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新開地に行ってみよう その1 ~授業中と休み時間~

 

 とある授業中、教師は黒板に問題を書いて生徒に前に立って解かせようとしていた。

 運の悪い生徒はこういうときに当てられるので、クラス内はシンと静まり返っていた。

 机に手を置いて上にあごを乗せて、興味なさそうにしていたリリスが当てられる。こういう時は、目立っている者が不利であった。

 リリスは落ち着いた感じで教壇に向かっていく。その歩く様は優雅で、まるでモデルのように美しい。

 左手にチョークを取り、腰に右手を当てて問題を眺めているが、それ以上動く気配はない。

 小さくため息を吐いたリリスは、ちらっと席の方を振り返ったと思うと、何か恐ろしい物でも見たかのように目を見開き体を硬直させる。クラスメイトの視線は、教卓に居るリリスに集中されていた。見た目は妖艶な美女のリリス、いろいろな意味で注目を浴びているのだろう。

 リリスは再び黒板のほうを向きチョークを握り締めるが、どうがんばっても問題は解けそうになかった。というより、先ほどと違い顔色が悪い。

「なんだリリス、分からないのか?」

 固まったままのリリスに、教師は声をかける。それに対して、リリスは黙ったまま小さくうなずいただけだった。

「もういい、席に戻りなさい。じゃあ次はその後ろの、ソニア」

「はいっ」

 教師に呼ばれたソニアは元気よく立ち上がり、額に脂汗をかき具合の悪そうなリリスとすれ違って教壇に向かっていく。そして教壇に上がろうとして、躓いて派手に転び、その背中にクラスメイトの笑い声が重なった。ソニアが転んだ付近では、パンツ丸見えのラッキーショット!

 教師の咳払いでクラスは静まり返り、ソニアは慌てて立ち上がり問題に取り掛かった。彼女は大きな胸の下で腕を組み、チョークも取らずに真剣な表情で黒板の文字をじっと見据える。

 しばらく続く沈黙……。

 そして唐突に、ソニアは教師の方を見て、てへっと笑う。

「ダメ、やっぱりわかんない」

 教師はため息を吐き、ソニアを席に戻るように言って、次は後ろのロザリーンを指名した。

 ソニアは、ロザリーンとすれ違いざまにハイタッチをしようと手を上げたが、ロザリーンはスルーして通り過ぎていった。剥れるソニアだったが、ため息を吐くラムリーザと、リゲルの冷たい視線を見て、すごすごと自分の席に着いた。

 一方教壇に立ったロザリーンは、人差し指でメガネをクイッと上げると、問題を一気に解き上げたのである。

 

 

 休み時間、特別変わった事も無く淡々と時間が過ぎて行く。

 教室の机は横長になっていて、二人で一つの机を使うという形になっている。そして椅子は後ろの机と一体化していて、横に五人座れるように椅子が五つ付いている。

 普段授業中は、それぞれ端の椅子に座っているのだが、休み時間になるたびにソニアはラムリーザに引っ付いてくるのだった。そのことによって空いた席に後ろからロザリーンが移動してきて、その状態で前の席に居るリリス、ユコの合わせて四人が雑談する。

 ラムリーザはソニアに背中を預けて窓の外をぼーっと見ていて、リゲルは黙って雑誌を読みふけている。

 それが最近ではもう珍しくない、毎日の光景になっていた。

 

 今日は、普段はあまり話しかけてこないリゲルが、珍しくラムリーザに話しかけてきた。ラムリーザは身体をひねり、後ろの机に肘をつく。

「シロヴィーリとの貿易に向けた拠点になる新開地と、この町との間の鉄道が開通したぞ」

「へー、早いね」

「これから一年程かけて、そこからシロヴィーリまで路線を敷いていくのだがな」

 リゲルの家、シュバルツシルト家は鉄道事業をやっていて、主にこの地方の物流、輸送などを管理している。それで、シュバルツシルト鉄道とも呼ばれている。

 それで、今年から始まった隣国シロヴィーリとの貿易をするための路線を作っているところだ。

 その貿易拠点となる地方の領主になる予定のラムリーザとは、切っても切れない関係だったりするのだ。

「そこでだ。明日は空いているか?」

 ラムリーザはチラッとソニアの方を見て、少し考て答えた。

「確か明日は今の所予定はないな」

「それならちょうどいい、新開地に行ってみないか?」

「鉄道の開通記念だね」

「そういうことだ」

 そう言って、リゲルはニヤリと笑う。

 ラムリーザは、そこを見に行くのも悪くないと考えた。

 それに、その地には来年から住む予定の新居が建設中とも聞いているのだ。それを見に行くのもいいだろう。

 そこでラムリーザは再びソニアの方をチラッと見て、遠慮しがちに言った。

「なあリゲル、明日のその件だが、ソニアも連れて行っていいか? ああいや、リゲルが二人きりが良いと言うのなら連れて行かないが」

「男同士で二人きりになりたいとか変なこと言わすなよ。連れて行きたかったら連れて来たらいい」

「悪いな」

 そこでラムリーザはクルリと身体を入れ替えてソニアの方を向いた。

 ソニアはリリス達と、ゲーム雑誌を囲んであれやこれや言い合っている。次にやるゲームでも決めようとしているのかもしれない。

「ソニア、明日出かけるぞ」

「ハイド博士とジキル氏の放火が刻? なんかこのゲーム、テラクソ臭がするよ――って、何? どこ行くの?」

 何だか一瞬下品な単語が聞こえたような気がしたが、ソニアはラムリーザの方を向いて聞いてきた。

「新開地だ。今新しく作っている貿易拠点と新居」

「ラムが行くなら行く」

 場所はどうでもよかったかのように、あっさりと返事する。

「それって今話題の、隣国シロヴィーリとの国交に向けての話よね?」

 話が聞こえたのか、リリスが興味を示してきた。そしてラムリーザの方に身体を乗り出してきて聞く。

「私達も行っていい? あ、ユコも来るよね」

 ユコも小さく頷いて了承する。

「じゃあ私も行くことにするわ」

 話を聞いて、ロザリーンまで乗ってきた。まあこの流れからくればそうなるだろう。

 ラムリーザは再びリゲルの方へ向き直って言う。

「すまん、何かみんな行くことになったみたい」

「やれやれ、研修旅行がピクニックになってしまった……か」

 と言った所で、始業開始のチャイムが鳴り響いたので、話し合いはこれで終わりにすることにした。

「それじゃあ、明日九時に駅前集合な」

「はーい」

 というわけで、明日は新しい貿易拠点になる新開地にみんなで視察に行ったり、場合によっては遊びに行くことになりました。

 
 
 
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