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学年末試験勉強

 

 今日は学校は休み。そして来週からは学年末の試験が始まる。

 そういうわけでリリスとユコは、今回もラムリーザの部屋を訪れて、一緒に試験勉強だ。

 リゲルとロザリーンは、いつも通り二人で図書館にでも行って勉強するらしい。

 リゲルの言い分では、ソニアやリリスと勉強したら成績が落ちるとのことだが、それは否定できないのが残念だ。さらに、自分のハーレムは自分で面倒を見ろとのことだが、それは違う。違わないかもしれないが、違う。

 さて、今日は勉強目的ということで、リリスとユコは学校の制服で現れた。

 最初に勉強会を開いた時は、二人とも遊ぶ気満々だったが、そこでラムリーザの見せたゴム鞠破裂を見て以来、勉強会は今の所真面目に行なわれている。

「それはいいね、よし、こっちも着替えるぞ」

 ラムリーザはそう言うが、ソニアは一言「やだ」と答えた。相変わらずの、制服嫌いだ。

「言うことを聞かない娘は、桃栗の里~」

 桃栗の里、自宅から通えない学生のために用意されている学校指定の寮。そこをラムリーザは、ソニアに言うことを聞かせるための脅しとして使っていた。

 そう言われてソニアは、しぶしぶと着替え始める。

 ソニアが制服を嫌がる理由の一つは、胸が大きすぎてブラウスの上から二つ目のボタンまでとめることができない点であった。最近は上から三つ目も危うい。

 胸に合わせたサイズのブラウスにすると、それ以外の部分がゆるゆるのだぼだぼになってしまう。それを回避するには、特注サイズか乳袋しかないだろう。

 そんなものだから、ソニアは制服のリボンを結んだことがない。そういうことが、風紀委員であるケルムの心象を悪くしていたりするのだ。そういえば、ユグドラシルに次いで、ケルムは生徒会副会長に就任していたっけ。

「こうしてみると、ソニアの格好ってエロっぽいわね」

 ソニアの着替える様をじっと凝視していたリリスは、その様子を見てくすりと笑う。

 確かにブラウスに収まっていないはだけた胸は、それだけで存在感を強烈に放っている。それに、健康的な生足が追加されていた。

 本来ならばサイハイソックスが太もものほとんどを覆っていて、スカートの裾から覗いている肌は、精々数センチぐらいのものだ。しかし、学校に行かない限りソニアは履こうとしないので、今は生足丸出しだ。

「色っぽさと大人しさを、ギリギリのバランスで保っている制服ですの」

 ユコの評論も、それっぽく聞こえる。深く考えるとよくわからない評価だが、深く考えてはいけない。

「ブラウスじゃなくて、トレーナーでもいいのに。あと靴下も無くて素足OKならいいのに」

 ぶつぶつとソニアは文句を言っている。

 去年までは、私服自由の学校に通っていたので、ソニアは好き勝手な格好をしていた。しかし、今年からは制服に縛られて、不満を募らせていたりするのだ。

「私服自由の学校に転校するのなら、手続きをしてもらうよ」

 ラムリーザは、ソニアが自分から離れたくないと思っているのを知っているので、ソニアに言うことを聞かせるときは、いつもこんな調子だ。もっともラムリーザ自信もソニアと離れたくない、それが故に無理を通して一緒にここへ連れてきたわけだが、そこは駆け引きだ。

 さて、準備が出来たところで学年末試験の勉強だ。

「私にとっては、この学校の最後の試験勉強なんですのね……」

 ユコは、寂しそうにつぶやいた。ユコは、父親の転勤と共に、次の春から新天地へと旅立つことになっていた。

「ユコの成績なら、新しい学校に行っても恥ずかしい思いをすることはないさ」

 ラムリーザは、そう励ます。今のユコには、そう言うしかない。

 ただ、ほぼ中間レベルのユコぐらいの学力なら、学校次第でどうなるか分からないところもあった。今の学校よりもレベルが高ければ悪い方へと順位は落ち、逆にレベルが低かったら優等生の仲間入りだ。

「ソニア学園に入れば、ユコは成績優秀者になれるわ」

 リリスは、いつ何時もソニアを煽ることは忘れない。言いたいことはわかる。ソニアぐらいの成績の者ばかりが通っている学校だと言いたいのだ。当然ながら、ソニアはすぐに噛み付く。

「何よ! その代わり、全校生徒で一番のちっぱいになる!」

 噛み付き先が少しずれているが、全校生徒がソニア並の胸のサイズになると、それはそれで怖い。

 こうなると、二人の迂遠なる舌戦の幕開けだ。

「恐怖の風船学園ね、風船おっぱいお化けの大群。教室の座席には、乳置き場まで完備されていて、五キロの重さを気にすることも無く授業を受けられるようになっているのよ」

「そんな変な所じゃなくて、吸血鬼学園に行けばいいの! 生徒全員が陰湿な根暗で、暗がりの中で手探りで授業を受けるの。当然私語禁止! そんでもって、みんな役立たず魔女!」

「はい、意味のない喧嘩は止め」

 ラムリーザは、ソニアとリリスの意味不明な舌戦を停止させる。どちらの提案する学校も、気味が悪いことこの上ない。乳置き場って何だよ、想像できないぞ、ラムリーザはそう思いながら、四人が向き合っているテーブルの上、丁度真ん中辺りに、いつも握っているゴム鞠をそっと置いた。

 ゴム鞠を見ると、パタリと無駄口が収まる。いい感じに牽制になっている。

 そのまま二時間ほど、黙々と勉強を続けていた。

 

 休憩時間、用意していた饅頭にかぶりつきながら四人は雑談を始めた。

「それで、ユコはどこの学校に行くんだろう。すぐに会えるような近くだったらいいね」

「近かったら転校なんてしなくていいはずですの」

「それもそうだね、それじゃあやっぱり帝都かなぁ」

「お父様は、新しい町と言っていましたわ」

 新しい町と言ってしまえば、初めての場所なら全てだ。ラムリーザも、ほぼ一年前に、新しい町へ引っ越してきたことになる。

「新しい町かぁ。ユコはどんなところに住んでみたい?」

「そうねぇ、海に憧れますわ。帝国最南端の港町、アントニオ・ベイとか。これまでにも何度か引越しはありましたが、海辺の町はまだ行ったことがないんですの」

 現在住んでいるポッターズ・ブラフは内陸の町なので、身近なところに海がない。

「海と山は、どっちが好きだい?」

 ラムリーザの問いに、ソニアは「海」と答えた。ラムリーザが何故だろうと聞く前に、リリスが口を挟んでくる。

「風船は海に浮かぶけど、山だとただの重りですものね、くすっ」

「むっ、リリスは山に行ったらやまんばになるから海に行くしかないから! いや、海に行ったら磯女になるからダメ。リリスは外に出たらダメ、家の中に篭って根暗吸血鬼になるしかないの」

 べらべらべらべら喋り続けて、ソニアはリリスを攻撃しているつもりになっている。

 ラムリーザは、迂闊な質問をして争いの種を撒いたことを後悔した。この二人の舌戦は、何が引き金になるか分からないから困る。

「あっ、ココちゃんがありますわ」

 一方ユコは、部屋に転がっている白いぬいぐるみのココちゃんを見つけて抱き上げる。だっこしながら、「このぬいぐるみ欲しいんですが、ちっとも懸賞に当たらないのよねぇ」と言っている。

「ぬいぐるみじゃない、ココちゃんはクッション!」

 あいかわらず、クッションとぬいぐるみの狭間で揉めているソニア。ソニア以外には、ぬいぐるみとクッションの違いが分かっていない。そもそも違いがあるのかどうかすら怪しい。

「ああそうそう、試験明けの帝都ライブが、僕達の参加する最後になりそうなんだ。ジャンも本格的に二号店の運営準備に取り掛かるって言っていたし。そうなったら、さらにその次は、いよいよフォレストピアでのライブだよ。だから、来月は割と暇かも……」

 ラムリーザの説明を聞いて、ユコはまた寂しそうな顔をする。

「いいなぁ、フォレストピアでのライブ。私はもう居なくなっちゃうし……」

「あ、でもそうでもないかも。電車で移動可能なところに引っ越したのなら、ライブの時だけ会って一緒に演奏することも可能だと思うよ」

 もしも、ユコが帝都よりも西側に引っ越したのなら、これまでと同じぐらいの労力で新開地フォレストピアに来ることもできる。そうなれば、ラムリーザの言うとおり、ライブの時だけ毎回会う事も可能だ。

「それなら、寂しさも少しは和らぎますね」

 ユコは、にっこり笑って言った。

「来月中に、盛大なお別れパーティを開催してあげるよ。ジャンにも話を通しておくから、楽しみにしているんだね」

 ラムリーザはそう言ってから、「さて、休憩終わり、勉強再開」と言ってソニア達を叱咤して、試験勉強を再開するのだった。

 折角のんびりできそうな三月。それをソニア達に補習で過ごさせることだけは回避させてあげたかった。

 庭の桜も、少しずつ緑色が見え始めてきていた昼下がりのことである。

 
 
 
 
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