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祭り前日の準備 ~ぶたの牛乳と卵~

 

 フォレストピアのとある山道にて。

 この日月初めのフォレストピア首脳陣パーティの後、ごんにゃ店主ヒミツの案内で、ミルキーウェイ・フェスティバルに使用する大事なアイテムを入手するために、ラムリーザ達は山の中へ入っていった。

 先導するごんにゃ従業員が鉈などを使って道を切り開く後ろについて、ラムリーザはフォレストピアに住む友人を連れていっているのだった。

 

 道中、ソニア、リリス、ユコの三人組みは、雑談に花を咲かせていた。どうやら今日のお題は「肉」のようだ。

「ソニアは肉が好きって聞いたけど、肉にもいろいろあるわ、どの肉が一番好きなのかしら?」

「あたしぶた肉がいちばんおいしいと思うの、トンカツとかね。でもリリスは魔女だから腐った肉が好きなのでしょ?」

「それは牧師様。でもギュードンも捨てたものじゃないわ」

「あ、そんなのもあったね。また行きたいなぁ、ギュードン屋」

 ソニアは、以前行ったユライカナン産のギュードン屋を考えたが、すぐにリリスに仕掛けられた赤い粉トーガラシの件を思い出してリリスを睨みつける。

「どうしたのかしら?」

「リリスとご飯に行ったらイタズラばかりされるからリリスは一人で行って!」

「そんなところより、ココちゃんカレー二択ですの」

 ユコはカレー推しだが、ここに居る全員はユコがカレー目当てではなくクッション目当てだということは分かりきっていた。

「牛はうまいし汎用性高い乳出すし、鶏もうまいし汎用性高い卵産むけど、ぶただけいまいちね、くすっ」

 リリスはすぐに話の流れからソニアを攻撃する。ソニアがぶたが好きと言ったので、ぶたを下げてきたのだ。

「何よ、リョーメンのスープにも使っているって聞いた! でもぶたの牛乳とか卵はなんで使わないのかなぁ?」

「そういえば牛の卵も使わないし、鶏の牛乳も使わないわね」

 二人の会話は妙な方向へと向かっている。

「ふん、リリスは吸血鬼だから牛乳じゃなくて血を飲んでいたらいいの!」

「風船お化けは――、いや今はユカタ着ていないから風船おっぱいお化けね。風船だから空気だけ食べてたらいいの。それでパンパンに膨らんでから一気におならしてどこかに飛んでいったらいいんだわ」

「うるさい吸血狼男!」

「エル!」

 

 いつもどおりの二人を後ろから眺めながらついて行っているジャンは、微妙な表情を浮かべる。それに気がついたラムリーザは、いつもと同じ事を言うのであった。

「言っただろ、リリスも精神年齢はソニアと同レベルだと。妖艶な見た目に騙されて近寄ると、幼稚な性格だったという」

「うんまぁ、それはそれで良いのだけどね。しかしぶたの卵か、相変わらずソニアの発想はぶっとんでいるな」

「あれが素で出てくるから不思議なんだよね」

「実在すれば、ぶたの卵は鶏の卵より大きいから、一つでより多くの料理ができるぞ」

「実在すればね。それならゾウの卵の方が大きいと思うぞ」

「なるほど、それもそうだ。ゾウの卵の卵焼きとか、食べ応えあるだろうね」

 ソニア達の会話を受け、ラムリーザとジャンの会話も妙な物になっていた。

 

 ラムリーザとジャンの後ろには、ユグドラシルがごんにゃ店主と並んで歩いていた。

 今日のメンバーはこれだけ。リゲルとロザリーンはフォレストピア首脳陣パーティの後、所用があると言って二人ですぐに帰り、ソフィリータはミーシャと一緒にエルム街へと遊びに行ってしまった。

「それで、今日は何を取りに行くのでしょうか?」

 ユグドラシルはごんにゃ店主に尋ねる。生徒会長のユグドラシルは、学校のイベントにもミルキーウェイ・フェスティバルを取り入れようと考えているので、調査目的で同行しているのだった。

「山のどこかにササが生えているはずなのだよ。お祭りの目玉アイテムがそのササだからね」

「ササですか。ササの実なら食べたことありますが、ササの木自体を使った話はあまり聞きませんね」

「ユライカナンではお祭りに使うけど、他の国では確かに聞かないな」

 そんな話をしているようだった。後ろに行くほど真面目な話の一団である。

 

 中盤組みの会話に戻る。

「この山脈って金とか銀出てこないかな」

 ジャンは、周囲にぽつぽつとある岩を見ながらつぶやいた。

「小規模でいいから調査隊を作ろうかな。もし金脈などが見つかったら、町の発展に大いに役立つし」

「その調査隊、俺が隊長を勤めたいなぁ。ジャンの探検隊シリーズを作るんだ」

「調査隊が探検隊になっとる。資源開発を進めるのも良いけど、店はどうするのかな?」

「う~む、やりたいことが多すぎて手が回らない。なんとかしなければ……」

 ジャンは、軽く頭を抱えながら悩む。

「あとあの山の頂あたりに、天文台の建設も進んでいるのだよね」

 ラムリーザは、アンテロック山から北に伸びる、ポッターズ・ブラフ地方と境目になっている山脈の北端で高くなっている場所を指差して言った。その中腹に、オーバールックホテルがあったりする。

「天文台? なんでまた――って、リゲルか。あいつ星を見る人だからな」

「僕達の入学に合わせて大学も完成させる予定だから、それに合わせて天文台も完成する。天文学部を作る、それがリゲルの夢の一つでもあるからね」

「実は占星術師を目指しているとか?」

「それは無いと思うけどね」

 そこでジャンは、前を歩く三人を見ながら言った。

「俺達はともかく、リリスやソニアが大学に入れるのか?」

「問題は、そこなのだよねぇ……」

 アホでも入れる大学にはしたくないので、その辺りはしっかりと考える必要があった。

 そんなわけどて、少なくとも五年後ぐらいまでは予定はぎっしりだった。そこから先はまた追々考えていけばよいだろう。

 

 先頭組みの会話に戻る。

「豚の牛乳と豚の卵があれば、牛や鶏なんてあいてにならないのになぁ」

 ソニアはまだそんなことを言っている。リリスと二人で、豚の牛乳と豚卵について論議し続けているのだった。

「二人ともね、豚の牛乳って文字で書いてごらなんさいよ。絶対違和感感じますの」

「なんでよ?」

「なぜかしら?」

 ユコの突っ込みにも全然気がつかない。そしてそのまま次の話題へと移っていった。

「そういえば、へんから峠にはへんこぶたが出没するらしいけど、この辺りにはでないのかしらね?」

 リリスの言うへんから峠とは、ポッターズ・ブラフ地方とフォレストピアを分けているアンテロック山脈にあり、二つの地域を繋いでいる道にもなっている場所だ。へんこぶたは噂でしか知らない。

「へんこぶたも美味しいかな?」

 ソニアの問いに、リリスは「肉は知らないけど鼻は臭いらしい」とだけ答えた。

「歌にもなっているぐらい有名になっているけど、へんこぶた自体の目撃例はあまり聞きませんですの」

「へんからぶぅ、へんからぶぅ、へんから峠のぶたがへんっ」

 童謡にもなっている歌を、リリスが口ずさんでみた。

「ぶたがへんってことは、へんって鳴くのかな?」

「そうなると思うわ、聞いたこと無いけど。あとへんこぶたはえんこぶたとも言われているから、えんって鳴くかもしれないわね」

「その童謡の二番は、えんからぶぅ、えんからぶう、えんから峠のぶたがえん、ですわ」

「へんから峠なの? えんから峠なの?」

「今度調べてみますの、絶対何か意味があるはずですわ」

 こんな調子で、ずっと豚談義であった。

 

 しばらく山道を進んだ後である。

「おっ、ここに群生しているな。何本か切り出して持って帰ろう」

 ごんにゃ店主の指図で、従業員は手際よくササを切り出していった。

「これがササですか」

「そうだ。タケに似ているが、タケと違ってササは葉鞘が残る。そこが見分けるポイントだな。もっとも祭りにタケを使っても問題ないが、伝統的にササの方を使っているだけだよ」

「そうですかー」

 ラムリーザはそう答えながらも、葉鞘が何かよく分かっていなかったりした。

「あとササの実は、50年から60年に一度だけ花が咲いたときにできるものだ。もし実りを見つけられたらラッキーだぞ」

「美味しいのそれ?」

 ソニアの質問は、やたらし美味しいかどうか聞いてくるのが多い。

「残念ながら、おっちゃんも食べたことがないのだなぁ。この場所を覚えていて、定期的に観察するのもいいかもね」

「金山銀山調査隊の任務に追加しよう」

 ジャンは、調査隊を結成する気満々のようであった。そこにソニアが口を挟んでくる。

「えっ? 金や銀を探すの? あたしやる!」

「ダメだ、お前には銅を探す任務を与える」

「銅なんかやだ、あたしはダイヤモンド探す」

「エルにダイヤはもったいない、ドンモヤイダで十分だな。ダイヤはリリスにこそ相応しい」

 当然の如く、リリスを持ち上げるジャン。しかし乗ってこないのがリリスらしかった。

「いいえ、私にはオリハルコンが相応しいわ」

「おりはるこん~?」

 いつもどおり、割とゲーム脳のリリスであった。

 切り出したササを手に取って、ユグドラシルは「一本分けてもらえないかな?」と頼んできた。

「何だい、そっちの兄ちゃんは家で祭りをするのかな? それはそれでいいそ、おっちゃんの国ではそれぞれ自宅で飾って祭る風習もある」

「いえ、自分の学校の方でもこの祭りを企画していまして、その準備と目的で一本頂けないかとね」

 ユグドラシルは今日の道中、ごんにゃ店主からいろいろとミルキーウェイ・フェスティバルについて詳しい話を聞いていた。そしてその祭りを学校のイベントで模倣してみようと考えているのだ。ササのイベント、後は校内で露店などかな。

「明日かね?」

「いえ、明日まで学校休みですので、明後日以降で考えています」

「それならちょっと保存方法を考えておかないとね。酢は分かるかな? 酢と水を混ぜた酢水につけておけば、ササは長持ちするぞ」

「生け花の様にですか?」

「んや、乾燥しないようにすることが大事だ。乾かないように、涼しい場所に置いて定期的に全体にかけてやるといい。新聞紙などでくるむのも手だ」

「なるほど、わかりました」

 こうして一同は、無事にササを手に入れて帰路に着くのであった。

 帰り道の雑談は行きと少し異なり、ジャンとソニアの調査隊論議となっていた。欲の深い二人、その一方でリリスはオリハルコンに続き、ブルーメタルやミスリルを探すと言い張るのである。

 ぶたの卵やへんこぶたの話は、どこかへ飛んでいってしまっているようだった。

 

 

 後は余談――

 

「さて、すっかり日も暮れたし、晩御飯も一緒してから帰ろう。どこがいい?」

 

 この日、ラムリーザの部屋のココちゃんは、16体に増えていた。
 
 
 
 
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