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不真面目な生徒達にも困ったものだ

 

 授業中の出来事――。

 そういえば来週から定期試験が始まる。

 ラムリーザは、前回の試験の事を思い出して、隣の席に居るソニアを観察してみた。ソニアは何やら手遊びをしている。練り消しだ。

 まだそんなもので遊んでいるのか……、とラムリーザは少し情けなく思ってしまった。

 見ていられなくて今度はソニアの前に居るリリスに視線を移す。リリスはリリスで机に突っ伏して爆睡中だ。遅くまでゲームやってたかギターやってたか……、全く進歩が無い。

 だめだこりゃ、この二人はまた赤点まみれか……。

 ラムリーザは軽くため息を吐いて、今度はソニアの後ろに居るロザリーンに視線を移した。ロザリーンは、じっと前を見て教師の話を聞いていて、時折ノートに何かを書き込んでいる。やはりこれが生徒の正しい姿だ。

 ソニアとリリスの二人には、一度ロザリーンの爪の垢を煎じて飲ませる必要がありそうだ。

 一方ユコはどうだろうか。ラムリーザの前に居るので後姿しかわからないので、どのような態度で授業に挑んでいるか、ラムリーザの位置からはわからない。それでも、ときおり何かを書き込む仕草を見せているので、ノートは取っているのだろう。まさか楽譜作成をしていることはさすがにない、と信じたい。

 ラムリーザは、一通り周囲に居る仲間を確認したところで、自分のノートに目を戻した。

 その時である。

 

「リリス!」

 

 教師の怒った声が教室に響き渡った。

 堂々と突っ伏していたので、居眠りがばれたな。

 リリスは、「は?」とつぶやいて顔を上げた。

「続きを読め」

 教師は、冷たい声で教科書の拝読を促す。

 リリスはのそのそと立ち上がった。しかし、ついさっきまで寝ていたので、どこから読めば良いのかわからないのだろう。立ったままぼんやりしている。

 リリスがなかなか読み始めないので、一人、また一人と周りの生徒が不思議そうにリリスの方を見始めた。教師も厳しい視線を向けている。

 これはまずいな、ラムリーザはこの状況を見て思った。あまりリリスに視線が集中すると、リリスは

何もできなくなってしまう。教科書を読むなど、無理なことだろう。

 だが次の瞬間、リリスははっきりとした口調で言い放った。

 

「こっち見んな!」

 

 ラムリーザは、ほぉ、と少し感心する。リリスは強くなった。他人の視線を怯える根暗吸血鬼は、もうどこにも居ない。いやいやいやい、そんな場合じゃないって。

 当然教師には逆効果。

「いきり立ってないで早く読め」

 ますます怒らせる結果になってしまった。

 リリスが困っている(ように見える)ので、ユコは小さくちぎった紙を丸めてリリスの方へ投げた。それに気がついたリリスは、ユコの方を振り返った。

 ユコは、小声で「47ページの5行目から」と囁いた。

 これで授業に平穏が戻るだろう。

 リリスははっきりとした声で読み上げ始めた。

 

「47ページの5行目から」

 

 ユコはずっこけて、机に突っ伏してしまった。ソニアもプッと噴出す。だめだこりゃ……。

 教師は激しくいらだった口調で、「授業を受ける気が無いのなら、廊下に立っていろ!」と怒鳴りつけ、退場を促した。

 リリスは、フンと鼻を鳴らすと、優雅な足取りで教室から出て行ってしまった。堂々とするようになったのはいいが、逆の方向に堂々としすぎだろう、これは……。

 教師は、次にソニアを指名した。

 ソニアは、「はいっ」と言って元気に立ち上がる。しかし、手には教科書すら持ってない。

 机の上に転がっているのは、筆箱と練り消しだけだ。

「続きを読め。ん? 教科書は?」

「教科書忘れたので読めません!」

 ソニアは、キリッとした顔つきで堂々と宣言した。いや、これも逆方向へ堂々としすぎだ。

 今度はラムリーザがずっこける番だ。完全に呆れ果ててしまった。ソニアに関しては、そこから面倒を見なければならないのか……。

 当然ソニアも廊下行きとなってしまったのである。これは二人は後で怒られるだろう、困ったものだ。

 次はロザリーンが当てられて、ここに来てようやく授業はまともに再開されたのであった。

 

 

 部活の時間――。

 ユコとロザリーンは、二人でピアノに並んで何やら作曲活動のようなものをしている。その一方で、ラムリーザとリゲルは、ドラムとギターを合わせて適当に奏でている。

「ちょっとディスコ・ビート叩いてみろ。今日は俺が歌ってやる」

「珍しいね」

 リゲルはそう要求して、ラムリーザにディスコ・ビートを叩かせると、自分はそれに合わせてギターを奏でながら、低く渋い声で歌い始めた。

「昔ルジアの国に一人の男が居た――」

 しかし、リゲルは途中で演奏と歌を止めてしまったのだ。

「あれ、どうした? 破戒僧グリゴリーだよね、それ」

「やっぱりやめた。これはな、ミーシャの為のダンスソングなんだ。一人で歌っても何にもならん」

「そっか……、それじゃあ他のをやるか」

 こんな感じに、ものすごく普通の光景だ。いかにソニアとリリスが特異な存在であるのかを物語っている。

 そう、ソニアとリリスは来ていない。

 あの授業が終わった後、二人は放課後に職員室に来るよう言われてしまったのだ。あからさまに授業をサボっていたから、それも仕方ないことだろう。

 そういうわけで、今は『ラムリーズ・インテリバージョン』の活動となっている。落ちついた、まさにインテリジェンスといった雰囲気である。

 

 整然とした雰囲気は、しばらく経った後で終わりを告げることになった。

 ソニアとリリスは、部室に現れるやいなや、口々に不満を叫び始めた。

「怒られた! 何か知らんけど、すごい怒られた!」

「そうね、何もしていないのに怒られたわ」

 いや、ソニアは授業を真面目に聞かずに、練り消しで遊んでいたり、教科書忘れてきていたね?

 リリスも、確かに何もしていなかったけど、何もせずに寝ていただけだよね?

「黒魔女が寝ているから目を付けられた!」

「一応私はあなたより成績良いんですが、何か?」

 目くそ鼻くそ、赤点未満の勝負で勝ったからって、何の自慢になるのだ?

 リゲルはそんな二人の様子を見て、馬鹿にしたような笑みを浮かべた。

「ふっ、これはまた赤点まみれだな。ひょっとしたら落第もありうる、くっくっくっ」

 こんな状況で、来週から試験だ。

 この週末は、勉強会でも開くか? とラムリーザは考えた。

「リゲル、頼みがある……」

「何だ?」

「この週末、勉強会をやる。みんな集まって勉強しよう。リゲルも来てくれ」

 しかしリゲルは首を振って言った。

「断る。俺はロザリーンと図書館に行くことにしている。お前ら……、いやお前とやる分は別にいいんだが、あいつらと勉強したら、足を引っ張られるのが見え見えだから遠慮しておく」

「ですよねぇ」

 ラムリーザは、リゲルの言い分ももっともだと思い、言い返すことも食い下がることもできなかった。仕方が無い、自分とユコの力で、なんとか平均点……、いや、赤点回避を目指すことにしようと考えた。

 そういうわけで、ラムズハーレム……じゃなくて、三人の娘に号令をかける。

「ソニア、リリス、ユコ、美しき我が精鋭達よ!」

「はいっ!」

 敬礼してみせるのはユコだけ。独特な世界観を持っているユコは、こういう芝居じみた言動に対する乗りがいい。

「この週末、僕の下宿している屋敷でプチ合宿を行なう」

「えっ、週末にみんなで集まってお泊りして遊ぶの?」

「ラムリーザ、ひょっとして三人相手に……、するのかしら?」

「ラムリーザ様のお屋敷にお泊り、ああん、夢が広がりまくりんぐですわ!」

 ラムリーザの提案に、三人は口々に見当違いな事を言うばかりだ。ラムリーザは、こめかみをピクピクさせながら、怒りをこらえて話を続ける。

「何馬鹿な事を、勉強するんだ! 各自、二泊分の着替えと勉強道具を持参して集合! いいね?!」

 再度敬礼してみせるユコ。それと、あからさまに不満そうな顔をするソニアとリリス。それに、ラムリーザが勉強会を開いたところで、どのくらい効果があるのかわからない。

 そういうわけで、この週末は勉強会を行なうことになった。果たしてソニアとリリスの二人は、赤点地獄を回避できるだろうか?

 
 
 
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