの墓はどこかな?」

 今度はソニアがいらんことを口走りそうになるので、ラムリーザはまた話を進めることになってしまった。

「着くのが早いぞ、まあいいか。お前らは墓守に案内されて、墓の一つの前に到着した」

「あたし墓地なんか行きたくない」

「遅い、もう来ている。えっと、掘り返すのかな?」

 ラムリーザは、ロザリーンを振り返って尋ねた。この作業はどうも気が進まない。

「どうせ何も無いのでしょう?」

 答えたのはリリスだ。腕を組んで頬杖をついたまま「始めから直接あのじじいに会った方が早かったのよ」とつぶやいた。

「とりあえず中身を見る……、でいいんだよね? いや、正直気味が悪いよ」

「念のため遺体を確認です。リゲルさん、中身はどうなってますか?」

「焼け焦げた遺体を見るのはやだ!」

 ソニアの不満の叫びが部室に響く。

「どうせ何も出てこないわ。それに、遺体があったとしても、あのじじいが奇麗にしているんでしょ?」

 うろたえるソニアを見て、リリスはくすっと笑った。

「いやいや待てよ、ゾンビが出てくるかもしれん。防御体勢を取っておこう、いや、棺桶から離れる」

「あたしも逃げる!」

 ラムリーザは慎重だし、ソニアもそれに同調する。

「中には、片手で持つことができる程度の大きさの、布キレに包まれた何かが入っているだけだった」

 だが、リゲルの答えはあっさりとしたものであり、単純なものでもあった。だが、遺体が消えているということは、間違いないようだ。

 それを聞いてリリスは、「やはりね」と小さくつぶやいた。

「で、その何かは何ですの?」

「何だと思う?」

 ユコの問いに、リゲルは怪しげな笑みを浮かべる。

「気味が悪いですわ、ラムリーザ様、布キレを開けてくださいな」

「ちょ、なんで僕が?!」

 ゲームの中の話であり、ラムリーザが実際に開けるわけではないのだが、開けたくない、というよりゲームを先へと進めたくないという気持ちでいっぱいになる。

「不気味な展開だなと思っていましたが、ホラーゲームだったのね?」

 ロザリーンも流石に顔をしかめて、少し非難するような口調で問う。

 その一方でリゲルは、笑みを浮かべたままメンバーの反応を楽しんでいるようだ。

「私が開けるわ」

 そう宣言したのはリリスだ。

「布を取ると――」

 わざとリゲルはためを作る。

「取ると?」

「――中には人間の心臓が入っていた!!」

 リゲルにしては珍しく、声高らかに宣言した。まさにこの場面を演出したいがために、ここまで話を持っていったかのように。

「…………」

 再び沈黙が、部室を支配する。

 

 

「ふえぇ……」

 誰かのつぶやき。ソニアか?

「悪趣味ですわ……」

 これはユコのつぶやき。

「心臓……だねぇ」

 状況把握だけで精一杯なラムリーザ。

「遺体はどこに?」

 何とか冷静を保っているロザリーン。

「まずいわ、心臓は操るための触媒……」

 状況がわかっているのか、妙に納得しているようなリリス。

「さてどうする?」

 唯一楽しそうにしているのは、リゲルだけだ。いや、リリスもこの状況を面白がっているようでもある。

「あのじじい、村長の屋敷へ行く」

「あ、その前にちょっと休憩――」

 ラムリーザは、話を進める前に少し落ち着きたいと思った。流石に展開が不気味すぎる。外の空気が吸いたかった。

「休憩か? それも良いが、昨日みたいに帰ってこないとかにはなるなよ」

 これからがゲームのクライマックスなのか、リゲルは続けたい気満々だ。

「大丈夫、私が付いて行くわ」

 ソファーから立ち上がろうとしたラムリーザに合わせて、リリスも立ち上がる。

「むっ、リリスと二人きりにさせるかっ」

 続いてソニアも立ち上がる。無用な対抗心を燃やすかのように。

「しょうがない奴等だ」

 リゲルは腕を組んで、ソファーに深く座り直し軽く溜息を吐いた。

 いつもは賑やかな部室が、今日は不気味な雰囲気で彩られているのだった。

 
 
 
 
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