home > 物語 > > TRPG第六弾「指輪に込められた願い 完結編」 第三話

TRPG第六弾「指輪に込められた願い 完結編」 第三話

 

 マインド・スマッシャーを誇らしく掲げるファイター、ソニアはアイボリーという名の悪党に立ち向かっていった。

「ソニアなら泣き落とし攻撃とかすればよかったのに、ふえぇとか言ってね、くすっ」

 この期に及んでソニアを煽ることを止めないリリス。しかしロザリーンは「外道相手には通じませんね。むしろ逆効果です」と慎重だ。

「それでは命中、攻撃ロールを行ってください。こっちは回避と防御ロールを行いますの」

 ここに来て、ようやくソニアのダイスを振る行為が意味を成した。これまで他の人の行動に合わせて振っていただけなので、何の意味もなかったのだ。

「ええと、その目なら当たりますね。では次に攻撃ロールを」

 そう言ってユコはダイスを振り、ソニアも続いて振った。

「食らえっ、信田流奥義蒼雷ッ!」

 ソニアは、謎の技名を叫んでいる。不思議な流派を作るんじゃない。

「うーわ、その目だとダメージこんなに、死ねますわね。一撃で戦意喪失したアイボリーは降参しましたの。えっとね、いたた……、ひえぇ~参った! 何でも話すからこれ以上手荒なことは簡便して下せぇ~、などと言っていますの」

「急に卑屈になったわね、口ほどにもない。破裂寸前のおっぱいバースト――」

「ではロザリーン、指輪を見てもらおうか」

「そうですね、この指輪を見てもらいます。これと同じ指輪を知りませんか?」

 リリスがまた要らんことを言いそうになるのをラムリーザは遮って話を進めた。

「アイボリーは、最近団長が下水で拾ったやつだ! こないだグラランのガキに盗まれたのが戻って来ってんでねぇ、などと言っていますの」

「どこの下水ですか?」

「最近クルクルランドの下水が地震で崩れて、このカタコンベと繋がったと言ってます」

 とりあえず今日のところは、どうやらクルクルランドで突き通すらしい。

 ラムリーザはさらに質問を加えてみた。

「中には、あとどの位人数がいるのかな?」

「アイボリーは、あと五人ほどかな、と言ってます」

「団長とは何か?」

「その質問には、おうよ! 俺たち『輝石の盗賊団』の団長でさぁ! などと言っていますの」

「リゲルの知り合い?」

 ソニアの問いに、リゲルは何も答えなかった。

「ではその団長が指輪を持っているんだね?」

「ええ、この指輪はセットじゃないと価値がないそうで、団長がやたらと入れ込んでると言っています」

「情報集めがちゃくちゃくと進むな。邪魔はするなよ」

 ラムリーザは、ソニアを抱き寄せて余計なことをさせないようにし、リリスにも視線で行動を制していた。

「それで、団長さんは中にいるのですか?」

 ラムリーザの質問が途切れたところで、今度はロザリーンが質問を浴びせる。

「団長は、この奥で次のプランを練っていると思う、とアイボリーは言ってます」

「それじゃあ、奥に行ってみようか。今度は突っ込むなよ、罠とかもあるかもしれないし、中に敵がいれば、いやおうなく戦闘になるから無茶はしない」

 ラムリーザは、ソニアとリリスの二人に警戒しながら話を進めていた。二人がまたゲームの進行を妨げようとしたら、すぐに制するつもりでいるのだ。

「奥と言っても、地下四回ですけどね」

「えらく深いな、って最初の依頼もそんな感じだったか」

「おい」

 その時リゲルは、ラムリーザを手招きして傍に寄せる。そして小声でなにやら指示してきた。

「えっとユコ、そのアイボリーに道案内させようと思うけど、できる?」

 リゲルの指示を聞いて、ラムリーザはユコに尋ねてみた。リゲルの話は、この見張りを人質に取れだったのだ。人質と言えば聞こえが悪いので、道案内という形で使おうとしてみた。

「アイボリーは、あっけなく案内を引き受けましたの」

「相当ビビっているな」

「おっぱいバースト食らったから恐れているのよ、くすっ」

「違う! パーティに吸血人間スネークが居るから怯えているだけ!」

 またソニアとリリスによる不毛な争いが始まった。ソニアもなんだか新しい言葉を使おうとしているようだが、どんどんわけがわからなくなってきている。

「ジェット、眠っているほうはどうしますか?」

「えっと、今は縛って置いておいて、後で憲兵にでも突き出しますか」

「では、アイボリーの案内でカタコンベの中へと進んでいきました。B1、B2には小さなお墓がいくつも並んでますの」

「あっ、この墓石にリリスここに眠るって書いてあるよ」

「ソニア、墓地で一人ぼっち」

「さむっ!」

「こほん、このお墓は何か特別な意味はあるのかな? とアイボリーに尋ねます」

 リリスがなんか寒いことを言ってのけたので、多少は和みながらラムリーザはユコに尋ねる。

「アイボリーは、俺たちはこの辺りの人間じゃないので判らん、と言ってます」

 ソニアしか反応しなかったので、リリスはなんだか恥ずかしそうだ。ここで攻めればソニアは優位に立てるのに、攻め時が分かっていないので追撃をしない。むろん追撃されても場が荒れるだけなので困るのだが。

「それじゃあ先に進むか」

「んで、B3には大きな棺が一つ。荘厳な雰囲気の中で祀られています。アイボリーは、あのでかい墓は、この土地の英雄の墓ってことになっている、と言ってますの」

「英雄って誰だっけ?」

「誰でしたっけ?」

 ラムリーザはロザリーンと相談するが、彼女も名前は忘れてしまっているようだ。

「少なくともソニアではないわね」

 リリスが余計なことを言い、ソニアも「リリスが英雄だったら世界が滅亡する」と根拠もないことを言ってのける。

「レスター・アレクサンドロだろ?」

 そんな中、リゲルだけはしっかりと覚えていたようで、英雄の名前を告げてきた。

「あっ、それじゃあこのお墓に、預かってきた指輪を置けばいいのですね?」

「そうですの。でもアイボリーは、ちょっくらこの棺の蓋を開けてはもらえないか? と聞いてきてますよ」

「自分で開けるべし」

 ラムリーザはそう答えるが、アイボリーは縛られて連れて来られているので開けられないと言ってきた。

「アイボリーに尋ねます。ところで、貴方達のボスは、魔法とか使えますか?」

「団長は魔法使えないけど、他に精霊使いが一人いると答えました」

「精霊使いですか。あっ、蓋を開ける前に罠の確認をリゲルさん」

「それじゃあシーフ技能で知力ロールをしてみてくださいな」

「シーフ? リリス、呼んでるぞ」

 リゲルは、わざとリリスに話を振ってみる。

「私はシーフ技能なんて認めないからあなたがやって」

 リリスは、悪党の生まれで勝手についてきたシーフ技能を快く思っていない。だから、シーフがメインのリゲルに丸投げだ。

 リゲルはフッと笑うと、ダイスを転がした。

「ええと、その目ですとわかりますね。でも棺に罠はありません」

「それじゃあ誰か、この棺を開けてみよう」

「ラムが開けて」

 ソニアはそう言うが、リゲルは「ファイターじゃなくてソーサラーに力仕事させるのか」などと言ってくる。

「だって一番力が強いのはラムだもん」

「ソーサラーが一番力持ち、不思議な設定だな。このパーティのファイターは非力なようだ」

 なんだか知らないが、リゲルが饒舌になった。やっていることは結局ソニア煽りなのだが、ソニアが騒ぎ出す前にラムリーザは「それでは棺を開けます」と宣言した。

「アイボリーは、そこがB4への入り口だ、と言っています。棺の中には下り階段が続いていますよ」

「最深部だね、それじゃあ降りていこう。ソニアとリリス、どっちが先頭で降りる?」

「ラムが先頭」

「ソーサラーが先頭?」

「私が一番乗りするわ」

「あ、ダメ、あたしが行く」

 この場面を映像化すれば、棺の中にある地下四階への入り口前で押し合いをしている二人を眺めることができただろう。

「あっとその前に、蓋の裏に引っ付いた、小さな人影がありますの」

「こんにちは! はじめましてソニアでっす!」

 またやらかした。今日のソニアは馬鹿プレイに徹してゲームの進行を妨害することで楽しんでいるようだ。人影と聞いただけでこれである。

「人影を捕まえる」

 ラムリーザは落ち着いて話を元に戻す。これでソニアの行動も面倒なことにならないだろう。

「人影はソニアに声をかけられてびっくりし、さらにラムリーザ様に捕まって騒ぎ始めましたわ」

「どう騒いでいるかな?」

「じたばたしながら、うわー! うわー! やめてよぉ~! いぢめないでくれよぉ~、って感じでしょうか?」

「ガキっぽいな」

 ラムリーザは、ユコの反応を見てそう感じた。そこにソニアの、「なぜ蓋の裏にいたのですか~?!」が炸裂する。だがまぁ、まだ普通の会話だな。

 だからラムリーザは、「何者かと尋ねる」と宣言して、ソニアの発言を無難な方向へと誘導していった。

「えっと、その人影はオイラ、この階段に閉じ込められちゃって、などと言ってますの」

「閉じ込められた? アイボリーはこの人? のことを知っていますか?」

 ロザリーンの疑問系三連発。人影なだけで、人とは限らないのだ。現にサーカス団は魔物の集まりであった。

「アイボリーはその人影を見て、あっ! てめぇは指輪を盗んだグラランだな!? 何しに来やがった! などと言ってます」

「グララン、まさか悪魔じゃないでしょうね?」

「吸血怪獣チュパカブラがパーティに居るのに、今更悪魔なんて恐れない」

 今日のリリスは、いろいろな吸血鬼に変身している。ただし、ソニアの言葉の上でだけ。

「爆乳おっぱい遊戯は黙っていなさい」

「なっ、何よそれっ!」

「こほん! えっと、その人影の名前がグラランってことでいいんだね?」

 ラムリーザは、二人の口論を遮ってユコに尋ねた。

「ええ、人影は自分のことをシャックス・ポップ・グラランと名乗りましたわ。で、彼はここにはお宝がいっぱいあるから、また来たくなったのさ、などと言ってますの」

「それで棺の中に?」

「いえ、お宝もらったのはいいけど、ここの蓋が閉まって閉じ込められたと言ってます。彼一人の力では蓋が持ち上がらないそうで」

「では、指輪のことを知ってますか?」

 ロザリーンの問いに、ユコは「少し前にお姉ちゃんにこっそりあげた」などと答えた。

「そんな話あったっけ?」

「最初にスリ入れてきたあれでしょうか? でもあの時は少年だったような?」

「シャックスは少年ですの」

「なるほどね。でも盗掘されていて宝はここにはもう無いって言っていませんでしたっけ?」

「ええと、シャックスはアイボリー達一味のお宝を奪いに来ているようですの。それを聞いたアイボリーは、ふざけんなーなどと言いながらじたばたしています」

「どの道団長には会わなければならないか」

 いよいよ最深部へと向かうことになった。

 ゲームクリアももうあと一息だというところだ。最深部には、いったい何が待ち受けているのだろうか?

 それを知るのは、ゲームマスターのユコだけであった。
 
 
 
 
Sponsored Links



 
 
 前の話へ目次に戻る次の話へ

Digiprove sealCopyright secured by Digiprove © 2020

return to page top

©発行年-2020 フォレストピア創造記