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ナイトフィーバータイム

 

「やーっ!」

 ビュッ キィーン ぶん カンッ

「あっ!」

 リースの剣が中を舞う。すばやい動きでリョウはリースののどもとに自分の剣をつきつけた。さすがコーネリア最強と言われるリョウだ。リースも腕を上げているものの、リョウには遠く及ばない。

「まったく、リョウはつよすぎるよ」

「いえ、最後は本気を出しましたが、ボスももう少し筋力がつくと、十分戦えるよ、絶対。十分技術もあるし。なっ、ヤイバ」

「うん」

 先日、ガロンによってフィンが落ちたこともあり、コーネリアもいつ戦争になってもおかしくない状況である。そのため戦いの練習にも最近は力が入っているのだ。リースは剣の腕は上達している。魔法はと言えば、やはり無理だった。人間で魔法を使えるのはまれである。

「そういえばリョウ、今日から休暇をもらったんじゃないのか?」

「ああ、そうだな。少しミオのことが心配になってな。無理を言って取らせてもらった」

「でも最後の休暇かもしれなぞ。もう少ししたらガロンが攻めてくるかもしれないからな」

「今日はありがとう、リョウ」

 リョウと別れて部屋に帰っていたリースとヤイバに、一人の兵士が近づいてきた。

「ヤイバ隊長、国王がお呼びです」

「分かった、リース様を部屋にお送りしてから行くよ」

 

「大変だ!」

 王の間に大声が響き渡った。大変なのはおまえの顔じゃ。

「どうした?」

 ずうずうしいぐらいに駆け込んできた変な顔の兵士を、うっとうしいと思いながらも国王は答えた。

「海賊どもが港に上陸し、占拠いたしました」

 はあ……この変な兵士、海賊に敬語使いよる。というのはどうでもいいが。

「海賊が上陸するとは……。ちっ、兵を出せ! ……もうさがってもよいぞ、不気味な顔の男よ」

「なっ、このやろ~黙って聞いていたらいい気になりやがって!」

 ガコッ

 ハイキックが変な顔の後頭部を捕らえた。国王に向かって何を言うのだ。

「何の御用でしょうか」

「ヤイバか。たいした用ではないのだが、なんだかいやな予感がする」

「国王陛下……ガロンには飛空挺もあり、いつ攻めてくるかはわかりません。しかし、先日のフィンとの戦いで少なからず損害は出ているはずです。ガロンが立て直すまでには、こちらも万全な戦闘体制を整えることができましょう。そんなに不安にならないでください」

「心強いことだな。しかしなぜだか知らないがいやな予感がするのだ。北から……」

「北、ですか?」

 おかしなことを言うもんだ。北は海しかない。

 

 ――――――

 

「何をしているんだソニア?」

 休日の夕方、そろそろライブをするために、フォレストピア・ナイトフィーバーに出掛ける時間だ。

 ラムリーザは、珍しくゲームをやっていないソニアを見て尋ねてみた。ソニアは、昼過ぎから部屋にあるテーブルに腰掛けて、何やら物書きをしていた。

「ん、物語を書いてるの」

「ほう、ソニアが物語作成をね。いったいどういった風の吹き回しなのやら」

「えっとね、『物語を作ろう』ってサイトがあってね、そこに物語を投稿したら、書籍化されてアニメ化されてうはうはなんだって」

「何がうはうはなのかがよく解らないが、ソニアの作った物語なら読んでみたいな」

「ん、まだ書き始めたばかりだけど、こんなところ」

 そこでラムリーザは、ソニアの書いた物語とやらを読んでみた。

 物語は剣技の練習から始まり、国王との謁見の間での会話では、国に海賊が攻め込んできたという展開になっている。

 まだ序盤も序盤、主人公はこれから海賊退治に向かっていって、スリリングな展開になるのだろう、と予測することはできた。

「主人公は、リョウっていう戦士かな?」

「んーん、訓練を受けているリース王子」

「王子だったのか。それで、大変な顔って何?」

「あ、そいつは荒汚蛮巧って奴だから。出てきたら汚れるの」

「それはまた凄い名前だな……。ま、それはそうとして、そろそろ出掛けるよ、ライブの時間だ」

 出ると汚れるという意味がよくわからなかったが、それ以上の追求は一旦止めておいて、二人はフォレストピア・ナイトフィーバーへと出掛けていった。

 

 ジャンの経営するシャングリラ・ナイトフィーバー二号店、通称フォレストピア・ナイトフィーバーは、音楽を聞きながら食事をしたりするクラブハウスであった。

 帝都では一流のクラブハウスだが、フォレストピアで一流になるかどうかは、これからの働きで決まってくる。ただ、現在そういったクラブハウスがフォレストピアにはここ一つしか無いところが強みだった。独占の怖さ、ジャンはそこを上手く利用していた。

 現在生演奏をしているのはラムリーザ達が作ったバンドグループのラムリーズだけ。一つだけでは時間も少ないし、週に二回だけ。それ以外の時は、有線放送の音楽を流しているだけだった。

 だが、今日からラムリーズの負担は減ると同時に、生演奏のバリエーションは増える。

 レグルスをリーダーとするバンドグループ、ローリング・スターズが参入してきたのだ。これは、リゲルの中学時代からの友人で、去年に私立ファルクリース学園の文化祭でラムリーザ達と会っていたりするグループだ。ローリング・スターズは、ラムリーズほどは演奏は上手ではないが、それを補って余りある勢いのあるグループだった。

「今日から演奏のローテーションに加わってもらった、リゲルからの紹介があったローリング・スターズの皆さんだ」

「あっ、下手な――むーっむーっむーっ」

 余計な事をソニアが言いそうになったので、ラムリーザは慌てて口を塞いで代わりに挨拶をした。

「去年の文化祭ぶりだね、久しぶりだなぁ」

「ああ、あの時はピンチヒッター助かったよ」

 リゲルは何度か会っていたようだが、ラムリーザや他のメンバーにとっては久しぶりの顔合わせとなった。

「むー、きーらきーらは歌わせないぞ」

 ソニア一人だけ、お気に入りの歌を取られないように予防線を張っていたりした。

 

 18時開始で22時終わり、それぞれの持ち時間は一時間事に交代して二度行なうというローテーションでやっていくことにした。後は、平日の受け持ち日付を別にして持たせるとか、そういった具合だ。

「この辺りはやっぱり田舎だな、バンドグループがあまり無いよ。一曲や二曲をゲリラライブできるだけのグループは使えないし、やっぱり一度に一時間は演奏できないとね。その辺り、帝都ではいろいろたくさんあったけど、この地方だとなぁ」

 ジャンは、待ち時間にのんびりと待機しているラムリーザにぼやいた。帝都と違って、西の果てポッターズ・ブラフ地方は、のんびりしている人も多いしそもそも人口の絶対数が少ないから仕方が無い。

「それじゃあ、ラムリーズとJ&Rで掛け持ちして、バンドグループが増えたように見せかける?」

「運営とライブの掛け持ちかぁ。ソニアとソフィリータはどうするのかな?」

「あの二人は、体力だけは無駄に高いから大丈夫だと思うよ」

 二人が聞いたら怒り出しそうなことを、ラムリーザはさらっと言ってのけた。だがしかし、嘘ではない。

「帝都の一号店は、どうやってグループを集めたのだ?」

 今度はリゲルがジャンに尋ねる。

「一号店は知名度や金が豊富に有るから、好きなだけプロと専属契約を結べたんだ。でもここはまだそこまで資金に余裕はないんだよね。でもまあ君達のような学生バンドだと、制限はつくものの安く済むから助かる。ラムリーズは、コストパフォーマンス最高だよ」

「田舎の新開地に進出するのは、時期尚早なのではなかったかな?」

 リゲルの指摘に、ジャンは首を横に振って答えた。

「一番に独占させてもらっているところが将来生きてくるんだ。それになぁ……」

 ジャンはラムリーザの方をじっと見つめながら言葉を切った。

「それに何だ?」

 見つめられてラムリーザは問いかける。

「ラムリーザともっと一緒に気楽に遊びたかったからな。去年一年、離れ離れになってそう思ったんだ」

「僕もだよ」

 ラムリーザは、ジャンにそう言われて嬉しかった。

「ふっ、腐った奴らの標的にされそうな二人だな」

「どういう意味だ?」

「そういう意味だ」

 ラムリーザとジャンの仲を、リゲルは茶化す。

「まぁとにかく、一番に独占を考えすぎて、バンドを集めるのを忘れていた。そこが失敗だったと思ってる」

 ジャンは、二号店の話ができてからの半年を振り返って、そう考察していた。まぁそれでも、こういった店はまだ一軒しかないし、ジャンの要望でラムリーザにそういった店の乱立は制限をかけられる。ゆっくりと店を育てていけばいいだろう。

 ラムリーズのメンバーは膨れ上がったが、元のメンバー構成に戻して、ミーシャとソフィリータのS&Mを使う手もあるだろう。

「ミーシャか。それよりもいい手がある」

 リゲルは、ジャンに提案をしてきた。彼の提案は、弱点を知った上で勧めてくる場合があるから、そこは気をつけなければならない。

「ユライカナンとの交流も兼ねて、ユライカナンのバンドグループを招いてみるのはどうだ?」

「それはいいね」

 ラムリーザもリゲルの案に賛同する。

「そうだな、こういう時に言葉の壁が無いのにつくづく感謝するよ」

「何だそれは?」

「どこぞの世界では、巨大な塔を建設して天に住む神の世界まで支配してやろうと考えた王がいてな、その事が神の怒りに触れて言葉をバラバラにされた、という物語があるんだ」

「この世界にはそんな塔は建たなかったから、言葉の壁が無いと言うわけだね」

「そういうこと」

 リゲルやジャンの言うとおり、エルドラード帝国とユライカナンの間に言葉の壁は無かった。その二国間だけでなく、他の国もそうである。違うものがあるとすれば、それは竜語だったりする後から作った言語だ。この世界では、基本的に全ての人間が同じ言葉を使っているのだ。

「ユライカナンと言えば、ラムリーズとか国外デビューしてみないか?」

 唐突にジャンが提案してくる。しかしラムリーザは冷静だ。

「国内でもデビューしていないのに、いきなり国外デビューっておかしくない?」

「まあいいんじゃないの? ユライカナンではレコードが主流だから、今度レコードを作ってみようか。ユライカナンのバンドグループを探すついでに宣伝してあげてもいいぞ?」

「いや、ユコが作ってくれる楽譜は、ゲームとかの音楽ばかりなんだけど、それで出して大丈夫なのか?」

「使用料を払えばいいんじゃないかな?」

 冷静に突っ込むラムリーザとは逆に、ジャンは割と暢気である。しかしレコードを出すと言っても、国内よりも先に国外に出すのも妙な話である。ラムリーザは、この場ではたんなる夢物語だとだけ思っていた。

「あ、そろそろライブ交代する時間だね、行ってくる」

「ん、よろしく頼む」

 そう言って、ラムリーザはジャンとの雑談を終わらせ、メンバーを率いて舞台へと上がっていった。

 後半の一曲目は、新人ミーシャの歌から始まった。

 

 あたしのくるくる回る指先は、あたしが見たいと思う気持ちでいっぱいなの~

 そしてあなたは、ぽわぽわでは会えない午後に浮かんでいるんだよね~

 いつも一番愛する人の近くに居たいな~

 あたしはあなただけを見ているのよ~

 それだけで幸せ~

 

 ミーシャは踊りながら楽しそうに歌っている。甘ったるい声で観客を魅了しながら。

 
 
 
 
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