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新開地フォレストピアでの新生活始まる

 

 新開地フォレストピアは、隣国ユライカナンとの国交を目的とした、エルドラード帝国最西端の街である。今はまだ開発が始まったばかりで小さいが、これからどんどん発展していくことになるだろう。

 ラムリーザ・シャリラン・フォレスターは、帝国宰相ラムニアスの次男で、将来はこのフォレストピア地方の領主となることになっている。だが今はまだ、去年の春から帝都を離れ、西の都ポッターズ・ブラフ地方にある、帝立ソリチュード学院に通う高校生だ。

 ラムリーザには、ソニア・ルミナスという幼馴染の娘が居る。彼女もまた、ラムリーザと一緒に去年から帝都を離れて同じ学校に通っている。

 二人は去年までは、まだフォレストピアの新居が出来上がっていなかったので、ポッターズ・ブラフにある親戚の屋敷に下宿していたが、今年からは新居に越してきていた。

 新居にある自室の内装は、あえて去年まで住んでいた部屋と同じように配置している。一気にいろいろ変えると戸惑ってしまうかもしれないので、変えなくても良い部分は同じにしておいた。二人とも、新しい環境よりはどちらかと言えば馴染んだ環境を好むという点もあったのだ。

 そして今日から新学期が始まる。

 

「ラム~、起きるのが少し早いよぉ」

 眠たそうに目をこすりながら、ソニアはラムリーザに文句を言ってきた。

 ちなみに二人は恋人同士という関係で、付き合うようになってからは、同じベッド、同じ布団で寝ていたりする。

「今年からは学校までちょっと遠くなるからね。当面は電車で通うことになるから、電車の時間に間に合うように起きなくちゃね」

「ふ~ん……」

 ソニアは、ラムリーザに諭されてしぶしぶ起きて、着替え始めた。

 久しぶりに学校の制服に袖を通したソニアは、またラムリーザに不満の声をぶつけてきた。

「ラム~、なんか胸がきついよぉ……」

「何だ? またおっぱいが膨らんだのか?」

「ふえぇ……」

 ソニアは、去年の春にはバスト98cmだったが、夏休みに入った頃に、とうとう1メートルに到達してしまった。このペースで膨らんでいるのなら、おそらくまた――。

「リザ兄様、ソニア姉様、起きていますか?」

 その時、丁寧だが元気のいい声が部屋の外から聞こえ、「おはよう」と言いながら一人の少女が入ってきた。

 彼女はソフィリータ・カスミ・フォレスター、ラムリーザの一つ下の妹だ。去年までは帝都で生活していたが、今年からはラムリーザと同じ学校に通うということで、こちらに引っ越してきている。

 これが去年から大きく変わったことの一つ。去年はラムリーザとソニアの二人だけで生活していたようなものだが、今年からは二人きりというわけにはいかない。去年のように、夜も落ち着いて落ち着かないことがやりにくくなってしまった。

「ここの制服いいね、私気に入っちゃいました」

 ソフィリータは、二人の前でくるりとまわって嬉しそうに言った。制服だけでなく、またラムリーザ達と一緒に生活できるのが嬉しいのだ。

「そう? ブラウスきついし、靴下もうっとうしくてあたし嫌い」

 だがソニアは、ソフィリータに同意しない。文句を言いながら、もそもそと着替え中だ。

「そうですか? 私はどっちも良いと思いますよ」

 ソフィリータはソニアと違って胸のサイズが普通だから、服に困らない。ちなみにソニアは、胸が大きすぎて、ブラウスの上から二番目までのボタンを留めることが不可能だ。最近では三番目も危うい。

 また、ソフィリータは普段から私服でもニーソとか長い靴下を好んでよく身につけているので、制服のサイハイソックスもソフィリータ好みだろう。ちなみにソニアは裸足であることを好み、これまでは私服自由な学校に通っていたので靴下を履かずにいたのがだ、去年からそうもいかずに文句を言うことが多い。

「朝食の支度が出来上がっていますよ」

 呼びにきたのが、去年までラムリーザ達が住んでいた所に居たただの使用人ではない。フォレスター家専属メイドのナンシーで、ソニアの母親。彼女もまた、今年から一緒に過ごすことになっていた。ソニアの母親の関係で、ラムリーザとソニアは、物心が付いたときから一緒に過ごしてきた仲であるのだ。

 食卓には既に、ラムリーザの母親ソフィアが座っていて、朝のコーヒーをすすっている。またその傍らには、フォレスター家専属の執事が控えている。またその執事が、ソニアの父親だったりする。

 要するに、屋敷内では二年前と同じ生活が戻ってきたわけなのだ。

「仲間がなんだか増えている~」

 ソニアは一人、食卓の席で陽気に歌いながら身体をくねらせて不思議な踊りを踊り、後ろからメイドである母親に「お行儀良くしなさい」とはたかれたりするのであった。よくある光景だ。

 

 ラムリーザは去年までとは違い、ソニアと二人きりではなく妹のソフィリータも加えて一緒に屋敷から出た。これからは三人で登校することになるだろう。

 三人は、フォレストピアの町並みを眺めながら駅へと向かった。

 駅の近くには大きな建物、シャングリラ・ナイト・フィーバー二号店、ここではフォレストピア・ナイトフィーバー、帝国でも有数の高級クラブハウスである。ラムリーザ達は、このクラブで演奏して楽しんでいたりする。

 まだメインストリートの名前は決まっていない。これは住民にアンケートでも取って決めてもいいだろう。

 フォレストピア駅、通学としては初めて来ることになった新しい駅。間違えて反対の西行きの電車に乗ってしまうと、隣国ユライカナンに行ってしまうが、そんな間違いはやらかさないだろう。

 電車は発車すると、まずは東側に連なっているアンテロック山脈を登っていく。

 山脈に頂辺りで、去年までパーティでよく通っていたオーバールック・ホテル前の駅に到着し、その駅を過ぎて山を下れば、ラムリーザとソニアにとっては去年までの馴染み深い、ポッターズ・ブラフ駅に到着した。

 そこから歩きで学校まで向かうのだが、元々駅から一番近いという理由で帝立ソリチュード学院を選んだというのもあって、登校時間はそんなにかからなかったりする。

「ソフィリータ、あれが今年から通う学校だよ」

「へぇ、田舎にしては結構立派な学校ですね」

「割とこの地方の有力者の子が通っているらしくて、割と名門らしいよ」

「リリスとかが名門なの?」

 同じ平民のソニアが、何故か偉そうにリリスを下げる。ソニアのことは、似非お嬢様とはよく言ったものだ。

「帝都みたいに、全員が全員貴族にはなったりしないよ、そんなに多くないし。でも貴族はまず間違いなくここに来るらしいよ」

「ソニア姉様は、貴族じゃなくて蛮族なのですか?」

「なっ、何よそれっ?!」

 ソニアは、ソフィリータの唐突な問いかけに、ひっくり返った声で返事をした。

「だって、部屋に転がっていた自己紹介シートみたいな紙に、生まれは蛮族って書いてありましたよ」

「あっ、あれはテーブルトークゲームのキャラクター設定! あたしの本当の生まれは王族なの!」

「蛮族の王ですか?」

「うるさいっ! それじゃあソフィーの生まれをあたしが決めてやる。ソフィーの生まれは放浪者だ! 流れ者に捨てられて、誰かに拾われて育ったの!」

「私はリザ兄様と同じ生まれになるはずですが……?」

「実妹設定だと倫理的にやばいので、ソフィーは実は義妹だったの! 血の繋がらない拾われた義妹!」

「じゃあ私がリザ兄様の恋人になっても問題無いのですね?」

「寝取るな!」

 ソニアは勝手に自分で敵を増やしている。何をやっているのだか。というより、二人の会話を聞いていると、どちらが年上なのだか分からなくなってくるから不思議だ。

「それじゃあソフィリータ、またね」

 学年が違うので、下駄箱の位置も違う。ラムリーザ達はソフィリータと別れると、去年までとは違う新しい教室へと向かった。

 学年は変わったが、クラスメイトはほぼ半分スライドしたようなものだ。

 ラムリーザとソニアは今度も同じクラスになったが、ラムリーザ的にはあまり気にしていなかった。しかし、ソニアにとっては死活問題だったらしい。

 教室では、座席は自由となっていた。去年も、始めは座席が決められていたが、席替え後は自由になっていた。今年は最初から好き勝手にしていいらしい。

 特に何も考えず、去年と同じ場所に行こうとすると、既にリゲルとロザリーンは登校しており、二人もまた去年と同じ場所に陣取っていた。

「おはようございました」

「おはよ――、何で過去形?」

 ラムリーザの挨拶に、ロザリーンは答えかけて突っ込む。一方リゲルは、軽く頷いただけだ。

 この二人は、ラムリーザ達の去年からの友人で、リゲル・シュバルツシルトはこの地方の流通を取り仕切るシュバルツシルト鉄道の息子、ロザリーン・ハーシェルの父親はこの地方の首長を勤めている。

「そういえば座席は自由だったのに、こんな好条件な場所がよく空いていたなぁ」

 ラムリーザは去年と同じく、窓際最後列に居るリゲルの前に腰掛ける。その隣にソニアは滑り込んできた。

「リゲルさんが早く来て場所を取ろうと言い出しまして、この周辺を睨みを聞かせて確保していたのです」

 ロザリーンの説明に、リゲルは「要らん事言わんでええ」と答えた。

 リゲル的には、ラムリーザ以外とはそれほど親しくしようと思っていないので、自分の前にはラムリーザが来るよう調整しただけだ。ちなみにソニアはついでだとか。どうせうるさいから、という理由だろう。

 それからしばらくして、教室にリリスの姿が現れた。

 リリス・フロンティア、彼女もまたラムリーザ達の去年からの友人で見た目はすごく美少女だが、中身はソニアと同レベルの幼稚さを兼ね備えていて、過去には根暗吸血鬼と呼ばれていた黒歴史がある。ただし、今も少しばかり性格悪い面が現れていて、同じく幼稚なソニアと何かとぶつかり合っている。

 去年までは、リリスの中学時代からの友人ユコが居たのだが、彼女はこの春から新しい街へと旅立ち、去年のようにリリスと行動を共にしているわけではない。その所が、ちょっとリリスは寂しそうにしていた。

「あっ、チロジャル!」

 なんだか嬉しそうなソニアの声が響いた。ソニアの斜め前に座っていた娘が、ビクッと身体を震わせて振り返った。

 気の弱そうな娘チロジャル・プルンピー、去年は隣のクラスだったが、ひょんな事件をきっかけにソニアと知り合い、そのいじりやすさからソニアお気に入りとなっている。今年は同じクラスで接することが多くなる、チロジャルも気の毒だ。

 すぐにチロジャルの側に居た男子生徒が、「いじめるな!」と言ってソニアに睨みを利かせてくる。

 彼はクロトムガ・トンボー、チロジャルの幼馴染で彼氏であり、彼もまた同じく去年のひょんな事件をきっかけに知り合っていた。

 ラムリーザとクロトムガは、友好的な関係を築けていたが、チロジャルをいじるソニアとは、あまりよろしくない関係になっていたりする。

 それはそれで、ソニアにとっては楽しみが増えたと言えるだろう。もう一度述べるが、チロジャルも気の毒だ。

 その時、ラムリーザの前の席、去年はユコが居た席に、がっしりとした体格の男子生徒がどかっと座り込んできた。そして、独特の作ったような謎の言葉を投げかけてきた。

「オイッス、ラムさん! ナハナハナハ、レフトール参上!」

 妙な挨拶と共に現れたこの男は、レフトール・ガリレイ。

 去年初めて遭遇した時は、何者かに扇動されてラムリーザに危害を加えようとしてきた。彼は、この地方の学生の間では悪評高い悪の双璧の一人として恐れられていたが、ラムリーザとの一騎打ちで手痛い目に会わされて以来、ラムリーザに尻尾を振って取り入ろうとしている。

 レフトールには、権威主義的な考えを持っている所があって、ラムリーザの権力を知った後は、その力に寄り添ってきているだけなのだが、ラムリーザとのやり取りを重ねていくうちに、今はなんとか善人になろうとしているのだから、根は良い奴なんだろう。

「ユコが居なくなったからと言って、あなたが私の隣に来るのは迷惑なんだけど」

 リリスはレフトールが側に来るのには反対なようだ。

「何だ馬鹿野郎!」

 レフトールは凄んで見せるが、知り合う前だった時の怖さはもう感じられない。

「野郎じゃないんですけど」

 リリスも言い返す余裕がある。なんだかんだで、レフトールも今では良い仲間になっているのかもしれない。

 

 ラムリーザが教室を見渡してみると、レフトールの一番子分のマックスウェルもぼんやりと座席に腰掛けているし、去年の文化祭では大活躍だったクラスの人気者レルフィーナの姿もある。

 なんだかよくわからないが、知り合いがいろいろ集まったな。

 ラムリーザはそう思いながら、いつものように側に引っ付いてきたソニアに背を預けてもたれると、いつものように外の景色を眺め始めた。

 

 こうして、ラムリーザの新天地での二年目の生活が始まった。

 
 
 
 
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