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風車の理論

 
 8月8日――

 

「それでは! ふえぇプロレスのファイナルマッチを行います!」

 一発芸大会はいつの間にかプロレス大会へと変わっていて、いよいよ最終戦が始まったのである。

「それでは青コーナーより、熱き蹴撃手レフトールの入場!」

 ジャンの司会がかかった直後に、レフトールはは「ふえぇ!」などとと言ってみる。ソニア以外のメンバーは、くすりと笑う。一応つかみは成功したらしい。

 レフトールはリングの外から勢い良くコーナーポストに登り、そのまま何もせずにリングイン。

「あっ番長! あたしのドラゴンリングインをパクッた!」

 ソニアは一人文句を言っているが、パクるとか盗むとかそんなものにならないはずだ。ただコーナーポストの上経由でリングインするだけの事、何の特徴も無ければ、観客もちっとも沸かない。

 だいたい派手に飛び技を見せてリングインならともかく、ただ飛び降りるだけでドラゴンリングインとは何か? ソニアはそんなにそのリングインを独占したいなら、ふえぇリングインとでも名付けていればよいのだ。

 とまぁ余談は置いといて、司会は続いている。

「赤コーナーより、ふえぇちゃんの許婚ラムリーザの入場!」

「なんやそれ!」

 ラムリーザは突っ込み、ソニア以外のメンバーは笑い声をあげたり、くすりと笑ったり、失笑したりと様々だ。ソニア自身は、自分が「ふえぇ」と言っている自覚が無いのだから、何が面白いのかも自分が何故ふえぇちゃんと呼ばれるのかもさっぱり分かっていない。

 ラムリーザは、自分の試合がコミカルな方向へと動き始めているのを察して、ここはひとつ流れをシリアスな方向へと戻してやろうと考え、試合前のデモンストレーションを行うことにした。

 まずはリングに登る際、自分もコーナーポスト経由で入るべきか少し考え、とりあえず流れを読んだという形にして、コーナーポストをよじ登って、そのままリングの中にゆっくりと降りていった。

 これで最初の二人、ジャンとマックスウェル以外は、ロープを潜ってリングインせずに、コーナポスト経由で入場したことになった。ただし、ソフィリータ以外は何もせずに降りただけ。

 それから、リングに持ち込んだリンゴ――夕方町で買ったやつ――のうち、一つをレフトールに投げて渡した。

「なんでぇリンゴ?」

 突然渡されたレフトールは、少し困惑しているようだ。

 レフトールの注意がラムリーザの方へ向いたところで、ラムリーザは持っていたリンゴを斜め上に掲げあげた。後は力を加えて――

「待って!」

 リングの外からロザリーンの声がかかった。何事かとラムリーザが振り返ると、ロザリーンはそのまま待つように言ってコテージの中へとかけていった。そしてすぐに戻ってきたとき、その手には銀のボウルを持っていた。

「リンゴを握りつぶすのでしょう? リングが汚れるし、リンゴがもったいないので、この中にお願いします」

 ロザリーンにボウルを手渡され、ラムリーザは「これではしまりがないなぁ」と困惑する。

 リング中央で、リンゴを天に掲げて破壊する。それこそがインパクト抜群だというのに、ボウルの中にめがけて潰すのでは、コテージの部屋でやる一発芸にしかならない。

「一発芸か……」

 ラムリーザは、リングのコーナーの一角に観客を全員集めた。そしてみんなが集まった所で、ボウルの中でリンゴを握りつぶして見せるのだった。凄い地味……。

「番長も潰してみてよ」

 ソニアはレフトールにもリンゴ潰しを促したが、レフトールはラムリーザから受け取ったリンゴに既にかぶりついていた。

「あ、食べた、つまんない!」

 ソニアは文句を言うが、レフトールの行為こそ、リンゴに対する正常な扱いである。

 こうして、ラムリーザは舞台の流れを派手な物にしようとしたが、結局地味なまま試合開始を向かえたのであった。

 ラムリーザはリング中央に陣取って、レフトールの方へと手を伸ばす。レフトールは、同じように手を伸ばしかけたが、力比べをすると痛い目にあうということを思い出して、ラムリーザの手をかいくぐって肩の辺りで組み合った。

「あーっと、両者リング中央でロックアップ! しかしレフェリーが居ない!」

 ジャンの実況を聞いて、ラムリーザの試合ならばとリゲルはリングに上がった。

「むっ、リゲル何だよ、二人がかりで俺を攻めるってか?」

「俺はレフェリーをやってやるつもりだが、お前がそう望むならそうしてやってもいいぞ」

「ふざけんなよっ!」

 レフトールはそう言いながら、ロックアップを振りほどいてラムリーザの首を脇に抱えた。

「あーっと、今度はレフトールのヘッドロックがラムリーザに極まったーっ!」

 首を極められたラムリーザだが、落ち着いてロープの傍へと移動して――

「そこでロープブレイクはつまんない!」

 ソニアが文句を言ってきたので、ラムリーザはロープを掴もうとした手を引っ込めた。仕方が無いので、レフトールを押し出して、ロープの方へ投げ飛ばす。

 レフトールは、ロープの反動を利用して戻ってこようとしたが、荒い縄が背中に食い込んでその動きが止まってしまった。

「やはり荒縄のロープでは、ちょっと痛かったか……」

 ジャンはそういう物の、プロレスのロープとは、当たると痛いものである。これまでに観戦しかしたことはなく、実際にリングを作って戦うのは今日が始めて。これは慣れるしかない。

「こらーっ、ロープに振られたら戻ってこないとダメじゃないかーっ、塩番長!」

 ソニアは野次を飛ばすが、レフトールも負けていない。

「なんだとコラ! じゃあお前やってみろよ!」

「あたし試合したもん、ソフィーちゃんに勝ったもん!」

「お前棒立ちしてただけじゃねーか、最後だって変な事してソフィリータが逃げただけじゃねーか」

「お取り込み中悪いけど、今の相手は僕だぞ」

 レフトールがソニアと舌戦を繰り広げている途中、本来の対戦相手であるラムリーザが接近。レフトールは慌ててラムリーザの伸ばしてきた手を受け止めるが、それは力比べの形となったのである。

「し、しまった!」

 ラムリーザと、手で組み合ってしまったレフトールは、慌ててその手を引き抜こうとする。しかしがっちりと掴まれていて逃げられない。

 レフトールはラムリーザのボディに蹴りを放って逃れようとするが、ボディが頑丈なラムリーザはびくともしない。

「い、痛い、痛い!」

 手を強く握られて、レフトールは悲鳴をあげる。

 ただし、これはガチンコの試合ではない。ラムリーザは地味な展開を避けるために、掴んでいた手を離して、すかさずレフトールの脳天にチョップを叩き込んだ。脳天唐竹割りだ。

 レフトールは、手を離してくれた事を幸いとし、少し間合いを取って構える。その様子を見て、ラムリーザは両手のガードを上げて頭部を守り、胴体部分をさらけ出した。まるで去年、夜の公園で真剣勝負をやったときと同じ構図だ。

 レフトールはあの時と同じように蹴りを放ってきた。しかしラムリーザは、その蹴りを避けることもガードすることもせず、そのまま自分も相手に拳を叩き込んだのだ。蹴りとパンチが同時にぶつかり合い、レフトールは後ろに尻餅をついてしまう。

 観客に初めて公開された、ラムリーザとレフトールの真剣勝負の一幕だった。

 しかしこれはプロレスであるので、ガチで潰してしまってはならない。そもそも拳で殴りつけるナックルパートは反則だ。蹴りは良くて拳がダメなのはズルい気もするが、ルールなので仕方が無い。

 だがレフトールは、ラムリーザにガチで極めたい技が一つあった。それさえ極まれば、後はご都合主義でジョバーを演じても良いと考えていた。ラムリーザを立てずして、何がラムリーザの騎士だ。

 レフトールは起き上がり、今度は左手で軽く殴りかかってきた。ジャブと言ったところか。

 ラムリーザがそのジャブに反応して腕のガードを合せてきた所だ。そのジャブは囮だった。

 レフトールは、右足をしならせて、鋭い蹴りを放ってきた。ラムリーザの頑丈なボディは狙わない。狙うは凡庸なる下半身へ。

 上段へガードを合わせていたラムリーザは、レフトールの放ってきた渾身の下段蹴りをもろに食らう。足をすくわれるような形で、その場に転倒してしまった。

「おっしゃ、決まった! どうだ、フォレスター・キラー!」

 レフトールは、リング上に転がるラムリーザを見下ろしながら、得意気に叫んだ。

「あーっと、レフトールの必殺技フォレスター・キラーが決まってラムリーザダウンだーっ」

 ジャンはすかさず実況を入れる。

「いや、これはダウンじゃない、スリップだぞっ」

 それに対してラムリーザは未練がましく言い訳をする。

「それじゃあ攻撃続行っ」

 レフトールはダウンじゃないなら、今がチャンスとばかりに追撃を仕掛けてきた。ラムリーザが上半身を起こしたところで、背中をまるでボールを見立てるようにして蹴っ飛ばしてきた。

 たまらずラムリーザは、ごろごろと転がってリングの下へとエスケープする。

「まいったなぁ、レフトールは以前戦ったときよりもパワーアップしているよ」

 ラムリーザはそうぼやく。最初に戦った時は、分かりやすい蹴りしか放ってこなかったのに対して、今は小技を挟んだりして単純にガードだけでは対処できない。

 一方リング上では、レフェリー役のリゲルがレフトールに忠告していた。

「お前セメント仕掛けるなよ、これはプロレスだぞ」

「わかってるけど、ラムさん相手だと手を抜いたらヤバいんだよ」

 レフトールは言い返す。そこを上手く力加減を計って魅せるような試合をするのがプロレスなのだが、今日唐突にやってみようという話になったわけで、そこまでの技量は伴っていなかった。

「ラムリーザ、これを使うといいわ」

 リングの外に下りたラムリーザに、リリスが近寄ってきて何かを手渡してきた。受け取ったものを見てみると、それは瓶の蓋を開ける為に使う栓抜きだった。リリスは瓶入りのジュースを飲みながら、必要なくなった栓抜きをラムリーザに渡したのだ。

「ちょっと待って、凶器攻撃しろって?」

「それでレフトール、あの番長をガツンとやってやればいいわ。大丈夫、正義はあなたにあるから」

「いやいや、正義側が凶器攻撃したらおかしいだろ?」

「ラムリーザ様、こっちの方が威力ありますわ」

 そこにユコがやってきて、食事の時に使っていたフォークを差し出してきた。

「いや、要らないってば」

「別にあなたが凶器を使ったとしても、みんな番長じゃなくてあなたを応援するわ」

「それはそれでおかしいと思う」

 ラムリーザは、リリスから受け取った栓抜きをユコに押し付けて、リングのエプロンへと上っていった。

 プロレスとは筋書きのあるドラマ。正義側が凶器を使えば、それは正義側である必要が無い。悪役が悪役として魅せるための道具を正義側が使っては物語が成り立たない。悪役らしいことをしない悪役も然り。

「やっぱり正義の領主様が、ポッターズブラフ悪の双璧の片割れを退治する物語だよな」

 ラムリーザは自分に言い聞かせて、セカンドロープをまたぎ、トップロープを潜ってリングインしようとした。その時に、これまでの流れを読んで、コーナーポストに昇ってから入ったほうがよかったかな? などと思ったが、既にトップロープをくぐった後であった。

 そこにレフトールが突進!

 ラムリーザの体勢がまだ整わないうちに突っ込んできて、かがんだ状態のラムリーザに上からハンマーブローを叩き込む。

 思わず膝を突くラムリーザ、レフトールは攻撃の手を緩めない。

「おらぁ! くたばれやぁ!」

 普段のおちゃらけた仮面を脱ぎ捨てて本性を表したのか、うずくまるラムリーザを蹴って蹴って蹴りまくる。

「ラムがんばれーっ!」

 たまらずソニアは叫ぶ。ここが大会場だったら、ラムリーザコールの大合唱でも発生したかもしれない。

 コーナーポストに追い込まれ、ポストに背を預けて座り込むラムリーザに、なおも正面から蹴りを入れ続けるレフトール。

 しかしそこにレフェリーのリゲルが割って入る。

「ここはブレイクだ」

「うるせぇっ!」

 レフトールはリゲルを押しのけて、ラムリーザの肩口に膝をぶつけてきた。二度、三度と膝をぶつける。どうもプロレスの熱気に押されて、興奮してしまっているようだ。ラムリーザの騎士はどこへ行ったのか? これではラムリーザに対する刺客だ。

「あーっと、ラムリーザ、サンドバッグ状態であります! わがままな膝小僧、レフトールの膝爆弾が炸裂しまくりーっ! フォレストピアの町は、悪の番町の手に落ちるのかーっ?!」

「ぶーぶー!」

 ソニアは一人、文句を言っている。ここが大会場だったら、ブーイングの嵐でも巻き起こっていたか?

 ラムリーザは、座り込んだまま腕をだらりと落としてうなだれている。戦意喪失か?

 そこでレフトールはとどめに入った。

 一旦ラムリーザの座り込んでいるコーナーから離れて、対角線側のコーナーまで戻る。そして右腕を高らかに掲げあげた。

「ぶー!」

 ソニア一人のブーイングである。大会場だったら以下省略。

 レフトールはそのままラムリーザの方へ駆け出して、近くで低く飛び上がって低空ミサイルキックを放ってきた。レフトールの両足の裏が、ラムリーザの胸に激突!

「あーっと、番長の放つ低空ミサイルが爆発! フォレストピア陥落かーっ?!」

「ちょっとこれ、やばくないか?」

 観客もそわそわしはじめた。ユグドラシルなどは本気で心配して、レフェリーのリゲルの所へ駆け寄って忠告する。

「リゲル君、これは試合を止めた方がよくないかい? ラムリーザ君が危ないよ」

「別にレフトールは反則をしているわけではない」

 リゲルは落ち着いたものだ。

「やっぱプロレスは無理だって、危ないよ」

 ユグドラシルは食って掛かるが、リゲルはラムリーザの様子を近くで見にいく。しかし試合を止めるそぶりは見せなかった。

「太鼓打ちのお兄ちゃんがんばれーっ!」

 ミーシャの応援を皮切りに、数人規模の観衆ではあるがラムリーザを応援する声が上がり始めた。

「ラム立ち上がって!」

 ソニアも大声を張り上げている。

 しかしラムリーザは、ミサイル攻撃が効いたのか、うなだれていた頭は今では上向きになりコーナーポストにもたれてしまっている。

 レフトールは起き上がり、再びラムリーザとは対角線上へと歩いていった。そして再びガッツポーズをして、今度は首切りポーズまで見せてきた。

「こらー番長! やりすぎだぞーっ!」

 ミーシャも媚び媚び声で非難する。ちっとも迫力が無い。

 その傍では、リングに上がって救出に入ろうとするソフィリータを、ユグドラシルが懸命に抑えている。

「さあ、悪の番町、フォレストピアの栄光を消し去るのか、それとも奪い去るのか?! 出るか再び、フォレスター・キラー?!」

 レフトールのとどめの一撃、再びラムリーザに向かって駆け出す。ラムリーザ、万事休すか?!

 その時である。

 ラムリーザは待ってましたとばかりに素早く起き上がって、自分もレフトールに向かって駆け出した。両者、リング中央で激突――っ!

 ――とはならなかった。

 ラムリーザは、レフトールとぶつかる瞬間に少し左側に体を捻って、ぶつからないように交差しようとした。そして、右手でレフトールの顔面を鷲づかみする!

「しまった――!」

 レフトールは思わずつぶやいていた。捕まってはいけないラムリーザに捕まってしまったのだ。

「あーっと、ラムリーザの鉄の爪が番長の顔にめり込むーっ! フォレストピアの秘密兵器、アイアンクローががっちりとレフトールの顔面を捉えたーっ!」

「やったーっ!」

 ラムリーザの反撃が決まったのを見て、ソニアは万歳をする。

 動きが止まったレフトールに対して、ラムリーザは今度は自分の右足をレフトールの後方へと伸ばして引っ掛ける。そしてまるで大外刈りのようにレフトールを後方へと倒しにかかった。ただし大外刈りとは違うのは、ラムリーザが掴んでいるのはレフトールの顔面だけである。

 そしてそのまま、レフトールの後頭部をリングに激突させた!

「決まったー、起死回生のスペース・トルネード・フォレストピア! アイアンクローに捕らえたまま、リングに叩きつける荒業炸裂ーっ!」

 レフトールは、リング上に大の字になったまま動かない。ラムリーザもアイアンクローに極めたまま、その手を離さないでいた。

 そこでリゲルは近寄って、カウントを取り始める。

 三つのカウントが入り、試合終了。スペース・トルネード・フォレストピアからのアイアンクローホールドで、ラムリーザの勝利だ。

「ラムが勝ったー!」

 ソニアは真っ先にリングに駆け上がり、ラムリーザの元へと飛び込んでいく。

「太鼓打ちのお兄ちゃんが、顔潰しのお兄ちゃんになった。たぶん手で顔を同化して取り込むんだ」

 ミーシャの言っている事は、若干よく分からない。

「ふー、ハラハラしたよ、しかし今度はレフトール君が大丈夫かな?」

 ユグドラシルは、今度はレフトールの心配をしている。多少弾力はあるものの、リングに後頭部を叩きつけられているのだ。

「それでは、ふえぇプロレス公認の、ふえぇチャンピオンベルトを贈呈するぞ」

 ジャンもリングに上がってきて、ボール紙で作った適当なベルトを差し出してきた。

「なんだよ、そんなちゃっちいの要らないよ」

 ラムリーザは受け取ることを拒否する。だいたいふえぇチャンピオンベルトとは何か? ちっとも威厳の欠片が見えない。

「もったいないことを言うな。これはチャンピオンベルトと、ふえぇちゃんが上手く混ざっているふえぇチャンピオンベルト。お前は今日からふえぇチャンピオンだ」

「余計要らんわ!」

 ラムリーザは、ボール紙のベルトをリング外に投げ捨てた。

 そこにむくりとレフトールが起き上がった。

「あ、気がついたみたい」

 看病みたいなものをやっていたロザリーンは、レフトールが突然起き上がったので少しビックリしていた。

「レフトール君、大丈夫かい?」

 ユグドラシルも心配そうに聞いてくる。

「いや、大丈夫と言えばぶちこわしになってしまうから言えないんだよなこれが。でも大丈夫なんだわ」

「後頭部を叩きつけられたのに、結構頑丈なんだね」

「まぁ、そういうことにしといてやるわ。あー、どしん」

 レフトールは、そう言って再び仰向けに倒れるのだった。

「やっぱりダメじゃないか!」

 ユグドラシルが心配する中、レフトールは一人ラストシーンについて思い返していた。

 ラムリーザは初戦の時のように、本気で顔面を潰しにきていなかった。せいぜい固定できて動けなくなるぐらいの力にとどめていた。そして足払いをかけてきて後方に倒してリングに激突させようとしたのだが、激突す直前に顔面を掴んでいる指に力が入るのがわかった。その事により、後頭部がリングにぶつかる瞬間、一瞬だけ落下が止まった。ラムリーザはそのままぶつけたら危険なのがわかっていて、ぶつける瞬間に少しだけ落下を止めてからリングに落としたのだった。

 レフトールはその細かい動きが全てわかっていた。そこで、これを返すのは野暮だと判断し、後頭部をぶつけられて失神したように見せかけたのであった。

 ラムさん相手なら負け役でもいいや。

 レフトールもそれなりに暴れられたので満足していた。蹴りもミサイルも、全てラムリーザの頑丈なボディに集中させてやった。例外の足攻撃技、必殺のフォレスター・キラーも奇麗に決まった。これ以上を望むのは贅沢だというものだ。

 

 こうして、割とハラハラドキドキとさせるような試合は非常に盛り上がり、ジャンの企画した第一回ふえぇプロレス興行は、成功した――のかな?
 
 
 
 
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