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帝都でお買い物、ラムリーザは財布ではなくなった

 

 マトゥール島でのキャンプも終わり、日常が戻ってきた。

 昨日一日は外にも出ずにゴロゴロしているだけ、さすがに疲れていたので何もしなかった。そして今日も、ラムリーザは朝から部屋でゴロゴロしていた。ソニアもゲームをやる気力も無いのか、一緒にゴロゴロしている。

 転がっている最中に、時折二人は身体がぶつかる。そしてそれ以外では、転がっている最中に、ソニアの集めたココちゃんにぶつかったり踏んづけたり。

 ココちゃんをまくらにしているソニアに、ラムリーザはどうでもいいと思いながらも暇つぶしに声をかけてみた。

「ココちゃんがまくらにするなーって怒ってるよ」

 しかしソニアは、いつものクッション理論で反論してきた。

「ココちゃんはクッションだから、まくらにされることがあっても普通。ぬいぐるみはまくらにされたら怒るのは分かるけど、クッションはクッションらしくしなければダメ!」

 そしてラムリーザが大の字で転がって、腹の上にココちゃんを乗せているのを見つけると、さらに文句を言ってきた。

「ココちゃんはクッションだから下に敷く物! 上に乗るのはぬいぐるみ、ココちゃんは下!」

 しかしラムリーザは、ソニアの文句は聞き流してそのまま転がっているのだった。

 そういえば最初の一体、実家で懸賞に当たったからという理由で貰ったココちゃんは、帽子を被っていた。しかしその後、ココちゃんカレーで量産されたココちゃんは帽子を被っていない。どうやら最初の帽子は、わざわざ別物を被せただけのようだった。

 ソニアが言うに、帽子を被っていないココちゃんは「はげぼうず」と言うことになっている。クッションとしては普通の頭だけど、ぬいぐるみにしては「はげぼうず」過ぎるということで、この点もココちゃんがぬいぐるみではなくクッションであることを強調しているのだ。

 ラムリーザ的には、頭がどうのこうのでぬいぐるみとかクッションとかどうでもよい。しかし間違えるとソニアが怒るので、なるべくココちゃんはクッションであると自分に言い聞かせていた。

 最初のココちゃんが被っていた帽子は今では帽子掛けに掛けられていて、帽子を被ったココちゃんは一体も居なかった。

 そこに、ラムリーザの携帯端末がメールの着信を表すチャイムを発してきた。

「むっ、またリリスからだな!」

 ソニアが机に手を伸ばして奪い取ろうとするよりも早く、ラムリーザはヒョイと拾い上げた。「浮気者浮気者」と言いながら次々にココちゃんを投げつけてくるソニアを無視して、ラムリーザは携帯端末のディスプレイを覗き込んだ。

 そこには、メールのマークと差出人リリスの名前が。

「ジャンからのメールだったよ」

 このように嘘をつくことでソニアは大人しくなって、再びココちゃんに埋もれながらゴロゴロし始めた。

 メールの内容は、『買い物をするから金貨をいっぱいもってきて』とのことだった。

 そういえば今日はリリスの誕生日。夜にパーティをするからということでジャンの店に呼ばれていたが、リリスは午前中からラムリーザを呼び出してきた。金貨をいっぱい持ってきてということは、また何か高額な物を買ってもらう算段なのだろう。

 そしてメールはこう締めくくられていた。『ふえぇちゃんが居ると邪魔だから、一人できてね』と。

 ラムリーザは、ソニアを置いてリリスと会うのと、リリスの言いつけを破ってソニアを連れて行くのとどっちが自分や周りの被害が少ないかを考え、あまり考えるまでも無く後者を選ぶのであった。

「ジャンからリリスの誕生日プレゼントを買いに行く誘いが入ったから出かけるぞ」

 とりあえず、ジャンから連絡が来たことを徹底しておく。「リリスが誕生日プレゼント買ってと言ってきた」などと言うと、ソニアが騒ぎ出すのは火を見るよりも明らかだ。

「よし、昼食もついでに食べに行くか」

「昼食カレーにしようよ」

 ソニアの返答を意訳、「ココちゃんもらいに行こうよ」である。

「そのココちゃんを一つリリスにプレゼントしたらいいじゃないか」

「やだ! リリスになんかにココちゃんあげない!」

「十体以上持っているんだから一体ぐらい……、まあいいや、出かけるから着替えるぞ」

「またリリスはラムを財布にするんだな?!」

「いいからいいから」

 こうして二人は、リリスに会うためにフォレストピアの町へと向かった。

 

 リリスの呼び出した場所は、ジャンの店の前だった。店の前で、ジャンとリリスが待っている。夏前ごろから、リリスはジャンの店の上部にあるホテルで寝泊りしているのだ。

 そしてそのままリリスの誕生日プレゼントを四人で買い物に出かけた。しかしソニアとジャンは、ちょっと不満顔。ソニアはリリスがまたラムリーザを財布にしているのが気に食わないし、ジャンはリリスが相変わらずラムリーザ頼りなのが残念だった。

「今年もよろしく頼むわよ」

 会って早々リリスはラムリーザにねだってきた。

「リリスのプレゼントなんてこれで十分!」

 不満なソニアは、リリスに落ちていた拳サイズの石ころを手渡して言い放った。リリスは素早くその石をソニアの服の中に、正確に言えば巨大な胸の谷間に埋め込んでしまった。

「なっ、何すんのよっ」

 パンツの中に入れられてストーン、よりはマシだが、普通にソニアは怒り出す。

「石なら黒曜石をお願いするわ。ちゃんと削って整えたのをね。溶岩に水をかけただけなのはダメよ」

「黒魔女は黒い石を欲しがるのね、全然謙虚じゃないくせに黒い石を欲しがるなんて変!」

「じゃあ金剛石ぐらい用意してみなさいよ」

「未婚の癖に金剛石ねだるな、結婚75年目に買ってあげる。今の黒い魔女には黒い木炭で十分、どうせ成分同じだし」

 学校のテストの成績は悪いくせに、変なところに知識があるソニアであった。

 そんなやりとりをしながらも、リリスはフォレストピアに出張してきた小さな楽器屋に入っていった。去年は帝都の大きな楽器屋で、それなりに値が張るギターを買ってもらったものだ。

 しばらく――といってもそれほど規模が無いのでそんなに時間はかからないが、見終わった後にリリスは「あまりいいものが無かったから帝都に行こう」などと言い出した。

 まだ午前中、ジャンの店が本格的に動き出す夕方以降までまだ十分時間がある。そういうわけで、そのまま駅に行って帝都行きの特急に乗るのであった。

 ポッターズ・ブラフまでしか無かったときは、田舎と言うこともあって普通列車しか走っていなかったが、フォレストピアができたり、隣国ユライカナンまで鉄道が開通したこともあり、新たに特急列車が新設されたのだ。これで帝都までの道のりにかかる時間は大幅に短縮されたのであった。

 最初はボックス席に四人で腰掛けていたが、しばらくしてジャンはラムリーザを呼び出し二人で別の席へと異動してしまった。

 ソニアとリリスから少し離れた場所に座りなおしたジャンは、ラムリーザに尋ねてくる。

「おい、去年リリスに何を買ってあげた?」

「ん、ギター。結構高かったよ、金貨二十枚はしたかな」

「ああ、あれか。去年の夏休み中に突然高価なギターに変わっていて何かと思っていたが、そういうからくりがあったのか」

 ジャンはため息を吐いて言葉を続けた。

「そりゃあお前に付き纏うわ」

「別に、欲しがるから買ってあげただけだよ。少し前にはマイコンとか買ってあげたけどね。なんかソニアと二人で黒歴史を製作しただけみたいだけど」

 ここでラムリーザを励ましてあげるとすれば、確かにソニアとリリスはゲーム実況で黒歴史を作り上げただけだが、同時に買ってあげたユコは、今でも音楽打ち込み作成に役立てていると言っておこう。

「お前はソニアには全力で与えてやるのは自由だが、リリスにまで手を広げるのはやめてくれよ」

「でもソニアにだけ買ってあげるのはずるいって言うんだよ」

「ずるくていいんだよ。これからは、リリスには俺が全力で与えるから、お前はお茶を濁す程度にしてやれ。な、な、これ約束、頼むぜ。俺も常識の範囲内なら、お前がリリスに与えてやれるものと同じものぐらい与えてやれるから」

「ん~、悪かった……、のかな?」

「いや、別にお前に怒っても仕方ない。誕生日の考え方も違うし、リリスにせがまれたから買っただけってのも分かる。ただ、リリスの金銭感覚を狂わせないでくれってこと。今日も金貨いっぱい持ってきたんだろう?」

「うん、五十枚ぐらい」

「はー……」

 ジャンは、再び大きなため息を吐く。

「わかった、ジャンの意見も考慮して選ぶ」

「そうしてくれ。リリスの難易度上げずに、俺に任せてくれ。そうか、金貨二十枚のギターか。ステージでお祝いするよりそっちになびくわけだ。いろいろ納得」

 ジャンは、なぜどれだけ手を尽くしてもリリスがラムリーザから離れないのが、ここに来てようやく分かったようだ。

「今年は買わないでおこうか?」

「んや、リリスが欲しいと言ってきたものは俺ががんばる。お前のプレゼントは俺が選ぶ。これでいこう。しかし何をねだってくるものやら……」

 ラムリーザは、ジャンのためにリリスから一歩引くことを考えようかなと思ったりした。元々ソニア一筋なのだが、リリスの我侭を割りと聞いてあげた気がする。これからは、その我侭の矛先をじゃんに向けさせるように仕向けよう。そう考えるのであった。

 

 普通列車で二時間以上かかっていた道のりを、特急列車で一時間と少しぐらいで到着。

 早速帝都の楽器屋へ向かうリリスについていくと、途中でメルティアに遭遇した。ジャンがフォレストピアに来たことによりあまり目立たなくなっていたが、メルティアも帝都で元気にやっていたようだ。

「あっ、ソニアちゃんじゃないのーっ」

「うあ、メルティア?!」

 ソニアは思わず自分の巨大な胸を抱えてラムリーザの後ろに隠れる。おっぱい大好きメルティア、油断はできない。

「ジャンもそっち行っちゃって、つまんなーい。お店にいっても、もうジャン居ないし」

 メルティアが少し寂しそうな表情を見せるので、ラムリーザは将来の展望を少し語ってあげることにした。

「自分たちの年代に間に合わせるようにフォレストピアに大学作るから、再来年メルティアも来たらいいよ。そしたらまた一緒だよ」

「大学? ソニアちゃんも行くの?」

「行くのかなぁ……」

 ラムリーザは口篭る。ソニアの成績では、大学進学は夢物語かもしれないのだ。

「あたし大学行くけど、メルティアは来なくていい!」

 行けるかどうかわからないが、きっぱりと言い切るソニアであった。

 その後、楽器屋でリリスがねだってきたのは、エレキギターのアンプであった。

 去年ラムリーザにギターやマイコンを買ってもらったりして味をしめたリリスは、最初金貨二十枚の高価なアンプを要求してきた。

 しかしソニアが文句を言うだけでなく、ラムリーザもジャンを立てるために説得してきたので、最終的には金貨五枚のアンプに収まった。

 それでもまだ多少は高価な物であることは変わりないのだが、そのぐらいならジャンにとってはまだ常識の範囲内であった。

 こうして、ラムリーザにとっては二度目となる、リリスの誕生日プレゼント買い物は終わった。

 ちなみにラムリーザは、ジャンに金をかけるなと言われていたので、金貨ではなく銀貨十枚程度のギターピックをプレゼントするのであった。

 一方ソニアは、帝都のおもちゃ屋の表にあったガチャガチャで、マンガ肉を当てようと少しの間回していた。その時に出た「はずれ景品」である、猫の泣き声のような音がする笛が出てきたので、こんなのに要らないとばかりにプレゼントとしてリリスに押し付けたのであった。
 
 
 
 
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