二人の時間
5月30日――
ストロベリー・フィールズ、それはフォレストピアの中央公園につけられた名前だ。
以前「のだま」で遊んだスポーツ広場や散歩道、他には子供の遊び場として木やロープで作られた遊具を置いている場所もある。
この日ラムリーザとソニアは、学校が終わった後にちょっと寄り道してこの中央公園に立ち寄っていた。
最初は散歩道をうろうろ。時々道端に生っている、この公園の名前の元ネタとなったイチゴの実を採っては食べている。特に栽培目的で育てているわけではないので、育った実は自由に食べてよいことになっていた。
しばらく公園内をうろうろした後、二人は遊具広場へたどり着いていた。二人とももう小さな子供じゃないのだから、この広場はどう思っているのか。
「そういえば校庭に遊具を作ってくださいとか要望出した娘が居たなぁ」
「あれ半分本気だよ。校庭に回転ジャングルジムとか、回転遊具、メリーゴーラウンドとか作ってくれたら面白いのに」
「回るものばかりだね」
遠心力でおっぱいが浮き上がって肩が楽になるのかな? などと妙なことを考えながら、ラムリーザはちょっと休憩しようと思って遊具広場へと足を踏み入れた。しかしフォレストピアの駅からずっと歩き詰めなので、足が疲れてきていた。
ラムリーザがソニアを連れて向かった遊具は、ピラミッドのように四角錐状に木材の柱が組まれている。その柱の間に、ハンモックのように数枚の幌が張られていて、その上に登って遊ぶものだ。幌は柱の幅に合わせて上の段に行くほど小さく狭くなっている。また一枚おきに中央部に大きな穴が開いていて、上下の段に移動できるようになっていた。
ラムリーザは、丁度中央辺りに位置する、寝転がるのに十分なスペースのある段に登ってもぐりこみ、ソニアも後についてもぐりこんできた。
寝転がるラムリーザの横で、ソニアは上の段の幌の中央に開いた穴から体を出して上を覗いていた。
ひんやりとした幌が、寝転がると気持ちがいい。
「ソニア、おいで」
ラムリーザは、ソニアを呼び寄せた。そのままぎゅっと抱きしめてみた。
離れた場所から見ると、幌自体が二人の体重で少しめり込んだ形になっていて、二人が何をしているかは傍まで近寄らないとわからないだろう。
そこでラムリーザは、ソニアのおでこにチュッと口づけをした。
「おでこなんてやだぁ、口にしてよ~」
ソニアが不満を言ったので、今度はそのうるさい口にラムリーザ自身の口で栓をした。
「んっ――」
そのままラムリーザは、ソニアの体をまさぐる。大きな胸に手を当てて、ゆっくりと揉んでみた。
「――んんーんっ!」
ソニアは悶える。巨大で感度のいい二つのお饅頭。ラムリーザは、その柔らかさを改めて堪能していたりするのだった。
「可愛いなぁ、ソニアは何でそんな可愛い顔しているんだい?」
「んんーんっ、もう、あ、ううんっ、やだぁっ」
ソニアはラムリーザの問いかけには答えずに、ただ悶えながら、ラムリーザの手をつかんで自分の胸から引き剥がした。
「何だよ、揉んだらダメ?」
「んーん」
ソニアは、ラムリーザの胸に顔をうずめながら頷いたのかどうかわからない返事をした。だからラムリーザは、別の要求を出してみた。
「それなら足触るよ」
そう言って、ソニアの健康的で肉付きの良い太ももへと手を伸ばした。
「足さわってもいいけど、ぴちぷにょはダメ!」
「それはできない相談だなぁ」
ラムリーザは要求には答えず、ソニアのミニスカートをめくりあげる。
「パッ、パンツ触っちゃダメ!」
ソニアは、ミニスカートをめくられたことに対する抵抗をした。ソニアにとっては、下着や靴下は触られたくないが、肌に触れることは問題ないということなのだろうか?
ラムリーザは、まずは靴下で覆われた太ももを揉む。
「んんーんっ」
ソニアはくすぐったいのか、身をよじってからさらにギュッとラムリーザにしがみついた。
それを受けてラムリーザは、今度は太ももの付け根、むき出しの部分をギュッと握ってみた。すべすべしていて柔らかくて温かくて触り心地も揉み応えも満点だ。
それから再び靴下で覆われた部分を揉み、続けてむき出しの部分を揉む。これが何度もラムリーザが望んでいるぴちぷにょだ。
相変わらず、ぴちっとした靴下の感触と、ぷにょっとした太ももの感触が、対比効果で強調されて揉み心地が最高だ。
その感触は、ラムリーザに新たな欲望を生み出した。
「んー、ソニアの足はおいしそうだなぁ。食べちゃいたいね」
ラムリーザはもぞもぞと幌の上で動いて、顔をソニアの足の方へと持っていった。
「ダッ、ダメっ、食べたらそれで終わりだよ、もう足を触れなくなっちゃうよ!」
ソニアの抵抗の言葉も、少し意図が外れている。しかし確かに食べてしまえば足が無くなって、以後触ることはできなくなってしまうのも事実だ。
「それならば――」
ラムリーザは、ペロリとソニアの太ももをなめてみた。なめるだけなら無くならない。
「ひんっ」
くすぐったいのか、ソニアの体がビクッと震える。そこにもう一度、舌を這わせてみた。
「ふえぇ……」
「可愛いなぁソニアは」
ラムリーザとソニアの二人は、しばらくの間ピラミッド状の遊具の中で、もぞもぞいちゃいちゃと遊んでいた。
………
……
…
ピラミッドから出たとき、空は茜色に染まっていた。そろそろ帰るとするか?
「次はこれに登ろうよ」
ソニアは、ロープをうまく組み合わせて作ったタワーに登りながらラムリーザの方を振り返って言った。
下から見上げる形になったラムリーザは、ソニアの無防備な下半身を眺める形になった。短いスカートからこぼれる水色のパンツが見放題だ。
「置いて行っちゃうぞ、はやくついて来てー」
一メートルほどロープのタワーを登ったソニアを見て、ラムリーザはあることを思い出してソニアの足をつかもうとした。その刹那、またぴちぷにょをやりたいという欲望が脳裏に浮かんだりもしたが、すぐにその思いは消し去って急いでソニアの足をガッとつかんだ。
「ストップ、それ以上登るなっ」
「なんでよー、離してよー」
「降りられなくなるからストップ。ってか、足元のロープは見えているのか?」
「あ――」
そう、ソニアの巨大なおっぱいは、それ自体が下方向への視界の邪魔となる。足元が見えないので、ロープの位置もほとんど把握できていないはずだ。
あまり高くは登っていなかったので、ソニアはその場所から飛び降りて事なきを得た。
「これがスペランカーだったら終わっていたね」
「あたし別に身長の半分の高さから飛び降りて死なないよ!」
そんなわけで、ロープのタワーを登るのはやめにしておいた。
この広場にある遊具はあと一つ。木でできた立体的なジャングルジムと迷路を組み合わせたようなものだ。
二人はその遊具の中までは入り込まずに、外側に突き出ている滑り台の場所に並んで寝転がった。子供用の遊具ということもあり、ソニアはともかくラムリーザは体が大きすぎて入っていくのは困難だったりするのだ。
何でもない遊具でも、ソニアと居れば楽しいものだ。ラムリーザはそう考えながら、徐々に沈んでいく夕日を眺めていた。
………
……
…
夕日が落ちて東の空が蒼く照らされた時、いい加減にそろそろ帰ろうか、と立ち上がったところでソニアはラムリーザにお願いした。
「そうだ、ねぇココちゃんカレー食べて帰ろうよ!」
「なんでまたカレー? 一昨日食べたばっかりじゃないか」
「カレーが食べたいの、ねぇ行こうよー」
本当にカレーが食べたいのか? ラムリーザはあえて尋ねてみた。
「正直な気持ちを言ったら連れていってあげる」
「ぬいぐ――クッションのココちゃんが欲しい」
ものすごい勢いで即答した。ラムリーザも分かっていたが、結局はそういうことである。
「……よし行こう」
とりあえずはソニアの正直な要求を聞けたので、その要望を聞き入れてココちゃんカレーへと向かっていった。
そういうわけで、ラムリーザの部屋に居るココちゃんの数は、ついに七体に到達したのであった。
夜、寝る前。
ソニアは部屋の中で七体のココちゃんと自分とで輪を作って座り込み、なにやら話し込んでいた。
「ココちゃんはクッションなのにクッションらしくしないから、もうクッションって認めてあげない。でもぬいぐるみにしては、はげぼうず過ぎるからぬいぐるみとも認められない。クッションでもない、ぬいぐるみでもない、ココちゃんは一体何?」
そこでソニアは一体のココちゃんを抱きかかえて、さらに言葉を続けた。
「クッションらしくできんの? クッションらしくしないのならもうクッションじゃなくてクッションもどきって呼ぶよ? ぬいぐるみでもクッションでもないならクッションもどき! クッションもどきは嫌?」
ソニアはココちゃんを動かして、うんうんと頷かせる。
「じゃあはげぼうず」
ソニアは、ココちゃんを今度は嫌々といった感じに動かした。
「じゃあクッションだ。クッションらしく下に敷かれなくちゃダメだね」
さらに嫌々とココちゃんを左右に動かすソニア。
「クッション違うん? じゃあぬいぐるみ?」
今度は左右ではなく、縦にうんうんと頷かせる。
「そんなはげぼうずなぬいぐるみは無い。バタバタしてもいかん」
そう言って、ソニアは抱いていたココちゃんを手放して、再びソニアと七体のココちゃんとで輪になる。ココちゃんがバタバタしていたのはソニア自身の動かし方によってなのだが、そこは突っ込まない。
「ココちゃんは、下に敷かれるクッションか、はげぼうずなぬいぐるみのどっちかにしかなれないの。クッションもはげぼうずも嫌なのだったら、クッションもどきとしか呼べないの」
「何をやっているんだ?」
いい加減心配になってきて、ラムリーザは口を挟んでみた。
傍から見たら、ソニアはぬいぐるみの群れ相手に説教を垂れている姿にしか見えない。それも、クッションだのぬいぐるみだの、あげくの果てにはクッションもどきという造語まで飛び交っている。
「ココちゃんがクッションなのにクッションらしくしないから、クッションらしくするよう言い聞かせているの」
ソニアは、七体のココちゃんを一体ずつ頭をぽんぽん叩きながら答えた。
「クッションらしくしているじゃん」
そう言ってラムリーザは、輪の中から一体のココちゃんを拾い上げると、ベッドの上へと持って行き自分もベッドに上がっていった。むろんラムリーザには、クッションらしさというものは分かっていない。それでも一応ココちゃんを庇ってやっただけだ。
「あっ、クッションなのにベッドの上に行った!」
何だか以前にも聞いたことのあるような、ソニアの非難である。ラムリーザはソニアの訴えを無視して言った。
「そろそろ寝る時間だぞ。まだ遊び足りないなら、自分の部屋に帰ってから遊ぼう」
そう言われると、ソニアもベッドにもぐりこんでくるしかない。
「クッションなのに、クッションなのに……」
ベッドに横になった二人の上にのっかっているココちゃんを見つめながら、ぶつぶつとつぶやいているソニアの額に口づけすると、ラムリーザは部屋の明かりを消して眠りにつくのだった。
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