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ラムリーズ・ロイヤルバージョン公演、ただし一人ロイヤルじゃないけど

 

 月に一回、最初の週末にオーバールック・ホテルで、ポッターズ・ブラフを含むエルドラード帝国南西部の地域に住まう有力者たちのパーティを開催している。

 

 今回からラムリーザとソニアは、これまでとは違う行き方をすることになっていた。

 あらかじめ寄宿舎に、パーティに着ていく衣装を取り寄せており、二人は帝都シャングリラに戻ることなく、ポッターズ・ブラフの駅に正装で行った。

 それから、駅でリゲルとロザリーンの二人と合流して、オーバールック・ホテルに向かう電車に向かっていく。今回からは、列車で行こうという話になっていたのだ。

 だが、四人の他にパーティ参加者の姿は無かった。

「あれ? この電車はまだ正式運行してなかったんだっけ?」

「そうだ。今日はまた特別に動かしてもらうよう言っただけだからな」

「てっきり正式運行開始していると思っていたけどな」

「ラムリーザが毎回帝都に一旦帰るって聞いたから、面倒をとりのぞいてやっただけだ」

「そうか、わざわざありがとうね。えっと、それじゃあロザリーンはなんでこっちに?」

「リゲルさんから話を聞いたとき、こっちの方がおもしろそうだから、お父様に頼んで行かせてもらったのよ」

「なるほどね」

 リゲルの説明で、自分のためだけに動かしてもらっていることに気がつき、恐縮してしまうラムリーザ。その一方でソニアは、初めての電車でのホテル直行に一人盛り上がっている。

「ねえねえ、これって裏ルートだよね。やっぱりあたしたちって特別なんだー」

「特別じゃねーよ、お前は使用人の娘であって平民だろうが」

 リゲルは冷たい視線と冷たい言葉を、一人はしゃぐソニアに投げかける。

「なによー、あたしはラムリーザ・フォレスター夫人よ」

「いつ結婚した? いつ?」

「う……」

 リリスやユコのからかいとは違い、正論を上段から振り下ろすリゲルがソニアは苦手で、今日も押し切られてしまった。それに、リゲルはソニアに対して、いつも棘のある態度を取っているようにも見える。

「駄弁ってないで行くぞ」

 ラムリーザは三人を振り返って、行動を促した。

 

 

 電車に揺られて十分ちょい、オーバールックホテル前の駅に到着した。

 電車から降りる時、ソニアは駅のプラットホームと電車の隙間に足を取られて転びそうになる。この娘は、何かと転びそうになるものだ。

「危ないぞ、ちゃんと足元見て」

 ラムリーザは素早くソニアの腕を取って支えてあげる。

「足元見えてないんだよな、フッ」

 リゲルはこぶしを口元に当てて笑いを隠しながら言った。

「え? ソニア足元が見えない?」

「見えてるわよ!」

 ラムリーザはリゲルのつぶやいたことが気になってソニアに聞いてみたが、彼女は投げやりに答えただけだった。

「あ、そこ段差……」

「えっ?」

 言うのが遅かったのか、ソニアは躓いて転びそうになるが、先ほどからラムリーザが腕を取っていたので倒れずにすんだ。

「フッ、現状をラムリーザに伝えておけよ。そうしたら守ってもらいやすいだろ……まぁ、守ろうにもどうにもならんだろうがな」

 笑いをこらえながら、リゲルはソニアに忠告めいたことを言う。

「い、嫌よ! 胸が大きすぎて足元が全然見えないなんて恥ずかしいこと言えないよ!」

「……そうなん?」

「あ……」

 ソニアは顔を赤くして、その大きな胸を抱えるように押さえて会場に駆け込んで行った。

 ラムリーザはそんなソニアをポカーンと見ていたが、リゲルの方を振り返って「どういうことだ?」と尋ねた。

「いや、あいつよく転ぶだろ。胸がでかいと足元見えないって話らしいぜ」

 ラムリーザが思い返してみれば、ソニアはよく転ぶ。教壇とか、教室の入り口とか、下駄箱とか、ちょっとした段差とか。

「うーむ、しかしどうしたものやら……」

「知らんな」

 なんとかしてあげようと思っても、こればかりはリゲルの言うとおり知らんな……ではないが、どうしようもないことだった。できることを強いて挙げるとしたら、移動時に常にソニアの肩を抱き寄せておくとかだが、それはそれでどうかと思うのであった。

 

 

 三度目のパーティとなると、みんな馴染んできているのか新しい動きは見られない。グループもほとんど出来上がってしまっているって感じだ。

 ラムリーザ達のグループは、前回と同じように会場の中央にある料理の乗ったテーブルの近くに陣取っている。

 そして、ソニアは早速チキンに手を伸ばしていた。

「んー、変わりないな。僕ら三人が雑談していてソニアは食事していて」

「ソニアさん、おいしそうに食べていて幸せそうね」

「それがかわいいだろ?」

「あいつだけ庶民丸出しって感じだな」

 確かにソニアには上品さが無く、周りから浮いている感は拭えない。だが、幸せそうに食べるソニアの姿を見て、ラムリーザは軽く微笑むのであった。

 

 ラムリーザは、今日あることをやってみようと計画を立てていた。

 パーティ会場には、毎回楽団がやってきていて音楽を奏でている。そこで、少しの間だけ代わってもらって演奏してみようと考えていたのだ。

 そしてラムリーザは、楽団のところに行ってしばらく交渉し、少しの間やらせてもらうという話をつけることができたのであった。

「よし、みんなこれから演奏の練習するよ」

「ここで四人でか?」

「うん、ステージで演奏する機会ってあまりないからね。リゲルは、リードとリズムを組み合わせた感じで――」

「いいだろう」

「――ロザリーンはピアノパートとユコのパートをミックスさせて……、は難しいかな。えっと、ソニアはいつまで食べ続けるんだ?」

「んー、おなかがいっぱいになるまでー」

「そっか……、じゃあベースだけは楽団の人に頼むか。うまく合わせてくれるだろうし」

「やー、あたしも一緒にやるー」

「うざっ……」

 ラムリーザとソニアのやり取りに、リゲルは思わず悪態を吐いてしまうのだった。

 

「さて、お集まりの皆さん。今日は急遽この場を借りて、我が『ラムリーズ・ロイヤルバージョン』の演奏をお楽しみください。それでは、ソニア・ルミナスが歌う一曲、『このまま永遠に』をどうぞ」

 ラムリーザの紹介で、ライブが始まった。

「きーらきーらかーがやーく、ゆーきがー――」

 ソニアは戸惑うことなく、ギャルゲーのエンディングテーマを歌い上げた。

 

 うん、とラムリーザは出来に満足したようにうなずく。

 もっとも、ソニアが戸惑わずに歌えるのは分かっていたのだ。数年前から、ジャン達と組んで帝都で何度もライブをやってきたので、慣れっこなのだった。

 ロザリーンの方も、落ち着いた感じでどうてことない感じだった。

「私は幼少のころからピアノの演奏会を何度もやったことあるので、人前で弾くのは慣れてます」

 リゲルもいつもと変わらずだった。そういえば、ラムリーザが初めてリゲルと会ったときも、彼は会場で一人、弾き語りをしていたっけ。

 

「ふう、やって見た感じ、僕ら結構いけるね」

「リリスさんと、ユコさんは大丈夫かなぁ」

「まぁ、あの二人なら問題無いと思うけど、万が一ってこともあるから、一度野外リハーサルやってみたほうがいいかもね」

 などと、ラムリーザとロザリーンが話している所に、一人の年配の男性がやってきて言った。

「ロザリーン、バンド活動楽しそうにやっていていいじゃないか。また演奏会あったら見に行くよ」

「ありがとう、お父様」

 ロザリーンの父親ということは、この地域の首長さんであるので、ラムリーザも頭を下げる。

「首長さん、ありがとうございます」

「うん、ラリムーザ君、ロザリーンをよろしく頼むよ」

 

 こういうわけで、ロザリーンも正式にラムリーズとしてやっていってもいいということになりました。

 
 
 
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