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三本柱、フォレストピア打ち合わせ

 

 今日は、学校が休みだ。

 そこで――というわけではないが、ラムリーザは下宿先の屋敷に、めずらしい客を二人朝から迎えていた。

 一人目は、ラムリーザにとって数年前からの親友、ジャン・エプスタイン。帝都にあるシャングリラ・ナイトフィーバーの支配人の息子である。次の春からは、新開地フォレストピアにも、ナイトフィーバー二号店を出すことになっていた。

 もう一人は、リゲル・シュバルツシルト。バンド、ラムリーズのメンバーで、今年の春からの友人だ。

 リゲルはこの地方に住んでいるが、ジャンは朝早くからわざわざ帝都から来訪していたりする。

 いつの間にか、ラムリーザとこの二人を加えた三人が、フォレストピア開拓の三本柱という認識になっていた。

 

 ラムリーザの部屋にあるテーブルについた三人は、一息ついてから話し合いを始めた。

「フォレストピアの計画は、できるかぎりこの三人で話し合って決めていこうと思う。僕が一番信頼できるコマは、君達二人だよ」

 まず始めに、ラムリーザは確認の意味を込めて言った。リゲルはふっと笑みを浮かべ「お前は一人で決める権力があるんだがな」と言い、ジャンは何を今更といった感じに笑顔を向ける。

「僕は、経営も開拓もまだよくわかっていないんだよね。その点ジャンとリゲルは、僕と違っていろいろ知っているので、いろいろと教えてもらったりして学んでいこうと思っているんだ」

 実際のところリゲルは、領地発展についての知識はシミュレーションゲームから得た物だったりするのだが、ジャンも街の経営についてはそれなりに知識があるつもりだった。

 

 今日の話は、まずはシャングリラ――いや、フォレストピア・ナイトフィーバーについて話を聞くことになっていた。

 帝都の店は、地名にちなんでシャングリラ・ナイトフィーバーと名づけられているが、二号店は新開地の地名にちなんで、フォレストピア・ナイトフィーバーという名称でいくことにしていた。事実上二号店だが、店の名前は地域に溶け込ませることにしたのだった。

 店の一階は、ステージがあってそこを見ることができるように観客席を置く。飲食店も兼ねていて、食事を取りながら演奏を楽しめるわけだ。

 この作りは同じで、ラムリーザ達も週末のライブついでに晩御飯を取ることがほとんどだった。

 二階には――本店の二階に上がった事は無いが――、倉庫や練習用のスタジオなどが設置され、音楽の練習をよりよい環境でできるように、とのことらしい。また、ラムリーズ専用のスタジオも作るとか……、コネってずるいね。

 まぁ、領主の頼みとなれば、そう反発も無いだろう。

 そういったものを、現在フォレストピアの駅前に建設中で、使えるようになるのは来年春以降だろう。それまでは、音楽の練習は部室を使い、それ以降は店のスタジオを使うことになるかもしれない。

 さらに上の階は客室。遠くから来た人のために、泊まる部屋を二十から三十部屋は作るそうだ。隣国シロヴィーリから来た客も泊まることになるだろう。

 最上階近くは、ジャンが住む部屋や、会議室など重要な施設が置かれることになっていた。街の会議などは、ここが使われることになるだろう。

 最上階に住もうとしているジャン、オーナー特権としてこんな所はちゃっかりしている。

 一通り、フォレストピア・ナイトフィーバーについての計画を聞いた後、少しばかり雑談をして過ごすことにした。

「ジャン、フォレストピアに住み着くと、学校に通うのが大変にならないか?」

 ジャンは、今現在帝都の高校に通っている。確かにこの地方から帝都までは、電車で片道二時間近くかかる。

 しかしジャンは、落ち着いて「考えがある」と答えた。ただ、今はこれだけしか言わなかったが……。まぁ、どうすればいいかはジャンが考えたらいいことだ。

 それからしばらくの間、三人はいろいろと語り、時には笑い声を上げながら、フォレストピアについていろいろと語り合っていた。

「そういえばジャンだったか? お前もギターできるんだってな?」

 ふと思い出したかのように、リゲルはジャンに尋ねた。文化祭で、ジャンが飛び入りでギターの演奏をしたことをリゲルは知らない。

 ジャンは肯定し、リゲルは「分野は何?」と聞く。

「俺は、J&Rではリードギターやってたな。ソニアはその時からベースで、リズムギターはラムリーザの妹のソフィリータがやってたな」

「なるほどな」

 現在ラムリーズのリードギター担当はリリスだ。

 ジャンは、その事を思い出したかのように言ってきた。

「リリスかぁ。リゲルよ、リリスっていい女だと思わないか?」

 しかしリゲルは、ふっと鼻を鳴らして辛辣なコメントを返す。

「あれは、顔が良いだけのあほたれだ」

「なんだよ、酷い言い方だなぁ」

 リゲルの酷評に、ジャンは少しむっとしたように言い返した。何気にジャンは、リリスの事が気に入っているようなのだ。

「あれは、ソニアを美人にしたようなものだ。赤点ギリギリの低空飛行、ソニアと何ら変わる事はない」

 ソニアは美人じゃないというより、ソニアは可愛いタイプだとフォローしておこう。

「む、それはまずいな……」

 その時、ソニアは自分の事を話しているのに気がついたのか、声をかけてきた。

「ねぇ、男ばっかりで話し進めていないで、女の意見も聞いてよ」

 ソファーで、テーブルトークゲームのルールブックを読んでいたソニアが、ラムリーザ達の座っているテーブル席へと移動してきて話に割り込んできた。

 そんなソニアの様子を見て、リゲルはいつものように舌打ちをしてから聞いてきた。

「ならばお前の意見を言ってみろ」

 リゲルに促されて、ソニアは身体を乗り出して自信満々に答えた。

「たなからぼたもち球場つくって、お金を稼ごう」

 ソニアの見当違いな発言に、三者三様の反応を示す。

 ラムリーザは、「またそれか……」とつぶやいて溜息を吐く。

 リゲルは「お前はゲームの話しかできんのか」と、冷たい視線を送る。リゲルの考えるフォレストピア発展の計画は、シミュレーションゲームからの受け売りということは、この際置いておこう。

 一方ジャンは、興味深そうに尋ねてきたりする。

「ぼたもち球場って何だい?」

「えっとね、球場建築は五千エルドかかるけど、名前を『たなからぼたもち』にしたら五万エルド貰うことができるの。だから、差し引き四万五千エルドの儲けになるんだよ」

 ソニアは、得意げに説明する。ゲームの裏技を……。

「それを二つ建てたらどうなるのかな?」

「九万エルドの儲けになるよ」

「なんかすごいけど、そんな話あるわけないだろ? 作り話だろ?」

「嘘じゃないよ! それで二十五万エルド稼いで、エクソタスアルコとか建てたら、人口が二十五万――むーむー!」

 途中からラムリーザは、ソニアの頭を抱え込んで黙らせた。これ以上聞いていても、わけがわからなくなるだけだ。エクソタスアルコとは何だ? 聞いたこともない。

 ジャンは、その様子をぽかーんと見つめながら、「さっきのは何の話だ?」と尋ねる。

「ゲームのチート技だ」

 リゲルはそう言い捨てて、テーブルの上にあったランブータンの実を投げつけた。ランブータンは、ラムリーザに抱え込まれているソニアの額に命中した。実自体はトゲトゲに見えるが、やわらかくて危険ではない。

「なっ、何すんのよ! この氷柱!」

「そうだ、次はロザリーンも呼ぶことにしよう。彼女もこの計画に会議に参加してもらって、女性の意見も聞こうか」

 リゲルは、騒ぐソニアを無視してロザリーンを呼ぶことを提案した。

「うん、それはいいね」

 ラムリーザもすぐに同意した。こういった話には、ソニアは向かない。

 しかし、当然ソニアは不服そうに頬を膨らませて言う。

「あたしも考えるよ! 女性の意見を言うよ!」

「ぼたもちはもうたくさんだ」

「むー……」

 ラムリーザに押し込まれたことで、ソニアは諦めたようだった。大人しくソファーに戻り、再びテーブルトークゲームのルールブックを読み始めた。戦闘以外はあまり興味がないのにね。

 話し合いは、それからしばらくに間続いていった。

 

「それじゃあ俺はそろそろ帰るわ」

 そろそろ日が傾き、夕方に差し掛かった頃、ジャンは帝都へ帰ることにした。

 そういうわけで、今回のフォレストピア計画会議はおしまい。いろいろ話し合いながら、夢の都を作っていこうじゃないか。

 
 
 
 
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