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うらにわにはにわにわとりがいる その四

 
 10月29日――

 

 六間目の授業終り、今日の最後は体育の授業だった。その授業内容は、体育祭に向けた行進などの練習で、それはつまらないものであった。逆に競技の練習は、それなりに楽しめるものだ。

 ラムリーザとソニアは今年もコンビを組んで参加することとなった。去年は二人三脚に参加したが、今年は大玉転がし。自分の身長以上もある大きな玉を二人で押して転がして競争するものだ。

 リリスなどは、ソニアのおっぱいは最終的にその大玉ぐらいの大きさになるなどとからかってくるが、もしそんなことになってしまうとしたらZカップでは全然足りない大きさだ。

 そのリリスは、ジャンと組んで二人三脚に参加するようで。後でジャンが言うには、ブルマニーソと密着できて至高などと相変わらずのエロトピアぶり。それを聞いたラムリーザはいつも通りだと安堵を覚える。

 とまぁ今のジャンとリリスは、ここまでの関係。ラムリーザとソニアは次の段階へと進んでいる。実は進んではいけないことになっているのだが、もう今更である。

 

 学校の裏山、カップルの聖地と裏で噂されている秘境。

 本日最後の授業も終わったので、ラムリーザとソニアの二人は教室へと戻らずに、なんとなくその秘境を目指していた。終りのホームルーム? 知らん。例えばレフトールなどは出てない方が多いぐらいだ。

 裏山の入り口から少し手前に見張りが二人。この人たちはいつ教室戻っているのかは謎だが、ニバスに手配された監視役だ。ちなみのこの裏山は、三年生のニバスという者が仕切っていた。独自のハーレムを形成している女好きの先輩だ。

 二人が裏山の入り口に着いたときは、他に人の気配はほとんど無かった。しかしこれから放課後となるので、徐々に増えてくることだろう。

 すでに顔パスみたいになっている二人は、見張りに咎められることも無くそのまま裏山に突入。お気に入りの川辺へと向かった。この川は、裏山の頂上付近にある水源から流れている川で、幅は一メートルほどで深さも数十センチといったところの小さなものだ。

 この場所でたまにクロトムガとチロジャルに出会う事があるが、今日はいない。普通にホームルームの時間だし、それが終われば文化祭の準備だ。

「不真面目やってるなー」

 ラムリーザは、川辺に腰を下ろしてぼやくようにつぶやいた。

「不真面目上等、サボリ楽しいなー」

 ソニアは気にしていないようだが、実際の所はホームルームが終わってからでもよかったかもしれない。わざわざ体操着のままで来る必要があっただろうか?

 ラムリーザはソニアが寄り添ってきたので、胸の先端を軽くつまんでみた。

「ふえぇ……」

 いつもの反応、そしていつもの中略――

 

 ………

 ……

 …

 

 お気に入りの場所、川のせせらぎの聞こえる安らかな場所。ラムリーザとソニアは、川辺の草むらに並んで横になり、夏が終り秋にさしかかろうとしている青空を見上げていた。

 そろそろ暑い季節は終わり、少し涼しくなってきた。川辺には赤とんぼが右往左往している。

「ラム~、おなかがすいた~」

 ソニアはお遊びの後は食料を求めてきた。性欲が満たされたら今度は食欲が――なんでもない。しかしラムリーザは、いつも食料を携帯しているわけではない。

「それじゃあもう一発やるか?」

 とは言ってみるものの、一発ぶちかました後ではその気にならないのも事実だ。

「お団子食べたい」

 ソニアの要求は大人しいものであった。チョコレートをねだられても、手に入らないものは無理なのだが、団子なら作ればいくらでもある。ただし、こんな裏山で作ることはできないというのだが。

「団子はお月様にお供えするものだよ」

 だからラムリーザは、無理だという事を隠して伝えた。

「あたしにもお供えしてよー」

「ソニア様に貢物をしたら、どんなご利益があるかな?」

「ラムが良いことしたって気分になれるよ」

「ではソニア様にはハッカ飴を贈呈」

「やだあんな歯磨き粉飴要らない!」

 例のアメの入った缶は、残りが少なくなってくるにつれてハッカの出る確率が高くなってきていた。しかしラムリーザは、ソニアが何度かハッカが出てきたら缶に戻しているのを確認済みだ。ソニアは文句を言っているが、その結果ハッカが多く出てくるようになるのは自明の理であった。

「ではそんな我侭なあなたには、団子は団子でも泥団子を贈呈」

「それおままごとじゃないのよ!」

「小さい頃よく出してきたよな」

「食べなかったくせに」

「ソニアは食べてたね」

「うるさーい」

「ふっ、相変わらず仲良さそうだな」

 唐突にガサリと音がしたと思ったら、二人の正面に流れる小川を挟んだ先にある茂みが揺れて、聞きなれた声と共に男女二人が姿を現した。

 クロトムガとチロジャルか?

「ウサリギ……」

 ラムリーザは、現れた男子生徒をじっと見つめた。彼はウサリギ・ファイヤンダ、レフトールの言い方を真似るとケルムの番犬だ。

 だが、この裏山という場所だけに置いては、ちょっとした交流があったりした。

 カップルの聖地と呼ばれるこの場所。そのお遊びだけを目的としている者も居る。ウサリギがまさにそれだったりして、彼もここを遊び場として最大限に利用していた。

 その流れでラムリーザとここで会い、少しずつ話すようになっていた。所謂中立地帯、これがこの聖なる山であった。どこが聖なるなのだと突っ込みが入るだろうが、カップルから見ればここは聖なる山なのだ。

 ウサリギから見れば、裏切り者のレフトールは粛清対象だが、別にラムリーザとまで張り合おうとは考えていない。もしもラムリーザがケルムと本気でやりあうのなら、ウサリギもケルムに加勢するところだが、今の所はそのような事態には発展していないのだ。だから今の地点では、ウサリギはレフトールと小競り合いをしているだけだ。精々学校をシメるのはどっちの勢力だ? というちっぽけな野望の元で。

「別にケルムさんと争うつもりはないからね」

 ラムリーザのその意見だけで、ウサリギとの間に妙な中立地点が成立する。しかしその意見も、最近では雲行きが怪しい。

「しかしそうも言ってられんぞ。ケルムはお前にたいそうご立腹だ」

「心当たりはあるけど、それは僕が悪いことじゃないよ」

「本当か? ケルムは元々お前と手を組もうと考えていた。しかし夏休みが終わってからしばらくしてから、急にお前のことを敵だと言い始めたぞ。何かやったのじゃないか?」

「そうだねぇ……」

 ラムリーザは口篭る。元々ケルムがラムリーザとソニアの間に割り込んでこようとしたのだ。それをラムリーザは、多少強引なやり方で跳ね返したに過ぎない。

「あいつラムにお見合い仕掛けてきたんだ」

 ソニアが代弁してそのことを語る。見合いから逢瀬へと、ケルムは多少強引なやり方で進めてきた。だからラムリーザも前述のとおり、強引に跳ね返したのだ。

「ああ、お前はそれを断わったわけだな」

「それで敵対化するのか……。付き合うか敵しかないなんて……」

 その後の言葉は、ラムリーザは声に出さずに続けた。めんどくさ、と。

「ケルムとやりあうのなら、俺は全力でケルムを保護する。たとえお前と一戦交えることになろうとな」

 小さな火種は徐々に大きなものとなろうとしているようだ。これを鎮火する方法は無い物だろうか? ラムリーザは少し考えるが、ソニアを捨ててケルムと付き合う以外思いつかなかったので、鎮火は諦めることにした。

「君に聞くのもアレだけど、ケルムさん、攻めてきたりするのか?」

「俺に直接攻めろという話はまだ来ていない。来たとしてもまずはレフトールを潰しておかなければならないからな。しかし、お前を潰すってつぶやいているのは聞いた」

「あーあ、めんどくさいなぁ。そもそもソニアって最初から決めているのに、そこに無理矢理入り込んできて勝手に怒っている方が無神経だよ」

 ラムリーザは大の字になって転がって吐き捨てるように言った。その上にソニアが心配そうな顔でのしかかってくる。

「あたし、邪魔だった?」

「なんでそうなる? そんなわけないだろ? 僕はソニア一筋、ソニアを幸せにしてあげるのが僕の使命だからね」

 ラムリーザの宣言を聞いて、ソニアは安心した表情を浮かべて抱きついてきた。

「そう言えば、ずっと気になっていることがある」

 少し間が開いた後、ウサリギの方からラムリーザに問いかけてきた。

「なんだろう?」

 ラムリーザは、抱きついてきているソニアの顔を避けてウサリギの方へ向けた。ウサリギは、1エルドの銅貨をもてあそんでいる。

「お前、これ曲げただろ?」

 その硬貨をラムリーザの前に差し出してきてそう言った。そういえばそんなこともあったっけ?

「ま、まあね」

「トリックか何かを使ったにしては地味すぎる」

 そう言ってウサリギは、銅貨をラムリーザに投げてよこす。そして「それを曲げてみろ」と言ってきた。

「お金を粗末にしたらダメだよ」

「気にせず曲げろや」

 ウサリギの口調が荒くなる。ラムリーザは仕方が無いので、銅貨を親指、人差し指、中指で挟んで持った。

「コイン壊すならあたしに頂戴」

 お金大好きソニアは、1エルドの銅貨でも欲しがる。ここで銅貨を壊されるのなら欲しがるのも当然の行為だ。

 数秒後、ラムリーザは銅貨をウサリギに投げて返す。それを受け取ったウサリギは、小さくうめいた。銅貨はぐにゃりと曲がっていたのだ。

「あーあー壊した。ラムは何でも壊す、コインにゴム鞠に空き缶」

「ついでにソニアのおっぱいも壊してみよう」

 おもむろにラムリーザはソニアの大きく膨らんだ胸を掴んできた。

「ふっ、ふえぇっ――!」

 そしていつも通りの反応を見せるソニア。場所が場所なので、ラムリーザも遠慮なく揉み拉く。ソニアはラムリーザの腕から逃げられず、逆に自分の胸をラムリーザに押し付けるように密着することでラムリーザの揉み揉み攻撃を防いだのだった。

「まさかマジだったとはな……」

 ウサリギは考え込む。しかし彼の相手はレフトール、ラムリーザの力をただちに恐れる必要はない。しかしそのレフトールに勝利するとラムリーザが出てくるか? そんなことを考えながら、ソニアと戯れるラムリーザを見つめる。

「なんかピーピングしてる人が居る~」

 ソニアが不満そうにつぶやいた。ウサリギにも相手は居たが、すでに終えた後でありラウンド2に入るにはまだ、といったところだった。

「お前はレフトールがやられたらどうするつもりだ?」

 ウサリギはラムリーザに問う。ケルムと違ってラムリーザは実際の戦闘能力を持っている。ケルムは弁力と権力だけだが、ラムリーザはそれに加えて個人の戦力というものを持っていた。つまりウサリギがレフトールに勝てたとしても、その後ろ盾であるラムリーザも戦力で勝たなければならない。そこが彼にとって不利な点であった。

「そうだねぇ……、レフトールは友達だから、友達がやられたら黙っていないかな」

「やはりそうなるか……」

「でも君にやられたのだったら、レフトールは僕に助けは求めないだろうね。彼には彼のプライドがある。さらに修行でもなんでもして、必ず君に再戦を挑むだろうね」

「それを返り討ちにしたらどうなる?」

「レフトールの方から僕に敵討ちを、と頼み込んできたら考えるよ。でもそうなったら彼の存在価値を問われることになるから、彼は絶対にやらないだろうね」

 主君を護る護衛が、逆に主君に護ってくれと泣きつく。それでは本末転倒ではないか。

 ウサリギは何も答えない。レフトールの蹴り技は厄介だが、まだ常識内での厄介さだ。しかしラムリーザの力はヤバいということを本能的に感じ取っていた。そして去年の今頃、レフトールが顔面と両手に大怪我を負っていたのを思い出したりした。ひょっとしてラムリーザにやられたのでは? などと思案をめぐらせるのだった。

「争い、やめたら?」

 ウサリギが何も言わないので、ラムリーザの方から語りかける。

「それはできない――」

 しかし彼は、争う事をやめないようだ。しかし――

「――だからこそ、この場所、裏山だけは中立地帯にしておこう。この場所でだけは、俺とお前は敵ではない」

「僕は別に君を敵だと考えたくないけどね」

「…………」

 裏庭には二羽鶏が居ると聞く。裏山に埴輪鶏が居るとも聞く。

 うらにわにはにわにわとりがいる――

 中立地帯のカップルの聖地、そこだけは争いの無い聖なる山なのだ。
 
 
 
 
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