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清い交際はしていません

 

「ソニア、あなたハゲってどう思う?」

 いつもの教室、いつもの休み時間、唐突にリリスはソニアに話しかけてきた。

「ハゲって、毛が少ないって事よね。だったら猿と人間比べたらどうよ? 猿と、猿と進化した人間って、どっちが毛が多い? 猿よね? 進化したら毛が減ったよね? だから、ハゲって、人間がより進化したものなんだと思うんだ!」

 ソニアは、謎の理論を持ち出してハゲを肯定してきた。ちょっと聞いただけでは正しい理論の様に取ることも可能だ。しかしなぜハゲを擁護するのだろう。

「それで……あなたはハゲをどう思うのかしら?」

「たとえラムがハゲても、ラムが一番なのは変わらないから! ハゲたラムは、新人類なんだ! 新人類よ、永遠なれ!」

 リリスは、興奮してよくわからないことを言い出すソニアから視線を逸らし、今度はラムリーザに迫ってきた。

「ふーん。それじゃあラムリーザ、試しに頭の毛を剃ってハゲにしてみてもらえないかしら?」

「なっ……なにを言い出すのだ君は。別に僕をつるっぱげにしても、ありがたさは100%超えないよ」

 ラムリーザは、突然突拍子も無いことを提案されて、よくわからない返事をしてしまった。ありがたさって何だろうね。

「やってみてよ、ソニアの反応見てみたいから」

「ほぉ、それならついでに額に三本の傷を入れて地獄突き食らわすけど、それでもかまわないかい?」

「体重150kgまで増えたら、やってもいいわよ」

「なんだそれは……」

 ラムリーザは、頭を剃れだの、150kgまで太れだの、無理難題を注文してくるんだと思った。だから、二人を巻き込むことにする。

「そもそもなんで僕が頭を剃らないといけないんだよ。リリスとソニアもつるつるに剃るんだったら付き合うよ?」

「えー、剃ったらラムの好きな緑色の髪がなくなっちゃうよ?」

「そうなるとあなた大変なことになるわよ。私とソニアのダブルヘッドバットを食らい続けて、二度と立ち上がれなくなるわ」

「勝手にしてくれ」

 ラムリーザは、付き合ってられないと思い、ソニアやリリスに背を向けると窓の外を眺め始めた。

 

 

「ヴァージン・ディテクション・リキッドは知っているかしら?」

 しばらくして、リリスは何やら企んでいる顔でソニアを見ながら、銀色の容器に入った液体を取り出してきた。

「何それ……」

 ソニアは怪しい物でも見るような目つきで、その液体を見る。そんな彼女を見て、リリスは怪しげな微笑を浮かべた。

「簡単なテスト試薬よ。テスト対象が、ヴァージンかどうか判別するの」

「ヴァージンって、処女ってこと?」

 ソニアは眉をひそめてリリスの顔を見るが、リリスは微笑を浮かべたままだ。ただ、目つきに悪戯心を感じる。

「そう。髪の毛を一本この液に浸すと、非処女なら緑っぽい色になり、処女ならそれ以外の色になるのよ」

「へ、へぇー」

 リリスの説明を、ソニアは少し落ち着かない感じで聞きながら相槌をうつ。処女とか非処女とか言われて気が気でない。なにしろソニアは既にラムリーザと……。

「男性の方は、結婚するならやっぱり処女の方がいいよね。ねぇ、ラムリーザ?」

「んあ?」

 ラムリーザは、突然話を振られて妙な返事をしてしまった。ソニアとリリスが会話を始めてから、ずっと窓の外を見ていたからだ。

 それに処女がどうたらとか考えたことも無かったし、結婚ならそのままソニアとする物だと考えているからだ。処女とか非処女とか言われても、ラムリーザは既にソニアと……。

「ものは試し、私がやってみるからみてごらん」

 そう言ってリリスは、自分の前髪を一本とって液体に浸す。

 横からは不透明な容器のため色はわからないが、上から覗くと液体は黒っぽい色に染まっていた。

 リリスは、次にユコに試させる。彼女が同じようにやってみると、今度は薄い金色に液体は染まっているように見えた。

「ね、こんな感じにわかるのよ。さあ、ソニアもやってみて」

 そして今度はソニアの前に、コトリと容器を置き、悪戯っぽい微笑を浮かべて、ソニアに促す。

「え、いや、処女とかそんなのどうでもいいじゃないの」

 ソニアはそわそわしながらラムリーザの方をちらちら見ている。

「ラムリーザ、ソニアはああ言っているけど、どうなのかしら?」

「いや、だってソニアは――」

「あーもう、わかったわよ、やればいいんでしょ?」

 ソニアはそう言い放つと、自分の前髪を取って液体に浸した。液体は緑色っぽい色に染まり、ソニアの顔はみるみる赤くなっていく。

「くすくす、やっぱりね」

 リリスが悪戯っぽく笑って言った時、ソニアはドンと机を叩いて声を張り上げる。

「ええ、あなたの言うとおり、あたしはラムとやってるわよ! 何か文句ある?!」

「……と言ってるよ、ラムリーザ」

「うーむ、やはり早急だったか……というかそんな事大声で言うな」

「ラムー……」

 クラスメイトは、ちらちらと訝しむ目でソニアを見ている。

 そもそも同居していて、しかも同じベッドで毎日寝ているのだ。その気になったら、いつやっても不思議な事ではない。

「ところでさ、それ男が使ったらどうなるんだ?」

 ラムリーザはとりあえず話題を変えることにした。

 そしてすぐに自分の髪の毛を一本その中に入れてみる。そしたら、自分の髪の色と同じような色に染まったように見えるのだ。

 次に、後ろを振り返ってリゲルの髪の毛を要求する。

 そしてリゲルの銀髪を入れると、溶液は銀色に染まったように見えるのだ。

「まさかな……」

「あ……」

 リリスが止めるよりも早く、ラムリーザは容器を持って席を離れた。

 そして、近くの席に居た赤毛の男子に髪の毛を提供してもらい、その溶液に浸す。すると、溶液は赤く染まったように見えるのだ。

「うむ、やはり……」

 そうラムリーザはつぶやき、クラス内を見渡した。そしてちょうどいい具合に、緑色の髪をした男子生徒がクラスに居たのを見つけたのだった。

 

「この髪の毛は、クラスメイトのスコットのものだ。わかるね?」

「…………」

 ラムリーザはその男子生徒からも髪の毛を提供してもらい、自分の席に戻ってきてから言った。スコットとは、ラムリーザが先程見つけた緑色の髪をした男子生徒のことである。

 リリスは何も答えずに、苦笑いを浮かべているだけだ。

 そして、ラムリーザが持ってきた緑色の髪の毛を浸すと、果たして液体の色は緑色っぽく染まった。

「彼も非処女かい?」

「いや、男子がやると非童貞というかー」

 リリスは、視線を右に逸らしながら、落ち着かない感じでつぶやいている。この視線の逸らし方は嘘だな……。

「僕はソニアとやったけど、緑色にならないよ」

「あーもう、降参。それは容器の壁面に反射して、髪の毛の色に液体が染まるように見えてるだろよ」

「やはりね……」

「ちょっと何それ。髪の色で決まってただけなの? 何なのよ!」

 つまるところ、ソニアの青緑色の髪の色が、そう見せているだけだということなのだ。

「二人が同棲しているから、ちゃんとやっているかどうか確認しただけよ、くすっ」

「いや、確認しなくていいから……」

「むー……」

 悪戯っぽく微笑んでみせるリリスに、ラムリーザは苦笑いを浮かべ、ソニアは不満そうな顔をする。

  要するに、ソニアはリリスに担がれただけなのだ。そしてラムリーザはそのとばっちりを受けたに過ぎない。それ以上、特に意味は無い。

 本当にそんな検出液があったとしたら、世の中大騒ぎになっているはずだからね。

 
 
 
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