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リアル金塊探しゲーム

 
 8月3日――

 

 小さな方の洞穴を、右側へ右側へと進んでいった結果、一同は大きな広間に出た。

 大きさは割と広いと思う。ゴツゴツとした岩が足元に広がっているし、ライトの明かりがかろうじて奥側の壁に反射する程度である。奥行き10m程であろうか? 天井も急に高くなり、手を伸ばしても天井に届かない。

 これがもしもゲームなら、ラスボスが待ち構えているような展開になっていただろう。

 前衛の戦士達は、ジャンが長剣を、レフトールが斧を、ソニアは細剣、リリスはフレイル。中衛のリゲルは短刀を、ユグドラシルは槍を、ソフィリータはメリケンサック、後衛のラムリーザはソーサラースタッフを――構えていない。ここはゲームの世界ではない、現実だ。そんな雰囲気は、テーブルトークゲームで遊ぼう。

「宝はどこやー」

 レフトールが叫ぶと、空間内に残響音が響き渡る。「宝はどこやーこやーこやーこやー」こんな具合であろうか。

「リゲル、この先は?」

「石版の情報だと、記されているのはここまでだな。五枚目の石版以降の続きがあれば話は変わってくるが、右へずっと進み続けて来たからここで合っているはず」

 地図の描いてあった石版には、他の石版のありかが四箇所のみ記されていたので、これ以上の情報は無いと考えてもいいだろう。

「ではこの広間を調べるか。ユグドラシルさん、ライトを一本持ってこの入り口に待機していてください」

「承知した」

 ラムリーザは、ユグドラシルにロープの先端を渡して待機させる。これでユグドラシルの姿が確認できる位置に居れば、入り口がわからなくなることは無い。

「念のためにソフィリータはユグドラシルの警護で待機。他のメンバーはライトの光を見失わないように、各自自由に散開。もしも横穴などが見つかっても、むやみに入らずに全員集まってロープを手繰り寄せてから進むこと」

 ラムリーザは簡単に指示を出して、広間をライトで照らしながら見回した。

「金塊があるはず、金塊があるはず!」

 ソニアはそう言いながら広間へ突進し、リリスとジャンもそれに続く。しかし適当に周囲をうろうろしても、それっぽいものは何も出てこなかった。

「痛いっ!」

 その時、ソニアの悲鳴が上がる。ラムリーザは何事かと思って、ソニアの傍へ向かい、ライトでソニアを照らした。ソニアの脛に擦り傷ができていて、少し血がにじんでいる。

「そんな短いスカート履いているから」

 リリスは呆れた様に言う。確かにソニアはいつもの際どい丈のミニスカートで、洞窟探検にしては軽装過ぎる。それに巨大な胸が邪魔をして、足元のでこぼこした岩が見えないから危険すぎた。

「ソニアチェンジ、ソフィリータと交代」

 ラムリーザは仕方なく、ユグドラシルと一緒に待機させるメンバーを変更させた。

「えー、やだー」

 ソニアは嫌がるが、ラムリーザは押し込んでソフィリータと待機役を入れ替える。ソフィリータも短い丈のホットパンツだが、足の大半を白い厚手のサイハイソックスで覆われているので、ソニアと違って露出は少ない。それにソフィリータは身軽で、足腰の強さには定評がある。

 ユグドラシルとソフィリータの組み合わせを優先して待機させたのだが、ここは出てきてもらうべきだろう。

 その時、リリスは小さく「あっ」と声を漏らしてその場に倒れこんだ。ジャンが急いで駆け寄って、リリスの手を取って立ち上がらせる。

「どうした? 大丈夫か?」

「全く、歩きにくいわね」

 リリスはガツガツと地面を蹴っている。その足元をライトで照らしたジャンは、思わず突っ込みを入れる。

「ちょっ、こんな洞窟の中にヒールのあるブーツで来るとは……」

 どうやら岩ででこぼこの地面に、ブーツのかかとを取られたようだ。

「足元を良く見れば大丈夫よ。私はちゃんと足元見えているから」

 リリスの言葉は、ソニアに対する当て付けだ。しかしソニアはユグドラシルの元へ向かって待機組みになっているので、リリスの言葉は届かずに口論に発展する事は無かった。

「駄目だ。リリスも待機組に変更、ユグドラシルさんと交代」

「ソニアとは嫌よ、私は待機しないわ。ラムリーザと待機する」

「何よ! 誰があんたなんかと!」

 リリスはラムリーザに手を取られて入り口付近まで引っ張られてきていたので、今度の台詞はソニアに届いてしまったようだ。

「うるさいガタガタいうなー。僕も待機する、探索組みはユグドラシルさんとリゲルとジャンに指揮を任せるよ」

 ラムリーザはてきぱきと指揮権を移動させて、ソニアとリリスの間に割り込んで口論の邪魔をするのであった。

「全く、君達は探検を何だと思っているんだ?」

「テーブルトークゲームと同じよ」

 リリスは何の悪びれも無く言ってのける。

「それならもっと探検に向いた衣装ってのもあるだろう?」

「ソニアなんか、テーブルトークの世界ではビキニアーマーなのよ」

「なっ、ちゃっ、違うわよ! リリスは腰みの一つで上半身丸出しのバーカーサー女」

「それを言うなら狂戦士、バーサーカーな」

 そこで三人の間で、冒険者として相応しい衣装について論議が始まる。

「そもそもミニスカアーマーが許されるのはゲームの中だけ。ソニアがそんな格好で立ちふさがってきたら、僕は迷わずに下半身に攻撃を集中するね。ガードの甘いところを攻める、それが攻撃のセオリー」

「ダメよそんなの。ラムリーザはふとももに見とれて、そこへの攻撃をためらわなくちゃ。その隙にこっちは攻撃するのよ」

「そもそも何でゲームの世界だと、女キャラは防御を捨てて色気に走りがちなのだろうね」

「あたし重装備なんてできないもん。力が無いので、ガチガチの鎧着たら動けなくなっちゃう」

「だから防御を捨てて、スピードに全振りするのよ」

「つまり、装備の傾向がおかしいわけでなく、重装備できないような力の無い娘が戦場に出てきているのが間違いなんだね」

「そういうこと、あれは仕方なくそういう格好をしているのよ」

 ラムリーザは、ソニアとリリスの理論を聞いて、ゲームなどに登場する女性が何故肌をあらわにした傾向なのかを理解したつもりでいた。だから、こう締めくくる。

「君きみたちのような可愛い娘が戦わなくともよい、そんな世界を築きたいものだな……」

 

 一方洞窟探索組は、リゲルの指示の元で地道な探索が進められていた。

 リゲルは、探索組み全員で横一列となってお互いに手をつなぐ。その状態で、右端の人は壁に手をつけたままでまっすぐ奥へと進んで行く。奥に到達すると、今度は壁とは反対側の人を軸にして人員をスライドし、その状態で引き返す。入り口側に戻ってくると、再び最初の壁とは反対側の人を軸にして人員をスライドさせて再び奥へと向かう。

 こうすることによって、各自がバラバラになって無駄に動き回るよりは、確実に全ての場所を探索できるといった効果があった。

 その結果、広間となっている場所のほぼ中央に、少し急な坂を伴うさらに地下へと降りていける穴を見つけ出すことに成功した。

 リゲルはラムリーザを呼び、洞穴の入り口から持ってきているロープの先を広間中央の穴へと移動させる。

 穴の奥を照らすと、かすかな明かりが反射した。輝くものが奥にあるということだろう。

「ひょっとして金塊?」

「そうかもしれないね。レンガに埋まったりしたら危ないので、ソニアはここで待機」

「あたし埋まらないもん!」

 ラムリーザは、金塊探しゲームでソニアがよくやるミスを例に出してからかったが、ソニアはラムリーザからライトを奪うとさっさと奥へと入って行ってしまった。

「あっ、お宝の独り占めは許さないわ」

 続いてリリスも後を追いかけていく。

 ラムリーザは、ロープを持ったまま後からついていった。穴の奥は、それほど広くない奥行き3mほどの小部屋となっていた。そして部屋の置くには壷が並んでいて、壷の手前にはキラキラと輝く握りこぶし大の塊が数個落ちていた。穴の入り口から照らした時に光を反射したのは、この塊だったようだ。

「うわあっ、やっぱりこれ金塊だよ。リアル金塊集めゲームだっ」

 ソニアは、キラキラした塊をライトで照らしてはしゃいでいる。

「ソニアにはそれをあげる。私はこれをもらうわ」

 リリスは並んでいた壷の一つを持ち上げようとした。しかし臼ぐらいの大きさの壷は、残念ながら持ち上がらなかった。

 ライトで壷を照らしてみると、中にはソニアの拾った握りこぶし大の金塊がぎっしりと詰まっている。これでは重くて持ち上がらないだろう。

「それじゃあこれは俺が頂きっ」

 今度はレフトールが持ち上げようとしたが、少し動かせただけで持ち運ぶ事は難しいようだ。

 一方壷を運ぶのを諦めたリリスは、金塊を服のポケットに詰め込みだした。それでもまだたくさんあるので、胸元を広げて今度は服の中へと入れ始めた。

 それを見たソニアは、「リリスずるい」など言いながら、自分も服の中に金塊を詰め込むのだった。

「これってやはり海賊の宝を隠した場所かな」

 ソニアとリリスがはしゃいでいる中、ラムリーザは冷静にリゲルとこの場所について考察していた。

「壷は全部で五つ、結構な量の金塊だな」

「ん? ここに石版のようなものがある」

 ラムリーザは、机のようになっている岩の上に、石版が置いてあるのに気がついた。石版を手に取りライトで照らしてみると、地図のようなものが描かれていて、三箇所のバツ印が付いていた。

「島の地図じゃないな、海図か?」

 リゲルはその地図を見て、そう解釈した。

「島周辺の地図かな、他にも宝があるということかな」

「その可能性はある。また謎の呪文が書かれた石版があったらうんざりするけどな」

「今年はここだけでいいや。残りは後日の楽しみに取っておこう」

 

 さて金塊だ。見つけたものは、可能な限り持ち帰りたい。

 壷の数は五つ、金塊の詰まった壷は、力のある男性三人でようやく安定して持ち上げられるぐらいの重さだ。

「今回はとりあえず一つ持ち帰ろう。残りは島民に任せて持ってきてもらえばいいや」

 ラムリーザの指示の元、リゲルとジャンとレフトール、そしてユグドラシルの四人で持ち上げた。これなら割と楽に運べるようだ。

 ラムリーザは、ロープの端を岩の間を通して結びつけ、入り口からここまでの通路が分かりやすくなるようにしておいた。これでロープを辿れば、洞穴の入り口から奥にある金塊の間まで迷わずに行く事ができる。

「さ、宝は見つけたし帰るぞ」

「はいっ」

 ちゃっかりと両手に一つずつ金塊を持っているソフィリータが立ち上がる。

 続いて金塊を体中に詰め込んでいたソニアが立ち上がろうとして――

「ふえぇっ、立ち上がれないよ!」

「何をやっているんだよ!」

 ソニアは、服の中に詰め込んだ金塊の重さで立ち上がれなくなっていた。その様子を見て、リリスも自分が立ち上がれないことに気がついたのか、服の中から金塊を取り出して壷に戻している。

「ラム、抱っこしてよ」

「馬鹿なことを言ってるんじゃない」

「ちょっ、やだっ、服の中に手を突っ込まないでっ!」

 ラムリーザはもがくソニアの言葉は無視して抱きかかえて動けなくして、次々に服の中から金塊を取り出して壷の中に戻していった。

「全部持ち帰ってから皆で分けるから、そんな意地汚い真似はやらないの」

「リリスだって服の中に一杯入れてる!」

 その時リリスは、既に動ける程度まで金塊を壷に戻し、それでもお腹の周りをボコボコ膨らませて立ち上がっていた。そしてラムリーザに捕まっているソニアを見てくすりと笑い、壷を運んでいる男性陣の後を追っていった。

 そしてソニアも立ち上がれるぐらいまで体が軽くなると、ラムリーザを振りほどいてリリスの後を追っていった。

 ラムリーザはちらりと残った四つの壷を振り返り、金塊を一つ掴むとその場を後にするのだった。

 先頭を歩くソフィリータがライトで前方を照らし、次に壷を抱えたリゲル達四人が続く。そしてリリスとソニアがその後を追い、しんがりはラムリーザとなっていた。正確に言えば、その後から付いてくるレイジィが一番最後。

 洞穴から出たときには、そろそろ夕方となっていた。

 

 残る四つの壷は、島民達を動員して持ち帰り、島の倉庫へと納められた。

 ラムリーザ達の持ち帰った壷の一つはコテージへと運びこまれ、それぞれの取り分はどれぐらいにするかと言うことで、ソニアやリリス達が揉めた話は割りとどうでもいいので割愛する。

 さらにリリスなどがソニアのパンツの中に金塊を入れるといった嫌がらせも発生したが、馬鹿馬鹿しい話なのでこれも割愛。

 こうして、石版探し、呪文解読といった一連の探索物は、こうして金塊を見つけるといったハッピーエンドを迎えたのであった。
 
 
 
 
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