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TRPG第六弾「指輪に込められた願い 完結編」 最終話

 

 さて、失われた指輪を求めて、カタコンベの地下四階へと足を踏み入れた一同。

 そこに待ち構えているのはいったい何か?

「ええと、シャックスさん、君かな? とにかく、この奥に、この指輪の片割れがあるので、それを取りに行かねばならないのですと伝えます」

 ロザリーンは、相手が少年なら君付けがいいと考えたのだろう。確かこの指輪にまつわる話の冒頭でスリ入れてきたのは少年だった。数ヶ月前の話で、多少はあいまいだが。

「もとはと言えば、こいつが盗んだからこうなっているんだよなぁ」

「シャックスは、細かい部屋がいっぱいあるんだよね。でもお宝の部屋は一つだけ、と言ってますわ」

「お宝は別にいいので、この盗賊団たちが居る場所か知りたいです」

「盗賊団の部屋ですか? 一応シャックスは知ってますの」

「ではそこに案内してください」

「あ、良い事思いついたわ」

 唐突にリリスがロザリーンとユコのやりとりに口を挟んできた。

「何ですの?」

「この際ここを根城にしている盗賊団を壊滅させましょう。そうでないと、過去の英雄達も寝付きが悪いでしょうし」

 やはり探索だけでは暇をもてあますリリスは、戦闘を希望してきた。暇だからといってソニアとふざけられても困るので、ラムリーザもここは一気に殲滅しようと考えた。

「いいね、その正義を行使するべし!」

「ラム、正義だったの?」

「な……、ソニアは何?」

「蛮族」

 答えたのはリリスだった。

「おっと、行くぞ。シャックリ、団長のところに案内するんだ」

「ラムリーザ様、シャックリじゃなくてシャックスですの。壊滅ってことは団長のところですね。ではシャックスは、団長が居るという部屋の前まで一同をつれていきました、と。ここが強そうな奴らの部屋。この奥にもう一個ドアがあるんだけど、それはなんだか知らない、と言ってますの」

「罠を調べてやろう、あと中の様子もうかがってやる」

 リゲルはそう宣言してダイスを転がした。

「ええと、その結果ですと、罠は無いようです。中には四人ほど居て、食事中のようですの」

「では鍵もあけてやる」

 なんだか知らないが、リゲルは上から目線だ。だが仕事はこなし、ダイスロールの結果、鍵も外せたようだ。

「中に居る人はまだ気がついてませんの」

「じゃあ奇襲だな、がんばれよ、あほたれコンビ」

「あほたれ?」

 ソニアとリリスはギロッとリゲルをにらむが、リゲルは知らぬ振りだ。

「突入だ、えっと――」

 場が荒れそうになったので、ラムリーザは急いで話を進めるが、そこで言葉に詰まってしまう。何を言うべきか?

「この国の憲兵隊ということにしときましょう」

 ロザリーンの助け舟を借りて、ラムリーザは言葉を続けることができた。

「えーと、我々はクルクルランド憲兵だ、無駄な抵抗は――って、クルクルランド憲兵隊ってなんだよしまりが無いな!」

「初めましてソニアでーすっ!」

「挨拶はいいから突撃せよ!」

「素直に降伏するなら、痛い目にあわなくて良くてよ――って言ってみる」

 戦いたがっているリリスは何故か降伏勧告をする。降伏したら出番がなくなるのだが、よいのだろうか?

「誰が降伏などするか! と中に居た人は答えましたの。さて、全面戦争です。敏捷度順に行動宣言してくださいな」

「ええと、ロザリーンが一番素早くて、次にリゲルと僕が同じ値。で、リリス、ソニアと続いているね。あ、おっぱいの重さは敏捷度に関係ないから、戦闘に集中しようね」

 ラムリーザは、リリスが何かを言いかけたので、先に釘を刺しておいた。ソニアの敏捷度が一番低い事について何か言おうとしていることは明白だ。

「相手はどんな感じですか?」

 最初に行動宣言のできるロザリーンは、ユコにそう尋ねてきた。

「えーと、ボス部屋の中にはボス格の赤髪と、男装の麗人、もやし系の男、無表情な傭兵の四人って感じですの」

「では男装の麗人に攻撃します」

 ロザリーンがなぜ相手にそれを選んだのかについては、追求しないでおこう。

「では命中判定――、あらら、それだと回避されますね。次はリゲルさんかラムリーザ様」

「それなら、俺はもやし系の男を相手にしてやる」

「それじゃあ僕は、スリープクラウドをここでも一発」

「ええと、ラムリーザ様の判定ですと、赤髪は寝ない、麗人も寝ない、もやしは寝た、傭兵は寝ない」

「あまり効かなかったなぁ」

「んじゃ俺はもやしは後回しで、無表情な傭兵に攻撃ということで」

 リゲルの命中ロールの結果――

「おしい! 紙一重でかわされたみたいですの」

「まあいい、ここからが戦闘の主力だ。ほら行けお前ら」

「あ、その前に敏捷度から行って麗人の順番が先ですの。麗人はリリスを狙います、ダイスコロコロ、当たったね、コロコロ、12点のダメージ、リリスの生命力5ですわ。うーん、この麗人強かったかな?」

「何最初からピンチ、まだ動いていないのに……」

 なんだかリリスは不満そうだ。

「傭兵はソニアを狙いましょうか、ダイスコロコロ、あ、ソニアは回避しましたね」

「待ってそれありえない」

 ユコの判定に、リリスはいちゃもんをつけてきた。

「何ですの?」

「ソニアは風船が邪魔で動けないのに、なんで私が大ダメージ食らってソニアが回避できるのよ?」

「何が風船だ!」

「外野うるさい、もやしは寝ている。はい、リリスの番」

「ダメージ大きいから回復するまで下がる」

「……次のターンからは、私は回復に専念しますから」

 ロザリーンは攻撃せずに控える事に決めたようだ。

「じゃあソニアの番ですの」

「敵ボスに攻撃する」

 ソニアの行動ロールの結果、ボス格の赤髪に生命力の半分ぐらいのダメージを与える事ができたようだ。

「くっ、乳妖怪が活躍しているのに……」

「リーダーはソニアに攻撃、コロコロ、あ、回避」

「信じられない!」

 リリスはソニアの活躍により、ますます不満そうになる。逆にソニアはかなり嬉しそうだ。

「次のターンです、ロザリーンはリリスに回復でしたね?」

 ロザリーンの回復により、リリスは戦線に復帰した。

「ではこのターンもスリープクラウドで」

 ラムリーザは、再び相手を眠らせる作戦に出た。しかし――

「うーん、ロールの結果、誰も眠りませんですの」

「まいったな……」

「まあいい、人数的には少し有利になっている。再び俺は傭兵に攻撃な」

「はい、リゲルさんも攻撃ロール。当たりましたね、ダメージは――」

 リゲルはダイスを転がしていく。

「――3点のダメージですね」

「まぁそんなものだろう、地道に行くぞ」

「あ、でもそろそろ下校の時間だよ」

 ラムリーザは壁の時計を見てそう言った。窓の外もすっかり真っ暗になっていた。

「急ぎましょう、麗人はまたリリスに攻撃ですの」

「ソニアと違って回避できるはずだわ!」

 リリスは口で言うだけでダイスを振ろうとしない。

「振ってくださいですの!」

 ユコに強く言われて、リリスは不満そうな顔でダイスを転がした。

「回避できなかったらゲームバランスおかしいから」

「文句言わないの、回避できました」

 ユコはそう言うが、リリスはそれで当然だと思っているらしく不満げだ。

「えっと、もやしは寝ているから傭兵はリゲルさんに攻撃。あ、回避できましたね。はい、リリスの番」

「リーダーに攻撃するわ」

「待って、リーダーはあたしの相手!」

「ダメ、あなたにばかり良い格好はさせない。リーダーに攻撃」

 ソニアは文句を言うが、リリスは無視してダイスを転がした。

「その目ですと、当たり。ではダメージ判定をどうぞ」

 リリスがダイスを振ろうとした時、その手をソニアに捕まれた。

「何をするのかしら?」

「リリスの攻撃を邪魔す――、あわっ、むがもが!」

 ラムリーザは、リリスの方に身体を乗り出すソニアを引っ張り込んで押さえ込んだ。

「はい、ゲーム続けて。時間が無いから無駄なことはやらないように」

「えーと、その目だと4点のダメージですね。はい次ソニアどうぞ」

「リリスに攻撃する」

「ダメですの!」

「あ、ソニアもリーダーに攻撃で」

 そう宣言したのはラムリーザだ。下校の時間が迫ってきているというのに、ソニアの無意味な行動に付き合っていられない。さらにもう少しで話は終わりそうなので、今日中に終わらせておきたかった。

「ソニアは赤髪のボス、えーとね、ボスはアンバーという名前ですの。アンバーに3点のダメージを与えましたわ。んでアンバーの攻撃ね、麗人がリリス狙いだから、リーダーはソニア狙い。コロコロ、命中しましたわ」

「当然でしょう、巨大な風船をぶら下げて――」

「えっと、ダメージはいくらだい?」

 ラムリーザはリリスの言葉を遮ってユコに尋ねる。一瞬の油断も見せられないとはこの事だ。

「えーと、アンバーの攻撃力がこれだけで、ソニアの防御力がこうだから、6点のダメージですね」

「そんなの痛くないもん」

「お乳が片方もげるぐらいのダメ――」

「次のターン、ロザリーンの行動、はいっ」

 なんだかラムリーザがサブマスターっぽくなってしまっている。そんな必死なラムリーザを、リゲルはニヤニヤしながら眺めているのだった。

「それじゃあソニアさんがダメージ受けたので回復をします」

「次はリゲルだね」

「ゲームマスターが代わっているぞ。それはまあいいが、傭兵に攻撃だ」

 リゲルはラムリーザをからかいながらダイスを転がす。5と5が出て、「お、クリティカルだな」と言ってもう一度振る。

「結構大きなダメージがでましたわね。あ、傭兵は戦意喪失ですの。次はラムリーザ様ですわ」

「んじゃ、麗人にファイアーボールをぶつける」

 ラムリーザは、眠らせる魔法が効かないし、動ける敵が残り二体になったので、リーダーはソニア達に任せて連れの麗人めがけて攻撃魔法を放った。

「ええと、魔力がこれだけで、麗人はコロコロ、あ、抵抗失敗。ああ、麗人も戦意喪失ですね。麗人が動けなくなったので、次はリリスどうぞ」

「ソニアを攻撃――、リーダーに攻撃するわ」

 いらんことをしようとしてラムリーザに睨まれて、リリスはまともな宣言をやった。この場面で時間がたっぷり残っていて、ラムリーザが適当に流していたらボス戦は大変なことになっていただろう。意図的に同士討ちを始める前衛二人、だめだこりゃ。

「えーと命中。ダメージは、あ、クリティカルですの。もう一回ダイスを転がして頂戴」

 ユコにそう言われて、リリスはもう一度ダイスを振る。6の目が二つ出た。さらにクリティカルのようだった。

「それだと、10点のダメージですね、リーダーのアンバーは降参、降参! と言ってますの」

「やだ、許さない。あたしも攻撃してとどめをさす!」

「殺したら指輪の場所がわからなくなりますよ?」

 ラムリーザは、「それでもやっつける」と言い張るソニアを捕まえて抱えると、「指輪を返してもらおうか」と言った。

「リーダーのアンバーは、もってけ泥棒っと言って指輪を投げつけてきましたの」

「いや、泥棒はそっちだから――」と突っ込みかけて、時間が無いのを思い出したラムリーザは、「これで問題は解決したね、盗賊団はひっ捕らえよう」と続けた。

「でも、指輪を返すっていう話でしたのでは?」

 ロザリーンに指摘されて、ラムリーザは元々の目的も思い出した。

「聖人の墓に返すのだったね、墓はどこだ?」

「えっと、アンバーは聖人ならその奥に居るぜ。その醜さに耐えられたら返すがいい……くっくっく……と笑っていますの」

「リゲルみたいな奴だね」

 ソニアがまた要らん事を言うが、リゲルはリリスと違って言い返したりせずにじっとソニアに鋭い視線を向けるだけだ。ソニアはその視線に気がついて、ラムリーザ脇に身を寄せて隠れる。

「とりあえず憲兵隊に報告して、僕らは奥の部屋を確認しに行こう」

「はい、こうして輝石の盗賊団は神殿に引っ立てられていったのであった。で、奥の部屋に通じている扉には鍵がかかっていますの」

「時間が無いから開いていることにしようよ」

「ダメですの、リゲルさん、開錠ロールお願いしますわ」

 ここで失敗したら話はどうなるのか? ラムリーザは少し気になったが、リゲルの振ったダイスは大きな目が出て開錠に成功したようだ。

「ほら開けたぞ、レディーファーストだ、間抜けコンビから入っていけ」

「いや、危ないから僕が先に」

「先頭に立って進むソーサラーがどこの国に居るか。ファイターの二人に行かせろよ」

「そ、それもそうだね」

「それを言ったら罠の確認をしながら進む盗賊が先頭――、あ、リリスが悪党で盗賊だから先頭で」

 今度はソニアがリリスを煽る。

「もう誰が先頭でもいいから、皆で手を繋いで一緒にゴール――じゃなくて、奥の部屋に入ります」

 ラムリーザは、めんどくさくなって妙な行動宣言をする。

「それでいいですの。ドアを開けると、細い通路がしばらく続いてる。心なしか寒いですの」

「リリスが墓地で一人ぼっちなんて言うから」

「うるさいわね、この自家製殺虫剤!」

 動揺したリリスは、謎の煽り文句を投げつけてくる。これには流石のソニアもきょとんとしていた。

「外野うるさい、しばらく歩くと、丸い広間に出る。中央には祭壇と棺。その前にひざまずく人影……」

「こんにちはーっ!」

 この期に及んでソニアはプレイスタイルを変えようとしない。そんなソニアにユコはチラッと嫌そうな視線を向け、話を続けてきた。

「人影は何も答えない……、なぜならそれは……」

「ソニアの妄想だからさ、くすっ」

「外野うるさい、僧侶のミイラなのですわ。俗に言う即身仏ってやつですわ。そしてそのミイラには左手の薬指がないんですの」

「いきなりホラー?」

「面白いじゃないか」

 不快そうな視線を向けるリリスと、なんだか楽しそうな口調で答えるリゲル。

「この指輪の収まるべき指が無いなんて、ね」

 指輪を持っているロザリーンはそうつぶやいた。

「盗掘された時に切断されたのだろう」

 あっさりとグロっぽいことを言ってのけるリゲル。

「えっと、ミイラの足元には、一冊の古びた日記が落ちています」

「では記を拾い上げホコリを落として読みます」

「人の日記を読むロザリーン、趣味悪いねー」

 なぜか批判してくるソニアだが、ロザリーンは「交換日記やっててそんなことを言うの?」と返してきた。

「最近交換日記滞ってますわ、誰が止めているんですの?」

「僕は書いたよ、じゃなくて話を進めようよ」

「日記には悪魔との戦いの記録が記されています。日付は今から100年くらい前、最後数ページはきっと己の血で書いたであろうどす黒い字でこう記されていた」

 そこで一旦言葉を止めて、ユコは一同を見渡してから続けた。

 

『私の力では、この悪魔を完全に倒すことは難しいであろう。私は最後の力を持ってこの悪魔を封印することを決意した。……ただ一つ心残りなのはキュリア……貴女のことだけ……。どうか私の分まで幸せに生きてほしい。願わくは、彼女に神の祝福を……』

 

 三秒ほど皆黙り込んでいたが、そこに下校時間を告げるチャイムと放送が鳴り響いた。

「何ですの! せっかくの場面で空気を読まない時報! じゃなくて下校チャイム!」

「まぁあれだな。死者の書と呼ばれているナチュランデモントも血で書かれているから似たようなものだ」

 リゲルは妙なうんちくを語りだす。恐らくホラー映画の設定だろう。

「そんなのじゃないですの! これは後日談だけど、キュリアは彼が再びこの世の土を踏むことを信じて永遠の時を手に入れたのです。その代償は大きかったけどね……。はい、以上で指輪に込められた願いは完結ですの」

 これにて、思ったよりも長編となったユコがゲームマスターを勤めるサーカス団の指輪についての物語は幕を閉じたのであった。

「あ、この二つの指輪はどうしましょう?」

 ロザリーンの問いに、マスターシートを片付けて帰り支度を始めたユコは「ロザリーンの自由にしていいですわ」と答えた。

「売れ」と言うリゲルにロザリーンは「やっぱり二つとも持って帰りましょう。返すなら自分の手で返すべきです」と答えた。

「あたしとラムが想いを引き継いで、お互いに指輪を身につけるってのはどう?」

「それならカノコを尋ねて指輪の片割れを渡さなくちゃね」

 これを発端に、再びソニアとリリスの口論が始まる。

「でもさぁ、死んだ男の気持ちで考えるなら逆に指輪が呪縛になってるから、二つとも封印すべきじゃないかな? キュリアを解き放とうよ」

「へぇ、そんな考えもあるんですのね」

 ラムリーザの考えに、ユコは驚いたような表情を浮かべて「そうか、封印しちゃうんだ」と続けた。

「私は間違っていても、どこかで永遠の愛信じたいと思いたいですけれどね」

 ロザリーンの意見はこうだった。男子と乙女とでは考え方が違うと言うのだろうか。

 何はともあれ、これにてテーブルトークゲームも一つの結末を迎えた。

 ラムリーザは、リリスとの口論が途絶えないソニアをリリスから引き離すと、見回りの教師が現れる前に皆を促して部室を立ち去るのであった。
 
 
 
 
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