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第三回フォレストピア首脳陣パーティ

 

 さて、月初めの週末はフォレストピア開発打ち合わせと称した首脳陣パーティだ。三回目となると、馴染みの顔ばかりとなり、個々の集団も出来上がってきていた。

 この二ヶ月で、リョーメン、スシ、ギュードンと大衆食堂は増えてきている。さらに明日はユライカナンからまた新しい店舗であるミスターラムバーグ、羊の肉を使ったラムステーキが有名だと言うが、これもまた大倉庫での仮店舗での体験から始めることになっていた。

 今回の議題第一弾として挙がったのは、フォレストピアオリジナルの祭りを作ってみようという話だった。

 フォレストピアの地形で目立つのは、東のアンテロック山、西のロブデオーン山の二つで、東西に街を挟むようにそびえ立っている。この二つの山を繋ぐように、直線ではなく半月形に山脈が連なっている。山脈の中央から東側をアンテロック山脈と言い、その中腹にオーバールック・ホテルが建っていた。

 アンテロック山脈は、ポッターズ・ブラフ地方に面しているので割りと有名だが、西のロブデオーン山脈は、フォレストピアができるまではほぼ未開拓の地でもあった。ちなみにその山脈の麓には、ラムリーザの住む屋敷、フォレスター邸があったりする。

 それぞれの山脈の中央部、山脈を分けるような形で竜神殿が建てられていたりするのだ。

 これがフォレストピアの北部、山で囲まれている地形である。

「ロブデオーン山の山頂から、アンテロック山の山頂へと、山と山の間を移動して競争をする祭りを作ってみよう!」

 声の大きなココちゃんカレーの店主がそう叫んでいた。なんだか知らないが、勢いに任せてそのままそれが祭りとなってしまいそうな雰囲気になりつつあった。

「山から山へと移動する? やったことない競技だね」

「さしずめ山移動大会ってところか?」

 ラムリーザとリゲルは、離れた位置から民衆会議の盛り上がりを見つめながらつぶやいた。それは面白いのかどうかは分からないが、民衆達はなんだか盛り上がっているのだった。しかしそれはそれで、山に挟まれた地形ならではの祭りになるかもしれない。

「スポーツの大会とかどうだろうか?」

 今度は祭りからスポーツへと話題が変わっていった。

 ユライカナンではのだまが盛ん。ごんにゃの店主などは、お店の定休日などには、中央公園のスポーツ広場に子供達を集めてのだまのコーチをしていたりする。

 これは、休日にラムリーザたちがのだまで遊んだときに、審判をやって楽しかったからという理由があった。

「のだまか、またやろうか?」

「流石に今度は俺とお前で組めそうにないから、どっちでもいい」

 リゲルはのだまの再試合には消極的だ。以前遊んだときは、ラムリーザとバッテリーを組んで、ソニア達を徹底的にやつけていた。そういうこともあり、次回遊ぶときはラムリーザとリゲルは別チームということになるだろう。で、ラムリーザが捕手じゃないと全力投球できないのでリゲルは面白くない。だから乗り気ではないのだ。

 それに、ラムリーザはソニアにものだまをまたやろうとは言い出せないでいた。あの時徹底的に弱点を攻めたのを根に持たれ、今ではソニアはのだま嫌いにもなりかけていた。悪いことをしたもんだ。

 もう一つ、ユライカナンで盛んなスポーツはプロレスだ。こちらはまだラムリーザ達は、体験したことは無かった。

「学校にのだま部はあるけど、プロレス部は無いね。よし、自分が生徒会長の内に、プロレス部を発足してみよう」

 ユグドラシルが部活を作ると言っても、肝心なのは部員が集まるかどうかだ。

 レフトール辺りは喜んでプロレスしそうだが、真面目に部活動をやるかどうかは分からない。ラムリーザと一緒に入れば、今の軽音楽部でのドラム練習と同じように真面目にやりそうではあるが、どうなるだろうか。

「あたしもプロレスやってみたい、リングネームはグリーン・フェアリーで」

「必殺技はチチビンタね、くすっ」

 ラムリーザ達の会話にソニアが割り込んできて、そこに余計な茶々を入れるのは、今回からパーティに参加しているリリスだ。

「何よそれ! そもそもなんでここにリリスが居るのよ?!」

 黒いドレスに身を包んで、いかにも闇の女王のようないでたちをしているリリスに噛み付くソニア。

「俺が招待した。ソニアが参加していてリリスが参加していないのは不自然だからな」

 得意そうに説明したのはジャンだ。

「あ、リリスはとうとうジャンの軍門に下ったのね。焼肉のタレごとき、サキュバスにかかればいちころだったんだねー」

 ソニアは、ジャンとリリスをセットで煽る。しかしこの煽りでは、どちらを攻撃しているのかわからない。そもそもどちらがどちらを従えたのかすら分からない言い様だ。

 ここのところパーティでは、ソニアとジャンの煽り合いが見ものだったが、今回からはそこにリリスも加わっている。

「この地方の領主様は、風船おっぱいお化けの呪いに取り憑かれて、毎晩パイ○リしてもらわなければ生命を維持できなくなっているの、気の毒よねぇ」

 リリスの攻撃は、ラムリーザまで巻き込んで広範囲に爆撃してきた。

「ふんだ、どこぞのクラブハウスのオーナーは、夢魔に取り憑かれて精気を吸い取られ、吸血鬼に取り憑かれて血を吸われて日に日に弱っていってるじゃない、酷い話!」

 ソニアもリリスに真似て、ジャンを巻き込んでの広範囲爆撃を仕掛けてきた。

「この世界には、たまたま貴族の執事とメイドの娘だというだけで、幼い時から貴族風に暮らしてこれた、ただの平民が居るらしいな」

 これはジャンではなく、リゲルの攻撃だ。なんだか知らないが、ソニアは多方面から集中攻撃を受けている。

「この世界には、昔の恋人と復縁して、今の恋人とも変わりなく交際を続ける二股男が居るという噂だそうな」

 ジャンは、なぜかリゲルを煽ったりしている。

「黙れ、そんなのは単なる噂だ」

 それぞれの攻撃の方向が別になってしまって、誰が敵で味方かわからなくなっていた。みんながみんなを攻撃している。

「えーと、この流れだと僕はユコを煽らないとダメなのかな?」

「ラムリーザ様に煽られる、なんだかゾクゾクしますわ、やってみてください!」

 なんだか知らないが、ユコは期待している。期待されたら仕方が無い、ラムリーザはあまり波風が立たないように、ネタを慎重に選びながら煽ってみた。

「どこぞの国には、転校するする詐欺を実行して、ぬいぐるみを騙し取った娘が居るらしい」

「ぬいぐるみじゃなくてクッション!」

 しかし味方のはずの人物から、反撃を食らってしまうラムリーザであった。

「この流れですと、私はロザリーンを煽らないといけないんですのね。では――」

 煽り合いは先が読めない不可思議な展開となっていた。その一方で、ソニアとリリスは骨付き肉でチャンバラを始めてしまっていた。せめて食べた後の骨だけでやるならともかく、身がついたままでやっているので肉が飛び散って汚い。

「ソニアのリリスも行儀良く!」

 ソニアは、骨付き肉を掲げて敬礼!

「ふっ、庶民の茶番劇だ」

 リゲルは小さくつぶやき、ニヤニヤしていた。

 

 一方民衆会議では、地名決議の話題に移り変わっていた。

 今日のお題は、ロブデオーン山脈の中央付近にある、大きな湖の命名について。この湖は人工的に造られたもので、元々は山の頂上から流れる大きな川だったものをせき止めて造ったものだ。

 これは街の水源にすることと、発電所を造るというのが目的だった。

 最近になって造られた湖なので名前が無い。そこで、以前通りの名前を決めた時と同じように、案を出してもらって投票という形で進んでいた。

「民主主義という制度を知っているか?」

「ええと、国家の支配者が人民である国のことだね」

 ソニアやリリスがまだ煽り合いを続けている中、そこから抜け出したラムリーザとリゲルは、再び活気に沸く民衆たちを眺めながらそんな会話をしていた。

「この会議場だけは、帝政である帝国の中で数少ない民主主義の場になっているな」

 確かに街のことは、ラムリーザの一存で決めてもいい権限を持っていた。しかしラムリーザは、あえて一部の提案を民衆に任せている所があったりする。地名決議などは、その最たるものであろう。

「まぁ名前ぐらいは自由に付けさせていいと思うんだ。よっぽど変なのは訂正させれば良いし、今のところはそんな変な名前は付けられていないし」

「ちなみにお前なら、湖の名前は何にする?」

「んーと、ほのぼのレイクとか?」

「……民衆に名前を付けさせるのも、あながち間違いではないようだな」

 そんな会話をしているうちに、湖の名前の候補が挙がったようだ。声の大きなココちゃんカレーの店主が、五枚の紙切れを読み上げている。

「五つ挙がったな、一つ目はポリシーンパン、二つ目はほのぼのレイク」

「どうやらお前と同じセンスの民も居たようだな」

「それは良いセンスという意味で? 悪いセンスという意味で?」

 ラムリーザの問いに、リゲルは笑みを浮かべただけで答えることはなかった。

「三つ目はエルオアシス、四つ目はハニーパイ、五つ目はペリーモだ」

 これからこの五つの名称を投票にかけて、湖の名前が決定される。

「リゲルはどれが良いと思う?」

 ラムリーザは、一人一人が投票用紙を受け取って書き込んでいく様を見つめながらリゲルに尋ねてみた。

「ほのぼのレイクは無い。ハニーパイは湖につける名前じゃない。エルオアシスが良いんじゃないか? エルとかついているしさ」

 リゲルは、ちらりとソニアの方を見てそう言った。

「いや、エルオアシスのエルはカップのエルではないと思うよ」

 ラムリーザは、リゲルの視線に感づいてそう答えておいた。

 会議は名前の投票をやりながら、話題はさらに次の展開へ進んでいた。罵り合いを切り上げたジャンが、民衆の前に立って話を進めている。今ではラムリーザの仕事は、最終決議をする決定権と、資金提供のスポンサーとしての仕事だけになっていた。

「新しく作って欲しい施設は何かな? ユライカナンからの店以外にも、街にあるべき施設を要望の多い順に作っていこうと考えています」

 ジャンはうまく話をまとめている。これなら十分任せられるだろう。

 要望で多かったのは、図書館の建設だった。何気にインテリぶった民が多いようだ。

「図書館なんて要らない」

 その様子を見て、ソニアは不満そうにつぶやいた。

「あほには要らん施設だからな」

 リゲルに毒づかれてソニアは「なによぉ」とさらに不満そうになってしまった。

 その時、別の方面から唐突な意見が上がった。

「街の西外れ、まだ未開拓の場所に土地を譲って欲しいな」

 西の外れで未開拓と言えば、ロブデオーン山脈のさらに西方面。国境の川であるミルキーウェイ川までの間に広がる広大な土地。農地がぽつぽつと広がっているが、その大半はまだ未開発だったりする。

「土地の契約書は後で領主に頂くとして、何を作るのかな?」

 ジャンに促されて前に出た人物を見て、ラムリーザは「あの人知ってるぞ」とつぶやいた。

「広大な敷地を頂き、そこにアミューズメントパークを作ろうと考えております」

 彼はエドワード・リージス。先日ラムリーザがジャンに誘われて、ダブルデートという名目で出かけたポッターズ・ブラフ地方最大の遊園地、ポンダイ・パークの広報担当の人だ。

 あの日、ラムリーザとソニアのデートは成立しなかったが、その代わりに広報担当との会談の場になっていた。エドワードが別れ際に言った、「フォレストピアでの遊園地開発、検討しておいてください」との言葉を、ラムリーザはしっかりと覚えていた。

「あの日のアレか……」

 一方ジャンは、エドワードの話を聞いて顔をしかめた。ジャンにとって、あの日は半分成功、半分失敗だった。

 リリスとデートするという目的は達成できたが、ラムリーザとソニアのデートを成立できなかったのを密かに悔やんでいたりする。

「いずれは俺が一から百まで段取りを決めて、デートを成立させてやる」

「は?」

 エドワードに変な顔をされて、ジャンは思わず口に出していたことに気がつき目をそらした。

「アミューズメントパーク、遊園地、覚えた。他に、何かある?」

 妙にぎこちなくなったが、話は進んでいったようだ。

 

 開発報告や、開発予定の話も終わり、パーティも終了となった。一人、また一人と人は帰っていく。その時、またか?! という話になってしまった。

「ラム、ココちゃんカレーでカレー食べてから帰ろうよ」

 ここの所ソニアは、家を出る機会があれば必ずココちゃんカレーに行きたがる。

「またぁ? もう、飽き飽き――というか、さっきからいっぱい食べていたじゃないか、まだ食べるん?」

「ココちゃんは別腹!」

「あ、私も行きますの!」

 ココちゃんフリークの二人はラムリーザに詰め寄ってきた。

「おう、俺は帰るから、じゃあなまた学校で」

 ジャンは早口でそう言い残すと逃げるように立ち去り、リリスも同じようにその後について立ち去ってしまった。

 ラムリーザは困ったような視線をリゲルに向けたが、彼は「俺はロザリーンを送っていかないといけないしな、というわけで今日はさらばだ」と言って立ち去ってしまった。

 ラムリーザの傍にはソニアとユコが詰め寄る。

「カ、カレーが食べたいのか?」

 苦し紛れにラムリーザは尋ねてみた。しかし二人の答えは普通に「ココちゃんが欲しい」との一点張りだった。ココちゃんも罪作りなぬいぐるみ――いや、クッションだ。

「そんなに食べるとまたおっぱいが膨らむぞ」

 これまた苦し紛れにソニアを脅してみる。

「私はもう少し大きくしたいから、丁度いいですの」

「ユコだけ食べに行くのはずるい」

 今日はソニアだけじゃなかったから、通用しなかった。仕方なくラムリーザは、二人を連れてココちゃんカレーに行くのだった。

 さらに店でカレーを食べている時に、今日の会議に出席して中心人物となってた店長が後から戻ってきて、「おや? 領主さんはパーティの後にうちで食べて行ってくれるのかい? ありがたいことですじゃ」などと言われ、苦笑で返すしかできなかったりするのだった。

 そういうわけで、ラムリーザの部屋に転がるココちゃんの数は、めでたく八体になりましたとさ、ちゃんちゃん。
 
 
 
 
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