home > 物語 > > 南の島キャンプ始まる その四 ~動画投稿者とは得てしてそういうものである~

南の島キャンプ始まる その四 ~動画投稿者とは得てしてそういうものである~

 

 15時のおやつにしては豪勢なサメの料理を食べた後、再び動き出した船の上で各々のんびりと過ごし始めた。

 ラムリーザはデッキチェアで食後の昼寝に移行し、ソニアはそれに引っ付いてふにゅ~。

 リゲルは一旦釣りを止めて、釣り上げたサメをラムリアースと一緒に細かく分離して保存するという作業を行い、ロザリーンもそれに従事している。

「このサメの卵はどうしようか?」

「ん、塩漬けにしてご飯といっしょに掻き込むか?」

 ――などと会話している。

 ユグドラシル、ジャン、レフトール、マックスウェルの男性陣は、ラムリアースの乗ってきた小型ボートを自分達の船に連結する作業を行っている。簡単に言えば、鎖で繋いで離れていかないようにしているだけだ。

 リリスは船室に戻り、持ってきた携帯型ゲーム機2DOで遊んでいて、ユコは船主の手すりにもたれてぼんやりと海を眺めていた。

「あれっ、この人誰?」

 ラムリアースの乗ってきた小型ボートに同乗して来た女性を見て、レフトールは首をかしげる。彼にとっては初めて見る顔だ。いや、レフトールだけでなく、ユグドラシルもマックスウェルも初顔だった。

「あ、えっと、帝都で見たことあるような気が……」

 ジャンだけはかすかに見覚えがあるような気がしている。

「初めましてですね、ラムリアースの妻ラキア・ペルモドフです」

「ラムさんの兄嫁かぁ、俺レフトール、ラムさんの騎士です」

「騎士ですか? 騎士には見えませんが?」

 ラキアは真顔でレフトールを見つめ返す。

「レフトール、付け焼き刃の騎士なんて無駄だぞ。この人は確か帝国騎士団長の娘だったと思う」

 ジャンは、名前を聞いていろいろと思い出したようだ。ペルモドフ家と言えば、帝国では有名な家名だ。

「くっそ、俺も騎士団に入ってやる」

「レフトールが騎士か、暗黒騎士だな」

「うるせい」

 ――などと会話していた。

 

 一方ソフィリータとミーシャ、この二人はうろうろうろうろしている。そしてソフィリータの手には、小型のビデオカメラが握られていた。

 二人は動画投稿をして遊んでいて、コンビ名S&Mは割りと有名だ。ソニアやリリスの、しょうもないゲーム実況チャンネル――削除済み――とは大違いだ。

 今日も、旅行記の作成に励んでいる。

「えーと、これがリゲルおにーやん。釣った魚を食べたいなー、でもサメ料理でお腹一杯。そしてミーシャの恋人、でもリゲルおにーやんは二股」

「こらこら、変なの撮るな」

 ソフィリータの向けたカメラに向かって、ミーシャは自分の身内を紹介している。リゲルは二股などと言われて、困ったような表情を浮かべるのだった。

「この人がローザ姉やん、ロザリーン。この地方の首長の娘で、リゲルおにーやんの恋人。でもおにーやんの恋人はミーシャだから、やっぱり二股。でも料理のプロ、このおねーやんの作ったサメ料理、美味しかった。料理する前はおしっこ臭かったけど」

 カメラを向けられて、そのような紹介をされてしまうロザリーンもいい迷惑だ。動画投稿者とは、得てしてそういうものである。

「夜に出してくれるという、サメのヒレを使ったスープ、楽しみなのだ。あ、そしてこの人が先輩ラムリーザの兄、名前何だったっけ、自己紹介プリーズ!」

 ミーシャは唐突に、ラムリアースにマイクを差し出す。すかさずソフィリータも、カメラをラムリアースに向ける。

「俺の名前はラムリアース、まだ新米だが軍務省勤め。身長191cm、体重87kg、スリーサイズは上から87―54―85である、ナイスバデェ!」

「途中から嘘ばっかり言っておるであります」

 すかさずミーシャは突っ込みを入れる。

「でも偉い人です。この人ら逆らうと、軍法会議にかけられて、牢屋行きになっちゃうの」

「お前軍人じゃないだろ?」

「ミーシャは軍隊に入って、青軍曹になるんだ」

「はいはい、わかった。よくわからんけど作業の邪魔だからあっち行った」

 ラムリアースは、ミーシャを調理室から追い出してしまった。そして再びサメの解体作業が始まった。

 

 ミーシャは調理室から出てすぐに遭遇した人物の紹介にすぐ取り掛かった。

「この人はユグドラシル生徒会長。さっき居たロザリーンの姉で、学校で一番偉い人なのだ、はい一言」

「なんだかよく分からないけど、先に突っ込んでおくね。自分はローザの姉じゃなくて兄、そして学校で一番偉いのは院長コルプルスね」

「あーん、ミーシャ間違えちゃった。でもね、でもね、この人ソフィーといい感じ。でもソフィーの恋人はこの人でも、親友はミーシャなんだから」

「こらこらやめなさい」

 ユグドラシルは、いろいろと紹介されて思わずそう言ってしまった。ソフィリータもカメラを構えたまま戸惑ったような表情を見せている。

「でも噂に聞いた話では、女の子に迫られるとテンパってしまうみたいで、こうしてミーシャが生徒会長さまぁ~」

 ミーシャはそのままユグドラシルに抱きつく。

「わったった、何をするんだっ」

「こらっミーシャ! やめなさい!」

 ユグドラシルはあたふたし、ソフィリータは怒り始める。ユグドラシルもいい迷惑だ。動画投稿者とは、得てしてそういうものである。

 ミーシャはユグドラシルから離れると、「きゃっきゃっ」と騒ぎながら外に飛び出していった。ソフィリータもユグドラシルに「申し訳ありませんでした」と謝罪して、ミーシャの後を追っていった。

 

 ミーシャは、甲板で一番に出会った人の紹介を始める。

「この人はジャン、大きなクラブハウスの店長で、去年までミーシャと同じ帝都に住んでいた。でも今は店を放り出してバカンス中」

「放り出してねーよ、ちゃんと代理人置いてきたってば」

「ゆかいな人、でもちょっと、いやかなりエッチ」

「なんだよこれ、何してんの?」

 ジャンは、突然現れたミーシャに自己紹介されて戸惑い、ソフィリータに尋ねる。

「今回の南の島バカンスについて、旅行記をつくっているんです」

「待てよ、お前ら動画投稿していたな? 俺のこと変に言うな――って、さっきかなりエッチとか言ったな?! そこ編集でカットしろよ」

「編集してエロ画像を背景にするよ、するよ」

「垢BAN食らってしまえ!」

 そう言い残してジャンは逃げ出した。突然現れてエロに仕立て上げられる、全く迷惑な話だ。

「あっ、この人は凄く凄く怖いつっぱりさんレフトール。でもソフィーが居るからミーシャ怖くないの」

「なんだお前ら?」

 ミーシャは、今度はジャンの傍に居たレフトールに突撃してきた。

「でもね、時々変な言葉使って戸惑わせてくれるの。何か一言!」

 ミーシャはレフトールにマイクを差し出す。

「ガチョ~ン!」

 レフトールは突然マイクを向けられ、思わず乗せられてしまった。しかしミーシャは、レフトールの一言をさらりと流して次の話に移動していた。

「そしてこの人は、レフトール親分の子分のマックスウェル。いつも眠そうにしているの、毎晩毎晩エロチャットにはまっているから寝不足気味」

「はまってねーよ」

 マックスウェルはめんどくさそうに答えた。

「おい、もう行こうぜ、サメの解体状況を見に行くんだ」

 レフトールは、マックスウェルを連れてさっさと立ち去ってしまった。ミーシャが妙な紹介文を述べるので、あまり評判は良くないみたいに見える。しかしまぁ動画投稿者とは、得てしてそういうものである。

 一方ミーシャは気にせずに、次のターゲットへと向かっていった。

 甲板に置かれたデッキチェアでは、ラムリーザとソニアが昼寝中だ。ラムリーザにソニアが引っ付く形で、一つのデッキチェアに二人が並んでいた。

「起きてますか~?」

 ミーシャの呼びかけにも反応しない。ミーシャは、寝顔をソフィリータに撮影するよう促してから、また勝手な説明を始めた。

「ここに寝ている男の子の方が、太鼓打ちでソフィーのお兄ちゃんラムリーザ。ミーシャ達のグループのリーダーで、領主様なんだ。さっきサメと格闘して疲れているのかお昼寝中~」

 割とまともな方の紹介文。しかし問題はやはり次の人の紹介。

「その横に引っ付いて寝ているのが、泣き虫お姉ちゃんソニア。のだまして泣いて、バクシングして泣いて、スシやギュードン食べてふえぇ。でもおっぱいぽよんぽよんすごいなぁ、ミーシャもこのぐらい大きくなりたいな」

 ソニアは寝ていて言い返してこないので、言いたい放題。そしてミーシャはカメラに寄ってくるようソフィリータに促して、ソニアの胸に手を伸ばした。そのままぐにゅぐにゅと揉み始める。

「ふっ、ふえぇっ?!」

 案の定ソニアは目を覚まして、ぽかあんとしている。そしてミーシャが胸に手を伸ばしているのが解ると、すぐに騒ぎ出した。

「ちょっと何よ、この媚び媚びミーシャ!」

 ラムリーザは、ミーシャの紹介では目を覚ますことは無かったが、ソニアが大声で騒ぐと流石に目を覚ましてきた。

「何やっているんだよ?」

「このちっぱい筆頭が胸揉んだ!」

「こらこら……」

 折角気持ち良さそうに昼寝していた二人をわざわざ起こす迷惑なミーシャ。やはり動画投稿者とは、得てしてそういうものであった。

 

 そろそろ夕方になり、空は茜色に染まってきた。波は静か、日差しも弱くなり涼しい風が心地よい。

 ゲームに飽きたリリスは、甲板に出てきてマストを登って見張り台に行った。

「何か見えますの?」

 ユコの問いに、「海が見えるわ」と答えるリリス。あたりまえである。

 そこにミーシャも登ってきて、半分沈んだ夕日を指差して「夜に近い晩~っ!」などと言っている。割と意味がわかり難い表現だ。

 茜色だった空は徐々に暗くなり、やがて群青色となり、一つ、また一つと星が瞬きだし、その内星空に変わっていた。

 晩御飯はロザリーンが苦心して作ったサメのヒレスープと、リゲルの釣った魚を焼いたもの。フォレスター家専属のコックも同行していたのだが、こちらの方がキャンプらしいということで、ラムリーザの乗る船だけはワイルドだった。

 満天の星、おいしい料理。そしてほぼ全員水着姿ということで、水着パーティとなっている。そしてそのパーティの様子は、ミーシャとソフィリータの二人によってしっかりと撮影されていたりした。

「これがサメヒレスープですっ。サメのヒレ、うん。トロットロの食感がいいし、おしっこ臭さもなくなっている」

 ミーシャは、食べ物のレビューみたいなものをやっていたりする。おそらく後日、マトゥール島旅行記として投稿されるのだろう。メンバーの紹介文と共に――。

 

「自然のプラネタリウムだな」

 船首の方は明かりをたくさんつけて明るいが、船尾ではリゲルは明かりを消して暗くして甲板に寝転がって空を見上げていた。

「町明かりの無い場所だと、星がくっきりと見えますね。ミルキーウェイもあんなに明るく」

 傍にはロザリーンが寄り添って、一緒に空を眺めていた。

 

 船は静かに南へと進んでいる。

 予定では、明日の朝にはマトゥール島に到着する予定になっていた。
 
 
 
 
Sponsored Links



 
 
 前の話へ目次に戻る次の話へ

Digiprove sealCopyright secured by Digiprove © 2020

return to page top

©発行年-2021 フォレストピア創造記