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教習合宿も今日でおしまい、幼馴染は皆勤賞達成
- 公開日:2016年8月1日
帝国歴77年 8月2日――
自動車教習合宿も、いよいよ最終日を迎えていた。
最後に残っているのは筆記試験。それにパスすれば、晴れて運転免許取得、合宿卒業である。
実際のところ、実技試験をクリアできたのなら、この筆記試験はおまけのようなものであったりする。
ただ、ラムリーザ達のメンバーには、この筆記試験に対する不安材料を抱えていたりした。
それは、ソニアとリリスの二人。この二人は学校の定期試験で見事に撃沈してしまった赤点コンビである。夏休み前に発生した、補習付けの日々が記憶に新しい。
巨乳は馬鹿に見えるという都市伝説を、実話にしてしまうのだから仕方がないものだ。
そしてその不安が、今回も付きまとっているのだった。
本試験前に、試験内容についての直前講習があったのは、この場合助かるものである。
この時ラムリーザとユコは、お互いにソニアとリリスを監視しながら、講習を受けていた。
この二人は、本当に勉強という物が苦手なようだ。リリスは気が付くとペンをくるくる回してぼんやりしているし、ソニアに至っては練り消しで遊んでやがる……。
どうやらこの二人、都市伝説を実話にしてしまった汚名を返上する気は全く無いようである。名誉を進んで返上しているようなものだから、度し難いな!
二時間ほどで、その直前講習は終了した。
「やったー、終わった!」
「ふぅ……」
ざわざわとしている講義室の中で、ばんざいをしたままそのまま大きく伸びをするソニアと、やれやれといった感じで髪をかきあげる仕草を見せるリリス。
全てが終わったような喜び具合だが、まだ直前講習が終わっただけである。
本当に大丈夫か?
そんなこんなもあったが、その後本試験が普通に実施され、普通に終了していった。
リゲル、ロザリーンを筆頭に「ラムリーズ・インテリジェンス」の面々は余裕な感じだが、ソニアとリリスの二人は机に突っ伏している。
しっかりしてくれ、我が二枚看板……。
これだと「ラムリーズ」は、馬鹿の看板を二つ掲げてどや顔で演奏している、という不名誉なものになってしまう。
この二人は、ギターを弾きこなす器用さを持っているのだから、根っからの馬鹿だとは思えないのだが、試験に対する免疫がなさすぎる。
「もう補習は嫌だよう……」
「言わないで、思い出すじゃないの……」
どうやら補習はこりごり、というわけのようだ。
とまぁ、散々不安をあおったが……。
全員無事に合格できました!
素敵だね、ご都合主義!
というわけで六人は、自動車の免許を獲得して、二週間程お世話になった合宿に別れを告げて帰途につくのであった。
ラムリーザは、帰りのバス街の時間に、合宿での出来事を思い返していた。
しかし、どれだけいろいろなことを思い返そうとしても、いつもの雑談部のイメージしか浮かび上がってこない。メンバーが全く同じだからというのも、そこにはあるのかもしれないが。
自動車教習合宿の思い出を雑談で塗りつぶしてしまうとは、さすが雑談部だな、と妙に感心してしまったりもするのだった。
まぁ、目的は思い出作りではなく、自動車の免許を取得すること。これ以上を求めるのは、欲が深いと言えるかもしれない。
その一方で、これはラムリーザにしか分からないことだが、「ソニアがパーフェクト達成した」というものがあった。
ソニアの夜這いは、全ての日においてなされた。
ただし、途中から荷物持ち込んで住み着いたのと、それ以上のことは自重していたと補足しておく。
結局のところ、合宿に居た二週間も、ソニアは寝るときはラムリーザと一緒だったというわけである。一日も休まずに……。
そんなに一緒に寝たいのか? とラムリーザが一人思い返していると、不意にリリスが話しかけてきた。
「ラムリーザ、ようやく免許取れたね。私はまだ車持ってないけど、運転手は確保したわ。運転してくれたら好きになるかもよ?」
これは何だ? とラムリーザは考える。
暗に、さっさと車を買って乗せてくれとでも言いたいのだろうか? それとも、ラムリーザを足にする気満々なのだろうか?
だからラムリーザは、リリスの要望をさらりと受け流して見せた。
「それは良かったな。ソニア、運転手は任せたぞ」
「任せられた! リリスにウルトラCの運転を披露する時が来たわ!」
「あなたじゃないわ、しっしっ」
リリスは、まるで犬でも追い払うようにソニアに手を振った。しかし、ウルトラCの運転が何か? というところには突っ込みは入らなかった。
「何よー、人を野良犬のように扱ってー」
「あ、ごめん。あなたは野良犬じゃなくて野良牛だったね」
「野良牛って何よ!」
こんな具合に再び騒々しい雑談が始まった所で、これにて自動車教習合宿の話はおしまい。
これ以降の話はおまけということで、馬鹿話程度に留めておいてくれてよいだろう。
この日の夜、ラムリーザは寝床につきながら考えていた。
ソニアは結局毎晩一緒に居ることを選択した。ラムリーザが来いと言った訳ではなく、ソニアの方からやってきたのだ。
それほど自分と一緒に寝たいのか、とバス待ちの時間に考えていたことと同じ事を考える。
このソニアの一緒に寝たいという気持ちは、どこまで強固な物なのか、ラムリーザは少し実験してみたい気がしてきた。
ソニアを実験台にするというか、気持ちを試すというか、そういうことはちょっと気が引けたが、試してみたいという気持ちも強かったのである。それに、可愛いソニアにイタズラするのも面白い。
そこでラムリーザは、ソニアが同じ寝床、ダブルベッドに入ってこようとした時に声をかけてみた。
「いいかな? 今夜僕の胸に飛び込んできたら、ソニアが寝入るまでおっぱいを揉み続ける。それが怖かったら、ベッドの端で寝るか、ソファーで寝るかしてみよう」
気味が悪いね。我ながら変なことを考えたな、とラムリーザは思う。
実験をすると考えながら、やろうとしていることはただのエロ親父である。
それはそれで置いておいて、ラムリーザはソニアの様子をじっと観察した。
ソニアは話を聞いて、布団を捲ろうとした手をピタリと止めた。明らかに困ったような顔をしている。
胸を揉まれるか一人で寝るか……、ソニアの決断は……。
ソニアは、目をキョロキョロさせながら不安そうな表情を浮かべ、それでもラムリーザの右脇に引っ付いてきて抱きついてきた。
やはり一人で寝ることは選ぶことができなかったようだ。
「なるほどね、それじゃあ約束通り、遠慮なく……」
ラムリーザの言葉を聞いて、ソニアは身を固くしてラムリーザの寝衣をぎゅっと掴んできた。
そしてラムリーザは、右腕でソニアを支えて離れないように押さえて、左手をソニアの寝衣の中に忍び込ませ、その大きな胸を揉み始めた。これはどう考えても気味が悪いね、やっぱりダメな馬鹿話だ。
「んんっ……、くぅ……」
胸で感じやすいソニアは、すぐに反応を示し始める。
「さてと、ソニアが寝入ったら僕も寝るか」
ラムリーザは話しかけながらも、手の動きは休めない。
「ふ、ふえぇ……」
メルティアに散々遊ばれたソニアの胸は、確実にソニアを甘美な世界に誘っていった。
みるみるうちに顔が赤くなり息が荒くなる。そしてラムリーザの右足を、両足で絡めるようにしてしがみつくのだった。
ソニアは、ぎゅっと目をつぶる。そして、「一、二、三、五、八、十、十一、十三、十五、十七……」と呟きだした。
素数のつもりだろうか? いろいろと怪しい、素数じゃないときだけアホになるとでも言うのだろうか?
「わかんない、わかんないよぉ……羊が一匹、羊が二匹、羊が……、ふえぇ……」
「どうした、寝ないのか?」
ラムリーザはそう聞いたが、自分自身もソニアの困ったような悲鳴を聞いていると、面白くて全然眠たくならないでいたりする。
「眠れるわけないよぉ!」
とうとうソニアは涙声で叫びだしてしまった。
そして、胸を揉まれたままラムリーザの身体の上に乗ってきて、弱々しく懇願する。
「も、もう寝ようよぉ……」
「まぁいいか、このぐらいにしておいてやろう」
ラムリーザはそう言うと、ソニアの希望通りに手を放してあげた。
結論として言えるのは、ソニアはラムリーザにイタズラされようが、一緒に寝たいということだった。
そこまで一緒に居たいのなら、それがソニアにとって幸せなのだとしたら――
ラムリーザは、そうさせてあげたいと考えるのである。
