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ハメ技が使えなくなったら全然戦えない娘

 

 放課後。

 ラムリーズのメンバーは、部活と称して遊ぶか、真面目に部活動をするかの二択であった。

 しかし時々ユコは、どちらにも参加せずにフラッと抜けることがあった。といっても、ゲームセンターに遊びに行っているだけなのだが。

 その時にユコは、用心棒として毎回レフトールを連れまわしていた。今ではゲーセン仲間としての関係が成り立つほどであったりする。

「私は今日はゲームセンターに遊びに行きますわ。というわけで、レフトールさん、よろしくですの」

 ユコは今日はゲームセンターへ遊びに行くようだ。早速レフトールに声かけをしている。

「あいよっ、がってん承知ノ介!」

 二人がいつも向かう先は、繁華街であるエルム街のゲームセンター。しかし今日は、その二人を見てラムリーザは声をかけてみた。

「フォレストピアのゲームセンターが、今日からオープンすることになっているけど行ってみないかい?」

 フォレストピアも街としての形を作り上げるために、ゲームセンターの一つや二つ用意しなければならなかった。しばらく準備していたが、丁度今日から入れるようになったのだ。

「メダルゲームはあるんですの?」

 ユコの問いにラムリーザは、「ゲームセンターにあるべきものは一通り揃っているはずだよ」と答えた。

「おいレフトール、君はユコのボディガードやってるのか?」

 ジャンはレフトールに尋ねてきた。自分はリリスを狙っておきながら、そのリリスの友人の動向には気を回しているといったところか。

「なんかいつの間にかそんな感じになっとるね。まぁ俺もたまにはゲーセンで遊びたいから丁度ええけどな」

「なんかきっかけでもあったのか?」

「こいつがウサリギ派のチンピラにナンパというか絡まれていたというか、なんかあったのを助けてやってからずっとだな。まぁ王女様に仕える騎士みたいなものだ」

「それ以上は話さなくていいですの!」

 ユコがビシッと言い放ったので、レフトールは口をつぐんだ。そこにリゲルがいつもの口調で問いを投げかけてきた。

「お前はラムリーザの番犬とか言いながら、王女様に仕える騎士に浮気しているんだな」

 これにはレフトールも言い返す。

「俺はラムさんの身を守る。ついでにラムさんの取り巻きの身を守っているだけだな、これが」

「それなら俺の身も守ってくれるん?」

 ジャンは悪戯っぽい笑みを浮かべてレフトールに尋ねてきた。

「野郎の身は守らん。自分でなんとかしろ」

「ラムリーザも野郎なのだが?」

「えーとラムさん、フォレストピアのゲーセンに案内してくれや」

 レフトールは自分の旗色が悪そうだと判断すると、さっさと話を切り上げてラムリーザに早く行くよう促してきた。

「それじゃあ今日は、久しぶりにみんなでゲームセンターに行ってみようか」

「んだんだ、レッツラゴーだ」

 レフトールは、先陣を切って教室から飛び出していった。

 普段ゲームセンターによく行くのはユコだけだ。

 ソニアやリリスもゲーム好きだが、主に家で遊ぶ派でゲームセンターに行くことは少ない。

 というより、ユコがメダルゲームが好きなだけで、他のゲームは家にあるゲーム機でも遊べるようなものだ。精々ゲームセンターの方が画面が大きいとか画質が良いとかぐらいだ。家庭用機への移植は劣化コピーだとよく言われているが、ソニアやリリスはあまり気にしていなかった。

 途中で下級生コンビのソフィリータ、ミーシャと合流して、いつものメンバーはフォレストピアへと向かっていった。

 

 フォレストピアのメインストリートから一筋逸れた二番街、ペニーレインにそのゲームセンターは建っていた。

「ペパーランドですの? 初めて聞く名前ですわね」

 新しいゲームセンターの名前はペパーランド。その名前を見てユコは首をかしげた。

「町の施設の名前は、特に所有者が決めなければ住民で投票して決めることになっているからねぇ。この街の住民のネーミングセンスは僕もいまいちよくわからないんだ」

 ラムリーサも首をかしげる。なんといってもメインストリートが別に曲がりくねっているわけでもないのに「ロング・アンド・ワイディングロード」である。これが住民投票で決まったのだから、今後も不思議な命名が増えていくことだろう。

「名前なんてどうでもいいですの。中身で勝負ですわ」

 ユコは最初に名前に突っ込んできたくせに、すぐにどうでもいいようなことを言い出してさっさと中に入っていった。

 ゲームセンター、ペパーランドの中は人の数はそれほど多くない。基本的にフォレストピアの住民しか来ないだろうということで、それほど賑わっていないようだ。

 ポッターズ・ブラフの住民なら、よほど新しい物好きでもなければ普通はエルム街のゲームセンターに通うものである。

「ここならウサリギ派のチンピラもあまり来ないんじゃないかね」

 レフトールは、周囲を見渡してそう言った。

「それでも行くときは同行してもらいますわ」

「はいよっ」

 ユコは学校帰りならばレフトールを連れまわすだろうが、休日となればラムリーザに連絡が来る可能性は高かった。最もユコは、休日はあまりゲームセンターで過ごすことはないのであるが。

 早速ユコは現金をメダルに変えてメダルゲームに取り掛かっていた。レフトールは子分のマックスウェルと二人でパンチングマシーンで遊んでいるし、ミーシャとソフィリータはぬいぐるみキャッチャーで遊んでいる。ぬいぐるみの目玉はココちゃんであろうか?

 リゲルとロザリーンはいつものようにエアホッケーに取り掛かり、ラムリーザとジャンは車のレースゲームで勝負をしていた。

 そして騒動は、ソニアとリリスが対戦を始めたビデオゲームコーナーで発生する。

 去年からよく遊んでいた格闘ゲームだが、今年に入ってからバージョンアップしていろいろと仕様が変わったりしていた。パッと見ただけでは、キャラの色が変わっていたりするだけだが、ゲームスピードが少し速くなっていたりと変わった部分はいろいろあった。

「なによぉ、ヴェガが緑色じゃなくて銀色になってる。サイテー、おもしろくない」

 ソニアは色で選んでいたのか? いや、そういうわけではないということを、去年散々ハメ殺されたラムリーザにはわかっていた。

「緑じゃないなら選ばなければいいじゃないの、そんなインチキキャラ」

 リリスもソニアと喧嘩に発展したこともあるので、ソニアがそのキャラを選ぶことには否定的だ。

 だがソニアは「やだね」と一言答えて、結局いつもと同じキャラ――ただし色は銀色――を選んでリリスと対戦が始まった。

 そういうわけで始まった対戦だが、すぐにソニアの様子がおかしくなった。

「あれ? なんか前と同じタイミングでダブルニーが出ない」

 以前とキャラの使い勝手が変わっていたのだ。得意の前方宙返り式二段蹴りとでも言うのか、ハメ技で多用していたダブルニープレスの必要なタメ時間が長くなっているような気がしたのだった。

「あ、そういえばバランス調整が入ったらしいわね。その技を出すための必要タメ時間が長くなったらしいよ」

「なんだとー?」

 ソニアが以前と同じタイミングで技を出せなかった理由はそこにあったわけだ。そういえばこの技を連発してハメ攻撃をしていたっけ。その辺りの調整が入ったのだろう。

「これでダブルニーハメはできなくなったってことね、くすっ」

「まあいいや、十段攻撃をぶち込んでやる!」

 ソニアは連続攻撃で一気にリリスの操るキャラを叩きのめそうとしてきた。しかしリリスは落ち着いていた。

「それともう一つ変更点があったわ。よく見て――」

 リリスは、ソニアの操るキャラの攻撃をしっかりとガードして、ダブルニーを放ってきた直後に落ち着いて投げ技を放ってみた。

「――ぽいっ」

「あっ、投げられた!」

 その後、何度かソニアは連続攻撃を仕掛けようとしてみたが、ダブルニーの後に技を繋げようとするとリリスに投げられてしまっていた。

「何よこれ! おもしろくない!」

「ハメ殺ししてくる方がよっぽどおもしろくないんですが。まぁ連続で技が入りすぎるダブルニーの後に隙が生まれて技が繋がらなくなったみたいね」

「そ、そんな……」

 ソニアは得意のハメ技が使えなくなり、リリスをどう攻めればよいかわからなくなっていた。ハメ技しかやらない娘は、それを封じられると何もできないものだ。

「さらにこれも弱化したみたいだけどほんとうかしら?」

 リリスは試すように、今度はジャンプして上から攻撃を仕掛けてきた。ソニアはこれまでのように、しゃがんだ状態での強パンチで迎撃を試みる。しかし――

「あっ、迎撃できない……」

「あーやっぱりね。そのパンチは対空迎撃がやりにくくなったみたいよ、くすっ」

「な、何よそれ! なんかズルイ!」

「今までのあなたの方が十分ズルかったわ」

 どうしようもなくなったソニアは、めんどくさくなって「サイコ投げ」だけでリリスをハメ殺そうとしてきた。しかしリリスはソニアの単調な攻撃を見切って、迎撃技で跳ね返してくる。ソニアはもう何もできなくなっていた。

 そのまま手も足も出ないまま、リリスに簡単にやられてしまっていた。

「よっわ、くすっ」

「ふえぇーん! もうこんなクソゲーやらない!」

 二本目の試合が始まろうとしていたが、ソニアは完全にへそを曲げて、そのまま試合放棄して立ち去ってしまった。そんなソニアをリリスはくすっと笑って、してやったりとでも言ったかのような笑みを浮かべて横目で眺めていた。

 ソニアはラムリーザの側へ行き、そのままレースゲームに参加する。まぁレースゲームならハメ殺すとかズルイ戦法はないだろうし、ソニアもそれほど慣れているわけではない。ラムリーザ自身もスピードをもてあまして、しょっちゅう壁に激突している。

「ん? ソニアこっちに来たん? ならばリリスはあっちで一人か。それなら俺はあっちで格闘ゲームでリリスと対戦でもしてくる」

 ジャンはソニアが入ってきたのを見て、リリスと一緒に遊ぼうとした。

「あんなクソゲー面白くないよ」

 ソニアは吐き捨てるように言い放ったが、ジャンは気にせずレースを終えて立ち去っていった。

 

 一通りゲームセンターで遊んだ後、どうせなら食事をして帰ろうという話になった。

 しかしソニアとユコの提案で、今日も強引にココちゃんカレーに行くことになってしまった。カレーが食べたいわけではない、激辛カレーを完食した景品のぬいぐるみ、いやクッションが欲しいだけだ。

 まだ景品を貰っていないロザリーンやミーシャとソフィリータも激辛カレーの「ココちゃんマグマカレー」にチャレンジしたが、苦悩するだけとなってしまった。三人に言わせて見たら、「たかがクッションのためにこんな辛いの食べ続けるソニアとユコは変!」とのことだったが、まぁどうしても欲しいものがあるのなら必死にもなれるということだろう。

 店内の垂れ幕を見ると、「ココちゃん残り235体」と書かれている。しばらくマグマカレー通いは続きそうだ。

 そういうわけで、今日もまたラムリーザの部屋に転がっている「ココちゃんぷにぷにクッション」の数が、一匹増えたのであった。
 
 
 
 
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