ブランダーバス誤発射対策
12月15日――
ドゥン!!
この日の午前中、フォレスター邸敷地内にある庭園アンブロシアの方角から、低い破裂音が何度か響いていた。
今日は休日、ラムリーザは朝からブランダーバスの射撃練習をしていた。
毎日一時間は練習時間に当てていたおかげか、今は的を描いた紙に確実に当たるようになり、外れになることはほとんど無くなっていた。さらに、たまにはの確率で、的の真ん中に命中するようにもなっていた。
進歩の跡が顕著に現れていると言えるだろう。
「上達しましたね、兄貴!」
ラムリーザが振り返ると、そこには未来の騎士団長、今は騎士見習い、そして兄嫁ラキアの弟であるジェラルドが立っていた。ジェラルドはラムリーザと目が合うと、敬礼して見せる。
右腕を地面から見て水平近くに掲げ、右手の人差し指と中指だけを立てた状態で右目を隠す。そして良いタイミングで二本の指をパチッと広げてみせるのだ。
先日のパーティで、ラムリーザが咄嗟に行ったやたらとかっこつけた感じの敬礼。それが何故か周囲に広まり、騎士団にも浸透しているようだ。
その地方では、領主の影響が領民に出るといった格言があるが、まさにその実例であった。
現騎士団長のメトンや、副団長格のカリポスは、フォレスター邸から近い高台にある高級住宅街ブルー・ジェイ・ウェイに住居を構えているが、ジェラルドだけはラムリーザから見て兄嫁の弟であり続柄が近いというのもあり、屋敷に個室を与えられて住み込みで騎士の訓練をやったり、年が明けるころから学校に通う予定でもある。
「ふあぁーあ、うるさいなぁ」
ジェラルドと一緒に、ソニアも現れた。いつもは学校に行くためにラムリーザが起こしているが、今日は休日と言うこともあり、起こさずに放置していた。
だが銃の練習音が多少はやかましいので、寝ていられずに起きてしまったのだろう。ちなみに現在九時半頃、強引に起こされたからと言って咎められるような時間ではない。
それと、幼馴染が毎朝起こしてくれるというお約束の展開があるが、何も女の子側が起こす側とは限らないという良い例でもあった。
「起きてきたね。明日から朝は耳元で発射して起こしてあげようか」
「やだー」
まだ若干寝ぼけ眼で、舌足らずな声で嫌がるソニア。
そしてドゥン! と低い破裂音が三連発。この銃は、一つの弾薬を込めると三発まで弾を発射できる、三連射弾丸であった。結果は、当たり、真ん中、当たり。うん、良い感じに上達している。
努力の結果が顕著に表れると、やる気も自然と上昇するものである。
ラムリーザはすぐに銃身の横を開いて弾薬を装填する。すかさずドゥン! 真ん中だ。
「兄貴流石です!」
弟分ジェラルドも、ラムリーザを持ち上げる。弟分と言うか、実際に続柄から見ると弟である。
そして二発目、ドゥン! おしい、真ん中から一つ外側の輪の右内側に命中。ラムリーザは撃った位置から少しだけ銃の先を左にずらす。
「ねぇ、あたしも撃ちたい」
ソニアが近づいてきて、ラムリーザの服の袖を掴んで言った。見ているだけでは面白くない、自分もやってみたいと考えるのは、ソニアの性格から考えると普通に有りえることであった。
「でも危ないからなぁ、おもちゃじゃないんだぞ」
ソニアは前回撃ったときに、銃の反動に抗えずに転倒したことを覚えているのだろうか?
「ラムは使っていいのに、あたしが使ったらダメなのはおかしい」
「まあいいか」
ソニアの言うことも、正論なのかどうかは置いておくとして、横から邪魔をされたのでは練習に身が入らない。一発撃たせて気が済むなら、撃たせて黙らせるのが得策だ。
ラムリーザは、銃をソニアに手渡した。そしてポケットから弾薬を取り出して、それも渡した。
「うわぁ、いつ見てもなんだかかっこいいなぁ。ブランダーバス、長いからブラバって呼ぼうよ」
「なんでもかんでも略したらいいってもんじゃないぞ」
「それじゃ、ダバス」
ソニアは重そうにしながらも、なんだか嬉しそうに銃をひっくり返して見入っている。持ち上げてひっくり返してみて、引き金に触れてみて――ドゥン!
「のわっ!」
ジェラルドは尻もちをつき、被っていた帽子が跳ね飛んだ。地面に落ちた帽子は、ひさしの部分が少し削れている。
「ふえぇ、びっくりしたぁ」
銃を暴発させたソニアは、それを取り落として一人ぽかーんとしている。取り落としたというよりは、前回と同じく発射の反動で手の中から弾き飛ばされたと言うべきだろう。
「何やってんだよ危ないな!」
ラムリーザは、落ちている銃を拾いあげて怒鳴りつける。少しでも銃口の向きが違ってたら、今頃大惨事になっていたかもしれない。
「あたし知らない! 勝手に弾が出た!」
「引き金触っただろうが!」
「触ってない!」
ラムリーザとソニアは、朝から怒鳴り合いである。ただしこの場面では、圧倒的にソニアが悪いし嘘もついている。これはどうやら一発だけ弾が残っていたのが災いしたようだ。
「ジェラルド、大丈夫か?」
「あっ、ああ、大丈夫です兄貴」
ラムリーザは、ジェラルドの腕を掴んで立たせる。どうやら帽子をかすっただけで、怪我はしていないようだ。
「しっかしこれは危ないな。勝手に触られて暴発してたら、いつか事故が起こっても不思議じゃないな」
「それなんですよ。時々ブランダーバスの誤射で、怪我させたという事故は起きていると聞きます。だから、これは即刻回収封印すべきだという意見も上がりつつあるのですよね。実際に扱いきれずに返却した貴族も居るとか」
「う~む……」
もうソニアには触らせないと決めるのは簡単だが、勝手に触られては意味が無い。それに返却するのももったいない。せっかく的に命中させられるほど腕が上達したのだ。自分にしか扱えなければ、少なくとも他人絡みの暴発事故は防げる。
「これがファンタジー物語なら、魔法で個人認証させて資格無き者には扱えぬ、とかできるのだろうけどなぁ」
ラムリーザは、弾薬の無くなった銃の引き金を引いてカチカチと鳴らす。この引き金を、自分以外には動かせないようにできればあるいは――。
ソニアは不貞腐れて、しゃがみ込んで池に小石を投げている。だが今回悪いのはソニアなので、ラムリーザは必要以上の慰めの言葉は掛けない。
「どうしますか兄貴、やっぱり返却しますか?」
「いやそれはもったいない。そうだなぁ、この引き金が問題なんだ。もっと引き金を簡単に動かせないようにできれば――」
そこまで言いかけて、ラムリーザは閃いた。親指と人差し指の二本だけでクルミの殻を割るぐらいの力が無ければ引き金を動かせないようにできれば、ソニアなどはそう簡単に暴発させられなくなるだろう、と。
「この引き金、重さを調整して、もっと力を込めないと動かせないようにできるかな?」
「ん~、カリポスの旦那に頼めばできると思いますよ」
「早速調整してみてくれ」
ラムリーザは、ジェラルドにブランダーバスを手渡して、引き金の調整を依頼した。
騎士団の構成員としてジェラルドと共にフォレストピアにやってきた主なメンバーは、暫定的騎士団長のメトンと共に、もう一人カリポスという者が居た。
カリポスは騎士であると同時に、技術者でもある。ラムリーザの元にブランダーバスが持ち込まれた際、いろいろとメンテナンスや弾薬の製造などをする必要があり、こうした技術者も各地域の領主の元には派遣されている。
このブランダーバスは、ごく一部の者しか扱っていない特別な護身具。ただし、ジェラルドの言う通り、扱いが難しくて返却するものも現れており、ほとんど広まっていない。
ここまで熱心に練習した者は、ひょっとたらラムリーザぐらいかもしれないのであった。
ジェラルドに旦那と呼ばれているカリポス。ちなみにメトンはじじいと呼ばれている。
ブランダーバスの改良が終わるまで、暇な時間となった。
ラムリーザは、池の傍に座り込んで小石を投げこんでいるソニアの傍に座った。ソニアはぷいと顔を背けて、少しだけ腰を動かしてラムリーザから離れる。さっきの言い合いを、まだ怒っているのだろう。
しかしソニアはラムリーザの様子が気になるのか、横からラムリーザの腕を指でつつく。そしてそっと腕から指先へと手を這わして、掌の上から握った。
次の瞬間、ソニアはラムリーザの傍にぴったりと引っ付く。もう仲直りか?
「ラム、お腹すいた」
仲直りの第一声がこれである。腹が減っては戦もできぬという格言があるが、喧嘩もできぬといったところか?
「朝ごはん食べたばっかりだろ」
「まだ食べてないよ」
「じゃあ食べてこい。もう片付けられているだろうけど、ナンシーに頼めば何か作ってくれるだろ」
「ラムも一緒に食べようよ」
「僕はもう食べたからいいよ」
「うううん、行こうよっ! もう一回食べてよ!」
ソニアは甘えたように鼻を鳴らして、ラムリーザの同行を強要する。
「しょうがないな」
ラムリーザは、ソニアに促される形で立ち上がる。どっちみちブランダーバスの改良が終わるまで暇だ。ソニアが朝食を取っているところを、紅茶でも飲みながら見るのも悪くない――のかな?
二時間後、昼前になって、ジェラルドは戻ってきた。
「引き金を固くしてみましたが、こんな感じかな?」
ジェラルドは、ラムリーザにブランダーバスを差し出す。ラムリーザはそれを手に取り、実弾が入っていないことを確認してから引き金を引いてみた。カチリ。
「ん~、それほど変わっていないと思うけど」
とりあえずソニアに手渡してみる。
「また撃ったら怒るのでしょ」
不貞腐れている。
「怒らないから引き金を引いてみて」
ソニアは銃を手に取って、引き金に指をかけて引こうとしてみた。
「あれっ? ううん、固い……」
ソニアには動かしづらいようだ。うーんうーん唸りながら、顔をゆがめて今度は両手で持って両手の人差し指で引き金を引いて――カチリ。
「あ、両手だと動かせるか。もうちょっと固くしてもいいかな」
ラムリーザの目的は、とにかく引き金を重くして、ゴムマリを破裂させたり、クルミの殻を割ったり、銅貨を指だけで捻じ曲げるほどの力が無ければ引き金を動かせないようにすることである。
「それと引き金の隙間を小さくして、指を二本入れられないように」
つまり片手の指二本で上記の馬鹿力を発揮できなければ撃てないようにということだ。
「固くして何なのですか?」
「僕以外が撃てないようにするのさ」
ラムリーザの注文を不思議がるジェラルドに、簡単に説明してやった。
もっともラムリーザの対策では、ラムリーザ並みの力があれば使えるということになる。そこはもう仕方がない。たちまちは、ソニアが遊んで暴発させないことが目的である。
「ならば直接カリポスの旦那の所へ行こうよ」
ジェラルドは、ラムリーザも技術室へ連れて行って、自身で確認しながら調整する方法を勧めた。
「それもそうだな、案内してくれ」
昼食後、ラムリーザはジェラルドの案内で、ブルー・ジェイ・ウェイに住むカリポスの家を訪れることとなった。
ソニアには「部屋でゲームしてていいぞ」と言ったのだが、返事は「ラムと一緒に行く」だった。ソニアはゲームばっかりやっているが、完全な引き籠りではないのだ。
ブルー・ジェイ・ウェイ――、ラムリーザの住む屋敷の近くにある、高級住宅街。山と森が近いことから、明け方にはちょっとした霧に包まれることが特徴である。
「こ、これはこれは領主様。こんなごちゃごちゃしたところにわざわざお越しに頂いて――」
「いいからもっと砕けた感じで良いよ、カリポスさん」
「あっはい。ようこそ、我が技術室へ」
もちろんカリポスも、この地で定着した敬礼は欠かさなかった。仕方がないのでラムリーザも答礼で返しておく。
肘から指先までピンと伸ばすのがコツだ。ピッと指を開いた後は、その指先がぶれないのが美しい――などと、そんな格式は全くない。ただのラムリーザの咄嗟に思いついた行動が、意図せぬ形で広まり定着しただけである。
むろん他の地域には、全く浸透していない。地域文化とは、こうして生まれていくのかもしれないという良い例であった。
カリポスの家は、外から見ると騎士の家。しかし玄関をくぐってすぐそばの部屋に入ると、突然ごちゃごちゃした研究室? 実験室? 道具は火床や金床、周囲には鉄片や何かの部品が転がっている、カリポス曰く技術室へと姿を変える。
帝国には鍛冶師兼騎士も数人存在する。そしてラムリーザのような大物の所には、ブランダーバスの扱いにも精通しているエリートが送られてくるといったものだ。
「早速ですが、引き金をもっと重くしてください。あと、引き金の周囲を狭くして、指が二本入らないように」
「既にまともに使用するのは困難ですが……」
そこでラムリーザは、カリポスの目の前で引き金を引いてみせる。何も変わったこと無く、カチリと撃鉄は動く。
「すごい力をお持ちですね」
カリポスは銃を受け取ると、早速改良作業に取り掛かった。
「ソニアが暴発させられなくなったら、それでいいのさ」
「何よ! あたし暴発させてない!」
つい数時間前の出来事も、忘れるのか無かったことにするのか、ソニアは強引だ。ソニアからすれば、暴発だけでなく、つまみ食いもコップを倒したことも、全て無かったことになっている。都合の悪いことは忘れよ、彼女は悪魔か?
カリポスは、銃身を開いて何やらいじっている。引き金周囲の枠を少し小さい物に取り替えている。
「ブランダーバス本来の目的と、大きくそれて来ているのが問題なのですよねぇ」
作業をしながら、そんなことをつぶやいている。
「本来の目的とは?」
「大貴族の護身具ですよ。そんなに戦闘知識の無いか弱い貴婦人にも、自衛のために持たせようと考えて造られたものなんですよ」
「暴発したら、逆に危ないからね」
「いえいえ、そういった事故の類ではなく、そもそも力の無いものは、火薬の爆発の反動に腕が耐えられないのですよ」
「あー、なるほどね」
それは以前、メトンから聞いたことだった。
確かにソニアは、弾を発射するたびに銃を弾き飛ばされている。ラムリーザの腕力があってこそ、発射後の反動にもブレずに使いこなせているが、暫定騎士団長メトンなどが使うと、取り落すことは無くとも発射と同時に銃身が大きくブレる。
「弓矢のように大きなものでなく、携帯できるといった点で使えると思ったのですが。それに、これ自体が重さもありますからね」
確かにブランダーバスは、鉄の筒でできているようなものだ。しかしあまり軽い素材で作ると、発射の衝撃に耐えられないのだろう。
さらに扱えたとしても、弾丸が命中するかどうかとなると、また別の問題があるわけで。そう簡単に都合の良い武器は、作れないといったところだろう。
「貴婦人方にも、大の戦士が放つようなパンチ力を遠距離から放てるように、との目的でしたが、強力な一撃は強力な反動を生み出すもの。結局これを使いこなすには、自分自身の肉体を鍛える必要があったわけで――。それで、どのくらいの固さにしましょうか?」
「そうだねぇ、とりあえずカリポスさんが動かせないよって所まで固くしてみてください」
「了解した。やれやれ、これだとさらに本来の目的から離れてしまうよ」
三十分ほどして、カリポスの作業は終了した。この引き金は、自分では動かせないらしい。
ラムリーザはまずソニアに持たせてみた。むろんソニアは、引き金を全く動かせなかった。両手の指で動かそうにも、引き金周囲の空間を少し狭められたので、二本の指は入らない。
次にラムリーザ自身が使ってみる――カチリ。撃鉄はこれまでと同じように動いた。
「驚きましたな……」
カリポスも、ラムリーザの指の力に驚いている。
「もう少しだけ固くしても問題ないかな」
「これ以上ですか?! いよいよ本来の趣旨から離れてしまった。そんな力があるのでしたら、こんな小道具など必要無いでしょう?」
「折角開発された武器を、誰も使わなければもったいないでしょう? せめて僕だけでも使いこなせてみせますよ」
ラムリーザは、再びカリポスにブランダーバスを手渡して、頼もし気に言ってみせるのだった。
数十分後、「これでちょっとやそっと鍛えたぐらいでは動かせません」との意見付きで、改造は終わった。
ラムリーザは再び使ってみる。少し固く感じるかな、ぐらいで、少しばかり力を込めないと動かない。つまり、ラムリーザ自身も不用意に暴発させることは無いということになるだろう。
「それもう、あなた以外誰も使えませんよ」
カリポスの言う通り、ジェラルドも興味を持って引き金を引こうとした。しかしどれだけ力を込めてもびくとも動かなかった。
毎日剣の修行をしている騎士見習いの力でも動かせない物と化してしまったのだ。
「良いことです。もしも敵に奪われたとしても、敵は使えず困惑しているところに、反撃を食らわせて取り返せるでしょう」
ラムリーザはある場面を想像していた。
何かの攻撃を食らって、ブランダーバスを敵に奪われてしまった。敵は「これでお前の武器は奪ってやった。お前が俺に対して優位で居られるのはこの武器があったからこそだ。奪ってしまった今、お前は俺に絶対に勝てんのだ!」などと得意げになって逆に使おうとするが、引き金は動かない。
何故だ?! と敵の意識が銃に向かった瞬間、一気に詰め寄って銃を奪い返すもよし、顔面を掴んで持ち上げてやるもよしだ。接近戦に挑めば、相当の手練れでもない限り、ラムリーザの勝ちとなる。
技術室に、カチリカチリとラムリーザが引き金を引いて撃鉄の鳴る音が続いている。
「それは考えなかった。そうだな、敵に奪われた時――、そのことも想定しなければならないんだ。ラムリーザ殿、か弱い貴族のご婦人を守るにはどうすれば良いのでしょう?」
カリポスは、ブランダーバスの優位性を失ったこともあり、少し落胆した感じで尋ねてくる。
「そのために、あなたたちのような人が居るのではないでしょうか?」
ラムリーザは、自分を鍛えると同時に、騎士団の存在や個人的な護衛役であるレイジィを信頼していた。レイジィはラムリーザ個人を守り、騎士団はフォレストピアを守る。みんながみんな、自分で自分の身を守れるのであれば、そのような存在は必要無くなるといったものだ。
「そっ、そうだよなっ。兄貴やソニア姉ぇ、この町は俺たちが守るんだよ」
「なるほど、それも然りですな」
「屋敷に敵の侵入を許した時点で、戦いは負けたようなものだよ」
「そうだそうだ! 俺は兄貴の屋敷の門前に堂々と構えて、敵を一人たりとも通さない!」
「後方勤務だね」
「うっぐっ、それもいいじゃんよぉ兄貴ぃ。あ、でも先陣もいいなぁ……、どっちがいいでしょう、カリポスの旦那ぁ?」
「団長のメトン殿と相談してくだされ」
道具に頼って戦いに勝てるとは限らない。要となるのはやはり人なのだ。「人は石垣、人は城、人は堀」とは誰が言った言葉であっただろうか? 最終的に言えることは、国は人なりと言ったところである。
こうして騎士団の意気込みを上昇させると同時に、ブランダーバスをソニアが暴発させないように、またそれをラムリーザ以外が使いこなせないようにできたという、実りの多い一日であった。
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