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フォレストピアでの最初の仕事決定

 

 エルドラード帝国を襲った異常気象、大寒波。

 その翌日、雪は止んでいたが、例年に比べてかなり冷え込んだ日となっていた。

 

 ラムリーザは、大寒波の影響が新開地、フォレストピアにどんな影響を及ぼしているか気になっていた。

 しかし、午前中は雪が積もっていて、屋敷から外に出るのも難しかったので、どうすることもできなかった。

 昼前から晴れて気温が上がり、昼過ぎにはほとんどの雪が溶けてなくなっていた。

 ラムリーザは、リゲルに電話をかけ、フォレストピアに行ってみたいという旨を伝えた。リゲルは、まだ電車は動いていないが、車でだったら行けると連絡してきた。

 そこでラムリーザは、屋敷の前で待ち合わせをして、リゲルがやってくるのを待つことにした。

「ソニア、ちょっとフォレストピアに言ってくるけど、どうする?」

 ソニアは、少しの間考えていたが、「寒すぎるから行かない」と答えた。

 それならそれで別にかまわない。今日は遊びに行くわけではないのだ。あくまで視察、ソニアが留守番をするというのなら、それでもよい。

 ちなみに寒すぎるというのはソニアの観点であり、この期に及んで際どいミニスカ生足まるだしを止めないのだから仕方が無い。

 ラムリーザが部屋から出て行こうとした時、ソニアに「待って」と呼び止められた。やはり行くのか?

「一人で行くの? リリスとか来るの?」

「いや、リゲルと行く。ロザリーンも来るかもしれないけど、リリスとユコの話はしていないな」

「ん、それならいい」

 ソニアは、ぬいぐるみのココちゃんを抱えて、ソファーで丸まった。

 

 ラムリーザは、リゲルを待ちながら屋敷の周囲を回ってみた。

 あいかわらず寒いが、昨日のような耐えられないような寒さではない。雪は溶け、地面は雨が降った後の様な感じになっていた。土の地面の所はぬかるんでいる。

 すぐに見慣れた丸っこい車、ビートルが到着し、リゲルとロザリーンがやってきた。

 ラムリーザは、後部座席に乗り込む直前に、自分の部屋の窓を見てみると、ソニアがじっとこちらを見つめていた。

 ソニアはすぐに窓から姿を消し、来るのかな? と思って少し待ってみたが結局来なかった。恐らくリリス達が来ているかどうか確認していて、来ているのがロザリーンだけだったから出てこなかったのだろう。

「ソニアさんは来ないのですか?」

 ロザリーンが尋ねてきたので、ラムリーザは「寒いから篭っているんだとさ」と答えておいた。

「山道は雪が残っているかもしれないから、慎重に行かないとな」

 車は走り出し、ポッターズ・ブラフとフォレストピアを隔てているアンテロック山脈へと向かっていった。

 道中ラムリーザは、リゲルに昨日のメールの件について尋ねてみた。メールの件とは、リゲルが唐突に発信してきた、リゲルらしからぬ内容のメールのことだ。

「ところでリゲル、昨日のメールは誰宛に送ったメールなんだ?」

「忘れた」

 短く答えたその内容が、リゲルの語りたくないという雰囲気を十分に醸し出していた。だからラムリーザは、それ以上問い詰めるのはやめにした。気になって仕方がないのだが、リゲルが話したくないというのなら、無理に聞き出すのも悪いと考えたのだ。

 幸い山道の雪もほとんどが消えていて、移動に支障をきたすことも無く、数十分後、三人はフォレストピアに到着していた。

 

 フォレストピアの駅前にある倉庫の二階にある会議室で話を聞いたとき、ラムリーザはその深刻さに驚いた。

 食糧生産は、今年に入ってから寒い日が続き調子が悪く、前日の大寒波で全滅とはいかないが、予定の収穫量に到達できる見込みが少なくなってしまっていたのだ。

 しかし、寒さに弱いものはほぼ全滅。

 本来ならこの季節も酷く寒くならずに温暖なのが普通なのだ。

「まずいな……」

 ラムリーザはつぶやいた。何か良い方法は無い物か……。

 帝都から食料を回してもらうことも考えたが、この分だと帝都もある程度は被害を受けているかもしれない。

 そうなると、住民を当初の予定から減らすという方法も考えられた。規模を縮小して、スローペースで進めるか。

 しかし、幸先が悪い。

 失意のまま、駅前の倉庫から出たところで、ロザリーンが話しかけてきた。

「よい考えがあります。ユライカナンから食料の足りない分を補ってもらえばどうでしょうか?」

「ユライカナンから?」

 ラムリーザは、一瞬何のことかわからなかったが、よく考えてみるとそれは名案なような気がした。

「そ、それだ」

 もともとフォレストピアは、ユライカナンとの異文化交流を目的として作られる町だ。その一環として、食文化も取り入れてみるのも悪くない。

 しかし、大丈夫だろうか?

 異国の食文化が、果たして口に合うだろうか?

「そうだな、口に合うか分からないが、テストしてみたらよかろう」

 次はリゲルの提案が役に立った。口に合うかはテストしてみればよい、簡単なことだ。

 フォレストピアでの最初の仕事は、ユライカナンから持ち込んだ食べ物の選別。ラムリーザ一人でテストすると、偏りが出てしまうかもしれないので、身内だけでも呼んでみんなでテストしてみたらよい。みんなでチェックして口に合いそうなら、民衆に回せばよい。

「さすがは知恵袋の二人だなぁ、僕にはすぐには思いつかなかったよ」

「うむ、さすがロザリーンだ。これがソニアだったら、何を食べさせられるかわかったものじゃない」

 リゲルの一言に、ラムリーザは言い返すことができなかった。なんだっけ、ソニアの言っていた食べ物、たなからぼたもちだったっけ?

「帰ったら、ユライカナンにその旨を伝える文章を書いて送らないといけないな」

 大寒波は想定外だったが、その代案が確立できたということで、とりあえず今回の課題は終了することになった。

 

「少し寄って欲しいところがあるんだ」

 ラムリーザは、帰る前にリゲルに頼んだ。

 次の春からラムリーザの住むことになっている屋敷はほぼ完成しているが、まだしばらく余裕があるので、拡張工事を依頼することにしたのだ。

 フォレストピアの竜神殿を少し過ぎて、少し山に登った所に屋敷はあった。

 ラムリーザは、そこで建築の監修をしている現場監督に、二つの提案を持ち込んだ。

 一つは、防寒対策。

 今回の大寒波が、百年に一度あるかないかの異常気象だが、数年後にまたやってくる可能性も0ではない。

 そういうわけで、それに備えておくことにしたのだ。ひとまず大きな暖炉を作り、各部屋に暖かい空気を送ることができるようにするとか、いろいろ方法がある。

 そしてもう一つは――。

「それぞれの個室に、鍵を設置して欲しいんだ」

「鍵ですか?」

 ラムリーザの提案が意外だったので、現場監督に聞き返される。

 玄関や門に鍵をつけるのは普通だが、家の中の個室にまで鍵をつけるのはあまり聞かない。

「うん、鍵。何も考えなくていいから、とりあえず、付けてくれ」

 現場監督は首をかしげながらも、ラムリーザの要望を聞き入れてくれた。

 これは、今年の初日に、帝都の実家の自室でソニアといちゃついている時に閃いたことだった。

 鍵さえ閉めていれば、ソニアと清くない交際を続けていても、他の人が突然乱入してくるということは防ぐことはできる。

 なんとも馬鹿馬鹿しいことだが、最低限の手は打っておくに越したことはない。というか、清くない交際を続ける気満々であった。

「これで終わりか?」

 リゲルの車に戻ってきたところで、ラムリーザはそう聞かれた。

「とりあえずね。今回みたいなことがまた来年以降も起きたら困るので、防寒対策を施すように言ってきた」

 鍵の件は、詳しく聞かれたら答えるのがめんどくさいので、伏せておくことにした。

「昨日までが異常だったんだよ」

 リゲルの言う事はもっともだ。今日は昼を過ぎてからはどんどん暖かくなっていき、今では平年通りの気温になっている気がする。

「メールも?」

「昨日までが異常だったんだよ」

 さりげなく昨日の事をぶりかえしてみると、リゲルは同じ言葉で返してくる。

 災い転じて福となすという言葉があるが、今回の出来事はそれに当てはまるかもしれない。

 しかし異国の食事か、フォレストピアは開幕から楽しませてくれる。みんなでいろいろと食べ比べしてみようじゃないか。

 帰路につきながら、ラムリーザは一人、そう考えていた。

 
 
 
 
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