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カラオケで遊んでみよう

 

「おい、フォレストピアにカラオケハウスを作ってみたぞ」

 放課後、今日は部室で駄弁るかジャンの店で音楽活動をするか考えていたラムリーザは、ジャンに思い出したかのように話しかけられた。

 最近はフォレストピアの街開発計画をジャンに任せっきりで、ラムリーザはほとんど事後承諾で判を押すとかそういったことしかやっていなかった。だから街のことについては、ジャンの方が詳しかったりするところがある。むろんジャンも、一任されているからって好き放題やるわけではなく、そこはきちんと考えて街作りをしていた。

 もちろんラムリーザには、気に入らない点があれば修正される権限はあった。しかし、ジャンのセンスに問題が無いのか、今のところダメ出しをしたことはない。

「カラオケハウス? ああ、歌を歌って遊ぶ場所ね」

 ラムリーザ達は、カラオケハウスに出かけたことはなかった。歌が歌いたければ自分たちで演奏して歌えばいいだけなので、わざわざカラオケハウスへ行く必要が無かったのだ。グループ内で行こうといった話題が挙がることも無かった。

「なんだ、行ったことないのか? あ、ま、そっか、いつもスタジオで好き放題歌っているし、スタジオの方が音質いいからな。一度は行ってみないか? せっかく新装開店したことだし」

「何々、カラオケ? あなたたちカラオケ行くの? あちきも連れてってー」

 そこに突然普段はあまり絡まない娘が割り込んできた。

「レ、レルフィーナ?」

 クラスの人気者、そして去年の文化祭では、クラスの実行委員として活躍したレルフィーナが、ラムリーザ達のそばへと駆け込んできた。

「あちきカラオケ好きなんよー。新装開店とか聞こえたけど、どこに出来たの?」

「フォレストピアだよ、新開地の」

「あー、あそこね。行こ行こーよ、カラオケ」

「じゃ、今日はカラオケで遊ぶか」

 そういうわけで、今日は部活動はお休みしてみんなでカラオケハウスへと遊びにいくことに決まった。

 校門前で、ソフィリータとミーシャと合流し、普段のメンバーにレルフィーナを加えた一同は、フォレストピアに向かう電車に乗り込んだ。

「そう言えばあちきはフォレストピア行くの初めてかもしれない」

「レルフィーナはどこに住んでいるんだっけ?」

 ラムリーザの問いにレルフィーナは、「エルム街。だからあんまり他所には言ったことないのよねぇ」と答えた。

 エルム街なら、ポッターズ・ブラフ地方最大の繁華街だ。そこに住んでいるのなら、わざわざ他所に出かけることは少ないだろう。

「で、カラオケハウスはどこにできたんだっけ?」

「ペニーレインに入ってすぐの所だな」

「ペニーレインって何?」

 すぐさま質問してくるレルフィーナに、ラムリーザはどう答えたらよいものやらと考えた。

「えーと――」こんな内容でよいものやらと思いながら言葉を続けた。

「――フォレストピアの一番街メインストリートから一本外れた二番街。名前は住民が投票で決めた、語源は知らない」

「ふーん、なんだか面白そうね」

 レルフィーナの言う面白いは、通りの名前なのか命名方法なのかはわからないが、そうこうしているうちに電車はフォレストピアへ到着した。

「でっかい倉庫にでっかいホテルねー」

 初めて来たらしいレルフィーナの、フォレストピア駅から出てすぐの感想だ。

 駅前で目立つのは、ユライカナンからの物資を溜め込んでいる倉庫と、ホテルも兼ねているジャンの店、フォレストピア・ナイトフィーバーの二つだ。

「あのホテル、俺の店だから」

 なんだかジャンは、得意げだ。

 一番街のロング・アンド・ワインディングロードをすぐにそれて、二番街へと入り込んだ。そこでラムリーザは、数日前のことを思い出して顔をしかめた。

「む、顔が引きつっているぞラムリーザ。ああ、祭りの日のことか、ユコとソニアの二人がずっと射的屋にはまっていたけど、あのぬいぐるみ取れたのか?」

「取れた取れないの問題じゃなく、取れすぎた。三十個以上も部屋にある、さすがにうっとうしい」

「何よ、ユッコなんかもっといっぱい取ってるからあたしの取った数なんて可愛い物!」

「で、ユコは何個取ったのだ?」

「五十個までは数えたけど、それ以上はめんどくさくなりましたの」

「お、おう、なんだか知らんがすごいな」

 他人事ながら驚くジャン。ココちゃんフリークのソニアとユコはいいのだが、それに巻き込まれているラムリーザはいい迷惑だ。ソニアがラムリーザの部屋に入り浸っているので、ココちゃんも全てラムリーザの部屋に転がっているのだ。

 その射的屋の置いてあった場所の後ろに、ジャンの言う新しくできたカラオケハウスが出来上がっていた。

「ミュルミデオンか。しかし中身はえらく殺風景だね」

 それが、カラオケハウスの名前だった。そしてラムリーザの言うように、店の中に入ったが飾りとかも何も無く、妙に地味な感じだ。

「実は、今できたばかりなんだ。放課後前に丁度連絡が入ってね。だから君たちがお客第一号ってわけだ。ちなみに、まだプレオープン。正式にオープンするのは明日以降だ」

「えー、なになにそれ、そんなのに入っていいの?」

 ジャンの説明に、フォレストピアをあまり知らないレルフィーナが驚きの声を上げる。

「この街はできたてだからね。こういうことは多々あるんだよ」

 ラムリーザの言葉に、レルフィーナは「すごーい」などと言っている。

「で、部屋割りとか決める? 全員で一部屋に入る?」

「そこで料金制度だが、リゲルに伺ってみよう。どう設定する?」

「そうだな――」

 リゲルは腕組みして持論を述べ始めた。

 まず料金は、一部屋いくらという制度にして、部屋を時間単位で貸し出すという形式にしようと。

「えー? 一人いくらとかじゃないの?」

 カラオケハウスによく遊びにいくレルフィーナは首をかしげる。

「一時間あたり一人五百エルドだとしよう。二人で入れば一時間千エルドかかる。しかし二人だから一人当たりの時間は単純計算で三十分になる。つまりこれだと三十分で一人五百エルドとなる。人が増えれば増える分、同じ料金で持ち時間が減る。人数分の料金を取るのは不合理だと考えられるから避けよう」

「なんかよくわかんない」

 ソニアの突っ込みを無視してリゲルは話を締めくくった。

「つまり、一部屋一時間で千エルドぐらいで設定していれば、人数が増えて持ち時間が減ったとしても、その分料金が頭割りになって安くなるから問題ない」

「よし、じゃあそれでいこう」

 ジャンは、店主と何やらごにょごにょと話しをしている。料金体系も、たった今決定するみたいな感じだ。

「ちょっとそれずるいよ。エルム街のカラオケハウス、大勢で行ったら同じ金額で歌える時間が少なくなるのに、そつちのほうが絶対いいじゃん」

 なんだかレルフィーナは憤慨している。

「まぁいろいろ理由はあるが、俺がカラオケにあまり行かんのはそういう不合理が理由だな。かと言って一人で行く気もしない」

「ミーシャがリゲルおにーやんと行くよ、行くよ」

「了解了解、今度連れて行ってやるよ」

 またリゲルの笑顔。ソニア達にキモいと評される笑顔をミーシャに見せるリゲル。

「こほん、今来てますよ」

 ロザリーンの咳払いで、リゲルはすぐに真顔へと戻った。

「よし、一部屋一時間五百エルドに決まった。全員で入るか? それとも部屋割りするか?」

 レルフィーナは、まだ「それずるい、安すぎるし効率もいい、ずるい」とぶつぶつ呟いている。

「勝手に俺の理想を述べただけだが、それで採算取れるのか?」

 リゲルは少し首をかしげてジャンに問う。

「この街は、国を挙げて発展させようとしているので、いろいろと国から援助が出ているし、スポンサーが帝国一の名家フォレスター家だからな。この街自体がそのフォレスター家の庭みたいなものだから、気にしなくて良いんだよ」

「うん、街自体が帝国宰相の私有地みたいなものだ。レルフィーナの言うようにずるいな」

 リゲルは頷きながら答えた。

「それに、フォレストピアはまだ娯楽が少ない。歌を聞きたければ俺の店に、そして歌を歌いたければここに来るしかない。客の奪い合いにはならないね。さて、全員で一部屋にすると一人当たりの歌える時間が減るので、二つか三つの部屋に分けるぞ。どうする?」

 なんだか今日は、ジャンが仕切っている。元々ラムリーザと組んでバンド活動をしていたJ&Rでもジャンがリーダーだった。どちらかと言えば、ラムリーザよりジャンの方が、人を動かしたがる性質があるのだ。

「あたしラムと入る。ラムと入れないんだったら帰る」

「よし、帰ろうか」

 ソニアは茶化すリゲルをキッとにらみつけると、ラムリーザに引っ付いて後ろに隠れてしまった。

「ラムリーザとソニア、レルフィーナもラムリーザと同じ部屋にしよう。リゲルはロザリーンと入ればいい。ソフィリータはミーシャと入ればいい。残りの三人で一部屋使おう。よし、四部屋用意してくれい」

 ジャンは一気に部屋割りを決めてしまい、他の者が口を出す前にさっさと部屋の準備をしてもらっていた。二人か三人で一部屋、ひとまずはあまり文句の出ない組み合わせだろう。さらにこれも文句が出ないように、うまく自分とリリスを同部屋にしているようだった。

 

 ラムリーザが飲み物を人数分用意して部屋に入った時、すでにソニアは部屋に飛び込んでいて歌う準備を済ませていたりした。

「ルッシーア!」

 部屋に入ると同時にソニアの大声が炸裂。お気に入りのルシアから入ったようだ、威勢のいいことだ。相変わらずソニアの声は、よく響く。レルフィーナも二番手として、曲を入力する端末をいじっていた。

 ラムリーザはドカッとソファーに腰を下ろすと、歌っているソニアをぼんやりと眺めていた。

「二つの世界が重なるとき、そこに見えてくるユートピア――」

 二番手レルフィーナの「THE SECOND ACT」が始まった。先ほどソニアが歌ったルシアも、このTHE SECOND ACTも演奏しながら歌うことができる曲だ。

 去年の文化祭でやったカラオケ喫茶のおかげで、演奏できる曲が一気に増えたので、そういうこともあってカラオケに行く機会の無かったラムリーズであった。

 ラムリーザは歌っているレルフィーナを改めて眺めてみた。クラスでは人気者だが、ラムリーザとあまり関わることの無かった娘、レルフィーナ。その見た目だけなら、ボーカル専用要員としてバンドメンバーに入れても問題ないだろう。

「思い出の歌、目に浮かぶわ。あの星空、思い出の町――」

 気がつくと、ソニアは二曲目を入れて三番手として歌い始めていた。この曲は、去年の夏休みにリゲルの別荘があるクリスタルレイクへ行く途中に、車の中でソニア達が歌っていた曲だ。

「あ、どうでもいいけど僕の順番をナチュラルに飛ばしたね?」

 ソニアが歌い終わったところで、ラムリーザはそうぼやいてみた。

「あ、ごめーん」

「ラムリーザ、歌う?」

 レルフィーナはマイクを差し出してくるが、ラムリーザは「いいよ、好きなだけ歌いなさい」と言って、ソファーに深く座りなおした。

 それからしばらくの間、ソニアとレルフィーナは交互に歌い続けていた。元々歌うのが好きな二人、ほっとけばいつまでも歌い続けそうな勢いだ。

 カラオケは、歌に集中できるのが良いところかもしれない。普段はベースを弾きながら歌っているソニアだが、今日はのびのびと歌っているようだ。歌の練習には良いかもしれないな、とラムリーザは思いながら二人の歌を聞いていた。

「ちょっと休憩したいからラムが歌って」

「そうね、のどが渇いてきたわ」

 二人はラムリーザにマイクを渡して、ジュースを飲んだりソファーに寝転がったりしている。

「飛ばしすぎ、二人で二時間近く歌い続けているからすごいよ」

 途中、一度だけ一時間だけ時間延長を入れていた。これは他の部屋のメンバーとも話をして伸ばしたものだ。

 さてと――。

「青空に候~、萌える娘に声をかけよう。青空に候~、萌えない娘には時間を割くな――」

 ラムリーザは、お疲れモードも二人の前で、ゆったりと歌っていた。

 

 さて、そんなこんなで残り時間も少なくなってきた。

「最後に三人で歌えるものにしようよ」

 レルフィーナはそう提案してきたが、そんな歌ってあったかな? と思うラムリーザであった。

「あ、これがあるよ。クッパとヘビと竜王とうみうしとうまうしとパンパースの歌。これ知ってる、大勢で歌う曲だよ」

「あ~あれね。聞いたことあるけどパンパースって何?」

「気にしたらおしまいよ」

 レルフィーナも知っているようで、ラムリーザにそう言ってきた。

「別名カジャションゲリア」

「うーん、異国の言葉かな?」

 ソニアに解説されてラムリーザは首をかしげたが、とりあえず気にしないことにして三人ともマイクを持って立ち上がった。

 なんだか修学旅行の時に、ユライカナンのテラで聞いたお経のような雰囲気の歌。一応三人で声を合わせているが、ちっとも盛り上がらない。

「ダメだ、やっぱり最後はこれにする」

 そう言ってソニアは、お得意の「きーらきーら」を打ち込んでいた。最後ということでレルフィーナも一緒になってユニゾンしていたりした。

 そんな感じに、カラオケハウスミュルミデオンのプレオープンは終わった。明日から早速本始動するようだ。

 ちなみに、この日もココちゃんカレーで食べて帰ろうという話に――主にソニアとユコの要望で――なり、ラムリーザの部屋に居るココちゃんの数は六体に増えたりしたのだった。
 
 
 
 
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