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アンブロシアの庭で五つの花

 

 フォレストピアに新しく建てられた、フォレスター邸。

 ラムリーザとソニアの住んでいるこの屋敷の南側に、少しばかり大きな庭がある。名前は適当にアンブロシアなどと付けられているが、それは別に大したものではない。これも住民投票によるものだ。

 庭は草原を木々で囲むような形で作られており、庭の北部には池があったりする。

 屋敷から向かえば、庭の北西部から入る形になっており、すぐに池にぶつかる。池の南側には木々か残っており、また池にかかった橋があり、木々の間を抜けるか橋を渡ることで南へと進める。南側には広い草原があり、そこでは木々はまばらだ。

 草原のうち木々に面した辺りは、背の高いススキが茂るススキ野原になっており、ラムリーザはそこに埋もれて昼寝をするのが好きだったりしていた。

 今日もラムリーザは、特に出かける当てもなかったし休日だということもあり、そのススキ野原でごろんと横になってうつらうつらとしていた。

 そこに遅れてソニアが現れた。たぶんゲームに飽きたかなにかして、ラムリーザを探しに出てきたのだろう。

「あっ、見つけた」

 ソニアはラムリーザがよくこのススキ野原に入っているのを知っていたので、傍にある高い場所、小さめの岩の上に登って探し出したのだ。

 ラムリーザの傍にやってきたソニアは、隣に引っ付いてきて一緒に眠ろうとしてきた。誰かが脇に引っ付いてきてラムリーザは目を覚ました。

「あ、なんだ来たのか」

「ラム~、暇だね~」

 ソニアは、ラムリーザに横から抱きついて、足まで絡めてきてそう言った。

「暇なら五花術でもやってみたらどうだ?」

「なぁに、それ?」

 ラムリーザは、身を起こして立ち上がった。ソニアもそれに続いて立ち上がる。そのまま二人は、近場の木々の茂みへと入っていった。

 場所は丁度池の南側辺り、池へ流れ込む川が西から流れていた。

「この辺りに生えている、五つの種類の花を組み合わせてうまく調合させるんだ。そうすれば――」

「そうすれば?」

「すばらしい薬が出来上がる、という噂だ。ほら、そこにバラが咲いているだろう? あれを使うんだ」

 ソニアは、木々の間に咲いているバラの花に近づいて、その花びらを一枚手に取った。

「あっ、トゲがある」

「猛毒のトゲだ、刺さったら七秒で死ぬから触るなよ」

「何それ怖いっ!」

「冗談だ。さて次は、あの川岸に咲いているミシアの花を摘むのだ」

 ラムリーザは、川岸を指差してソニアを誘導する。そこには、青い花を咲かせた植物が点在していた。ソニアは、小さなその花を、一つ摘んだ。

「これをどうするの?」

「混ぜるんだ、ちょっと待てよ」

 ラムリーザはそう言って、川岸から皿状になっている石を拾い上げてソニアに渡して、「この上で混ぜたらいい」と言った。ソニアは受け取った石皿の上に二つの花を置いて指を使ってうまく混ぜ合わせた。赤い花びらと青い花が混ざり合って、紫色っぽい塊ができた。

「よし、それでローズミシアの完成だ。後で使うから、大切に取っておくんだぞ」

「次は何をするの? 五つの花を使うんでしょ?」

「お、鋭いな。次はあの花を使おう」

 そう言ってラムリーザは、背後にある茂みを指差して、黄色い花をつけた植物を指差した。

「黄色い花?」

「ケロネ・リオニーだったかな、いや、リオンだったかな? たぶんリオンだったと思うけど」

「たぶんって、なんか怪しい~」

 ソニアは、黄色い花を摘みながら、ラムリーザの方へといぶかしむ視線を向けてきた。

「気にしてはいけない。さて次は、そこに生えているスモモの木から花の採取だ。できるかな?」

 スモモの木は割と大きい。少し高いところに花が咲いているので、ソニアは上手く木を登り始めた。パンツが見えたりするが、今更騒ぐような娘ではない。

「紫色の花が咲いているよ」

「パンツも紫色だね、じゃなくて、その花を採ったら今度はさっきの黄色い花と混ぜるんだ」

 木から飛び降りてきたソニアに、ラムリーザは再び川岸で拾った皿になるような石を手渡した。黄色い花と紫の花を混ぜ、今度は赤と茶色の中間のような色になった。

「さっきの色の方が綺麗だね」

「こっちはプラムリオン、いや、プラムリオニーだったかな、まあいいや」

「ラムなんか適当に言ってない?」

「大丈夫、僕を信じるんだ。それじゃあ先ほど混ぜたものを用意してみよう」

 ラムリーザにそう言われて、ソニアは二つの石皿を差し出した。

「この二つをどうするの?」

「ローズミシアとプラムリオニーを上手く混ぜてごらん」

 その二つを混ぜると、赤茶色だったプラムリオニーの色からさらに色が濃くなり、茶色っぽくなってしまった。

「あんまり綺麗な色にならないよ?」

「良薬は見た目悪しって言うだろ?」

「そんなの知らない!」

「まあいい、これでアンブロシアオーシッドができたはずだ、たぶんそんな名前だったと、思う」

 ラムリーザも、人から聞いた話を言っているだけなので自信があるわけではない。それでも組み合わせに間違いは無いはずだと思っていた。

「お花はまだ四つしか使ってないよ? もう一つ使うんじゃないの?」

「その通り。そこに大きな花が咲いているだろう? ダリアの白い花を取ってきてごらん」

「こんなにたくさん?」

「花びら一枚でいい。取ってきたら聖水――は無いから川の水でいいや。あー、入れ物が無いなぁ、また今度でいいか」

「何か取ってくる」

 ここまで物作りをして最後までやってみたくなったのか、ソニアは白い花びらを持ったまま屋敷の方へと駆けて行った。ラムリーザは、「そこまで真剣にやらなくてもいいのにな」と思いながら、ソニアの帰りを待つことになったのだった。

 しばらくして、ソニアは木製の小さな容器を持ってきた。庭道具として何かに使うために置いてあったものだろう。その容器には、既に川の水が汲まれていた。

「じゃあその水を聖水だと思って、さっき採った白い花びらを溶かすんだ」

 ソニアは水の中に花びらを入れ、指を突っ込んですりつぶしながら溶かす。花びらの色が溶け込んで、白っぽい色の水になった。

「なんか牛乳が薄くなったような水ができたよ?」

「それがウォーターダリアだ。では最後の調合、先ほど作ったアンブロシアオーシッドを、そこに混ぜるんだ」

「最初から全部水に溶かしたらよかったんじゃないの?」

 ソニアは、石の皿から先ほど作った茶色い塊を、水の入った容器に移して同じように指で混ぜながら聞いてきた。

「いや、順序良く混ぜないとダメだって言っていたからね」

「はい、できたよ。これなぁに?」

 出来上がった水は、薄茶色の水。あまり綺麗だとは言えない。

「なんだったっけ、名前は忘れた。でも使うと敏捷度が上がるらしいよ」

「ふーん、飲むの? 塗るの?」

「飲むか?」

「やだ、塗る」

 そう言ってソニアは、出来上がったあまり綺麗とは言えない水を、自分の足に塗り始めた。敏捷度が上がると聞いたから、塗る場所は足だと判断したようだ。ソニアの足は、サンダルから際どい丈のミニスカート、足のほとんどが露出しているので塗る場所も広範囲だ。

「どうだ? 素早くなったか?」

「うーん、なんだかスースーするなぁ」

 そりゃあ足に水を塗りたくったようなものだ。少しでも風が吹くとひんやりする。

 ソニアは、そのまま周辺をピョンピョンと飛び跳ねる。跳ねながら、「なんだか身軽になったみたい」などと言っている。

 ラムリーザは、近くに生えている木の根元に腰掛けると、川の流れる音を聞きながらパンツをチラチラ見せながら飛び跳ねるソニアを眺めていた。

 しばらくすると、ソニアはラムリーザの傍へと寄ってきた。跳ね続けていて疲れたか?

「ねぇ、ラムも塗ってごらんよ、身軽になるよ」

「そんなわけない、ほら」

 そのままソニアは、ラムリーザの足に手を伸ばして「敏捷度の上がる水」を塗りはじめた。

「ラムの足って筋肉質でごっついね」

「ソフィリータほどでもないけど、ソニアの足が綺麗なだけだよ」

 そう言われてソニアは、得意気になってラムリーザの目の前に自分の足を掲げてみせる。

「あたしの足、きれい?」

「ん、綺麗」

 短く答えたが、ラムリーザはソニアの細いわけではない、肉付きのいいむっちりとした健康的な足が好きだったりした。

「リリスやユコと比べて、どっちがいい?」

「ソニアの方が好き」

 一瞬のためらいも無くラムリーザは答えた。それを聞いてソニアはますます得意気になったりうれしそうになったり大変だ。

「ずっと見ていたい?」

 などと尋ねてくる。ラムリーザは「うん」と答えた。特に深い考えは無い。自分の気持ちを正直に、またソニアが気を良くするように答えただけだ。

 するとソニアは、調子に乗って以前はよく口にしていた文句を言ってきた。

「それじゃあさ、学校に行く時にその足を靴下で隠すのは不条理だよね? 素足OKにしてもらってよ」

 最近は少なくなっていたが、ソニアは相変わらず制服のサイハイソックスが嫌いなようだ。

「ソニアの足を見ていたら、気が散ってしまう。学校では今のままで十分だね」

 それは半分嘘になる。今の学校に来る前は、帝都で私服自由な学校に通っていたので、年がら年中ソニアは生足丸出しだった。

「さっきずっと見ていたいって言った!」

 ソニアは足を引っ込めると、今度は顔を寄せてきてラムリーザの目の前で非難する。

「言ってないよ、うんと言っただけだよ」

 ラムリーザは、自分が屁理屈を言っているのは分かっていたが、事実「うん」としか言っていないのも確かだ。

「ラムはずるい!」

 なぜずるいのかラムリーザには分からなかったが、「意気込むのは自由だけど、怒られるのはソニアだよ。またあの風紀委員に因縁つけられるよ」と言ってのける。これにはソニアも、「むー」としか答えられない。

 ラムリーザの足に薬(?)を塗り終えたソニアは、先ほどからずっと座ったまま木にもたれてのんびりとしているラムリーザに擦り寄ってきた。

「せっかく塗ったのに動かないの?」

「ん、後で試してみる」

「ねぅ、五花術ってどこで知ったの?」

「えっとね、リョーメン屋のごんにゃ店主と雑談している時に聞いたんだ。ユライカナンの秘薬らしいよ。そこで聞いた花がこの川岸付近に咲いているなって前からチェックしていただけ。試したのは今日が初めてだけどね」

「秘薬がこんなに簡単に作れるの?」

「いや、本来なら川の水なんかじゃなくて、神殿かどこかで清められた聖水を使うらしいんだ。だから、今日作ったのはほとんど効果が出ないかも」

「でもあたし素早くなったよ!」

「あと、聖水で作ったものを飲むらしい」

「じゃあ飲む!」

「やめなさい」

 ラムリーザは、敏捷度の上がる水らしきものを飲もうとするソニアから、木製の容器を奪うと残った水をすくうと自分の首周りに塗りたくった。ひんやりしていて涼しくなる。色は悪いが花びらを溶かし込んだ水、汚いわけでもない。

「そんなところに塗っても、首が素早くなるだけだよ」

「首が素早くなったらどうなるのか説明してみよう」

 ラムリーザは、ソニアの謎理論を聞いてみようと思って問いかけてみた。

「首だけが取れて、高速で移動しまくるようになるの」

「なんやそれ、どうやって首だけで移動するんだよ」

「首から蜘蛛みたいな足が生えてきて、カサカサ動き始めるの」

 なんだその宇宙生物みたいな物体は、などと思ったがあえて受け入れることにした。以前そんなモンスターが出てくる映画の話を、リゲルから聞かされたような気がする。たしか無数の遊星から――、まあいい。

「それじゃあソニアの首にも塗ってみよう。お互い首だけで動き回って遊ぼうか」

 ソニアは「やだ」と言うが、ラムリーザは正面から引っ付いてきているソニアを足で挟んで逃げられないように固定すると、同じように首に塗りたくってやった。

「そうだ、おっぱいも早くなるように塗ってやろう」

 ラムリーザは、ソニアの着ている上着のシャツを引っ張って前に隙間を作ると、その中に手を突っ込んでおっぱいに塗りたくる。

「ふっ、ふえぇっ!」

 ソニアは逃げようとするが、ラムリーザはがっちりと足でソニアの腰を挟んで逃がさない。ソニアはおっぱいを攻められて、顔を赤らめもじもじし始めている。

「薬も少なくなってきたな。よし、今度は下にも塗りたくってしまおう」

 ラムリーザは、容器に残った水を全てすくうと、ソニアの腰の下に手をやって、下着の中へと手を突っ込んだ。

「やっ、なっ、ラム、なっ……」

 ソニアは、ラムリーザにもてあそばれている。そのまま二人はどんどん調子に乗り、誰も見ていない川岸の木陰の中で――

 

 フォレストピアの生活で、初めての夏がやってきた。
 
 
 
 
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