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第四回フォレストピア首脳陣パーティ

 
 9月7日――

 

 先月はマトゥール島へキャンプで出かけていたので、二ヶ月ぶりの開催となったフォレストピア首脳陣パーティ。ラムリーザからの報告が無いだけで、他ではいつもどおりにやっているようだ。

 報告会半分、社交界半分のパーティ。民衆からの報告を一通り聞いて回ると、後は自由時間で好きなだけ楽しんでいってほしいというものだ。

 ラムリーザはふとメンバーを見回してみた。パーティに参加している仲間は、リゲルとジャン、ユグドラシルの男性陣に、ソニア、リリス、ユコ、ロザリーン、ソフィリータの女性陣だ。クラスメートと先輩と後輩といった組み合わせ。こうなると、いつもとほとんど変わらない。ジャンの計らいでリリスが参加できるようになり、いつものメンバーが揃ったわけだ。

 ちなみにユコは、父親がフォレストピア内の輸送関係をまとめる立場になったので参加している。この栄転が、ユコの転校詐欺を働く原因になったわけだか、まあよいだろう。

 リゲルとロザリーンはフォレストピアの住民ではないが、ラムリーザの参謀的立場として、ラムリーザに頼まれて参加していた。ユグドラシルは全く関係ないが、ユライカナンの文化収集目的で参加させてもらっている。

 ソニアは居る必要がないが、ラムリーザの恋人という立場で身内参加となっていた。リリスはジャンの恋人的立場? それはどうなのだろうか? とにかく身内特権が、ある程度炸裂しまくっている。

「ん、去年のパーティの時より、楽しそうにしているな」

「去年?」

 ラムリーザがソニアを見つめながらぼそりとつぶやいた言葉を、ジャンは聞き取ったようだ。

「去年はね、学校のあるポッターズ・ブラフ地方でパーティが毎月開催されていたんだ。社交界と称して母親から参加するよう促されていたけど、ほとんど知らない人で窮屈だった気がするよ」

「へー、そんなのがあったんだ」

「と言っても、今のメンバーから君とリリスとユコが居なかっただけだどね」

 リゲル、ユグドラシル、ロザリーンとは、去年からの付き合いだ。ソフィリータも去年はまだ帝都在住だった。

 去年のパーティではソニアはいつも一人だった気がするが、今はリリスやユコと食事を楽しんでいる。それに去年の開催場所は別の場所だったが、今年は自分の屋敷が舞台になっている。他の参加者も、去年までと違い身近な人たちで顔なじみばかりだ。

「で、ナリオブラザーズはどうだった?」

 ジャンは店の仕事があるので、先日のゲーム大会には参加していない。

「なかなかに酷いゲームだった。いや、ゲーム自体は面白かったけど、ソニアやリリスが絡むと、楽しいはずの出来事も戦争になってしまう。あれには参ったなぁ」

「そうなんだよなぁ。リリスは俺と居るよりソニアと居るほうが生き生きとしているから困る」

「それは大丈夫だと思うよ。ソニアもリリスと居るときと、二人きりで居るときとでほとんど別人だし」

「そっかぁ、それならまだ希望はあるか」

 ソニアを見ると、毎回のように両手に骨付き肉を掴んで、交互にかぶりついている。女の子らしくないと言えばそれまでだが、そんなところがソニアの魅力だったりする。しかし、一見まごうことなき美少女であるリリスも、ソニアに倣っているのだから不思議なものである。さすがに大人し目のユコは、果物をかじる程度に留まっているのだけどね。

「やっぱりリリスが居ないのは良くなかった。連れてきて良かったよ」

 ジャンは、ソニアとまるで食べ比べでもしているのかといった感じのリリスを見つめてそう言った。

「ジャンはリリスともう付き合っているのだよね?」

 ラムリーザは訪ねてみるが、ジャンは顔をしかめて首を横に振った。

「わからん、はぐらかされてばかりの気がする。でも拒絶はされていない。いまいちリリスの考えがつかめないんだよな」

「僕もまだまだソニアの考えについて理解の範囲を超える部分が出てくるけど、環境の変化を利用してごり押ししたようなものだよ」

「俺の店にあるホテルに住ませたところまではごり押ししたのだけどなぁ。でもまあソニアは単純だからわかりやすい。リリスは脈があるのか無いのかすら表に出さないのだよ」

 そこにリゲルとロザリーンが戻ってきた。農作物の収穫に関するレポートは、そういったものが得意とするロザリーンに一任してある。

「やっぱり農作物の収穫は、予想通り例年より少ないですね。と言っても、このフォレストピアでは初めてですが、これまでのポッターズ・ブラフ地方と比べてね」

「やはりね。でもそれを見越して、ユライカナンからいろいろと食文化を取り入れて広めてきたから、今の所問題は出ていないよ」

 普段は温暖な冬だったが、去年は妙な大寒波に襲われたことがあった。それによって、フォレストピアの農業は一時的に大打撃を受けたが、なんとか許容範囲内で収まったようである。

 収穫の話が終わった後は、新興住宅地の地名投票である。

 ラムリーザの屋敷のある山脈から少し下りたところ、フォレストピアの中心街から見たら少し高台になっている場所。町全体を少し遠くから見渡せる、絶好の地に作られた住宅街。その町名を決めるのだ。

 フォレストピアでは地名は全て住民で決めることにしていた。よほど変なのを付けられない限り、ラムリーザは介入するつもりはなかった。

 いつものように投票箱が用意され、名前を思いついた人が一人ずつ入れていく。この中から、住民投票で名前が決定するのだ。

「まぁでもこの町の住民のネーミングセンス、ちょっと変わっているからね」

 ラムリーザは、リゲルと並んで投票の様子を眺めていた。

「俺が思うに、半分ぐらいはユライカナン人の感性が入っていると思われるぞ」

 リゲルは腕組みをしたまま、冷静に判断する。そういえば、ユライカナンからやってきて店を開いている人も、それなりに居る。

 今回投票を仕切っている、格闘ジム管理人のゴジリが、投票箱から一枚ずつ用紙を取り出して述べ始めた。

「一つ目、59番街」

 それを聞いて、ラムリーザとリゲルは思わず首をかしげる。まだ5番街ぐらいまでしかできていないはずなのに、なぜいきなり59番街なのだ? と。

「やっぱりあの住民の感性おかしい」とラムリーザ。

「なんか知らんが、絶好調な気分なのだろう」とリゲル。

 発表はまだ続いている。

「二つ目、ブルー・サンシャイン」

 これは割と普通のネーミングだ。

「これで決まりかな?」とラムリーザ。

「まるで悪魔に取り憑かれたかのような凶暴パニックが発生しそうだな」と、物騒なことを言うリゲル。ブルー・サンシャインと、凶暴なパニックの関連性が、いまいち分からない。

 ラムリーザは、せっかく決めかけたのにリゲルに水を差されたような気分になった。

「三つ目、ブルー・ジェイ・ウェイ」

 どうも今回は、青をイメージしている住民が多いようだ。それでもこのネーミングが無難なことには変わりない。リゲルも今回は、何も言わない。

「四つ目、ニュー・サロレオーム」

 ラムリーザは、この名前に関しては一瞬何のことかわからなかった。しかしよくよく思い返してみると、サロレオームとはユライカナンの地方都市の中で、一番帝国寄り、東の果ての都市だった。ここで小規模ではあるが、ライブやツアーをやったこともある。

 しかし、こんな小さな一新興住宅地の地名につける名前だろうか?

「あれだな、祖国の地名をつけて、そこが自分の国の一部であるという地名にしようとしているのだ」

「野心的な人も居るんだね」

「お前もユライカナンに、ニューフォレストピアを作ってやれ」

「やだよ、めんどくさい」

 ラムリーザは、フォレストピアだけでも手一杯なのに、さらに新しい町を作るなんて考えられもしなかった。

「五つ目、ハニーパイ」

 なんだか聞き覚えがある。確か以前、湖の名前を決めるときに挙がったやつだ。どうしてもこの名前を地名として刻みたい住民が居るようだ。

「以上、投票開始だ!」

 ゴジリの宣言で、地名投票が始まった。今回の候補は、以上の五つだった。

「リゲルはどれがいいと思う?」

「ブルー・サンシャインだな」

「ちょっと待って、それ凶暴パニックとか言ってなかったっけ?」

「ふっふっふっ」

「怪しげな笑みを浮かべるなよ」

 ラムリーザ的には、ブルー・ジェイ・ウェイか、ハニーパイってところだなと思った。前者はなんとなく響きが美しく、後者は女の子に人気が出そうだ。ただし、青壁の町並みではない。

 投票の最中、今度はユグドラシルがラムリーザの所へやってきた。

「以前話していたプロレス同好会の話だけど、まだメンバーが集まらないみたいだね」

「じゃあ俺が入ろうか?」

 真っ先に名乗りあげたのは、一番プロレス熱に取り付かれているっぽいジャンだった。

「掛け持ちするのか?」

「いいじゃんか、レフトールとかも入れたら良いだろ? お前も入れよ」

「じゃあプロレス同好会は、そのまま軽音楽部がスライドすることになるよ」

「それでもいいよ」

 基本的に、一ヶ月の報告以外は普通の雑談、そして食事会で終わってしまうのがいつものことだった。新しく決まるといえば、地名ぐらいかもしれない。

 その時、ラムリーザに「ちょいとちょいと」と話しかけてくる者が居た。リョーメン屋のごんにゃ店主ヒミツだ。ラムリーザは、ジャンにちょっと失礼と言って離れると、ごなにゃ店主と二人きりでホールの隅へと移動した。

「模倣抵抗軍の件だが――」

 夏休み、南の島マトゥールでラムリーザが兄に言われた極秘計画。現在フォレストピアの住民で、ある程度影響力を持っていて、それなりに一番信用できる人物はごんにゃ店主だとラムリーザは考えていた。そこで、一番馴染みとなっている店主に兄から持ちかけられた話を持っていったのだが、その事で店主は少し真剣な顔で訪ねてくる。

「僕も必要なのかどうかいまいちわからないのだけど、上手く行きそうですか?」

「なかなか面白そうな話だけど、なにぶん突拍子も無さ過ぎる。人選も慎重にしなければならないみたいだから、なかなかメンバー集めも進まないよ。ゴジリにぐらいなら相談しても良さそうだけど、良いのかな?」

「今すぐとか、たぶん数ヵ月後に必要とかいうのでもないと思うから、じっくりと人選してくれたらいいですよ。兄は、将来に向けての布石だと言っていたけど、僕にはよく分からない。まぁ最初はゲーム感覚でやってみるのでもいいのじゃないかな?」

「うん、がんばってみよう。ところで領主さん」

 店主は、今度は真剣な表情から一転して、普段の愛想笑いを浮かべて話してきた。

「なんでしょうか?」

「サルフをご存知でしょうか?」

「サルフ?」

 ラムリーザは初めて聞く言葉だった。何だろうか? 人の名前か? それとも料理だろうか? あるいはゲームの名前だろうか?

「誰ですか?」

「人ではないぞ、ゲーム。そうだなぁ、球技の一つとでも言えるかな」

「のだまみたいなのですか?」

「棒で鞠を突くという点では、似ていると言えないことも無いが、割と別の球技だぞ」

 ごんにゃ店主の話では、のだまよりも一回りほど小さなボールを使い、クラブと呼ばれる棒のような物でボールを打って飛ばし、ゴール地点と定められた穴に入れると上がりとなるゲームのようだ。

「あ、それ見たことある。面白そうだけど帝国では流行ってないのだよね」

 反応を示したのはジャンだ。ユライカナンに何度か仕事で行っているので、その時にでも見たのだろう。

「ユライカナンで上手い人は誰になるのですか?」

 ラムリーザの問いに、店主は「ゴル」と短く答えた。そして、言葉を続ける。

「プロサルファー・ゴルだ。プロのサルファーとしては、彼の右に並ぶものは居ない」

「ゴルさんか、ごつそうな名前だね」

「そこでだ、おっちゃんの親戚が、サロレオームの外れでパターサルフの経営をやっているんだぞ。明日の休日、暇なら行ってみたらいいぞ」

「あ、いいですね。空いてる人誘って行ってみようか」

 こうして、とんとん拍子に明日はユライカナンへ行って、パターサルフという球技で遊ぶことになったのである。

 ちなみに新興住宅地の名前は、ブルー・ジェイ・ウェイに決まりました。青壁の町並みに、外装変更かな。
 
 
 
 
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