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南の島キャンプ始まる その一 ~グンバゲンベリイ~

 

 朝食後、ラムリーザはソニアにゲームの対戦を申し込まれた。なにやらグンバゲンベリイというゲームで、ラムリーザに主人公の小型飛空挺を操作させて、ソニアは敵をやるらしい。

 敵をやるとは珍しいな? とラムリーザは思ったが、どうせゲームでは悪知恵が働くソニアだ。敵側でプレイすることに何か楽しみを見つけたのだろう。

 たまには付き合ってやるか、とラムリーザは思うのだが、いつも見ているだけでプレイしていないのでうまく操作できるはずがない。

「え~と、島の中央部にある工場に爆弾を落として壊すのが目的だったっけ?」

「そうよ、早く来て」

 ターゲットに早く来てというのも変わった話だが、ラムリーザはクリア目指して工場へ飛空挺を急行させた。そこに敵のミサイル塔から誘導ミサイルが連発されて、飛空挺は撃沈してしまった。

「なんだよこれは」

「やった、ラムに勝った」

「そうか、そういうことか」

 ラムリーザは、二機目を飛び立たせて再び工場に向かう。しかし今度は、ミサイル塔を最初に壊して、ソニアから攻撃を受けないようにしてやった。だがしかし――

「はそどん! はそどん! はそどん!」

「は?」

 突然ソニアは、コントローラーについているマイクに向かって叫びだした。

 ラムリーザは、どうせまたソニアの奇行が始まったとしか認識せずに、周囲の安全を確保した跡で工場に爆弾を投下し始めた。ソニアはその間にも、マイクに向かって謎の呪文を叫びまくっている。

 するとその時、画面に5機ぐらいの戦闘機が現れ、一斉にラムリーザの操作する飛空挺に襲い掛かってきたのだ。

「な、なんだこれは?!」

「来たーっ、やっつけちゃえーっ」

「お前が呼んだのか?!」

 どうやらソニアの叫んでいた謎の呪文は、敵戦闘機を呼ぶものだったらしい。

 ラムリーザの操作する飛空挺は敵戦闘機の群れに翻弄され、そのまま撃墜されてしまったのであった。

 ラムリーザも、ここでもう諦めることにした。
 

 
「一人で遊んでいなさい、僕はマトゥール島にキャンプに行くから留守番よろしくね」

「あっ!」

 ソニアは慌ててゲーム機の電源を落とし、部屋の隅においてあったキャンプ用に昨日準備した鞄を持ってラムリーザの傍へ駆けつけてきた。

「ゲームはね、一日の生活のウォーミングアップなの。今日も元気にはそどん!」

「まったくお前は……」

 なんだか以前もあったような光景だが、まあいいだろう。

 

 ソニアが部屋から飛び出ようとしたところで、母親のナンシーとぶつかりそうになってしまった。

「わったっ、何でお母さんが居るのよ」

「それはこちらの台詞です。何故あなたがラムリーザ様の部屋から出てくるのですか?」

「ラムの部屋でゲームしてただけ、別に泊まっていない」

 余計な一言を追加して、わざわざ疑惑を招くソニアであった。

 マトゥール島でのキャンプは、学校では部活動恒例の合宿としい名目で皆を集めたが、そこへは元々家族で泊りがけで過ごす別荘にもなっていた。たまたま一家揃って別荘暮らしをすることになっていたので、ラムリーザはついでに合宿にしちゃえと話を持ちかけただけだった。

 ラムリーザとソニアの過ごすフォレスター家からは、ラムリーザの母のソフィア、妹のソフィリータ。そしてソニアの両親である執事とメイドも同行し、さらに帝都の城から休暇を貰い、ラムリーザの父であるラムニアスと、兄のラムリアースも帰省していた。帰省先が帝都からフォレストピアに変わっていたが、それは特に問題ない。

 後は、護衛役としてレイジィその他護衛団、フォレスター家専属の医師や料理人等も同行することになっていた。

 そして屋敷には、留守を預かる数人の使用人が残ることになった。

 このように、別荘のある南の島マトゥールには、数年に一度家族総出で休暇に向かうことが恒例となっていた。

 

 今回は、フォレストピアの駅前に集合することになっている。

 一家総出で駅への道中、大所帯となっていてソニアははしゃいでいる。

「隊列を決めて進もうよ」

「は?」

「あたしファイターだから先頭、ラムはソーサラーだから最後尾。ソフィちゃんは武闘家だから二番目、お父さんとお母さんは護衛だから隊列の横から保護。盾艦、敵が襲ってきたら切り離して時間稼ぎするの」

 ソニアは、自分の両親を囮にして逃げるつもりらしい。

「俺は何かな?」

 ソニアの話に乗ってきたのは、帰省してきて久々に会ったラムリーザの兄ラムリアースであった。

「ラム兄は勇者だから三番目、このパーティには武闘家がいるからね」

「俺は勇者だったのか。で、なんでラムリーザはソーサラーなのだ?」

「テーブルトークゲームでそう決まったあたしはファイター!」

「ほー、なんか面白そうなゲームやってるな」

「生まれが蛮族のファイター」

 ラムリーザはぼそりとつぶやくが、最後尾に居た為にソニアには聞こえなかったようだ。

「あ、ラム兄の奥さんだ、ちっぱい」

「こらっ! ちっぱいじゃない、ラキア――えーと、ラキア姉さんと呼べ」

「ちっぱいのラキア姉さん」

「ちっぱいは不要だ! ところでラムリーザ――」

 ラムリアースはソニアとの不毛な会話を終わらせ、最後尾のラムリーザを振り返って話しかけてきた。最後尾と言っても、隊列では四番目だからラムリアースのすぐ後ろだったりする。

「去年の夏から一年経つけど、ソニアとは進展したか?」

「進展も何も、後はゴールイン目指してまっしぐらだよ」

 ラムリーザの言うゴールインとは結婚のことで、時期が来れば行われることは確定していると考えていた。にもかかわらず、ソニアの方が一人でリリス達に寝取られる、などと騒いでいるだけなのだが。

「今年から家族同居になって、落ち着かないことを落ち着いてできなくなっただろう?」

「そんなこともあろうかと、部屋に鍵をつけておいたよ」

「おー、考えたな」

 しかしラムリーザは、ソフィア達は全てを知ってて泳がせているような気がしてならないのであった。

 

 一家が駅に到着すると、キャンプに参加する部活動のメンバーは既に集まっていた。

「僕達が一番最後だったみたい。ソニアがギリギリまでゲームしているから」

「ほー、これがお前の仲間達か。何人か去年見たような顔もあるし、新顔もあるな」

 ラムリアースは、メンバーを一人一人見ながらそう言った。

 一方集まっていたメンバーは、後から来たラムリーザ一家を見てこう話している人も居た。

「待てよ、あの人がひょっとして……」

 レフトールは、少し落ち着かない表情でユコに尋ねた。

「ええ、ラムリーザ様の兄のラムリアースさんですわ」

 ユコはそう答える。ラムリーザは様付けなのに、兄はさん付けになっている。そこにユコの中での格があるようだ。

「やっべ、俺の事怒っている人ってあの人じゃんか、まずくね? 確かガッコに圧力かけて、俺をヤバい目に合わせようとしたのもあの人だって噂」

 レフトールは一歩後ずさりしながらつぶやく。そこに丁度レフトールの後ろに居たリゲルは、忠告めいたことを言ってきた。

「まぁ自業自得だが、先に話して謝っておくか、黙って逃げ通すかどっちかだな。どうせあの妹、ソフィリータだったかな、から話は行っていると思うからすぐばれると思うがな」

「う~む……」

 レフトールはしかめっ面でしばらく腕組みして考え込んでいたが、すぐに真剣な顔に戻ってラムリアースの方へと向かっていった。

「おっ、行った」

 リゲルはにやりと笑みを浮かべた。

「あーあ、レフトールさんはここでリタイアですの」

 ユコは、そんなことを言っている。

 そしてレフトールは、ラムリアースの前に立つと、はっきりとした口調で語り始めた。

「ラムリーザのお兄さん?」

「ん? ああそうだが?」

「俺がレフトールです。話は聞いていると思うけど、ラムさんに対してはすみませんでしたーっ!」

 レフトールはラムリアースの前で頭を下げて、思い切って謝罪をした。

 ラムリアースは、一瞬何事か? と言ったような表情を見せたが、すぐに思い出したようだ。

「ほぅ、君が例の悪党か。なるほど、悪そうな奴に見える」

「こいつ、ポッターズ・ブラフの悪の双璧の片割れだよ」

 そこにソニアが、どうでも良い情報を流し込む。

「双璧? もう一人居るのか? まあいい、君の場合はラムリーザが返り討ちにしたみたいだし、今では仲間扱いをしているみたいだから水に流してやるよ」

 それを聞いて、レフトールの表情から緊張が解けた。そしてすかさず、調子の良い事を言ってのける。

「そうっスよ、今の俺はラムさんの騎士なんスよ、お兄さん」

「お前を弟に持った覚えが無い、調子の良い奴め。ところでさ、なんでラムリーザ襲ったん?」

「え?」

「ラムリーザが君の機嫌を損ねるようなことはしないと思うけど、何で狙ってきたん?」

「おっぱいちゃんを奪い取ろうと思って――というのは冗談で、頼まれたんだよ……」

「誰に?」

「すまねぇ、今は言ったらならないことになってるんだ。いずれ話せるときが来たら洗いざらいぶちまけてやんよ」

「そっか、まあいいか。しかしラムリーザに敵が居るってことだよなそれって、気になるな……」

 ラムリアースにじっと見据えられ、レフトールは決まりが悪そうに視線をそらしかけたが、すぐに戻すと豪快に言ってのけた。

「大丈夫でさゃ、ウサリギがラムさんに何かやろうとしてきたらぶっ殺してやりまさぁ!」

「ウサリギ? ああ悪の双璧の片割れがそいつなのね」

「そういうことっス。それではアッシはここでしつれいしやす、バイナラ、バイナラ~」

 用件を済ませたレフトールは、独特な言い回しを残してさっさとその場を逃げ出した。やはり今でも決まりが悪いようだ。

 

 フォレストピアの駅で電車を待ちながら、ラムリーザは集まったメンバーを確認してみた。だがやはりジャンは居ない。どうやら店を空けることはできなかったようだ。

 先ほどラムリアースに謝罪したレフトールは、子分のマックスウェルと二人でやってきているようだ。ユグドラシルとロザリーンの兄妹も居るし、リゲル、リリス、ユコといったいつものメンバーも居る。駅の売店では、ソフィリータと一緒にミーシャがお菓子の買い物をしていたりしている。

 そこにラムリーザとソニアが加わり、後はラムリーザの家族、これが今回のメンバーだ。

「しかしソニア、一年ぶりに見るけどまたおっぱい膨らんだか?」

 ラムリアースは、ソニアの胸をみてそう問うてみる。

「ふっ、膨らんでないっ!」

 顔を真っ赤にして反論するソニアだが、これをリリスが見逃すはずが無かった。

「Lカップの103cm、くすっ」

「うへ、乳怪獣だな全く」

 ラムリアースによって、新たな単語が生まれたようだ。これからしばらく、ソニアは乳怪獣と呼ばれることになるだろう。

「ラムリーザのお兄さん、ちょっといいかしら?」

 リリスはラムリアースに接近する。

「なんだい?」

「風船おっぱいお化けって知って――あうっ!」

 横からものすごい勢いでソニアのタックルを食らい、駅のホームで転倒してしまうリリスであった。

「ところでラムリーザ、お前と仲が良かったえっと、ジャンだっけ? あいつは来ていないのな。確か今年からここで店を出すとか言ってなかったっけ?」

「うん、二号店ができたよ。でもやっぱり店長だから、店を離れられないみたい」

「そっか、それじゃあ行こうか」

 そろそろ電車が入ってくる頃だ。今回は、電車に乗ってまずは港町へ向かうことになっていた。

 するとそこに――

「お~い待ってくれ、俺も行けるようになったぞ~」
 
 
 
 
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